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パニック

2013.06.24 (月)


出発の2日前、長男を連れて入院中の次男に会いに行った。

最悪の訪問になった。

次男がやると約束した英語の宿題を何度もほったらかしていて、そのために英語の先生はもちろん、ガイダンスも巻き込み、今度こそちゃんとやると言っておきながら、やっぱりやっていなかった。病院内の学校は、私が当初期待していたほどきちんと見てくれない。他の科目はともかく、11年生の英語だけは今年中になんとかしなければ、ハイスクール最終学年である来年度にひびく。

私だけでなく、長男もその話をしたために、次男が「お母さんも長男くんも、ぼくを責めに来たの?」と怒り、長男が話をすればするほど、次男は不機嫌になり、興奮して悪態をついた。

私は何度も「これじゃしょうがないから、もう帰ろう」と長男に言ったが、長男には別の考えがあったらしい。このままでは問題が解決しないと主張し、それから30分もそこにいた。

しかし、話し合いどころではない。

次男は泣き喚き、私はそんな次男を見ていられなくなって、私まで泣いてしまった。このあと3週間は病院に来られないのに、どうして勉強の話を持ち出してしまったのかと自分を責めた。

看護婦がやってきて、私と長男は部屋を出た。次男が落ち着くまで誰かをつけてくれるとのことだった。

病室から駐車場に出るまで、私はずっと泣いていた。まだ本当の免許が取れていないし、一度もそのあたりを運転したことのない長男が「お母さん、ぼくが運転しようか?」と言った。

その優しさにまた目が潤んだが、事故でも起こしたらそれこそ泣くに泣けない。私は家まで1時間黙って運転した。何か話せば、また涙が出そうな気がした。


         *


「きょうはどうだった?」と夫に聞かれると、私はまた涙がぽろぽろ出て、首を横に振ることしかできなかった。

「そんなにだめだったのか。何があったのか、あとで長男に聞くよ」と夫は言った。

ずっと冷静だった長男も相当ストレスがたまっていたらしく、その夜、まったく別の話をしていた夫が長男になにかきついことを言い、今度は長男を泣かせてしまった。私は夫に怒る気力もなく、いったいどうしてこんなことになってしまったのだろうかとぼんやり考えた。

そして、のろのろと荷造りをした。ホテルの予約メールを印刷したり、現金を用意したり、夫のためにメモを書いたり、ふだんなら前もって片付けているはずのことがほとんどできていなかった。

出発は翌日の午後なので、時間の余裕はあった。なかったのは、精神的余裕だった。

面会時の次男のこと、実家には内緒にしている次男の病気のこと。やぱり今年は日本に行くべきではなかったのではないか。母にはなんとでも言い訳をして、アメリカに来てもらっては困る理由を作ればよかったのではないか。

そう考え始めると、あらゆることが計画ミスに思えてきた。

深夜着で早朝発の羽田にしたのを悔やむ。日本の航空会社でなくてアメリカンにしたのを悔やむ。ホテルに無事たどり着かなかったらどうしよう。成田にすれば、ホテル代も要らなかったのではないか。夫が空港までの送り迎えをするにもよくない。3週間弱なのに、実質は2週間半くらいの気がする。もったいない。


          *


夫の部屋に行き、「私、日本に行きたくない。この計画はまちがってたと思う」と宣言した。

「きみは旅行の前はいつもそうだよ。今回に限ったことじゃない。ホテルだって空港だってプロだよ。なんとかなるよ。きみは日本語ができるじゃないか。それに、長男だってもう小さい子どもじゃない。荷造りができたんなら、もう休んだほうがいい」と夫は妙に落ち着いていて、よけいに私をいらいらさせる。

長男の部屋に行き、「ちょっと聞いて。お母さん、日本に行きたくないのよ。ぜんぜん行きたくない。真剣にキャンセルしたいのよ」と訴えた。

「お母さん、いつもそう言うよ」と長男も私の気持ちをわかってくれない。

「でも、今度はいつもと違うのよ。いつもよりひどいのよ。飛行機のせいだけじゃないの。旅行そのものがまちがいだと思うのよ」と説明したが、「でも、ぼくは行きたいよ」とピンとはずれの答えが返ってくる。

