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4年ぶりのマンハッタン その3

2011.03.27 (日)



(前回その2の続き)

帰りも長旅だが、行きに比べたらずいぶんリラックスできる。

古本を少し読み、うとうとした。原発はどうなったんだろう。次男に電話したとき、聞けばよかった。

足の裏がジンジンして、すねがズキズキする。今日の歩行距離は1か月分以上だ。疲れてはいるが、パスポートが更新できて、本屋にも行って、おいしそうなパンも買えて、ちょっとした達成感がある。

ふつうはもっと精力的にシティを見て回るのだろうが、ふだん出歩かない私にとってこれ以上は無理だ。なによりも方向音痴による無駄歩きが多い。

なぜか帰りの電車は行きよりも速く感じる。だんだんお客が降りていき、窓の外に木と空間が増えていく。

長いこと電車に揺られて、やっとうちの最寄り駅に着いた。

プラットフォームに降りたとたん、空気のおいしさに驚いた。そして、何度も深呼吸した。

うちの町の空気がどれだけきれいなのか、ふだんは当たり前すぎて気がつかない。

シティだけではなくて、たとえば成田やロサンゼルスから戻ったときもそうだ。車でガレージまで乗り入れるので、その日はわからなくても、翌日ゴミを出しに行ったり、郵便を取りに出たりすると、てきめんにわかる。

シティはお金さえ出せばなんでも手に入るが、この新鮮な空気と静寂だけは買えないぞと思う。やっぱり田舎がいい。いっしょに電車を降りた数人は、歩くのも話すのも実にゆっくりしている。

私はシティには住めない。


             *


荷物が増えたので、駅の広い駐車場がいつもの10倍くらい広く感じる。

車の運転席に座ると、安心感からか、どっと疲れが出た。

やっと帰宅。夫も子どもたちも台所にいた。

「はい、これチャイニーズ。みてみて、これはクロワッサンとスコーン。明日の朝、食べるの。おかあさんのだからね。手を出さないように」と私。

「シティは楽しかった?」と夫。

「ぼくの漫画、あった?」と長男。

「パスポートできた? ぼくが間違えてサインしたとこ、どうなった?」と次男。ずっと心配していたらしい。長男より次男のほうが細かいことを気にする。

私がシティから帰ってまず最初にやるのは、シャワー。

すごく汚れた気がする。実際、あの排気ガスと人込みできれいでいられるわけがない。田舎で隔離された生活をしている身には、都会のばい菌に対する抵抗力が足らないかもしれない。

話はシャワーが終わってからだ。

シャワーに入って、やっと生き返る。被災地で何日もシャワーに入れない人たちのことが頭をよぎる。

うちの近所はよく停電する。1年に必ず数回はある。一番長かったのは、丸々3日。まだ寒いときだったと思う。子どもたちは就学前だった。

お湯はもちろん、水も流れない。でも、貯めてあった水で体を拭くことはできた。下着を変えることもできた。4日目になっても回復しなかったらホテルにいこうと夫と話した矢先に、電気がついた。

たった3日で、しかも自分の家にいてもあれだけ不快だったのだ。避難所での苦痛はいかほどかと思う。


             *


シャワーを出て、台所へ戻った。

子どもたちと夫はチャイニーズを食べていた。おいしいという。そりゃそうでしょう。私がわざわざシティから運んできたのだ。

「それで、どこへ行ったんだね?」と夫。

「どこって、領事館と紀伊国屋とブックオフだけ。それがどこに行くにも迷子になったのよ」と私。

子どもたちは私が方向音痴なのを知っている。夫も知っている。それなのに、

「迷子?! いったいどうやってシティで迷子になれるんだ?! ストリートとアヴェニューになってるじゃないか! 信じられん!」と大げさに言う。

夫はからかい半分なのだが、でも本気で信じられないらしい。夫はマンハッタンに住んでいたことがある。

「私だってどうやって迷子になったのか、わからないの。地図も持って行ったし、4年ぶりだったけど、ミッドタウンに行ったのは初めてじゃないし。でも、迷子になるのよ、私は。大変だったわ。もうクタクタ」

どうやって『ミッドタウンで』迷子になれるんだ? ストリートには番号がついてるじゃないか」と呆れる夫。

「でしょ? でも迷子になるのよ、私は。特に何とか番のウェスト何とかストリートっていうのは、聞いただけでダメだわ。」

「ちょっと待て。ウェストとイーストを分けるアヴェニューはどこだ?」と夫は私に問題を出す。

「フィフスでしょ。それくらい知ってるわよ。」

「ストリートの番号が大きくなったら、どっちへ向かってる?」

「北でしょ。それも知ってます。」

それがわかっていて、どうして迷子になるんだ?

私だってその理由が知りたい。

「じゃあ、95thストリートに立っているとする。いや、45thにしよう」と夫は設定を変えた。私がミッドタウンしか知らないのを考えて、そんなに北ではイメージすらできないことを夫は知っている。

さすがに20年以上も私と暮らしているだけのことはある。

「きみは45thストリートに立っている。アヴェニューはxxだ。右手に水、つまり川が見えたら、きみはどっちの方角を向いている?」(たぶんこういう質問だったと思う。方向に関する質問は日本語でも苦手なので、英語の問題ではない)。

「水なんかどこに立っても見えないじゃない。だいたい道路の真ん中にどうやって立つのよ?」 

疲れているのに、くだらない問題を出されて私は機嫌が悪くなる。

そばで聞いていた子どもたちが、同情に満ちた目で私を見る。「おかあさん、そういう質問じゃないよ」

「やっぱりGPSがいるわ。そうだ、パスポートができたら子どもたちもいっしょに来なくちゃいけないの。あんたたちが案内役になるのよ。お母さん、ぜっったいに迷子になるから。」

