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初フィラデルフィア 後編

2011.08.11 (木)


前編の続き)

電車の中は空調が強いだろうと、カーディガンを持参したが、20分もするとサンダルの足が冷たくなり、首のへんもゾクゾクしてきた。大判のスカーフをひざにかけ、汗拭きのためにかばんに入れた麻の手ぬぐいを首に巻く。

体裁なんかかまっていられない。どうせ誰も見ていないし、気にしない。

しかし、見渡しても震えているのは私だけ。この程度の皮下脂肪は、断熱材には足らないらしい。私はもう冷え性ではないが、座席にじっとしていると体の芯まで冷え切ってきた。この電車には、節電とか快適性という観念はない。

ニューヨークとフィラデルフィアはそれでもまだ近い。ボストンに行くときはフリースをかばんに入れようと真剣に考える。

窓に映る景色はどこも同じ。趣きも何も感じない。

ニューヨークからニュージャージーそしてペンシルバニアへの旅だが、同じ東海岸だし、電車が通るところは似たような地域なのかもしれない。

当初の予定を大幅に過ぎて、やっとフィラデルフィア、正確には30th Street Stationに到着。

なぜフィラデルフィア・ステーションと呼ばないんだろう。ニューヨークにペンシルバニア・ステーションがあるのもややこしい。

そういえば、旧ソ連の長距離列車駅名もそんな感じだとどこかで読んだ。目的地が駅名になっているらしい。モスクワにはモスクワ駅はなく、その代わり、レニングラード駅やらベラルーシ駅などがある。そして、レニングラード(サンクトペテルブルク)にはモスクワ駅がある。

どういう発想でこんな仕組みにしたのだろうか。でも、一つの駅からは一つの目的地に向かう電車しかないというのは、案外わかりやすいかもしれない。行きたいところの駅名を探せばいいのだ(たぶん)。それにしては、ペンシルバニア行きが出るニューヨークにあるペン・ステーションの複雑さは何だったのか。


         *


私にとって、フィラデルフィアはすなわち二つの映画である。

一つはハリソン・フォードのWitnessに出てくる駅のシーン。あの木のベンチは見覚えがある。映画ではなくて、私は実物を見たことがある。子どもが生まれるずっと前に、来たことがある気がする。細かいことは記憶にないが、「これがあのベンチか」と思ったことだけ覚えている。

もう一つはロッキーが生卵を飲んでから早朝のランニングに出て、広い階段を駆け上るシーン。市庁舎か何かかと思ったが、調べたらフィラデルフィア美術館だった。

旅行が上手な人は、大学見学のついでにあちこちを見て回るのだろうが、私も長男も、そんな器用な真似はできない。

アムトラックを降りると、見学開始時間まであと30分。

長男が駅にあるフードコートを見つけた。「こんなところに来てまでチャイニーズ・ビュッフェはないじゃない」と抵抗したが、「でも、早いよ」と長男に説得された。

大急ぎで食べる。おいしくない。本当は1時間のゆったりしたランチになるはずが、なんでこんなことに?

タクシー乗り場はすぐわかった。この駅は本当にこじんまりしている。しかも、イメージとしては真四角。おそらく、迷うほうが難しい。

中近東らしき風貌の運転手に、大学名とホールの呼び名を告げるが、首をひねる。こんなこともあろうかと、住所を書きとめておいてよかった。道路の名前を言うと、やっと頷いた。これでタクシーの運転手が勤まるの?

ネットで見たのと同じ建物が見えた。8ドル30セント。10ドル札を渡して降りる。

あと2分。

ほんの数人しか来ていない。夏休み中の見学はこんなものだ。

ともかく間に合って、やっと私も長男も一息ついた。


        *


まず女学生が来て、学生寮を案内してくれた。私は町のど真ん中にある大学見学はこれが始めてである。長男は先月、夫とマンハッタンにある大学を見てきた。

天井が非常に高い。女学生に尋ねると、どの部屋もそうだと言う。「この建物はかなり前に立てられたんですか」と聞いたら、「1880年です。もちろん設備は新しいし、ケーブルもあります。」

私は高い天井が好きなのだ。開放感がある。暖房費がかかりそうだが、古い建物は壁もしっかりしていた。新建材はその点かなわない。

ヨーロッパにくらべたら、たかだか130年前の建築なんか新品みたいなもんだろうが、私は妙に感心した。

次は、男子学生が2人来て、教室を案内するという。専攻で分かれると、長男は一人だけだった。プライベート・ツアーである。

その校舎は、集合場所のホールから道路を渡ってすぐだった。

車が行きかい、広い歩道もあったが、マンハッタンとは比べようもない。空気もずっとマシだ。混雑というほどの人ごみはない。フィラデルフィアは思ったよりスケールが小さい。歩く人のスピードも遅い。

