Nine Eleven
2010.09.11 (土)
ツイン・タワーがテロ攻撃を受けてから9年が経った。
もうそんなになるのかと思う。一昔前のようで、でも、あの衝撃はまだはっきりと思い出すことができる。
たいていのアメリカ人が、ケネディが暗殺されたときに自分がどこで何をしていたかをよく覚えているのと同じだ。
新学期が始まったばかりの火曜日の朝。雲ひとつない秋晴れ。
キンダーガーテンの午後のプログラムに入った次男といっしょに、2年生の長男のスクールバスを見送り、私たちはゆっくり歩いて自宅に戻った。
そのころ、タイ女のことで夫と私の間は険悪だった。子どもの前ではかろうじて平静にふるまっていたが、私は夫に冷ややかな態度を取っていた。夫と顔を合わせたくなくて、わざと外でグズグズしていたのだ。
家に入って5分もしないうちに、日本にいる姉から電話がかかってきた。
「ちょっと、テレビ見てる?!」
「ううん。いま長男のバスが来たとこ。」 私はのんびり答えた。
「大変なことになってるよ。今すぐ、CNNつけて!」
言われたとおりテレビをつけると、もくもくと黒い煙を上げている世界貿易センタービルが映った。まだテロだとは知らず、単なる事故だと思った。慌てて夫に知らせに走った。夫はリビングルームへ下りてきた。
そうこうするうちに、2機目がサウス・タワーに激突し、ペンタゴンもやられたという報が入り、画面はニューヨークとワシントンを半々に映し出した。
夫はマンハッタンにもワシントンにも住んでいたことがあり、私よりももっと身近に感じているようだった。
非常事態とあって、夫も私もテレビの前を動けず、独り言とも会話とも言えない言葉のやり取りをした(5歳だった次男もいっしょに見ていたはずなのに、まったく覚えていないそうだ)。
そして、サウス・タワーが崩れ落ちた。
あのときの無力感。茫然自失。重い黒い塊りが体の中に沈むような感覚。あのときの映像を見ると、いまでも息苦しくなる。
うちからマンハッタンまで往復すると、1日仕事になる。私や夫の知り合いでテロに巻き込まれた人は誰もいなかった。それくらい遠くて縁がないのに、9/11(ナイン・イレブン)は生々しい。犠牲者の遺族の気持ちは想像もつかない。
*
グラウンド・ゼロ(貿易センタービル跡地)の近くにイスラム文化センターを建てるという計画が波紋を呼んでいる。
信教の自由だから認めるべきだとか、ほとんどのイスラム教徒は穏健だとか、2ブロックは離れているんだからすぐ隣というわけじゃないとか、賛成派は言う。
理論的にはそうかもしれないが、わざわざ拒否反応を起こしそうな場所を選ぶ神経がわからない。私が遺族だったら、断固反対する。よりにもよって、なぜダウンタウンを選ぶのか。他の場所がいくらでもあるではないか。
こういうことは理性で納得できても、感情がついていかない。私はオバマみたいに politically correct なコメントをする必要はないので、イスラム差別や人権侵害と呼ばれても平気である。
私は、組織化された宗教はどれも胡散臭い集団で諸悪の根源だと思っている。別にイスラムだから反対しているのではない。
真珠湾だって何十年も経ってやっと過去の歴史の一部になったのだ(もちろん今でも毎年12月7日にはパールハーバーのニュースが必ず流れる)。
9年はあまりにも短かすぎる。
*
マンハッタンでごたごたしていたら、今度はフロリダの教会が9月11日にコーランを燃やすというニュースで持ちきりになった。
これがまた怪しげな教会で、メンバーはたったの50人という弱小集団。財政困難のために教会の土地建物を売りに出している。つぶれそうなところなのだ。
この牧師はもともと狂信的な反イスラムらしい。こういう話を聞くと、キリスト教も困ったもんだと思う。エセ牧師が人格者のふりをして偉そうにお説教をし、それをまた鵜呑みにする信者がいるのだ。
「汝の隣人を愛せよ。」じゃなかったのかね。
この牧師は去年は「イスラムは邪悪」という看板を教会の庭に立てたが、地元では体よく無視されたという。こんなパーは今回もメディアがほっておけばよかったのに、あっというまにニュースが世界に広まって、イスラム圏ではデモをしたり、人が死んだり、何か燃やしたりして大騒ぎになっているらしい。
