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トヨタの公聴会での英語

2010.02.26 (金)


トヨタのアメリカ下院公聴会の生中継を見た。

その前にアメリカ人重役が追及されているのも少し見たが、今度は本社社長の豊田氏と北米トヨタ社長の稲葉氏の番。

公聴会は一種の見世物である。

初めてまともに見たのは、1991年に最高裁判事候補だった Clarence Thomas の承認審議。彼の部下である Anita Hill が彼にセクハラされたと証言した。まだアメリカに来て間もなかった私は、こういうものを生中継する国に来たのかと思った。結局トーマスは承認され、私はがっかりした。

もともと政治にはたいして興味がないので、その後は大きな事件のときしか見ていない。議員の中にはどうしようもないパーもいるので、政治ショーだと思っていても馬鹿らしくなることがある。

だから、トヨタ公聴会でも、私の最大の関心は議事の中身よりも英語である。

豊田氏はアメリカでMBAを取得し、稲葉氏は北米のトップ。2人の英語を聞いてみたかった。あるいは、通訳を使うのか。

技術的な内容は、日本語で聞いてもどうせわからない。だいたい、車がどういう原理で走るのかも私は知らないのだ。

     *

議員たちに見下ろされるような正面のテーブルについた稲葉氏。その右に豊田氏。その右に女性。彼女が通訳だった。かなり小柄な人。

豊田氏はイヤホンを付けたので、同時通訳のブースがどこかにあるのだろう(その後、豊田氏はイヤホンを付けたりはずしたりした)。極東軍事裁判を思い起こさせる。

宣誓のとき、豊田氏はちょっとキョロキョロしていた。アメリカではしょっちゅう宣誓のシーンを見るが、日本ではやらないのだろうか。

右手を挙げてイエスと答えつつ、両氏は何度もうなづいた。アメリカ人はそんなにうなづかないので、違いが目立つ。日本人だなあと思う。

まず、豊田氏が用意してきた文書を英語で読み始めた。いかにも、お抱え弁護士が苦心して書きましたという、でも予想できる内容。豊田氏の声がよくない。

ずっとうつむいて読むんじゃないでしょうねと心配したが、そこはコーチされたとみえて、意識したように何度か顔を上げていた。かなり緊張した感じ。日本語訛りが強く、ゆっくりと読んだ。特訓したんだろうと思わせる。

でも、世界一の自動車メーカー、日本で一番大きい企業のトップにしては、迫力というか押しが足らない。カリスマ性はない。自社の不祥事でアメリカくんだりまで呼びつけられたにせよ、もう少し堂々とやってもらいたい。

次に、稲葉氏が文書を英語で読んだ。最初に、議長やその他の議員に呼びかける。この人はさすがにアメリカのやり方に慣れている。目線がしっかりしている。日本語訛りがあるが、英語は非常にうまい。豊田氏より声がはっきりして大きい。でも、かなり緊張していた。当たり前か。

国連の事務総長バン・キムンやコフィ・アナンだって、訛りの強い英語を話す。あまりに強すぎてわからないのは困るが、発音よりも発言内容、そしてわかりやすさのほうが大事だ。

質疑応答が始まり、豊田氏は日本語で答える。通訳の女性が逐次で訳し始めた。彼女は声が小さい。

「もっとマイクを近くに。」と議長に2回は指摘された。体が小さいから、遠すぎたのか。

ネイティブスピーカーの英語ではない。さすがに上手に訳しているが、マイクを近づけてもなんとなく声が小さい。緊張しているからだろうか。米原万理みたいな体格と発声でないのが惜しい。

     *

その後、書類を振り回すような芝居がかった男性議員がいたり、ヒステリックな感じの女性議員がいたり、茶番劇っぽくなる。そんなことをここで聞いてどうする?と思わせる質問を平気で投げかける議員に呆れる。

コニチワ、アリガトゴザイマスなどの挨拶を日本語で入れた議員もいた。選挙区にトヨタの工場があったり、ディーラーの陳情を受けていたりする議員は、また話すトーンが違う。

