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見習い姑

2012.03.20 (火)


【追記あり】

土曜日の午後、長男のガールフレンド、ケイティが家にやってきた。

先日、長男を迎えに来たときは玄関先だけだったが、今回は数時間の滞在である。

午前中は長男の空手、午後は次男のテニス。しかも、アレルギーで私は何もやる気がしなかった。しかし、猫の毛だけはどうにかせねばと、スイーパーでざっと床を掃除し、1階のトイレとキッチンだけきれいにした。

さらに、ダイニングルームのテーブルに置きっぱなしだった長男の大きな絵や大学関係の書類を子どもたちに片付けさせた。

前のガールフレンドのときは、他の友達も男女取り混ぜて集まってワイワイやっていたので、彼女1人ということは一度もなかった。

ケイティは高級住宅地で知られるR市に住んでいて、授業料の高いG大学へ進むということから、私はなんだか気後れしてしまっていた。

おやつを作る元気がなかったので、スーパーのベーカリーでチョコレートチップ・クッキーを買い、チップスやアップルサイダー、アイスクリームも買い込んだ。もし彼女が遅くまでいるならと、ラザニアの材料も確かめた。

子どもたちは、どのお客が来るときも私が神経質になるのを知っている。「おかあさん、何もしなくていいよ」と言ってくれるが、日本的なもてなしの観念がプレッシャーになり、何もしないわけにいかないのだ。

お客は子どもなのに、私は見栄っ張りである。


           *


ケイティが呼び鈴を鳴らしたとき、私は2階にいた。

「おかあさん、ケイティが来たよ」と長男が呼ぶ。

「ハーイ」とだけ言って、私は下りていかなかった。こういうときは、どうすべきか。やっぱりちゃんと挨拶すべきか。いかにも待ち構えてましたと思われるだろうか。悩んでいる間に、階下では2人の話し声がした。

いや、ほとんど彼女がしゃべっている。なんだか知らないが、彼女だけがしゃべりまくっている。

2時からテレビでテニスが始まった。彼女もテニスクラブに通っているので、そのタイミングでリビングルームへ顔を出した。

「ハイ、ケイティ。いま、ジョコビッチとイズナーのセミファイナルをやってるわよ。見たければテレビをつけてね」と言うと、「オーケー」と彼女はにっこりした。リビングルームのカウチに、長男とぴったりくっついて座っている。二人の前には長男のマックがある。ビデオでも見ていたのか。

「えーと、私はもうすぐ次男をテニスクラブにお迎えに行くから」と関係ないことを口走り、2階に戻った。

長男の部屋は次男のほど散らかっていないが、とてもガールフレンドに見せられる状態ではない。その隣は夫の部屋で、G氏と話している声が聞こえるし、きっと2階へは来ないだろう(実際、ずっと下にいた)。

もし長男の部屋で過ごすなら「ドアを開けておきなさい」と命じるつもりだったが、その心配はなかった。


          *


そのうち、ピアノが聞こえてきた。

もう何年も調音していない、ほこりだらけのピアノだ。彼女が使うとわかっていたら、磨いておくんだった。下りていくと、今度はピアノの前の長いすに2人でぴったりくっついている。長男もピアノは少し習ったが、猫ふんじゃったも怪しい。

彼女は即興のような、ジャズのような曲を弾き、うちにあった楽譜を台に載せて、それも試していたらしかった。

こういう子だからG大学に行けるんだなあと私はまた感心した。成績が優秀なのはもちろん、テニスをやって(それもかなり真剣なレベルで)、ピアノもさらりと弾いて、堂々としているし、まるで長男の家庭教師が現れたみたいではないか。

ほどなく、夫が台所へやってきた。

頭はボサボサ、よれたTシャツで、残り物のピザを立ったままパクつく。彼女のために買っておいたクッキーに手を出す。勝手にポテトチップスの袋をあけ、そのへんのボウルに全部出して、つまみ食い。夫の位置からは、ピアノを弾くケイティの背中が見えるのに、どうでもいいことをしゃべり続ける。結局、まともにケイティに挨拶しなかった。

