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想定外のEKG 後編

2012.02.07 (火)


前編の続き)

「EKGがおかしいんだって。心臓エコーやることになったわ」と夫に話したが、なぜかそれほど驚いたふうでもなかった。なにやらパソコンで難しいチャートを作っていたので、私の話は聞こえてなかったのかもしれない。

私の心臓については、子どもたちのほうが心配してくれた。

「自分ではわからないのよ」と言いながら、確かに胸が痛かったし、左肩や背中が痛いような感じもした。ちょっとしたことで、「もしかして心臓?」と気になり始めた。

「私も不整脈あったよ」と姉。やっぱり!

数年前に会社の検診で見つかったのだが、なぜか1度きりで、その後のEKGは正常だったという。「あのとき疲れてたからじゃないかなあ。あのときだけなのよねえ。」

忙しい姉と違って、私は毎日ゴロゴロしている。疲れたらすぐ寝る。ストレスのないのがストレスのような生活だ。

長男が大学に受かるかどうか気を揉んでいたせいかもしれない。次男がパソコンに夢中で勉強を手抜きするとか、夫とG氏のビジネスがうまくいくのかとか、他にも心配の種はある。しかし、今に始まったことじゃない。不整脈が出るほどのことだろうか。

私の母は毎年不整脈が出るというが、姉は1度きり。他には心臓の悪かった親戚はいないようだし、そういう家系ではないと思われる。だいたい母も未亡人になってから病気一つしないし、スタミナもついて仲間としょっちゅう小旅行に出かける。不整脈でもごく軽い種類らしい。

きっと私もなんでもないかもしれない。ドクターBもそう言っていたではないか。

EKGをやってくれた若いナースはいかにも慣れていないふうだった。接続がおかしかったという可能性はないだろうか。


         *


私はEKG結果が間違っていたという結論を出すために、あれこれ言い訳をし始めた。

そして、気がついた。まるでキューブラー=ロスの死の受容プロセスではないか。彼女によると、死に直面した患者は、否認・怒り・取引・抑うつ・受容の5段階をたどるという。

根が悲観的な私は、EKGの異常→心臓疾患→心筋梗塞・心臓麻痺→死という図式を作り上げていた。そして、最初の段階「否認」をうろついているわけだ。

しかし、そこから先へは進まない。私の場合、ごく具体的な問題で悩む。

「もし明日の朝、心筋梗塞で死ぬとして、あーあ、このチョコレート昨日のうちに食べておくんだった、なんて悔しいじゃない?」と子どもたちに言う。クリスマスにパヴェルがドイツから送ってくれたチョコレートを、子どもたちと私でチマチマ食べていたのだ。

「じゃあ、今日食べれば?」と簡単に答えを出してくれる次男。

「そうよね。今日食べればいいのよ」と私。「でも、明日死ななかったら、明日食べる分がなくなって悲しいじゃない?」と踏ん切りがつかない。

そうだ。夫にうちのファイナンス関係のファイルを説明して、私のたんすの中身ももっとちゃんとして、日本への連絡についてもあらかじめ決めておかねば。領事館に死亡届を出すのだろうか。パソコンのパスワードはどうする?

無職の私が突然死んでも、たいした影響はないのだが、その日を想像するとあれこれやるべきことを思いつく。チョコレートどころではないのである。

しかし、目の前にあるのはチョコレートなので、とりあえず死ぬ間際に後悔しないように食べた。


          *


心臓エコーはいつものクリニックの個室で行われた。

技術者は東欧なまりのある若い女性で、ほとんどしゃべらずに、薄暗い部屋で黙々とプローブ(超音波発信機)を動かす。たまに、「息を深く吸って、止めて」とか「体をこちらに向けて」とか、指示する。

ソノグラムは産婦人科でもやったので要領はわかっていたが、モニターに映る心臓を見たのは初めてだった。

これが私の心臓かと思った。50年も毎日休まず働いてきたんだなあと感慨にふけるが、あと30年、40年ともたせねばならない。

目を凝らして画像を見ても、なんとなく部屋が分かれているのがわかるだけだ。技術者はある程度見当がつくのだろうが、診断しない。データを集めるだけで、あとは医者が読む。

心臓エコーは30分くらいで終わった。次の予約は取らずに、まず結果だけ電話で教えてくださいと受付で頼んだ。


          *


ナースから電話がかかってきたのは1週間後だった。

「ドクターBのナースです。先日の心臓エコーですが、mitral valve prolapseでした。軽症なので、今は何もする必要がないとのことです。」

こんな病名は初耳なので、ぜんぶスペリングを言ってもらった。わからなければ聞く。一時の恥なんて思わない。ただ単に聞く。

あとで調べたら、日本語では僧帽弁逸脱症だった。漢字のインパクトは強い。

電話を切ると、夫が「今のはドクター? ぼくもその症状が出るよ」と自室から叫んだ。そうなの? じゃあどうして私がEKG異常で心臓エコーをやると言ったときに、何も言わなかったのよ。20年以上も結婚しているのに、初耳だった。

メルクマニュアル医学百科によると、

「僧帽弁逸脱とは、左心室が収縮するたびに弁尖が左心房内に突き出る障害で、心房内へ少量の血液が漏出(逆流)することもあります。僧帽弁逸脱は人口の約2~5%にみられます。重度の心臓障害を起こすことはまれです。」
「僧帽弁逸脱はほとんど症状がありません。」
「僧帽弁逸脱では、治療が必要になることはほとんどありません。」

他のサイトでは、無症状で病気とはいえないわずかな異常から、重症で要手術のものまであらゆる病態が含まれると書いてあった。健常者の集団でも、検査すれば必ず数パーセントに見つかるほど、よくあることらしい。

私の場合は、おそらくなんでもない。ほっとしたが、このせいで生命保険や健康保険への加入を却下される可能性はあるだろうか。アメリカにいると、病気よりそっちが気になる。

それにしても、確かに左胸や左肩が痛かったのはどういうわけだろう。その後も、ちょくちょくchest painを感じる日がある。そんな症状はないはずなのに、自分で暗示をかけているのだろうか。

ちなみに、心臓エコーの費用は635ドル。うち、保険会社が認めたのは482ドル。私の自己負担分は27ドルだった。




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