豊田氏も稲葉氏も、特に最初のうちは、曖昧な笑みを何度か浮かべた。不気味だと外国人に形容されるあれだ。ああいうのは急には直らない。

通訳が入るので、間延びする。それに、時おり議論がかみ合わない。

豊田氏の答弁の意図がはっきりせず、「それはイエスか、ノーか。」と問いただされる場面が何度かあった。

そういう問いは、トヨタのアメリカ人重役に対しても聞かれたし、別に珍しくない。むしろ、追求の口調はたいして強くなかったと思うが、豊田社長は怖気づいたように見えた。今まであんな風に話しかけられたことはないのかもしれない。

豊田氏は、話が話だけに、謝罪の言葉が多い。「真摯に受け止め」や「まことに残念な」など、日本語ならほとんど枕詞みたいな言葉が英語に訳されると、これまた違和感がある。ふだん、アメリカ人があまり謝らないのに私が慣れたからか。

     *

稲葉氏は終始、英語で答弁した。

日本語訛りはあるが、アメリカ風のマネリズム、身振りで、英語で話すことに慣れている。アメリカ人の相手に慣れているというべきか(あるトヨタ・ディーラーが「稲葉氏は自分をハグしてくれた初めての日本人社長だ。」と語った記事をあとで読み、合点が行った)。

豊田氏への質問を自ら肩代わりすることもあった。通訳をはさまないだけ、話が早く進む。

帰宅した次男に、「トヨタの公聴会やってるんだけど、この人たちの英語、どう?」と聞いてみた。通訳の女性より、稲葉氏の英語のほうが「本物の英語に近い」のだそうだ。豊田氏については、「ぜんぜんダメ。」と首を振った。

     *

もっといい通訳はいないのだろうかと思ったが、時間が経つに連れて、彼女のうまさがわかってきた。豊田社長の日本語を聞いて、私ならこう訳すかなあと考えているうちに、すらすらと的確な英訳がテレビから流れてくる。

こういうのは勉強になる。

芸能人のインタビューなどで意訳したり、内容をはしょったりする通訳を見たことがあるが、トヨタの通訳は豊田氏の発言にかなり忠実に訳した。一つ一つの発言の重要度が違うから当然といえども、豊田氏のいかにも日本的な回答が元発言なのだから大変だ。

わずかに日本語訛りがあるが、きれいな発音である。そして、わかりやすい。自然な言い回し。すんなり頭に入ってくる。男性の発言だから男性通訳がいいかと思ったが、女性の柔らかさが有利に働いたような気がする。

それにしても、豊田社長は、イヤホンで聞く同時通訳よりも、次第に隣に座っている通訳に逐次させることが多くなった。彼女の日本語訳も時々マイクでかすかに聞こえたが、英語同様によどみなく上手だった。この人は日本語もきれいなんだろう。

もしかしたら、豊田氏の日本語発言を英語にするだけの予定だったかもしれない(だから、同時通訳のイヤホンがあったのでは?)。日英、英日を続けてやるのは大変だが、豊田社長は彼女に頼りきっていた。議員の質問を日本語に訳すというより、かみくだいて説明しているような印象さえ受けた。

同時通訳が上手でも、さらっと訳したら終わりである。質問を理解できなければ、まともな回答はできない。隣に座っていた通訳なら、聞き返すことも可能なのだ。彼女は単に翻訳作業だけでなく、精神的なサポートをしていたと私は思う。

乾いた雑巾を絞るなんてケチなことを考えず、彼女にはたっぷり報酬をあげてもらいたいものだ。

     *

それにしても、あのような場面で、3時間も交代なしで正確に訳す気力と体力には脱帽した。

最初のぎこちなさも次第に消えた。こんなプレッシャーの大きい仕事を引き受けるなんて只者ではない。

想定問答や自動車業界の用語も叩き込んだのだろうが、いかにも田舎モノらしいイラつく下院議員の横槍にも動じずに、やってのけた。議論が仕事みたいな議員連中(弁護士が多い)を前に沈着冷静な態度を崩さなかった。

