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義母からの電話

2010.12.07 (火)



数ヶ月ぶりにカリフォルニアの義母リンから電話があった。

地理的に離れているせいもあるが、めんどくさがりの夫も私もほとんど親戚付き合いをしない。何か用事があるときに電話するくらいで、私は楽をしている。

しかし、夫には「自分のお父さんでしょ。もっと電話しなさいよ。」とせっつく。義父は私にとてもよくしてくれるが、やはり自分の息子と話すのが一番だと思うのだ。

子どもたちが小さい頃は、それでも1年に1回は遊びに行ったり(たまには他の親類と合流した)、あちらから来たり、私が子供たちの写真を送ったりした。

行けば行ったでどうにか過ごせるのだが(南カリフォルニアの食べものはおいしい)、どっと疲れた。昼寝はするわ、ゲストルームに閉じこもって本を読みふけるわで、マイペースを貫いてもだめだった。しかも、義父母はとても優しく、私の好きにさせてくれたのに。

私は他人といっしょに暮らせない。よくまあ20年以上も夫と生活してきたものだ。

夫の生母は30年以上前に病死したので、リンは夫の父の後妻である。

あっけらかんとした人だし、夫と血のつながりがない分だけ気楽にやれる。お互いファースト・ネームで呼び合い、姑という感覚はまったくない。しかし、しょっちゅう電話でどうでもいいことをおしゃべりする仲にはならなかった。


        *


アリゾナには夫の弟一家が住んでいる。こちらともめったに交流がない。

義父の家で会えば、子どもたちは仲良く、私は義弟や彼の奥さんと話をする。夫と弟は、子ども時代からのライバル意識から抜け出せず、すぐ言い合いになる。ふだんから電話もメールもしない。でも、なぜか義弟は夫の誕生日に必ず本を贈ってくる。夫は義弟の誕生日に電話をする。

義父母からは子どもたちへ誕生日プレゼントやクリスマス・プレゼントが届く。そうすると、こちらからお礼の電話をする。

ところが、2年前あたりから義父の聴力が急速に衰え始めた。

子どもたちには「グランパに聞こえるように、ゆっくり、大きな声で。」と言い聞かせるものの、結局夫が三者通話をして、叫ぶように言い直さないと伝わらない。それでも、わからないときがあるらしく、夫はイライラして、傍で聞いている私は気が気ではない。

義父は特に高音が聞こえないらしい。だから孫娘たちとの会話に一番苦労している。私はそれほど高い声ではないが、日本語なまりは聞き取りにくかろう。

夫あてにかかってくる電話を私が受ける。

kometto3 かね。元気にやってるかね。息子はいるかな。」 夫がいればすぐ代わるし、いなければ「あとでかけさせます」という。義父はどういうときでも、「そうかね。わかった。ありがとう。」と返事をする。

これは聞こえてないなとわかるが、私はやり過ごす。


          *


いろいろ持病もあるし、去年胆嚢の手術をしてさらに弱くなったのだが、しばらくして電話ではしっかりした力強い話し方に戻っていた。もともとが丈夫にできているのだ。

高齢の義父は気になりつつ、何週間もカリフォルニアに電話していなかった。

夫は感謝祭にも電話しなかった。あちらからもなかったが、ここ数年はリンの娘一家が住むユタ州でホリデーを過ごすことが増えていたので、今年もそうだったんだろうと思った。

「ハーイ、kometto3!みんな元気?感謝祭はどうだった?」と明るいリン。

「まあいつもどおりです。夫は薬が効いているみたいで、あいかわらず昼夜逆転ですけど、それは昔からのことですから。感謝祭はどこにも行かずに、うちでのんびりしてました。あなたたちはユタ州で?」

「ううん、今年はここにいたの。もう彼はそこまで行くのは無理だから。」とため息をついた。

パーク・シティにコンドミニアムを持っていて、年末年始にはそこで二人の娘たちといっしょに過ごしていたが、義父は山には行けないだろうという。じゃあ、二人だけでカリフォルニアに残るのだろうか。

「そんなに悪いんですか。」 義父は80を過ぎても飛行機や車で遠出していた。やはり去年の手術が堪えたのか。

「そうでもないの。でもね、オムツなのよ。あなたも知ってるでしょ。すごい臭いなの。」 

義父は5,6年前から膀胱のコントロールができなくなり、寝たきりではないが、オムツをつけている。2年前にカリフォルニアに遊びに行ったとき、見た目にはわからなかったし、義父はしっかりしていた。

でも、リンは「あなたたちがいるからよ。私だけだったら、オムツを替えないの。間に合わないのかどうか知らないけど、バスルームにこぼれたり。ほんとにくさいの。シャワーに入ってって何度も言うのよ。」と、文句を言った。

これはたぶん継子である夫には言えないんだろう。ほぼ他人で、しかも外国人の私だからここまで率直に話せるのだ。

リンは昔から「Cleanであること」を最重視していた。以前はハウスキーパーが毎日のように来ていて、いつも家の中はピカピカだった。年老いてきた夫が小だけでも粗相するのに我慢できないのもわかる。

「濡れているかどうか、わからないんでしょうか。感覚が鈍ってきたとか。」と老人介護などしたこともない私は聞いた。

「どうしてだかわからないわ。だから、おむつ替えなさいっていつも言ってるんだけど。とても飛行機は無理。この間の旅行だって、車の中で大変だったのよ。本人は平気なんだけど、窓を開けないとやってられないの」 リンは今頃になって、そんなことを打ち明けた。

あの頃は、ワンダフルでアメイジングな旅行だと言っていたのに。

「生死に関わることじゃなかったから、あなたたにちは連絡しなかったけど、バスムールで転んで頭をトイレにぶつけたの。2週間前。それで12針縫ったのよ。ハウスキーパーがいたときでよかったわ。私だけじゃ抱き起こせなかったもの。」