幸い、夫はすぐに自室に引き上げた。

私が3時半に次男を連れて戻ると、なんだか静かなリビングルーム。

しばらくすると、2人は裏庭に出た。長男が学校のクラブ活動で作った刀を持ち、向かい合ってしゃべっている。まあ、ずっと家の中にいてもつまらなかろう。

シャワーを終えた次男はリビングにある自分のパソコンに向かっていた。「あんた、ケイティにハーイって言った?」と聞くと、「ぼく、知らない。自分のことやってたの」と知らん顔をする。

これはダメだ。マナーが悪い父親と無愛想な弟。ケイティはどう思っただろう。


            *


夕方になって私がラザニアを作り始めると、長男とケイティはガレージのほうのドアから台所に入ってきた。

ああ、そっちは掃除が行き届いてないのに、長男は気が利かない。

「あのチャンバラ、長男が無理にやらせたんじゃないでしょうね?」と私が聞くと、「ノー、ノー!私がやりたいって言ったんです。ああいうこと、好きなので」とにこやかなケイティ。

そして長男に「お水、もらえる?」とハキハキ頼んだ。

お水でいいの? ジュースとかサイダーとかあるのに、長男は何も勧めずにお水を渡す。

もしかして、オーガニックしか食べない子か? 今日はミート・ラザーニャだけど、菜食主義だったらどうする? いつもみたいに半分ほうれん草にすべきだったか。

「よければ、晩御飯をいっしょにどうぞ」と誘おうとしたら、ケイティが長男に話すのが聞こえた。

「今日は6時までしかいられないの。セント・パトリックス・デーだから。父が今日だけはアイリッシュのディナーにこだわって、いっしょに食べなくちゃいけないのよ。」

彼女はアイリッシュ系なのか(あとでイタリア系だとわかった)。立ち食いなんかするうちの夫とはちがって、きちんとしたダイニングルームで正統派のディナーなんだろうなあと考える。

ラザーニャをオーブンにいれ、私は2階へ戻った。


              *


そのうち、玄関のところで声がして、ケイティが帰る気配がした。私は下りていかなかった。

キッチンのタイマーがなったのでオーブンを見に行くと、長男がまだリビングルームにいた。次男も1人でパソコンをしていて、なんだか静かだ。

ケイティはつまらなかったんだろうか。長男はアニメの話やちゃんばらなんかして、幼稚に見られたんだろうか。彼女の家とは格が違うと思われたんだろうか。こんな田舎まで片道30分以上かけて来るのがいやになったんだろうか。

私は長男を傷つけまいと、今日のデートについては聞かなかった。

1時間ほどして、「ケイティ、家に着いた?」とわざとらしく尋ねると、「うん」と一言。

おとなしすぎる。やっぱり、これで終わりか。今でさえ遠距離なのに、あと数ヶ月で大学に行ったら、それこそ遠くなる。今のうちに、すっぱり別れたほうがお互いのためだ。


            *


夕食が終わって、後片付けをしていると、長男がやってきた。

「ぼくに、ケイティの家で家族といっしょにピザ食べてって。」

「ケイティの家?! いつ?」

「こんどの金曜日」

「なんで?! 家族に紹介したいってこと?」と混乱する私。

「いやー、知らないけど。それで、ケイティが学校終わったら、ぼくの学校まで迎えに来てくれるって。」

「ちょっと、それはかわいそうでしょ。また35分もかかるのよ。それでとんぼ返りなんて、大変すぎるわよ。」

「でも、帰りは電車で来るよ。」

いや、そういう問題じゃない。なんで彼女はまた長男と会いたいのだ? 勝手に破局ドラマを脚色していた私は予想外の展開に驚いた。

「ケイティの住所知ってる?」 グーグルマップで探そう。

「知らない」と長男。なんのためにもう3回も会ったのだ。長男は私のように下調べをする気はないらしい。


            *


今朝、一部始終を夫に報告した。

「やっぱり彼女のR高校はちがうのよ。長男に、あなたはどんなクラブに入ってるのって彼女が聞いて、長男がなんとかGamingとかLive Actionなんとか、それからPhilosophyもやってるって言ったら、彼女がうちの高校もフィロソフィはあるけど、みんなそのクラブで哲学がきらいになっちゃうのよねって。ゲームなんて面白いクラブはないの。ともかく、学校は生徒にAPのクラスをたくさん取れってうるさいからって。やっぱり進学校ね。きっと哲学だって本格的で難しいのよ。こんな田舎とは違うんだわ」と私。

