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愛人ごっこ その72

2009.11.29 (日)


(前回その71の続き)

翌日の月曜日、子どもたちが登校したあと、家に一人残された私は前日のことを考えた。

これまでパヴェルが私の好意を無にしたことは一度もなかったので、私は少なからず落胆していた。

多忙なキッチンのスタッフがわざわざ迎えに来てくれて、うれしかったのだろう。これから3ヶ月も一緒に働く仲間だ。3年目とはいえ、いわば季節労働者の自分を暖かく迎えてくれる人たちがいるのは、心強いにちがいない。

まだ来ていなかった私のために、忙しい彼らを引き止めたくなかったのか。もしかして、急いでキッチンに戻らなくてはいけなかったのかもしれない。

私なら待ちぼうけにしても許されるという甘えがパヴェルにあったのだろうか。でも、それは彼の性格に反している。そんなことを平気でやる子じゃない。

私はある可能性に思い当たったが、不安になってそれをもみ消した。

・・・

午後になって電話がかかった。IDでキャンプ施設からだとわかったが、私は呼び出し音を4回鳴らせてから電話を取った。なぜか気が重かった。

「ハロー?」

「ぼく、パヴェルだよ。今、忙しい?」

「元気? 昨日着いたばかりでもう働いてるの?」

「うん。人手が足らないし、始めるのは1日でも早いほうがいいから。あの、昨日は本当にごめん。せっかく迎えに来てくれたのに、先に行ってしまって。怒ってる?」

「怒ってないわよ。がっかりしたけど。私、そんなに遅かったかしら。あなたが飛行機を降りたらすぐ私の携帯に電話するように、決めておけばよかったわね。」

私はパヴェルが待ちくたびれるほど遅くなかったことを知っていた。そして、彼がスタッフの車から私に電話するまで、ずいぶん時間がかかったことを持ち出さずにはいられなかった。

「ほんとに悪かったと思ってる。キッチンのスタッフが迎えに来るとわかっていたら、あなたに無駄なことをさせずに済んだんだけど。まったくのサプライズだったんだよ。それで、彼らにはあなたとの約束を言えなかった。ぼくだけじゃなくて、あなたのためにも。」

どうして私が来ることを言えなかったんだろう。何人かは私も会ったことがあるし、気さくな人たちだと思ったけど。

「噂になるんだ。『パヴェルと彼のジャパニーズ・レディー』って。」

・・・

私は頬を平手打ちされたかのように凍りついた。

私は誰に何を言われようと平気だった。そもそも人付き合いを避けていたので、噂が耳に入る機会すらなかった。

でも、パヴェルは違ったのだ。私がわざわざ空港まで出迎えに来たことが知られたら、私たちの関係をどれほど詮索されるか。私に言わなかっただけで、去年もいろいろあったのだろう。

最初の年は、私はパヴェルの大学進学を援助した単なるスポンサーと見られていたと思う。お互い合意の下でベッドを共にするようになったが、まもなく彼はドイツへ行ってしまったので、親密な時間は長くなかった。

でも、2年目に私たちはさらに深い関係になり、それは傍目にも明らかだったのかもしれない。中庭での逢引を誰にも気取られなかったという自信はない。

そのためにパヴェルが中傷されてどれほどいやな思いをしたか、わからない。彼は私には一言も言わなかったのだ。私はただ彼に夢中で、しかもそういう噂の届かないところにいて、一人で浮かれていたのか。

・・・

「ごめんなさい。そんなことを言われてたなんて、知らなかったの。私、自分のことばっかりで、あなたにいやな思いをさせて、悪いことをしたわ。」

「ううん。たいしたことじゃないよ。前にも言ったけど、ぼくは気にしてないから。ただ、あんまりからかわれると、うっとうしいだけ。それに、あなたに迷惑がかかるといやなんだ。」

私も本当は知っていたのかもしれない。でも、パヴェルと少しでも長くいっしょに過ごしたくて、キッチンのスタッフの視線や含み笑いに気がつかないふりをしていただけもしれない。

この電話の前に不安になったのは、パヴェルが私との関係を恥じているのではないかと疑ったからだ。

「ぼく、もう仕事に戻らなくちゃ。昨日のことを謝りたくて電話しただけなんだ。また連絡するよ。」

もっと早く打ち明けてくれなかったのは、あなたの優しさ? でも、私たちは何でも話せる相手じゃなかったの? それも私だけの思い込み? それとも、もうこんな関係はいやになった?

私は何も聞かず、「そうね。また連絡して。」とだけ言って電話を切った。

(次回その73に続く)



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