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「難しい話」

2011.02.07 (月)



2週間前のこと。

子どもたちは階下でパソコンをしていた。夫が私の部屋に来てドアを閉め、「難しい話をしなくちゃならん」と言った。

職場復帰の話か。それとも、G氏のスタートアップがついに行き詰ったか。夫はG氏と大声で口論することも増えたし、もしかして喧嘩別れでもしたか。

夫はG氏の会社が置かれた立場について話し始め、一般的な費用対効果の解説をした。夫は話が長い。私は半分考え事をしながら聞いていた。

「というわけで、費用を抑える必要がある。じゃあ、どうするか。」

「インターンにやらせるか、アウトソースするかでしょうね。」

「インターンはだめだな。この場合はアウトソースしかない。問題は場所だ。」

「中国とかインドとか?」

「Gが取り扱っているデータは、そういう国の基準ではできない。物が物だから、なるべくアメリカというか、西洋的な部分が重要だ。」

なんだか遠回りの話ばかりで私はイライラしてきた。難しい話って何よ。

「ルーマニアだよ。きみの言いたいことはわかってる。だから難しい話だと前置きしたんだ。」

私はもう答えない。夫に勝手に続けさせた。つまりこういう話だった。


            *


G氏はデータのコーディングを安くやってくれる人を探していた。いくら安くても、中国やインドその他アジア諸国には任せられない。そうなると、もう東ヨーロッパしかない(と夫は決めつけた)。夫はルーマニア女をG氏に紹介し、彼女にコーディングをさせた。

約束した報酬は2000ドル。ただし、契約先がいつ支払うかは未定である。政府関係機関なので、予算配分や各局での手続きに手間取っている。

ルーマニア女はそれを承知の上で仕事を引き受け、予定よりも早くコーディング作業を終えた。

「ところが、彼女が交通事故にあって、車が大破したんだよ。」

ほら、出た。最新の言い訳だ。

これまで、体育の授業中に歯を折っただの、犬が死にそうだの、火事や強盗にあっただの、B級映画でもここまでご都合よくトラブルが起きないだろうという話を聞かされた。それも、男の学生だったり、DVを受けている女だったり、いったい何人が実在なのかわからない。

「まあ、それは災難でしたわね。」と私は抑揚をつけずに言った。

「うん、車がないと仕事に行けないんだそうだ。」

「バスに乗るとか、友達に乗せてもらうとか、工夫していただきたいわね。」

「いや、それができないらしい。前払いという形になるんだが、$500送ってあげたいんだ。言っておくけど、これはGが彼女に約束した2000ドルから出る。だから、最終的にはきみに500ドル返す。差し引きゼロだよ。」

「G氏が2000ドル払うのを待つべきじゃないんですか。うちのキャッシュフローを考えたら、500ドルなんて出せません。」

こんなこともあろうかと、私は当座には250ドルくらいしか入れてない。オンラインの銀行口座にはもっとあるが、夫は知らない。投資口座にすぐ現金化できるファンドがあり、それをちょくちょく換金する。夫には、ファンドを売って銀行へ動かすのに最低3日はかかると洗脳してある。

「なんとかならないかな。彼女には1月に払うと言ってあるんだ。それに、これはG氏の懐から出るのと同じだよ。いわば立替だ。2000ドルが来たら、うちに500ドルくれるんだから。」

「じゃあ最初からG氏が出せば?」

「彼にはできない。自分の金を会社につぎ込んで、彼の奥さんがどれくらい怒っているか、言っただろう?」


            *


私はG氏は信用できると思っている。どうやって夫がルーマニア女をG氏に売り込んだのかはわからない。実際にコーディングをしたのは、ルーマニア女の仲間かもしれない。

「私は名前も知らない人に送金したくないのよ。あなたはその人のファースト・ネームすら私に教えてないでしょう。」

「きみが何をするかわかったもんじゃないからね。」

私は笑った。夫は私がタイ女の居所を突き止め、ホテルに電話したことで、私の探偵能力を買いかぶっているのだ。

「ちょっと待って。私はルーマニアに知り合いはないし、言葉も知らない。ルーマニア人の名前だけわかって、何をどうするって言うのよ。」

「とにかく$500を都合してくれ。ビジネスの費用だと思って。ぼくが返済を約束するメールをきみに出すよ。ファーストネームを教える。」

「あなたじゃなくて、G氏から私にメールしてもらって。彼に説明してもらいたいの。ルーマニア人のフルネームもね。」

「わかった。じゃあ、Gと話すよ。」

夫は自室へ戻り、すぐにスカイプを始めたらしかった。やけに声が大きいなと思ったら、ドアが1センチくらい開いていた。慌てていて、閉め忘れたのだろう。夫はヘッドフォンをして、スピーカフォンでG氏と話していた。


             *


G氏はもっぱら聞き役だったが、夫に異論を挟んだ。

「いや、それは100%真実じゃない。1月に払うとは約束してないよ。」

「そうだけど、彼女は予定より早く仕事を片付けた。車がなくては仕事にいけないんだ。気の毒だよ。」

「わかるよ。でも、悪いけど、ちょっとそういうことに巻き込まれるのは…。事実でないことは書けない。ともかく支払いがいつになるかはわからないという条件でやってもらったんだし…。ごめん。」

「そうだな。いいよ。どうにかするよ。」

夫が電話を切る気配がしたので、私は慌てて階下へ行った。子どもたちとどうでもいい話をしながら考えた。

ルーマニア人がG氏のビジネスを手伝ったことは本当らしい。1月に支払うことと交通事故の件はおそらく夫の作り話だ。忙しいG氏を煩わせるまでもないか。それに名前を聞いたって、それが本名である保証はない。夫の頼みをしりぞけたG氏に好感を持った。メールなんて何の拘束力もないのに。でも、これで私と夫の間がおかしくなったら迷惑なのだろう。夫は私たちのことをどれくらいG氏に話しているのか、私は知らない。

夫も台所へ下りて来た。

「G氏じゃなくて、あなたが私にメールで約束してくれてもいいわよ。$500は来週ATMから引き出せるようにするから。」 もちろん立ち聞きしたことは言わない。

「いや、ちょっと時間をくれ」と、なぜか夫はこだわる。



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