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愛人ごっこ その90

2010.01.17 (日)


(前回その89の続き)

◆ エピローグ 7

結局、パヴェルは一人でベラルーシに帰った。でも、他の女の子と寝たりはしなかった。

私は、彼がまだアンナを愛しているのだろうと思った。彼の口から、離婚という言葉は出てこない。無期限の別居生活が続いていた。

例年通り、試験があり、寮の近くで見つけたアルバイトもこなし、彼はアンナとの口論で時間とエネルギーを無駄にしなくてよくなっただけ、勉強に集中できたらしかった。

メールでも元気になったのが感じられた。

「ぼくの部屋の隣に、日本人の男子学生が入ったんだよ。彼は英語もドイツ語もよくわからないみたいで、ぼくはいまだに彼の名前もはっきり知らないんだけど。

でも、あなたが日本人だから、ぼくはなんとなくうれしいんだ。2セメスターだけいるらしいよ。すごく静かだし、一人だし、苦労しているかなと思って、『元気? どう、慣れた?』って話しかけてみた。そしたら、OKって笑ったから、ちょっとほっとしたよ。」

会話は苦手でも、留学するくらいだから読み書きはできるんだろう。でも、大学のあるドイツの街でアジア人は孤立しているのかもしれない。パヴェルは心配した。そういう優しさが彼にはある。

「ぼくは今すごく体を鍛えてて、お腹なんてほとんど six-pack になってるよ。」

そんなことも報告してくれる。

私は彼のほっそりしたところが好きだけど、大学に行ってあまり運動する時間がなくて体重が増えたと言ってたから、それよりはいい。もともと空手を習っていたが、筋骨隆々ではなかった。そういうのがアンナの好みなのかな。まだ彼女に未練がありそうだった。

でも、パヴェルのメールには、もう何ヶ月もアンナのことは全く書かれていなかった。

・・・

2009年の夏が近づき、私は子どもたちを連れて1ヶ月日本に行くことをパヴェルに伝えた。

「久しぶりの日本だね。子どもたちも大きくなったから、あなたの荷物を運んでくれるよ。ぼくは、あいかわらず勉強とアルバイトだけど、今度ベラルーシに1週間くらい帰る。いとこの結婚式があるから。」

彼はアンナとの別居について母親にどこまで話しているのだろうか。

「アンナが一緒に来るかどうかわからない。ベルリンのボーイフレンドとはすぐに別れたらしいけどね。

いとこはぼくたちと同じ教会で式をあげるんだ。アンナが来ないなら、ぼくは他の女の子を誘っていくかもしれない。みんなに変な目で見られるかもしれないけど、嫌がるアンナを無理に連れて行くよりいいと思う。」

アンナは来なかった。パヴェルは一人で結婚式に参列した。つい1年ほど前、自分が結婚の誓いをした場所だった。

アンナがパヴェルに同行しないことで、彼の母親も息子夫婦の状況を悟ったにちがいない。

・・・

私たちは日本から戻り、子どもたちの学校が始まり、またいつもの生活に戻った。

パヴェルは卒業論文にかかりきりになり、むしろ落ち着いていた。

私の方は、夫がパニック症状で休職に追い込まれ、躁うつ病の診断が下りてからは、先行きの見えない日々が続いた。

夫の状況を知っているのは義父母だけで、私は姉にも母にも黙っていたが、パヴェルだけには詳細を書き送った。ただし、当面、生活の心配はないことを強調して、無駄に心配させないようにした。

「大丈夫? ご主人もそうだけど、ぼくはあなたのほうが心配だよ。子どもたちはどうしてる? もういろんなことがわかる年だからね。」

・・・

しばらくして、彼は私の誕生日にビデオを作って YouTube にアップロードしてくれた。大きすぎてメールに添付できないとのことだった。

最初のは私へのハッピー・バースデーのメッセージ。撮影したのは、彼の隣の部屋の日本人留学生の男の子だった。

途中で交代し、その子は「初めまして。お誕生日おめでとうございます。パヴェルくんにはいつもお世話になってます。」と日本語で言った。おとなしそうな小柄な人で、パヴェルがその後もなにくれとなく親切にしているのが伺えた。

2本目のビデオは、彼の大学寮の部屋を撮影したものだった。私はそれまで彼の部屋を写真でも見たことがなかった。小さい個室にはベッドと机と本棚と洗面台があり、湯沸しポットや自転車まであった。

「自転車を外に置いたら盗まれてしまって、新しいのを買ってからはずっと部屋に置いてるんだ。」と彼は説明を続けた。

殺風景なガランとした部屋だった。カメラが窓の外を映すと、運河が見え、その向こうにちょうど電車が走っているところだった。

「ちょっと個人的なビデオだから、あなたが見たらYouTubeから消すよ。」 

私は子どもたちにも見せてから、彼にお礼のメールを書いた。

そして、自分のPCにビデオをダウンロードして、何度も再生した。私にはこういうプレゼントが一番で、パヴェルはちゃんとそのことを知っていた。

(次回その91に続く)



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