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愛人ごっこ その71

2009.11.28 (土)


※ これまでの話(その1~70)をカテゴリから番号を選んで読む。

(前回その70の続き)

例年、海外から参加するキャンプ・カウンセラーたちは、空港からキャンプの宿舎までチャーター・バスでやってくる。パヴェルもそうだった。でも、今回は、他の人たちより早い時期にアメリカに来ることになった。

3年目とあって、キャンプのことは熟知していたし、キッチンのほうでも彼を頼りにしていた。そのため、カウンセラー向けの研修のいくつかは免除してもらい、その分キッチンでの仕事ができるように取り計らわれたらしい。

もしパヴェルの得た情報が本当ならば、去年よりいい賃金が得られるはずだ。彼は例によって、夏の間に少しでもたくさんのお金を稼ぎ、貯金したいと言っていた。

彼のやってくる日が近づくと、私は不安を心の底に押しやり、日にちを数えては彼を待ち焦がれた。

・・・

彼は日曜日に空港に到着するとメールで知らせてきた。

うちから空港までは遠い。でも、私はなぜか彼を迎えに行きたいと思った。これまでのように、チャーターバスがこの田舎町まで連れてきてくれるわけではない。荷物を持って、バスと電車を乗り継ぐのは大変だ。

夫はその週末は出張で不在だった。子どもたちを家に置いていけないので、連れて行くしかない。計画を聞いた彼らははしゃいだ。

「でも、空港は遠いわよ。それに飛行機が着陸してもパヴェルが出てくるまでには時間がかかるし、退屈よ。文句言わない?」

「言わない。ぼく、パヴェルに会いたいもん。ゲーム持って行っていい? 車の中でしかやらないから。」

私はパヴェルに便名と到着時刻を聞いた。そして、子どもたちといっしょにお迎えに行くつもりであることを告げた。

「遠いし、忙しいのに大変だよ。ぼくは自分で行けるから、無理しなくていいよ。」

「無理してないわ。なんだかわからないけど、お迎えに行きたい気分なの。税関を出たところで待ってて。私の携帯の番号、覚えてる? もし何かあったら、電話してちょうだい。私も道すがら何があるか予測できないし、私からあなたに連絡を取る方法はないから。もしうまくいかなかったら、悪いけどバスに乗って。」

・・・

パヴェルが到着する日、私は子どもたちに支度をさせ、飲み物や食べ物を積んで、空港へ向かった。

早めに出たつもりだったが、途中で渋滞があり、空港の駐車場は混んでいて、思ったより時間がかかった。

急いでターミナルに向かうと、すでにお迎えの人たちが大勢いて、再会したらしい家族や恋人たちがキスやハグをしていた。もうすぐパヴェルの腕の中に抱きとめられると思うと、心臓が高鳴った。

私はそれがしたかったのだ。本物の恋人同士みたいに。

電光掲示板は、ドイツからの便はとっくに到着したと表示していた。出口は1つしかないから、見失うはずはない。私は根気よく待つことにした。子どもたちは飽きてきたようだが、それでもおとなしくしていた。

かなり時間が経ち、とっくにパヴェルが現れてもいいころだった。もしかして私たちが来たときには、彼はもう空港にはいなかったのだろうか。でも、待っているように伝えたのに。まさか飛行機に乗りそこなったのだろうか。でも、それなら先に電話してくれるはずだ。

そのうち、パヴェルとすれ違いになったのを確信した私は、がっかりした子どもたちを率いて、駐車場に戻った。

・・・

車のエンジンをかけたとたん、携帯電話が鳴った。知らない番号からだった。

「僕だよ。空港で何があったと思う? サプライズ!キッチンのスタッフが2人、ぼくを迎えに来てくれてたんだ。メールで飛行機の時間は知らせたけど、迎えに来てくれるなんて誰もぼくに言わなかった。びっくりしたよ。だから、僕はいま彼らの車で宿泊施設に向かってる。それだけ伝えようと思って。ごめんね。」

「いいのよ。こっちは気にしないで。また落ち着いたら連絡をちょうだい。」

彼の口調から、今は詳しい話はできないと察した私は、それだけ言って電話を切った。そして、子どもたちに説明した。彼らはよくわかっていないようだったが、今日はパヴェルに会えないことだけは理解した。

「せっかく迎えに来たのにね。」と私は彼らをなぐさめようとして言った。子どもたちは疲れて、うとうとしていたのか、返事をしなかった。

私はささくれ立った心を抱えて、また長い道のりを運転し始めた。パヴェルに会えると思ったからこそ、わざわざ迎えに来たのに。私は肩透かしを食わされた気分になった。

彼がそちらの車に乗って行きたいなら、それでもいい。でも、キッチンの人たちが迎えに来たからって、どうして私たちを待ってくれなかったんだろう。そんなにひどく遅れたわけでもないのに、なんだか腑に落ちない。

(次回その72に続く)



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