機内で飲む薬を飲みたいが、そうすると一両日くらいぼんやりしてしまって危ない。いつもの抗不安薬を飲む。パニックには効き目がない。疲れているのに、なかなか寝付けなかった。

夫が長男を呼ぶ声がした。「なんだかわからないが、お母さんはかなり参ってるらしい。頼むぞ。おまえが頼りだからな」という夫の小さい声が聞こえた。


         *


出発当日の目覚めも悪かった。しかも、本格的なパニック症状が出ていた。

心臓がドキドキしてじっとしていられない。何も手につかない。考えようと思っても、グルグルするだけでぜんぜんまとまらない。過呼吸で苦しい。手足が震えて、冷や汗が出る。

夫はまだ寝ていた。私は夫の部屋にふらふら入って、夫の横にすべりこんだ。そして、前日と同じように、いかにこの旅行が間違いであるかを夫に再び訴えた。

夫はいきなり私がベッドに入ってきて驚いたようだったが、私の背中をさすりながら聞いた。

「またいつものパニックかな。特に今回がひどいようには見えないけどなあ。それに、旅行に行けば、これまでもそれなりに楽しかったんじゃないのかな。今回もきっとそうなるよ。お姉さんも実家のお母さんも待ってるし。うーん。もし、お金や他の人の気持ちや義理立ての問題が何もないとしたら、きみはどうしたい?」

「ぜんぶキャンセルよ!飛行機もホテルも。それで、行かないって姉に電話する。」

「そうか。じゃあ、キャンセルするか?」と夫は簡単に言う。

「でも、できないのよ!飛行機はノン・リファンダブルだし、ホテルは払ったし、姉は京都のホテルも手配済みだし、姉も母も待ってるし」と私は自分に言い聞かせるように、一つ一つ理由を挙げていった。そして、「こんなことしてても無駄だわ。キャンセルできないんだから。予定通り、行くしかないわ」と、夫のベッドから下りた。

しばらくして姉から電話があった。「いよいよ今日ね~。したく、できた?」

「したくはできてるんだけど、行きたくないのよ。」

「あー、また始まった。いつもじゃない。」

「いつもよりだいぶひどいのよ。パニック症状そのものなのよ。でも、キャンセルできないから、行くわ。横浜のホテルについたら電話する。」


        *


時間が経つにつれて、諦めがパニックに取って代わり、家を出るころには運転できる程度には落ち着きを取り戻した。

今思い出しても、出発日の心理状態は普通ではなかった。

これまで自覚しなかっただけで、私は旅行の前にいつもそんな風だったのだろうか。夫も長男も姉も、「いつものこと」と受け止めていたようだ。私はいつもより明らかに重症だったという気がするのだが、パニック真っ最中の人間に正常な判断力はない。

確かに、荷造りがめんどうだとか、家や猫の心配があるとか、空港までのハイウェイがいやだとか、夫の親戚に会うと気疲れするとか、うれしくない理由はいつも同じなのだ。そして、夫が言うとおり、出かけてしまえば、どうにかやり過ごすことができる。それどころか、楽しいことやいいこともあり、帰宅してから「カリフォルニアの果物はおいしかったわ」などと思い返すのだ。

やっぱり次男のことが影響していたのかもしれない。それが不安を増幅して、パニックを引き起こしたのかもしれない。

一瞬、本当にキャンセルしようと思った。飛行機やホテルで無駄になるお金はあとから稼げばいい。とにかく旅行計画そのものを白紙にしたい。それしか頭になかった。



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 |  わたし  |  コメント(1)

Comment

更新ないので心配してました。
次男君のことも。
また日本での出来事、お母様の様子などアップ楽しみにしています。
私はkometto3の文章が好きで、安定剤にもなっています。
lumama |  2013.06.25(火) 01:36 | URL |  【編集】

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