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消えた隣人

2012.02.02 (木)


去年の12月初め、お向かいS家のドライブウェイにdumpster あるいはcartingと呼ばれる鉄製の箱があるのが見えた。

トラックが1台すっぽり入るくらいの、いわば巨大ゴミ箱。廃棄業者に届けてもらい、あらゆるゴミをその箱に目いっぱい投げ込む。あとは、業者がクレーンでトレーラーに乗せて持ち去ってくれる。

家を売りに出す前のお決まりの風景なので、不動産会社の看板が出ていなくても、あの箱がドライブウェイにあると、もうすぐ売るんだなとわかる。

うちの夫は物が捨てられない。クロゼットには絶対二度と着ない服が山とあり、地下室には40年前の雑誌やガラクタが山積みになっている。ご近所であの箱を見かけるたびに、「夫の持ち物をあの中に全部ぶちまけたら、どれほどすっきりするだろう」と恨めしく思った。


          *


お向かいの娘さんたちはすでに成人して家を出ており、ご主人は地元出身なのにフロリダに移住したがっていた。

コロニアル・スタイルの家はたびたび増改築をして、庭もプロが手を入れた。フロントポーチあり、デックあり、スイングセットあり。白いフェンスに囲まれてタイルを敷き詰めた広いプールに、凝ったデザインの白いgazebo(あずまや)まである。

田舎なのでどこも敷地は広いが、お向かいはその中でも見晴らしがよくて、平らなバックヤードがあり、ご近所でも1、2を争う好条件だと私は踏んでいた。

そうして、家を売りに出したとたん、リーマン・ブラザーズが破綻した。

最初の売値はかなり強気だった。ところが、同じ通りのcul-de-sac(行き止まり)にあるC家もまもなく売りに出た。C家の売値はB家よりさらに数十万ドル上乗せしてあった。それに刺激されたのか、B家も値段を大幅に上げた。

しかし、時期が悪すぎた。しばらくしてお向かいからFor Saleの看板は取り外された。1年以上経って、再度売りに出したときは、最初の値段より下げていた。その後も、どんどん下がっていったが、3年以上経っても売れなかった。

ここはじっと我慢するしかないんだろうなあと思っていたときに、あの巨大な箱が出現した。

まだ捨てるものがあったのかと驚いた。かなり前に娘さんたちのベッドの売却広告も出ていて、相当片付けたはずだ。もともと家の中はきれいだったが、収納スペースが広いだけに物が多かったのか。

何日かして、巨大なゴミ箱は消えた。


          *


12月24日の朝、トレーラーのようなエンジン音が聞こえた。

森の向こうにある道路も近所の家も、落葉したあとは木々の間から見える。有名な引越し会社の大きなトレーラーが2台、お向かいの前に停まっていた。引越し業者らしい人たちが家の中から物を運び出し、トレーラーに積む。お向かいのご主人と奥さんの姿も現れた。

「まさか引越し? クリスマス・イブに?」と私は混乱した。

当初の3分の2以下の値段で売りに出していたのに、買い手が現れなかったのは周知の事実だった。私はご近所さんとはつかず離れずの付き合いをしているので、Sさん夫婦とも道で会わない限り、めったに話すこともなかった。だから、引越しの予定は知らなかった。

出て行って、「いよいよ引越しされるんですか」と聞こうかとも思ったが、忙しいときに迷惑だろうと思いとどまり、窓からときおり眺めるだけにした。

まだ長男の大学願書にかかりっきりで、クリスマスディナーの準備もあってバタバタしているうちに、お向かいのことは忘れてしまった。


          *


その後、Sさん夫婦の姿は見ない。

フロリダに引っ越したんだろうか。情報通の奥さんたちにも会わないので、事情はわからない。

よく考えると、S家は季節の旗や花などをいつも郵便受けに飾っていたのに、今年はお向かいのドアにはクリスマス・リースすらなかった。もう前々から年内に家を出るつもりだったのだろう。

しかし、留守宅にはなっていない。

コントラクターらしきバンが時折来るし、S夫婦のものでない乗用車がガレージの外に停めてあったりする。先日はゴミ箱が出してあった。今年初めての積雪の翌日には、知らないおじさん(不動産エージェント?)が雪かきをしていた。

管理人を雇ったのかもしれない。誰も住んでいない空っぽの家よりも、家具があって誰かが生活している家のほうが売れると聞いたことがある。しかし、あの引越しトレーラー2台分の荷物は持ち出したはずで、家の中はほとんど何もないんじゃないだろうか。

謎は深まるばかりである。


           *


S家のご主人は心臓が悪くなって40歳ごろにリタイアし、障害年金で暮らしていた。奥さんは下の子がエレメンタリー・スクールを卒業すると働きに出た。ご主人はハーレー・デビッドソンを買い、しょっちゅう家のリモデル業者が入って、「よくあんなお金があるなあ」と夫は不思議がっていた。

家の値段が下がっているのに、不動産税も学校税も下がらない(リッチなオレンジ・カウンティに住む義母が、うちの税額を聞いても信じなかったくらい異様に高い)。S家の奥さんは「ほんとに税金が高いわ。うちはまだ家のローンだってかなりあるのよ」と嘆いていた。

「うちもそうですよ」と慰めてみたものの、うちのローンはあと2年足らずで完済する。利率が低くなるようにリファイナンスを2回して、毎月の支払い以外にもちょくちょくかなりの金額を元本の返済に充てた。そのために、まともなリモデルは一度もしていない。たいした家具も設備もない。お向かいと逆である。家を売りに出す前に、お金と時間をかけて修繕しなくてはならない。

どっちを先にするかの違いだけかもしれない。

しかし、このへんの標準である4 Bedroom, 2.5 Bathに加えて、地下室も居住スペースになっているS家は、夫婦2人には広すぎる。たしかに素晴らしい家と土地だが、彼らにここに住まなくてはならない理由はない。ご主人は大学生の次女のいるフロリダに行きたがっていた。

家さえ売れたら。

夜逃げという感じではなかった。差し押さえの様子もない。

仮にフロリダにアパートを借りるとしても、お向かいの家のローンと税金はそのまま支払わねばならない。2軒分の支払いは厳しいだろう。銀行が買い上げたのだろうか。For Saleの看板は外していない。カソリックの夫婦がクリスマス・イブに引っ越すのも釈然としないなあと、私はもやもやしている。

ところで、もう1軒のC家もその後値段を下げ続けたが、やはり売れない。

昨日、不動産会社から大きな葉書が届いた。C家の概観を写したもので、裏には「値下げしました。ご近所で家を買いたいと思っている方、あるいはそういう知り合いがいる方はぜひご一報ください」という宣伝だった。

お向かいには、もはや人が生活している気配はない。


<今日の英語>  

I am going through the same exact thing.
私もまるっきり同じことを経験しています。


医療相談サイトで、まさに同じ悩みを抱えている人のコメントより。exact same thingとも言う。




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