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その後のパヴェル

2013.07.14 (日)


パヴェルの卒業式は5月だった。

私は行かなかったが、あとで送ってくれたビデオには、スーツ姿のパヴェルが他の卒業生といっしょに壇上に向かう姿があった。彼の両親も弟もベラルーシから来られなかった。離婚が成立して前妻となったアンナもいなかったが、親友がベラルーシから来てくれたと聞いた。

卒業証書を手にしても、彼はすぐには仕事を見つけることができなかった。

学生ビザは切れるだろうし、ベラルーシ国籍の人間がいつまでもEUにいられないだろう。どういう滞在許可かわからないが、とりあえず学生時代のアルバイトをそのまま続けていた。


         *


クリスマス休暇に、パヴェルはベラルーシに帰った。

離婚が成立し、大学を卒業してから初めての帰省だった。奥さんだったアンナは彼の母親と折り合いが悪かったので、その気苦労はなくなった。でも、ロシア正教会できちんと式をして、お披露目パーティもしたのに、こんなに早く破局してしまったのは気まずかったと言い、母親を失望させたことに自嘲気味だった。

しかし、言い争いばかりしていたらしい結婚生活に見切りをつけたのはよかったのだ。

しばらく女はこりごりだろうと思っていたら、パヴェルはベラルーシで新たな出会いがあったことを知らせてきた。

名前はカーチャ(エカテリーナの愛称)。

お針子をしている子で、彼が送ってきた写真では前の奥さんより優しそうに見えた。かわいいし、若い。

「カーチャとはすごく気が合って、一度ドイツに遊びに来てもらおうと思ってる。でも、彼女はドイツ語ができないんだ。それで、ぼくが語学学校をベラルーシで見つけてあげた。授業料はぼくが出すから、ドイツ語を覚えてほしいと思って。」

「いい人そうね。ドイツ語が上手になるといいわね」と私は返事をした。

でも、短かった最初の結婚がだめになって1年も経っていないのに、この早い進展には疑いが晴れなかった。アンナとも電車の中で出会って、同棲し始めたと思ったらまもなく結婚した。また同じような結果になるのではないだろうか。それより、今は仕事のほうが大事じゃないんだろうか。

「実は、今度はぼくの母が反対してるんだ。カーチャが気に入らないみたいで。ともかくあの娘はよくないって。そりゃ、最初の結婚があんな形で終わって、アンナと母は歩み寄れなかったし、慎重になるのはわかるけど。」

ドイツの大学を出た息子に、お針子の妻を迎えるのがいやなのだろうか。なぜか彼の母親は反対する理由をはっきり言わなかった。


            *


翌年の3月、パヴェルはやっとフルタイムの仕事を見つけ、そのためにボンの近郊に引っ越した。

私はほっとして、おめでとうと励ましのメールを送った。もはや以前のように頻繁なやり取りはなくなり、大雪や事故のニュースがあるときに安否を尋ね合ったり、お互いの誕生日にメッセージを送るくらいで、No news is good newsという形に落ち着いていた。

新しい職場はロシアと取引があるドイツの会社で、英語もロシア語もできる彼は重宝だったらしい。ただ、最初はモスクワ出張に出かけたり、会社から車を貸与されたりして張り切っていた彼も、給料の割りに長時間働かされて、悩んでいるようだった。

「なにか問題が起きると、上司がぜんぜん関係ないぼくに責任を押し付けるんだ。こっちの言い分なんか聞いてくれない。遅くまで働くのはいいけど、理不尽な扱いはうんざりする」とパヴェルはメールで不満を訴えることが増えた。

彼がベラルーシ国籍であることで足元を見られているのかもしれないと私は思ったが、「ここでの経験がきっと将来の役に立つわよ」と当たり障りのないことを書き送った。

せっかくドイツで学位を取ったのに、このままでは彼がベラルーシに帰ってしまうような気がした。

いったい帰国してどんな仕事に就けるのだろうか。なにより、彼は徴兵の義務をまだ果たしていない。悪名高いロシアの軍隊ほどではないにしろ、ベラルーシの軍隊にもいじめはあるだろう。


