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4年ぶりの日本 その3

2013.07.01 (月)


ゲームやアニメに興味のない私は、秋葉原になんの用もなかった。

長男に付き合って、あちこちのお店に行ったものの、疲れるだけでおもしろくもなく、すぐにいやになってしまった。

そこで1時間だけ別行動をすることにした。私は駅ビルで買い物(実際は椅子に座って、通行人を眺めていただけ)、長男は他のお店をさらに見て回る。

「3時ぴったりにここに戻ってくるのよ。あんまり遠くに行かないのよ」と何度も言い聞かせたのに、長男は10分も遅れてやってきた。私はずっとハラハラしどうしで、長男が息せき切って現れたときには、どっと疲れが出て、一刻も早くホテルに戻りたくなった。

「お母さん、あの、お金ある? ぼく、どうしても買いたいのがあっちのお店にあるんだけど、カードじゃだめみたい」と長男。

「あんた10分も遅れてきて、なにやってたの!」と私は機嫌が悪い。

どうしてそういうくだらないものでお金を無駄にするのだ。しかし、次男や友達へのお土産にするのだとかごちゃごちゃうるさいので、現金を少しだけあげた。

日本に到着して3日目である。

湿度が体にこたえるし、午後は時差ぼけのせいで思考能力が衰える。どうでもいいから、とにかく早くしてくれと思った。

長男は秋葉原がたいそう気に入ったらしい。アメリカに帰る前にもう一度行きたいとのたまう。まっぴらご免である。私はあの町には何の魅力も感じなかった。


         *


翌朝、土曜日の朝9時半。姉は再びホテルへやってきた。

添乗員よろしく、その日の予定はすべて姉がお膳立てしてくれた。すでに実家に行くための電車の切符も購入してくれていて、私はお金を渡すだけである。

姉がずっと付き合ってくれるために、私はなにも調べなかった。姉の後をついていっただけなので、横浜から鎌倉へ行って、それから新横浜までどうやってたどり着いたのかもわからない。

もしかして私は日本で姉と暮らしていたときも、こうやって姉に頼っていたのだろうか。外出だけでなく、ありとあらゆることで私は姉の助けがあったから東京で生活できたのではないか。

その後、アメリカに移住して25年経っても、私という人間は結局なんにも変わっていない。

アメリカでは生活費を稼ぐ以外のことは私がほとんどすべてやっているが、それはいわば表面的な雑事に過ぎない。本当に重要なことについて、私は夫を当てにしているのだ。なにがあっても夫がどうにかしてくれると心の底で思っている。

自分がどこかで成長し損なった気がしてならない。

ただ年を取るだけなら、誰にでもできるんだなあと思う。


        *


姉の指示で、スーツケースはホテルから宅配便で実家へ送ることにした。ついでにスマートフォンを返却するために、姉に小さい箱を持ってきてもらった。

ホテルには宅配便受付の専用デスクがあった。

担当の女性はこれまたほっそりとかわいらしく、てきぱきにこやかに対応してくれた。

送り状には配達時刻の指定があって(午後は2時間区切りという細かさ)、私は翌日ならいつでもいいのだが、姉が午前中にしろと言う。そうしなくても、たいていは午前中配達だと聞いて驚いた(正午までに来ればいいなと思っていたら、なんと翌朝10時には実家にピンポーンとやってきて、迅速・正確なのにまた驚いた)。

送り先は実家の母で、差出人はホテルなのか、やはり実家の住所にすべきか。担当の女性にたずねると、「それでしたら、ドウジョウと書いていただければだいじょうぶです」と言う。

そうか、その手があったかと、まずドウを書こうとしたら、中は口だけだったか、一本横線があるんだったか、自信がない。少し離れて長男と立っていた姉に教えてもらう。

漢字を書かなくなって久しい。読むのはいいが、書くほうはどんどん忘れていく。

受付の女性はスマートフォンをプチプチでくるくると梱包し、姉の用意した小さい箱に収めて、丁寧にテープでとめてくれた。箱も頼めばホテルで用意してくれたらしい。

また感激する私に、「これくらいのホテルなんだから、あったりまえでしょ」と姉は冷静であった。

日本人の要求レベルはまことに高く、それに答える日本の業者は大変だ。

日本人は日本の優秀なサービスを当然のことと受け止めているだろう。当然すぎて意識すらしていないかもしれない。ガラパゴスというなら、携帯どころか、こういうサービスこそ世界から突出して発達した分野だと思う。