案外、のんびりやの長男に合うかもしれない。

ツアーはあっという間に終わった。あとになって、少し離れたところにある別のビルにも私たちを案内すべきだったとわかった。まあどこも同じようなものだろう。

ホールに戻ると、今度は初老の女性が現れた。アドミッションのアシスタント・ディレクター。

すでに長男ともう一人の男の子しか残っておらず、椅子を丸く並べての、これもカジュアルな説明会になった。「なんでも聞いてくださいな」とにこやかに言う。

女性は、風貌も話し方も小森和子の白人版といった感じで、「オバチャマはね」と映画の話でも始めそうな空想が消えずに困った。

もう一人の男の子はフィラデルフィアに住んでいる。私たちが数時間かけてたどりついたことを知って目を丸くした。

帰りのアムトラックまでかなり時間が余った。オバチャマに最寄り駅までの道順を教えてもらって、長男と歩くことにした。


          *


これがフィラデルフィアか。

都市といえば東京とマンハッタンが基準になっている私には、一地方都市くらいにしか見えなかった。でも印象は悪くない。もっと観光客の集まる地区はまた違うかもしれない。

郊外のモールをそっくり町に持ち込んだような建物に入った。

「ジェシカがフィリー・チーズ・ステーキを食べて来いって」とガールフレンドの指示に忠実に従う長男。私はお寿司を食べたが、NYより2割安く、3割うまかった。

物価の違いをひしひしと感じる。

そういえば、大学の寮は1年生だけで、2年目からはほとんどが民間のアパートに暮らすと言っていた。「ニューヨークじゃありませんから、割安のところがすぐ見つかりますよ」と案内役の学生たちもオバチャマも受けあった。


        *


またニューヨークで8ブロックも歩くのはごめんなので、次男に地下鉄のルートを調べさせようと自宅に電話すると、夫が出た。

「まだフィラデルフィアなんだけど。ペン・ステーションからグランド・セントラルに戻るにはどうすればいいの?」

「シャトルだよ」と夫。

やっぱり夫は誤解したままだ。

「シャトルは42NDまでしか行かないの!今朝は8ブロックも歩いて、結局アムトラックに乗り遅れたのよ!」

「あれ、そうだったっけ。シャトルはペン・ステーションまで行くと思ったけど」と無責任にのたまう。

「そうじゃないってば。私の記憶だと、1とか2とか3とかそういう番号の地下鉄が通ってるはずなのよ。それとも7だったか」 我ながら、まったく当てにならない。

「そうだ、7だ。それでグランド・セントラルまで来られるから」と夫。

私を8ブロック歩かせたことへの罪悪感はないらしい。

帰りのアムトラックに遅れると後がないので、地下鉄の駅に向かった。平日の昼間でここも閑散としている。このあたりはフィラデルフィアでも犯罪率の低さで1,2を争うくらい安全な地域だと女子学生から聞いた。

切符の自動販売機が見当たらない。窓口に行くと、黒人のお兄さんが切符を売ってくれた。乗り場を聞くと、お兄さんは親切丁寧に教えてくれた。話し方もゆっくりしている。ペン・ステーションのアムトラック駅員とは雲泥の差であった。

ますますフィラデルフィアに好感を持つ。


        *


30th Street Stationに戻り、木のベンチでアムトラックの出発時間までをすごす。

見れば見るほど、こじんまりした駅だ。中央の掲示板があって、パネルがパタパタと音を立てながら行き先と時間やホームの番号をめくっていく。電光掲示板ではない。パタパタが聞こえるくらい、駅の中は静かだった。

帰りの車内はもっと寒かった。冷蔵庫の中を冷気が強で吹き付ける。逃げ場はない。

そうしてペン・ステーションに着き、今度こそ地下鉄とシャトルを乗り継ぐぞと見渡すが、7という地下鉄はないのだ。今日何度目かのパニックに陥る。やっぱり次男にネットで調べさせればよかった、夫の言うことを信じた私が馬鹿だったと悔やむ。

幸い、路線図はあったので、長男と検討し、3に乗ることにした。A、B、Cという路線案内もあり、混乱に拍車をかける。ペン・ステーション構内をさらに歩き回った。

今日のメインは大学見学か、それとも駅構内の巡回か。

なんとか目星をつけて、地下鉄に乗り、シャトルに乗り継いでようやくグランド・セントラルに戻った。

中途半端な時間だったので、また食べ物を買い、家に向かう電車の出発時間を待った。

やっぱり慣れている駅はいいなあと思っていたら、気が緩んだ私はまたしても迷子になってしまった。

いや、迷子というのは正しくない。食べている長男を残して、トイレに行き、なにかよさそうな食べ物はないかと見回っているうちに、長男が座っていたテーブルが見つからなくなった。

だんだん出発の時間が迫る。もしかして長男は私を探しているのかもしれない。携帯に電話をするが出ない。2度目か3度目かの周遊後、ばったり長男のところへ舞い戻った。

あちらも焦って私の携帯にかけていたらしい。

「おかあさん、もー、どこ行ってたの。」

「このへん見に来たんだけど、いないんだもん。どこかに行ったかと思って」

「ぼくずっとここにいたよ。迷子になったの?」と長男。

しかし問答している暇はない。私だって、どうしてぐるぐる歩き回るはめになったのか、さっぱりわからない。あわてて乗り場へ向かう。電車は3分後にグランド・セントラルを離れた。

「明日は絶対にどこにも行かないわよ」と宣言する。



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 |  生活  |  コメント(2)

Comment

すごく久しぶりに来てみたら更新されていてうれしく思いました。

ボストンに行かれるんですね。ダウンタウンの道は一方通行だらけ、しかも、ぐちゃぐちゃなので運転は全くお勧めできません。
元ボストン在住 |  2011.08.11(木) 12:30 | URL |  【編集】

長い休暇からお帰りなさい!待ちどうしく思ってました。貴女の打ち明け話まるで小説を読んでるみたいです。それにしてもアメリカの冷房はあんなに温度が低いのか?東洋人の私たちの体温が低過ぎるのかしら?飛行場でもほんと!震えちゃいますね!
miniyon |  2011.08.12(金) 11:37 | URL |  【編集】

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