ほんとに宗教が関わると、ろくなことがない。
やっとイラクから撤退したのに(ただし、戦闘能力のある米兵が5万人駐留している)、アフガニスタンは泥沼だし、またイスラム過激派をつついてどうする。
*
つい先月、「アメリカ人の5人に1人が、オバマはイスラム教徒だと思っている。」という調査結果が出た(本当はキリスト教徒。ただし、オバマの亡き父親はイスラム教徒だった)。
無知というべきか、洗脳というべきか。
大統領選のときも、わざわざオバマのミドルネーム(フセイン)を連呼した政治家がいたのだが、オバマがマンハッタンでのイスラム文化センター建設を信教の自由の立場から擁護したのを、ここぞとばかりに悪用している。
ミシェル夫人と手をつないで日曜日の礼拝や復活祭のミサに出席して、例によって「信仰心の強いクリスチャン大統領」のイメージを売っていたのに。
私は大統領がどの神様を信じようがどうでもいい。信じないほうがいいくらいだが、それではアメリカの大統領には選んでもらえない。スピーチのたびに、God bless you and God bless the United States of America (神様のお恵みがありますように)と締めくくらねばならない、そういう国である。
私が大統領に求めるのは、一にも二にも職務を遂行する能力である。
最優先事項は景気回復。
仕事がなくてギリギリの生活をしている人たちにとっては、イスラム文化センターもコーラン焼却も、どうでもいいんじゃないだろうか。
<今日の英語>
Don't jinx it!
縁起でもない!
「USオープン男子シングルス決勝はナダル対フェデラーになる」と予測するスポーツジャーナリストに寄せられたコメントより。いつもそう言われながら、この2人がグランドスラムの決勝で顔を合わせるのは実はほぼ2年ぶり。「まだ準決勝があるのに、余計なことを言ったら、また縁起が悪くなって、どちらかが決勝に進めないかもしれない。みんながラファとロジャーの対決を楽しみにしているんだから、台無しにするのはやめてくれ。」
日本語のジンクスはよいことにも使うが、英語の jinx は縁起の悪いことや不運をもたらすというネガティブな意味で使われる。自分に関わる場合は、Don't jinx me!
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悪人顔ですよねぇ?どう見ても、無教養のレッド・ネック、KKKの首領のような顔つきで。。。。ああいう発言をして、こいつらがテロ攻撃の的になるのは構いませんが、アメリカ軍やアメリカに住んでいる人々を危険にさらしたことは許せないです。
cocoriru |
2010.09.12(日) 04:46 | URL |
【編集】
今日の日記を読んで
倉稟実ちて則ち礼節を知り、衣食足りて則ち栄辱を知る
という言葉を思い浮かべました。
テロの原因は、たいていテロを受ける側が作ったとのではないかと思ったりします。
倉稟実ちて則ち礼節を知り、衣食足りて則ち栄辱を知る
という言葉を思い浮かべました。
テロの原因は、たいていテロを受ける側が作ったとのではないかと思ったりします。
あみぃ |
2010.09.12(日) 16:32 | URL |
【編集】
私は、イスラミックセンターだけの問題とは考えてません。今回はイスラム団体がターゲットでしたが、こういう感情論でアメリカの正義(と思われている)をねじ曲げようとする勢力はいつでもいますよね。グラウンドゼロの近くには、すでに既存のモスクも存在していて、何の問題もないのに。この国でマイノリティ(外国人、特定の人種やゲイも)である限り、いつこのような「憎しみの感情」を利用する勢力の被害者になるかわかりません。経済問題でしたが、トヨタ(外国のメーカーと思われてる)も執拗に叩かれましたし。私は用心してます。
みなみ |
2010.09.14(火) 15:40 | URL |
【編集】
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