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愛人ごっこ その78

2009.12.12 (土)


(前回その77の続き)

5日間のハウスシッターを引き受けたパヴェルは、その間うちに来ることができなかった。

子どもたちはがっかりしたが、彼はアメリカの大きい家を独り占めできる機会を満喫しているのだろう。それほど大きな家ではないと言っていたが、S氏は投資コンサルタントで自宅にオフィスを持っており、奥さんもどこかで働いているらしかった。

ある日、大雨の予報があった。私は、S氏の家からキャンプ施設まで送り迎えをすることをパヴェルに申し出た。自転車では危なすぎるし、ちゃちな雨具しか持っていない彼はずぶぬれになってしまう。

「何時に行けばいいの?」

「朝は6時。夕方のシフトは早めに終わらせてもらうから、やっぱり6時かな。あなたに迷惑をかけるつもりじゃなかったけど、明日だけ送ってくれると助かるよ。」

「迷惑じゃないわよ。気にしないで。事故でも起きたらそれこそ大変だもの。」

そういうことを考えないで気安く彼を利用したS氏はなんて無責任な、と私は内心あきれた。

・・・

前にパヴェルからだいたいの場所を聞いていたが、改めて地図で見てみた。

裏通りから細い坂道があって、そこを降りていくと、数軒の家がぽつんと建っていた。うちのような新興住宅地ではなく、かなり昔からあるような所だった。坂道は舗装もしておらず、車がすれ違えないくらい細く、雨の中の運転は緊張した。

私が朝早く行くと、パヴェルは玄関で待っていた。

「おはよう。お迎えありがとう。すごい雨だね。」

「あの坂道、怖いわね。今日は自転車じゃとても無理よ。」

他人の家に泊まったパヴェルを迎えに行くのは、ちょっと不思議な感覚だった。彼は、地下室のゲストルームで寝ているのだと言った。

「ジョンがね、ミスターSのことだけど、自分の家だと思ってくれって。あなたの家より小さいけど、居心地はわりといいんだよ。」

彼をキッチンに送り届け、後でお迎えに来ることを約束した。それまでには雨は止むと思われたが、自転車はS氏の家にあったし、徒歩では遠すぎる。そして、私は彼と会える。

夕方になって私が出かけようとすると、子どもたちもいっしょに行くと騒いだ。

「パヴェルはここには来ないの。私がキッチンまで迎えに行って、そのまま今泊まっているお家に連れて行くんだから。」

「わかってる。でも、パヴェルに会いたいもん。それに、そこの猫が見たいよ。」

しかたなく子どもたちを連れて行った。もう雨は止んでいた。

いつもの駐車場に停めてしばらくすると、パヴェルがやって来た。

「わーい、パヴェルだ!」

「あれ、みんな来たの?」

「うん。ぼく、パヴェルの家が見たい。猫も。」

・・・

S氏の家に付くと、白黒のぶち猫が1匹玄関にいた。

「ロッキー! 遅くなってごめん。あれだけは朝外に出して、夜家に入れてあげることになってるんだ。他の2匹は出て行かない。」

私は家の中に入るのに気が引けたが、子どもたちがパヴェルに付いて行ったので、私もあとを追った。

外観より中のほうがきれいだった。片付いたキッチンには大きな冷蔵庫があって、留守中の注意事項をびっしり書いた紙が2枚張ってあった。

まあ、タダでハウスシッターをさせておいて、奥さんの注文の多いこと。自分の家と思ってというご主人と、ずいぶん違うじゃないの。

猫の餌はこれを何カップ、魚にはこれ、友だちを連れてきたりパーティをしたりしないこと、冷蔵庫にあるものは食べていいがあれとこれは補充すること、郵便物はこうする、ゴミはこうする、これとあれには触らない、この部屋には入らない…。

ハウスシッターなんて雇ったことがない私は驚いたが、あとでもめないためには当然なのかもしれない。もしロッキーが家を出たまま帰ってこなかったらどうするんだろう。

家の中に居る猫は臆病で、一瞬姿を見せただけですぐに逃げてしまった。でもロッキーは人懐こく、撫ぜていた子どもたちは外猫特有の筋肉質の体に歓声を上げた。私は、ここはよその家なんだから何にも触らないようにとうるさく言いつけたが、パヴェルはそんなに心配しなくて大丈夫だよと笑って、楽しげに私たちを地下室へ案内した。

内装された地下は明るく、パヴェルの言うとおり、S氏のオフィスやテレビルーム、ゲストルームがあり、居心地のよさそうなところだった。

うちなんかよりよっぽど素敵だ。それに、S氏と奥さんはうちみたいな仮面夫婦ではないようだ。

パヴェルは私と寝ていながら、夫の前では礼儀正しく振舞っているが、気詰まりになることもあるにちがいない。この5日間は、アメリカに住むというファンタジーを罪悪感なしで味わっていたのだろう。

ここは、真っ当な夫婦が住んでいる幸運な家なのだ。

(次回その79に続く)



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