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愛人ごっこ その38

2009.09.05 (土)


(前回その37の続き)

パヴェルを連れて家に戻ると、夫が起きて待っていた。リビングルームのカウチに座ったまま、振り向かずに私に聞いた。

「ずいぶん遅かったね。」

「名残惜しいのかなんだか知らないけど、送別会がいつまでも終わらなくて、待ちくたびれちゃったわ。明日は早いから、私もう寝るわね。あなたもパヴェルをいつまでも引き止めないでよ。パヴェル、もうゲストルームもシャワーもわかるでしょ。じゃあ明日の朝ね。」

そういって、私はそそくさと2階に上がって、シャワーでなく、バスタブにお湯を入れた。熱いお湯に体を沈めて、自分の体を見た。車の座席であんなに慌ててやらせるんじゃなかったわ。でも、彼の言うとおり、最後にもう一度だけと思ったら、あれしかなかったのよ。

もうパヴェルとは終わり。

とたんに寂しさが襲ってきて、これまでにパヴェルと交わした会話や彼の愛撫やうれしそうな顔を思い出した。夫がいなければ、このベッドで朝までいっしょに過ごせるのに。May-September affair は、結局どっちかが置いてきぼりになって終わるのかもしれない。

・・・

翌朝、まだ夫も子供も寝ているときに、パヴェルと私はキッチンで紅茶を飲み、トーストを食べた。もう秋になっていて、朝の風は冷たかった。

私は彼をよく覚えておこうと思って、彼の顔から目を離さなかった。彼が旅立ちを前にわくわくしているのが伝わってきた。

そっとガレージに下りて、車に乗り、駅に向かった。今日でお別れなのに、これから何時間かずっと彼と二人きりでいられると思うと、うきうきしてきた。

こんなに朝早くても通勤客らしき人たちが数名乗っていた。私とパヴェルは2人がけの席に座って、手をつないだり、肩を寄せたりした。そして、思い出したように、ドイツのことや今日のスケジュールなどを静かに話した。

「6月にキャンプカウンセラーとしてアメリカに来たときは、こんなふうにドイツに帰るとは思ってもいなかったなあ。大学に合格するかどうかもわからなくて、なにもかもが宙に浮いたままだった。でも、ぼくはあなたに出会った。」

「そうね。こんな偶然ってないわよ。キャンプはほかにもたくさんあるし、あなたがうちの子のグループ担当でなかったかもしれない。それより、あなたがビザのことで私に電話してこなかったら、キャンプで終わりだったわ。」

夫がタイで女を買って以来、私と夫の間が最悪の状況になり、その後やっと私がなんとか立ち直りかけていたときだった。もし1年前なら、とてもキャンプカウンセラーと長話をする精神状態ではなかった。

いろんな条件がうまく重なった出会いだった。

・・・

「あなたの親切は忘れないよ。一夏の間だけの愛人だったとしても、ぼくはあなたを愛してる。いつもあなたの幸せを願ってる。」

「ありがと。私もあなたに幸せになってもらいたいの。あなたの結婚式には呼んでくれるんでしょ。花嫁さんに会いに、ベラルーシまで行かなくちゃね。」

「その前に、大学の卒業式に来てくれるとうれしいな。今度はぼくが空港までお迎えに行って、あちこち案内してあげる。ドイツだけじゃなくて、ベラルーシもロシアも。」

私は彼の素朴な言葉を、たぶん実現しない物語だと思って聞いていた。

(次回その39に続く)



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