この女性はふだんから豊田社長の通訳をしているんだろうか。

NYタイムズには彼女の名前 (Kay Morita) まで出ていた。名前だけとはいえ、通訳が紹介されるのは珍しい。モリタさんは有名なんだろうか。完璧なネイティブ・スピーカーの発音ではないので、日本語が母国語だと思われるが、検索してもどういう経歴かわからなかった。

ただ、小さめの声だけは残念だった(決して聞き取りにくい声ではない)。でも、その分、彼女が話すときはみんな特に静かにしていたわけで、それも計算済みだとしたらたいしたものである。

オバマ大統領が招集する健康保険改革サミットや、NY州知事の参謀のスキャンダルで、すでに公聴会の記事は一面から消えた。

次回は、3月2日の上院での公聴会。


<今日の英語>

Where is the remorse?
あなたは反省しているのですか。


公聴会で、オハイオ州選出の下院議員が "The Toyota Way" というトヨタの経営理念をテーマにした本を振りまわしながら、豊田氏に向けて発した一言。



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 |  言語  |  コメント(7)

Comment

こちらのCNNでも昨晩放送があったのですが、見逃してしまいました。komatta3ならではのダイジェスト、いつもながら興味深く拝読しました。
sungoesup |  2010.02.26(金) 15:36 | URL |  【編集】

今朝、主人にトヨダ社長のこの発音でアメリカ人に通じているのか聞いてみました。英語が話せない私にも発音のひどさがわかったので誰かに聞いてみたかったのです。トヨダ社長はあの後泣いてました…もっとしっかりしてほしい
ne |  2010.02.26(金) 16:04 | URL |  【編集】

3時間に渡り行われた公聴会をあの通訳さん1人でやったのか気になってたのですが(ニュースでの放送見ただけだったので)社長のお隣にいたのは彼女一人だったのですね。すごいっ!パートで事務員やってる私の仕事は通訳さんを手配したりするのですが(随時通訳)二人手配して一人30分づつで交代されます。頭が相当疲れるそうです(当たり前ですが)。 
vegas |  2010.02.26(金) 20:59 | URL |  【編集】

Komataさん、ランキングに再参加なさってますか?もしまだでしたら、Komattaさんの洞察力のある文章をもっとたくさんの方々に読んでもらいたいので、是非お願いします。
Hana |  2010.02.27(土) 02:47 | URL |  【編集】

Komattaさんのブログが再開されてとても嬉しいです。
「そーゆーもんダ」と素通りしないKomattaさんの感性が好きです。
私はひねくれ者なので、JALにしてもTOYOTAにしても投資家の策(下げて上げる利鞘稼ぎ)と感じています。(アメ車がそんなこと言えた義理かよ?!とも思いますし・・・・)


山婆 |  2010.02.27(土) 13:59 | URL |  【編集】

たまたまなのですが...

ずっとKomattaさんの隠れファンでいるつもりだったのですが...

偶然ですが、今回通訳を務めた方は、自分の知っている方でした。

彼女は会議通訳者としては、日本でトップクラスの方です。国連や政府間協議など、タフな場での通訳をあまたこなしてこられた方なので、最初に画面で拝見したときには、TOYOTAさんはこの人選だけは間違っていなかったと思いました...

失礼いたしました...
MarikoTKD |  2010.02.27(土) 23:07 | URL |  【編集】

私もアメリカ在住20年です。公聴会は私も観ましたが、通訳の女性は本当に一言、『すごい』と思いました。
彼女の英語は確かにネイティブとは違った言い回しが数多くありましたが、あそこまで豊田氏の言わんとすることを忠実に通訳できる人はなかなかいないと思います。
しかも3時間も!ものすごい集中力の持ち主なんでしょうね、羨ましいです。
ランコ |  2010.02.28(日) 03:26 | URL |  【編集】

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