         *


そのうちパヴェルはますます忙しくなり、私は長男の大学進学で頭がいっぱいになって、連絡が途絶えがちになった。

彼は他の仕事を見つけようとしたがうまくいかず、不満を抱えながら同じ職場に留まっていた。久しぶりに届いたメールは、また悪い知らせだった。

「カーチャが他の男と関係していたよ。ベラルーシとドイツで離れているけど、信じていたのに。あれから、また家に戻ったときになんかおかしいなと思って、彼女に本当のことを言ってくれと問い詰めたんだ。そしたら、最初は否定してたけど、最後には白状したよ。ショックだった。でも、いっしょに居られなかったぼくも悪かったし、彼女は泣いて謝って二度と裏切らないって約束したし、もう一度だけチャンスをあげることにした。」

彼の母親はカーチャを見抜いていたのだろうか。

そんな話を聞いてから、この娘はだめだ、いつかパヴェルを傷つけるだろうと苦々しくなった。でも、私は彼女に会ったこともないし、そもそも何も言う権利はない。

彼は以前より頻繁にベラルーシに帰っていたようだった。次の休暇には、ベラルーシのクリスマスの様子をビデオで送ってくれた。クリスマス・ディナーを囲む彼の家族や、ライトが煌く街の様子が写っていた。カーチャともよりを戻したらしかった。


           *


6月になって、長男の大学が決まり、私は報告を兼ねて久しぶりにパヴェルにメールを書いた。

すぐにお祝いの返信があった。

「じゃあ、ぼくからもビッグ・ニュース。来年の夏、結婚することにしたよ。あなたとご主人と子どもたちも(これで最後の!)結婚式に来てくれるとうれしいな。日取りや場所は年末までに決まると思う。」

私は唖然とした。

あんなことがあったカーチャと、なぜ慌てて結婚しようとするのだろう。アンナとの結婚から何も学んでいないのだろうか。カーチャを嫌っていた彼の母親はどう思っているのか。いくらなんでも。

「素晴らしいニュースをありがとう。幸せにね。私たちも参列できたらいいんだけど。カーチャはもうドイツに来ているの? ドイツ語は上達した?」

私の疑問に対する彼の返事もまた予期できないものだった。

「あなたのメールを読んで、ぼくが以前送ったはずのメールが届いてないことに気がついた。ぼくが結婚するのは、ユリアだから。

今年の1月5日にブレストで出会って、それから彼女がドイツに遊びに来て、話せば長くなるんだけど、つまり彼女はぼくの人生を完全に変えてしまったわけ。ぼくにとってパーフェクトな女の子で、お互いを理解し合って、口げんかしないでいっしょに居られる関係がどういうことか、彼女のおかげでやっとわかったよ。」

ユリアは22歳で、英語とドイツ語の学位を取得したばかりだった。若いのにいろいろ苦労してきた娘で、その点パヴェルと共通点もあって、思いやりがありそうだった。

「彼女にあなたのことを話したら、ぜひ会いたいって」と言うパヴェルに、いったいどこまで話したのかしらと私は昔のことを思い出した。



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 |  わたし  |  コメント(2)

Comment

パヴェル。
慎ましやかな青年がどんどん変わっていくようで・・涙
でもきっと根っこの部分は変わらないんでしょうね。
kometto3に対しての、なんていうか、配慮や尊重
それはきっとkometto3との間だったから?かなーとも思いました。
相手が若い、思慮の浅い女の子だと、どうしようもないのかも。
ユリアがやさしくて、思いやりのある、賢い子でありますように。
ビッチ(失礼)はごめんです。

lumama |  2013.07.15(月) 23:17 | URL |  【編集】

はやくはやく。

在米です。ずっとタダ読みしてました。実はパヴェルのシリーズが一番好きです。きっと彼はあなたのような家族を持ちたいと焦ってたんじゃないんでしょうか?横からごめんなさい。
Yasmin |  2013.07.15(月) 23:22 | URL |  【編集】

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