部分的にならこの程度はできる国があるかもしれないが、日本の驚異は、平均して万遍なく高品質のサービスが受けられることだ。


          *


私にはおいしいものを食べさせ、長男には珍しい体験をさせるべく、姉は鎌倉を選んだ。

昼食は懐石料理である。

もちろん長男は初めてで、出てくるものにいちいち「これ、なに?」と聞いた。昔は食べたことのないものに強く抵抗した子だが、「口の中が混乱してる。何食べてるのか、わからない」と何度も言いつつ、すべての料理に挑戦した。こんなところでも長男は成長していた。

姉は「この器もいいのよ。この野菜はこうしてあるの」といろいろ説明してくれたが、長男と私には猫に小判状態。

手の込んだ、芸術的な盛り付けの料理は、ふだんアメリカで食べているものと格差が激しく、1ヶ月以上たった今、思い出せるのは最後のデザートだけである。極上のカボチャプリンだった。

会計はもちろん姉。恐ろしくて、値段は聞かなかった。

その後、近くの和菓子屋で姉が何か上等なものを買い求め、実家の母に手渡すようにと言われた。

私はアメリカからお土産の一つも持ってこなかった。そんなこと考えもしない。私はお土産をあげるのももらうのも苦手だ。今回だけでなく、アメリカに移住してからずっとそうだ。気が利かないなんてレベルじゃない。母も親戚もきっと呆れているだろうが、何も言わない。言ったってしょうがないと諦めているだろう。

たまに周りの状況で、「ああそうか。おみやげか」と思うことはあっても、自分にとってはどうでもいいので、意識に残らない。だいたい何をお土産にすればいいのかもわからないのだ。

50歳にもなって、そんなことまで姉に面倒を見てもらっている。


         *


次に向かったのは、お寺。

そこで座禅の体験コースに挑んだ。人気が高いらしく、建物の前にはすでに列ができていた。

空手をやり、meditation(瞑想)もやる長男は、緊張しつつもやる気満々だった。

私はすべての宗教を胡散臭いと思い、瞑想するより昼寝したいタイプ。

座禅道場には薄い座布団と小さい平べったい枕みたいなものがずらりと並べてあった。みんな黙って荷物を置き、座布団の上に座る。長男をはさんで、私と姉が横に並んだ。静寂そのもの。

お坊さんが来て、脚の組み方や手の置き方、呼吸など基本的なことを説明した。10分間の座禅を2回。その間に、少し休憩が入る。

座禅の最中にお坊さんに警策で肩をパシッとたたいてもらいたい人への指示もあった。今はお坊さんの修行でもそんなにひどくたたかないのだそうだ。体験コースともなれば、もちろん手加減してくれる。

息を吐くごとに1回、2回と数えるようにとの指示だったが、雑念だらけの私はまったく集中できず、時差ぼけによる眠気もあって、10分間が非常に長く感じられた。「あと3分です」とか「残り1分です」とか予告してくれたらいいのにと思った。

お坊さんには私のような不埒な者が手に取るようにわかっただろう。

薄目を開けているので、長男がお坊さんに作法どおりに合図し、お坊さんが長男の両肩をパシッとたたき、長男がお辞儀しているのが見えた。私とちがって、長男はこういうことには率先して挑戦する。

その後、姉は長男を連れて境内の中を散策しながら建造物を見せてくると言い、私は涼しいお堂の中でぼんやり座っていた。


         *


新幹線の時間が気になってしかたない。姉に任せておけば間違いないはずなのに、不安になる。

姉の引率でまず横浜駅に戻り、駅ビルの地下にある食料品売り場へ向かう。豪華な品揃えと整然としたお店の様子にまた感激するも、あまりの人の多さに目が回りそうになった。

乗り物と外出に加えて、私は人ごみが苦手なのである。

どこかでお茶を飲もうと喫茶店に向かったが、そこにも人が並んでいた。アメリカの田舎で引きこもっている私は、耐えられなくなった。眠いのもあって機嫌が悪くなり、「あんたは文句ばっかり」と姉に怒られた。

「慌てなくてもまだ時間はたっぷりあるよ」という姉を説き伏せ、新横浜へ向かった。xx時までに横浜を出たら間に合うというのを、xx時に新幹線が出ると私は誤解していたのだとあとでわかった。新横浜の駅の待合室で1時間も時間つぶしをしなくてはならなかったが、人ごみと乗り遅れの不安から解放されて、やっと私はリラックスできた。

私が迷うかもしれないと、姉は新幹線の乗り場まで付いてきて、出発までホームで見送ってくれた。

私だけならとても長男にこんな経験はさせてやれない。普通の子どもはもっとあちこち出かけたり、いろんな体験をして育つんだろうなあと、自分のふがいなさに落ち込んだ。

独身の姉のほうがよっぽど子育てに向いている。

世の中、なかなかうまくいかないものである。



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