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穏やかに、夫婦別室 その3

2009.05.03 (日)


前回その2からの続き)

夫が嘘を付いてまでタイ女と会おうとしているのに、私はなぜか冷静だった。怒りよりも失望のほうが大きかった。私のせいでこうなったのだと主張した夫に、言い返すチャンスだとも思った。

最初に夫が何を考えていたのかを知ったとき、私は自分も配慮が足らなかったと反省し、カウンセリングにも行き、態度を変える努力をした。

昭和一桁生まれの両親と明治生まれの祖父母に囲まれて保守的な田舎で育った私には、アメリカ人のような愛情表現はできなかった。見せかけの態度や言葉よりも中身が大事だと思った。

それでも、夫が望むなら、自分を変えようと決めて、毎朝、毎晩ハグとキスをし、アイラブユーを口にした。今日はどうだったのと伺い、夫の言うことやることに興味を示し、またそれをいちいち言葉で伝えた。

その結果がこれだった。

卑怯だと思った。違う文化背景で育った人間は、相手に合わせるために自分の意識を変えるしかない。そして、私の場合は、決して自然に身に付くことはなく、「こう言わなくては。こう振舞わなくては。」と常に考えなければならなかった。

夫はそれを感謝していたかもしれないが、私は本当の自分ではない自分にいやけがさしてきた。疲れてきた。いつまでこんなことを続けなければいけないんだろう。

*     *     *

シンガポールに着いた夫から電話があった。ホテルの部屋番号を聞き、フライトはどうだった? そちらの天気はどう?とさしさわりのない話をした。夫は、これから同僚と食事に行くから遅くなると言った。

1日目はほっておいた。私がタイ女との計画を知っていると思ったのは気のせいだったかと安心させるために。

2日目にも電話があった。夜はレセプションがあるという。ホテルの部屋に戻るのは遅くなる。

現地の夜10時ごろ、私はタイ女のホテルに電話して、夫の名前を出し、部屋につないでくださいと頼んだ。

呼び出し音が鳴って、女が出た。私は、「そこにXがいますね。私は彼のワイフです。今からポリスを呼びます。」とゆっくり言った。彼女は、「ノー、ノー」とだけ小さい声で言って、すぐ電話を切った。

もう一度フロントに電話してつないでもらったが、呼び出し音が鳴るばかりで誰も出なかった。

またフロントに電話したが、「そのお名前の方は当ホテルには逗留されておりません。」と言われた。夫が手を回したんだなと思った。ついさっき、つないでもらいましたけど、と言ったが、おりませんの一点張りだった。フロント係はあまり英語ができないのか、できないふりをしていたのか、わかりませんを繰り返した。

早朝にフロントが交代するかもしれないと思って、またホテルに電話した。案の定、ちがう人がフロントに居た。口実を使って、部屋の番号を聞きだし、つないでもらったが、やはり呼び出し音が鳴るだけだった。

*     *     *

その夜、夫から電話があった。感情を押し殺しているような声だった。

「彼女はきみの電話に恐れをなして、今朝一番の飛行機でタイに帰ったよ。きみのお望み通りにね。きみがやったことは脅しだ。」

「あら、私は自己紹介しただけですけど。それに、タイの売春婦がシンガポールで商売するのは違法だから、警察に教えてあげようと思って。」

「彼女は売春婦じゃない。」

「そもそも、貧しくってアメリカ人に送金してもらわなくちゃいけないような人がどうやって飛行機の切符を用意できたのかしら。」

「そんなことは知らない。ぼくは来ないでくれと言ったのに、あっちが勝手に来たんだ。」

「どうしてあなたがシンガポールに来たのを知っていたのかしらね。もう連絡は取っていなかったんでしょ。」

「それより、どうしてきみが彼女のホテルの電話番号を持っていたんだ。探偵でも使ったか。そっちこそ何をしていたかわかったもんじゃない。」

「探偵じゃないけど、タイとシンガポールの日本人で助けてくれた人がいるの。きのうのホテルの部屋はxxx号室しょう。」

当時はインターネットがやっと普及し始めたころで、今ほど情報入手が簡単ではなかった。それでも、私はタイに永住している日本人男性を見つけ、あらいざらい話して、どうすべきか尋ねた。

名前も知らないその人は、いろいろ親切に教えてくれ、現地の探偵を探してあげましょうかと言ってくれた。タイ女の電話番号とメールによく出てくる町やお店の名前を告げると、そのへんは詳しいから、よければ自分が動いてもいいとまで言ってくれた。

私は決心がつかなくて、お礼だけ言って、そのままにしていた。彼は私の立場に同情してくれたが、どこまで信用していいかわからず、いくら謝礼をあげたらいいのかもわからなかった(彼は謝礼は要らないと言っていた)。

だから、まるっきりの作り話ではなかった。

「やっぱり、探っていたんだな。彼女がどれだけ傷ついたか。まだ子どもなんだ。おびえていたよ。」

「そうね、私なんか比べ物にならないくらい、傷ついたでしょうね。電話でもっといろいろお話しできればよかったけど、すぐ切られたし、英語ができない方みたいだったし。うちにタイ語の会話集が何冊もあったから、どうしてかなと思ったけど。あなたは日本語は覚える気がないのにね。」

私は終始冷静だった。泣いてもいなかった。しばらくの沈黙の後、夫は言った。

「きみの勝ちだ。」

「そうじゃない。彼女の勝ちでしょう。最高の妻、最高の母を騙してまで、出張先でランデブーしようと思わせるくらいの人なんですから。」

これ以上話をしても無駄だった。私は言うべきことは全部言ったという気持ちになった。

もうアメリカ人の奥さんみたいな真似を続けるのは止めて、自分を解放しようと思った。

次回その4に続く)


<今日の英語>

You are a good sport.
あなたは話がわかるね。/気のいい人だね。

リスナーが車のトラブルについて相談する Car Talk というラジオ番組がある。過去に受けた電話で一番変わったものの一つとして、メイン州のポーラが「寒い朝、車のエンジンがかからないときは、あたためた毛布を車のボンネットにかける」というのがあった。そのポーラに再登場願って、いかにへんてこなアイディアかをホストがおもしろおかしく話していたのだが、ポーラも楽しそうに話に乗ってやっていた。それに対して、ホストが言った言葉。

自分がネタになっているのに、深刻にならず、その場を盛り上げるのがうまいアメリカ人。



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テーマ : 国際結婚 - ジャンル : 結婚・家庭生活

 |  わたし  |  コメント(1)

Comment

初めてこのブログを見ました

ずいぶん大変な苦しい思いされたんですね
私も、、、同じような経験があります、、
特に海外で一人だとなんだかもっと辛いですよね、
プロフィールを見ると現在もご結婚なさってるんですね このお話の御主人なのですか? そうだとしたら今は落ち着いてるといいですね
p |  2009.05.04(月) 04:15 | URL |  【編集】

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