「ほー、それできみは間抜けな子どもたちの言う通りに歩くのかね」と夫。

「私の勘より子どもたちのほうがまともじゃない? 地理にかぎって言えば。でも、一応歩き始める前にいくつか質問して確認するわよ」

夫も子どもたちも笑う。私は自分がこれだけ迷子になるくせに、子どもや夫の道案内を素直に受け入れられないのである。


           *


足も頭もクタクタになった。シティに住む人は歩くだけ健康なんだろう。そういえば、田舎で見るような肥満は見なかった。

ものすごい高いハイヒールで闊歩している女性もいた。ああいう人は、迷子にならない自信があるんだろう。

グランドセントラル駅のトイレがきれいになっていた。ひっきりなしに水が流れ、ハンドドライヤーの轟音が響く。1日何千人もが利用するのだろう。

この電気は、インディアンポイント原発から届くのかなとふと考える。駅の照明や電光掲示板、エスカレーターに自動販売機。停電したらどうなるんだろう。

東北大震災以来、いろんなことをこれまでとは違う視点で見る自分に気づく。

翌朝食べたクロワッサンもスコーンもおいしかった。どちらも半分に切っておいたのだが、何を思ったか夫がアーモンド・クロワッサンの残りを食べてしまった。

私は「なんで食べたのよ!私のだって言ったでしょ。これはうちの近所じゃ買えないのよ。」と夫を責めた。

「さっき何を食べたらいいって聞いたら、丸いモノがあるからそれを食べろって言っていたじゃないか。」

「あれはフラットブレッドのことでしょ。なんでクロワッサンの半分が丸いのよ」と許せない私。子供たちにも訴えた。彼らは言いつけを守って、手を出さなかったのに。うちはみんな甘党だが、夫はいちばんひどい。

食べ物の恨みはこわいって、英語でなんて言うの? お母さんが言いたいことはわかるでしょ。

「そんなにシティの食べ物がおいしいなら、また行って買って来ればいいじゃないか」と夫。

それが簡単にできないから、貴重なんでしょ。あなたこそ迷子にならないんだから、自分でシティに行けばいいじゃない。

こんなくだらない、かつ醜い言い合いができるなんて、なんて平和なんだろうと頭のすみっこで思う。

しかし、夫に無断で食べられたクロワッサン(夫は sweet buns だと言い張る。そういう人には、近所のスーパーで売っているデニッシュでいいのだ)、かえすがえすも悔しい。今度は、袋に私の名前と "Do not eat" (食べるな)を書いておかねばならない。




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 |  わたし  |  コメント(8)

Comment

北米の北に住んでいます。東北関東大震災から3日後我家のセントラルヒーティング用のファーネスが作動しなくなりました.もう時効だとかで新しいのと取り替えなくてはいけなかった。

10日間セントラルヒーティングが無く携帯用のヒーターを3個ほどあちこちの部屋に動かしながら暖を取りましたが、これまでとは格段に違う部屋の寒さ。手足は冷える体は硬くなると普段は愚痴も出るものだけれど、今回は災害者の方たちを思うとこんなのは苦痛の苦ににも引っかからないと思いました。こちらは10日間という期限がくれば元どうりになること判っているし、寒くてもお風呂に入って体を暖める事が出来る。災害者の方たちがお風呂に入って体を暖めるかとが出来たらどんなに良いかと。人間体が温まると心にもゆとりが出来、明日への活力も沸いてくると思います。

これを書いている今も寒い体育間などに避難されいる方のことを思うと涙が出て止まりません。
 |  2011.03.27(日) 01:49 | URL |  【編集】

同じ文章が重複して掲載されていますが、消し忘れでしょうか?それとも意図的に?
ゲスト |  2011.03.27(日) 02:11 | URL |  【編集】

重複

自分ではどの文章が重複しているのか、見つけられません。もしそうであれば修正しますので、お手数ですが、重複箇所を教えてくれませんか。
kometto3 |  2011.03.27(日) 02:22 | URL |  【編集】

多分、『夫は以前アップタウンに住んでいたことがある』のくだりですよ。
すぐ次に同じような文章があります。
ゲスト |  2011.03.27(日) 04:01 | URL |  【編集】

私も同じかも

街の様子を熟知していないのは

同じです

一度行っただけで、覚えてしまう方が

いますが、羨望のまなざしです(笑)


マンハッタンは寒いのでしょうか

東京は3月下旬なのに、冷え込みは

結構厳しいものがあります
ponsun |  2011.03.27(日) 05:55 | URL |  【編集】

修正しました

ご指摘ありがとうございます。ぜんぜん気がつきませんでした。

さきほど修正しました(ついでに、アップタウンかどうか自信がなくなってきたので、マンハッタンに変えました)。

> 多分、『夫は以前アップタウンに住んでいたことがある』のくだりですよ。
> すぐ次に同じような文章があります。
kometto3 |  2011.03.27(日) 06:34 | URL |  【編集】

無題

マンハッタンまで電車で行けるっていいですね。私はNJですが車で2時間半かかります。田舎で退屈しているので月に3回くらい行くのですが、だいたい行くところ決まっています。紀伊国屋とbookoffは最高ですね!20年経ったらずっと家に居るようになるのかなあ。いやだなあ。
へいきん |  2011.03.27(日) 14:21 | URL |  【編集】

どういったジャンルの本がお好きで、
好きな作家等いますか?
kinako |  2011.03.29(火) 03:48 | URL |  【編集】

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