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愛人ごっこ その20

2009.07.17 (金)


(前回その19の続き)

濡れた服はカヌーに乗っている間にいくらか乾いたが、これでは車に乗れないし、やっぱりちょっと寒い。プール施設のシャワーを借りよう。

トーマスにお礼を言って、私たちはプールへ向かった。

パヴェルに子どもたちを任せて、ロッカールームに入り、シャワーのハンドルを回したが、いつまでたっても熱くならない。もう止められたのか、故障だろうか。

しかたなくショートパンツを脱ぎ、車に積んでおいたタオルで下着だけの下半身を被った。シャツは生乾きだったが、どうにか我慢できた。でも、濡れたブラが張り付いて気持ちが悪い。

パヴェルに冷たいシャワーの話をするとますます困った顔をした。それでは、カウンセラーの宿舎に来て乾かしたらどうかと彼は提案した。夏休み中はカウンセラーが大勢いた宿舎も、今ではほんの数人しか残っていない。

彼が寝起きしている場所を見たかった私は、そうすることにした。

・・・

そこはバンガローみたいになっていて、バンク・ベッドが何列も並んでいた。リビングルームにはルーマニアとチェコの女の子が二人いた。

「まあ、どうしたの!? パヴェルがカヌーでどじったのね。あんた、大変なことしでかしたじゃないの。訴えられるわよ。」と彼をからかった。

彼は私に誰もいない部屋を使ったらどうかと勧めた。タオルを借りて行ってみたが、ずぶぬれになった服はそう簡単に乾かなかった。おそらくプールに併設されたシャワールームを使うのが前提なのか、ここにはシャワーがなかった。

あきらめた私がリビングへ戻ると、彼は子どもたちにクッキーを与えていた。そして「大丈夫?」と心配そうに私に聞いた。私がうなずくと、「ロシアの音楽があるんですよ。」とCDを見せた。

CDケースにはキリル文字でいろいろ書いてあった。

「わたしね、あれからキリル文字の勉強をして、読めるようになったのよ。でも、飾り文字でわからないわ。これ、リュビって読むの? リューブ?」

リュベ。リュベはわりと人気のあるグループなんですよ。ボーカルもいいし、ちょっと聞いてみませんか。」

そうして、私は彼の隣に座り、初めてロシアのポップミュージックを聴いた。何を歌っているのかさっぱりわからなかったが、なぜか懐かしく心惹かれるものがあった。

パヴェルが小さな声で口ずさむ横顔を見つめながら、彼がこんなふうにロシア語で歌うのを聞くのも初めてだと思った。そして何もしゃべらず、彼と目を合わせ、ずっとこうしていたいという気持ちでいっぱいになった。

・・・

そうだ、に電話しなければ。予定よりだいぶ遅くなっている。

「もしもし? あの、私だけど。いま子どもたちとパヴェルの宿舎にいるの。カヌーが転覆して私が湖に落ちてしまったものだから、ここで乾かしてるの。もう少しで帰るから。」

夫は少し不機嫌だった。「危ないなあ。着替えは持っていかなかったのか。子どもたちは大丈夫なのか。」

電話を切って、私はパヴェルにそろそろ帰ったほうがよさそうだと言った。

この宿舎のあたりは坂道で、しかも舗装されていなかった。登るときには気にならなかったけれど、降りるときは私のサンダルが砂利ですべって怖い。辺りはだいぶ暗くなっていた。

子どもたちは借りた懐中電灯で足元を照らしながら、すたすた降りて行った。

パヴェルは何度も転びそうになる私の手をつかんで、抱きかかえるようにして歩いた。そして、車のところに着くまで、私たちはそうしてお互いのを感じながら、黙って、ただ歩いた。

・・・

家に着くと、夫が待っていた。

そして、下半身をタオルで覆った私を見て、そんな格好でいたのかとあきれた。「だって、びしょぬれだったんだもの。」とあしらって、私は2階のシャワーへ向かった。

子どもたちが、私がカヌーから落ちたときの様子をおもしろおかしく夫に報告しているのが聞こえた。

「パヴェルの部屋でロシアの歌を聴いたよ。パヴェルはおかあさんにそのCDプレゼントしたんだよ。」

シャワーの中で、なぜかくすくす笑いがこみ上げてきた。そして、パヴェルのきれいな横顔と体のぬくもりを思い浮かべた。

彼は私と同じことを考えているのだろうか。

(次回その21に続く)


<今日の英語>

I think you may have gone a bit too far.
あなたの考えは、ちょっと行き過ぎだと思います。


子どもをモールに置き去りにした大学教授が訴えられたのは、教育も経済力もある女に対する恨みが根底にあると書いたコラムニストへのコメント。あなたのコラムにはこれまでずっと賛成できたけど、今回はちょっと考えすぎだと思います。教授が母親としての義務を果たさなかったのは事実ですよ。



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