まったくの初耳だった。夫も知らないと思う。半年前には、台所で敷物につまづいて転んだんじゃなかったっけ。そのときも頭をぶつけた。今度も重症ではないが、かなりバランス感覚が失われてきたという。

「フィジカル・セラピストに家に来てもらおうと思ってるの。こんなにヨロヨロしてたら危なくって。ともかく動かさなくちゃ。私はなるべく外に連れ出すようにしてるの。車の中で座っているだけでもね。」

義父は86歳。リンは義父より15歳は若い。

活動的な彼女は不満かもしれないが、四捨五入で90歳の老人なのだ。私なんか50前なのに家から出ませんよと冗談めかして言おうと思ったがやめた。彼女はかなりストレスを抱えている。

まだ home health aid と呼ばれる介添え人は雇っていないという。義父は寝たきりではないし、ぼけてもいない。今のところ、小用のオムツの件だけが問題なのだ。それに、難聴。

どうも状況がよくつかめない。

オムツから漏れるのか。もっと頻繁に替えないとだめだということか。汚れたオムツをバスルームの床に捨ててあるのか。ちゃんとゴミ箱に始末してもやはり臭うのか。

スーパーには大人のおむつが積んであるが、私は一度も手に取ったことがない。生理用品と同じで、長時間用とか夜用とかあるんだろうか。そういうのも、やっぱり日本のほうが進んでいるんじゃないだろうか。アメリカの生理用品は最近かなりよくなったが(私が渡米した当時は粗悪さにショックを受けた)、アメリカの大人用おむつはどうなのか。


          *


「彼の具合はどうなの?」とリンに夫の様子を聞かれた。

私には本当のところはわからない。でも、義父のことで苦労しているらしい彼女に、余計な心配はさせられない。「前よりずっと安定していると思います。薬も飲んでいるし、カウンセリングも続けているし。」

「もうめまいとか、ふらついたりとかしない?」

「いえ、ほとんどないと思います。」と私。睡眠パターンがおかしいのと私に隠れてよからぬことをしている以外は、夫は病んでいるように見えない。薄情な私はたいしたことないと思っている。リンがそこまで心配するのが不思議なくらいだ。

もしかして彼女はもっと他に話したいことがあるんじゃないかという気がした。

「それはよかったわ。フランクが感謝祭のときに電話をくれたの。」と彼女は突然夫の弟の話をした。鈍い私はやっとわかった。そうか、夫にもっと父親のことを考えろと言いたいのだ。

リンは、夫の病状も休職中であることも知っている。継母としての遠慮があるところへ、精神的に不安定な夫に強く出られないのかもしれない。

「お父さんへメールを送るように言ってくれない? 電話よりメールのほうがいいと思うのよ。」

「補聴器はだめなんですか。」 答えがわかっているのに、前にも聞いたことを私は改めて尋ねた。「だめね。いろいろやってみたけど。聞こえてないのよ。だから、電話じゃだめだと思うわ。あなたのところ、スカイプはある?」

ありますとも!

私は使わないが、夫はヘッドフォーンからウェブキャムから一式揃えている。ルーマニア人じゃなくて、自分の親と話しなさいよ。

「顔が見えたら、少しは聞き取りしやすいかもしれませんね。夫は、精神科医のところに出かけているので、戻ったら電話させます。」

リンは機械に弱い。スカイプについても、近くの大学に通うためにしばらく同居している孫息子アンドリューにセットアップしてもらうという。


         *


アメリカ大陸の反対側に住む夫や私は、役に立たない。でも、リンにすべてを任せることはできない。実の父親のことなのだから、夫とフランクが継母と話して、これからのことを決めなくてはならない。

15歳年上の夫と結婚したときからわかっていたのだろうが、義父の衰えが現実のものになって、リンは不安そうだ。やはり義理の息子たちに頼りたいのだろう。前々から、「大の始末ができなくなったらナーシング・ホームよ」と私に打ち明けていた。彼らにはそこまではっきり話していないかもしれない。

フランクはアリゾナだから、まだしも近い。性格的にも、夫より積極的に父親に関わっている。しかし、彼には4人の子供がいて、一番下はまだ小学校。親の老後と自分の子育てが重なった sandwich generation である。

うちだって、これから二人を大学にやるのだから同じだ。

夫は結婚が遅かったのに、私が子どもを産む気になるまでさらに5年かかった。もちろん、当時は20年後にどうなるかなどと考えなかった。

私が30を過ぎても子どもを持たなかったので、日本に帰ったとき「ほしいなら、子どもは若いうちに産んだほうが楽でいいわよ。」とおせっかいな叔母に言われた。ほっといてくれと私は思った。今頃になってわかった。

でも、私や夫にはまだ時間がある。

私は介護にはまったく不向きだが、せめてリンの話の聞き役にはなれる。今度は私から電話してみようか。

彼女は実の娘が二人いて、毎日何度も電話する仲だ。きっと義父の様子も逐一話しているだろう。長女は車で1時間のところに住んでいる。でも、リンには他にも発散するルートが必要だという気がした。

介護に無縁な私には、彼女のストレスや疲労は想像するしかない。いつも明るい彼女の声に、神経質な響きがあったのが引っかかる。


<今日の英語>

I'm with you.
同感です。


85歳の老人が歩行者をひき殺し、気がつかずにそのまま走り去った事件で、「高齢者には再度ドライビング・テストを義務付けるべきだ。」という意見に寄せられた賛成のコメント。相手の発言に対して強く同調するときのカジュアルな表現。



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