「まあ、そうだろうな」と夫。べつだん驚いているふうでもなかった。

「だから、彼女もG大学なのよ。それでどうして長男とまた会いたいのかしら。てっきり終わったと思ってたのに。R市でしょ。きっと彼女の家は豪邸だわよ。こんな田舎で何時間もいて退屈しないのかしら。」

「広い裏庭とか静かなとことか、珍しいんじゃないか」

「R市だって、シティみたいな大都会じゃないし、豪邸なら庭も広いわよ」

「きみはケイティの家を見たことがあるのか。」

「見てないけど。だって、彼女がここまで迎えに来てくれるんだから」

「じゃあ、今ダラダラしゃべってたことはまったくの想像か?!本当はどんな家だかわからんじゃないか」と夫は呆れた。確かにそうだ。

「でも、彼女のバッグはMarc Jacobsなのよ。玄関のスツールから落ちてたから拾い上げたんだけど、留め金にそう書いてあったの。質のいい本革だし、すてきなデザインだった。ああいうのが買えるってことは、やっぱりそれなりの家の子じゃないの?」と続ける私に、夫はもうつける薬がないという顔をした。

ケイティのブーツも質がよさそうだった。車はフォードのSUVでおそらく家族用なのだろう。ちょっと汚れていて、かえってホッとした。そこまできっちりしたお家ではないかもしれない。


          *


長男は前のジェシカと付き合っていたときも、たびたび彼女の家族と外出をし、いっしょにファミリーレストランに行ったりした。

ジェシカは冬でも裸足で、左右色違いのゴムぞうりを履いてやってきた。プロムの日に彼女の両親に会って、彼女の家の前までお迎えに行ったこともある。そのときもいろいろ想像したが、同じ町だからだいたいわかるし、どうせハイスクールを卒業したら終わりだろうと思っていたので、そう気にならなかった。

しかし、ケイティの場合は事情が違う。釣り合いが取れてない。

どうもいやな予感がするのである。

ただのガールフレンドなのに、私はまるでお姑さんみたいに持ち物だの態度だの観察しているではないか?!

これがお見合いなら、「とってもありがたいお話ではございますが、愚息にはもったないお嬢様でいらっしゃいますので」と社交辞令ではなく、本気で申し入れているかもしれず。

だいたい彼女の両親だって、G大学に行って政治家を志す娘がなんでまた美大で絵を描く学生に興味を持ったのか、不思議に思うだろう。ケイティは長男や私たちのことをなんと両親に説明しているのだろうか。

もしや、今度のピザは面接試験か!

長男は立派なフォーマル・ダイニングルームで高尚な会話ができるだろうか。ティーンにありがちなおかしなしゃべり方をしないだろうか。食事のマナーは大丈夫だろうか。ピザをイタリア製の高級ダマスク織テーブルクロスに落として赤いシミをつけたらどうしよう(夫は昨夏これを義母の家でしでかしてくれた)。ケイティのお母さんはビジネスウーマンか、はたまたチャリティ・パーティの常連みたいな有閑マダムか。

もしケイティが本当に政治家になって、政敵に夫や私のよろしくない過去を暴かれたらどうする?

私の妄想は広がる。

しかし、夫や子どもたちに話しても「また始まった」と思われるので、ここに書き留めるだけにする。

追記: こんなことを付け足しては台無しなのだが、当記事は一種のジョークである。暇な私は、くだらないことを楽しくブログに読み物として載せているだけで、本気で悩んでいるのではない。他の記事についても概ね同様。なんでも生真面目に受け取る読者がいるらしいので、これ以上「それはおかしい、私はそんなことはしない」という類の真剣コメントが届く前に、釘を刺しておく。ブログは話半分に読むことをお勧めする。】


<今日の英語>   

Don't push your luck.
調子に乗るなよ。


私や夫が何も言わないのをいいことに、いつまでもリビングルームでパソコンをしていた次男に警告した夫の一言。



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 |  子ども  |  コメント(1)

Comment

花豆さん
(私が代わりに書きますけど)

だからー、
【追記: こんなことを付け足しては台無しなのだが...ブログは話半分に読むことをお勧めする。】
っていってるでしょー!

本文を読んでこのsense of humourが感じられなければ、「豆腐の角に頭ぶつけて...」
太吉 |  2012.03.20(火) 21:48 | URL |  【編集】

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