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愛人ごっこ その88

2010.01.15 (金)


(前回その87の続き)

◆ エピローグ 5

ロシア系ドイツ娘と結婚したパヴェルは、同棲していたとはいえ、正式に夫婦になって幸せの絶頂にいるようだった。

私はもうあまり頻繁に彼にメールをしないようにした。アンナがどれくらい英語が読めるのか知らなかったが、彼女が不愉快に思って、けんかの種にならないように。

パヴェルが幸せなのはわかっていた。私は彼のために喜ぶべきなのだ。

私とパヴェルの間には始めから何の展望も約束もなかったし、体の関係を断ち切ったのは私の方だったのに、これで彼とのつながりも消えていくだろうと、ときおり寂しくなった。

まだ2人は若い。それにパヴェルは学生だから、当分子どもは持たないだろう。でも、もし生まれたら、洋服でも贈ってあげよう。女の子だったらいいな。

私は物わかりのいい親戚の叔母みたいになろうとした。

しばらくして届いた結婚式のDVDは2枚組みで、ロシア正教の教会に出る前に自宅で行ったらしい儀式から、2人のフォトセッション、教会、その後のパーティまで、キッチュな編集がしてあった。アメリカや西欧の趣味とは違う、まだ共産圏そのものみたいな印象を受けた。

私は教会での式が終わるところまで見て、止めてしまった。私は心の底では2人を祝福していなかった。

・・・

ベラルーシでの結婚式が終わって3ヶ月ほどすると、パヴェルは「結婚生活の難しさ」を私に書き送るようになった。毎回ではなかった。それに、締めくくりは明るかった。

「同棲してたときは笑って済ませたことが、結婚してからなんとなく口論になってしまうんだ。でも、ぼくたちは育ったところが違うし、こういう行き違いはどこのカップルでもあると思う。ほんとにたいしたことじゃないんだけど。忙しかったからね。週末はアンナと2人でゆっくり過ごすよ。」

私は同棲の経験がないので、同棲中にうまくいった2人が結婚を境に問題が出てくるのが理解できなかった。パヴェルは詳しいことは言わなかったので、私も一般的な慰めを言うしかなかった。

「結婚1年目が一番大変だってよく言うみたいね。どうしてもぶつかるのよ。だって元は他人だもの。私だって、アメリカ生活は始めてで、言葉の上での誤解もあったし、夫は短気だし、お互いに慣れるまで時間がかかったのよ。もう忘れちゃったけど。夫はどなって、私は泣くというパターン。若かったと思うわ。今なんか、夫が何を言ったってあーそうですかって気にしないもの。あなたとアンナも今はアジャストメントの時期かもね。」

パヴェルは、アドバイスにもならない私の返事に返信をくれた。

「そうだね。アンナはすごく潔癖で、ぼくがちゃんとやったつもりでも文句を言うんだ。それだけじゃないけどね。もう少し時間がいるのかな。」

彼女の両親はロシア人だけれど、彼女はドイツで生まれ育った。

パヴェルは若い男の子にしては、うちに泊まったときもちゃんとしてたけど、ドイツ人の基準ではまだまだなのだろうか。奥さんは23歳になったかならないか。片付けなんかより大事なことがあるのがわからないのかな。同棲していたころに、そういうことは気が付かなかったんだろうか。

なんだかパヴェルがアンナに一方的に責められているような気がして、かわいそうになった。

・・・

パヴェルは大学とアルバイトで忙しかったが、1ヶ月に1回は近況を知らせてきた。

アンナとの関係は悪くなる一方だった。

いくら1年目でもこんなに問題が出てくるものだろうか。私は安易に「そのうち落ち着くわよ。」なんて書けなくなっていた。

パヴェルもどれくらい不幸なのかを隠さなくなった。それでも、まだアンナを愛しているらしく、なんとかうまくやっていこうと一生懸命やっているのが伺えた。

しかし、そんな努力もむなしく、1週間毎日ぶっつづけて口論したときはほとほと疲れていたらしく、部屋に帰るのがいやになるよと私にこぼした。

それでも、私は2人が若くて好き合っているなら、そのうち解決するだろうとたかをくくっていたのだが、ある日、パヴェルからのメールを見て驚いた。

「元気? いま、大学の寮から書いてます。ぼくとアンナはしばらく離れたほうがいいという結論になったので、彼女はアパートにそのまま残って、ぼくは寮の部屋を借りることにしました。これからどうなるかわからないけれど、もうぼくたちは争うのに疲れてしまったから。」

別居するほどひどかったとは知らなかった。

「でも、ぼくはほとんど彼女に電話しているし、週末は会っているんだ。不思議と今は喧嘩にならないんだよ。」

じゃあ冷却期間ということ? 結婚して1年も経たないのに。私はアンナに嫉妬していたし、パヴェルを手ひどく扱う彼女に嫌悪感が強まるばかりだった。

パヴェルに同情しつつも、ほら、ごらんなさい、そんなに慌てて結婚するから、と私は密かにあきれたり、ほくそえんだりしたのだ。

私は、彼の不幸が悲しいのか嬉しいのか、自分でもわからなかった。

(次回その89に続く)



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