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愛人ごっこ その12

2009.07.10 (金)


(前回その11の続き)

翌朝、夫が会社に出かけ、子供たちがスクールバスに乗ると、パヴェルを迎えに車を走らせた。

今日は二人きりで過ごせる。

銀行に行って、口座を開き、戻ってくるまでに1時間半はかかるだろう。昼食はどうしよう。彼は休みをもらっていたけれど、夕方からキッチン、夜はプールで働くと言っていたから、そうのんびりはしていられない。

子どもたちは4時に帰ってくる。せっかくの休みを子どもの相手でつぶすのはかわいそうだ。とすると、子どもが帰る前に彼を送っていかなくてはならない。

ともかく、今日は彼の口座に入金するのが目的だと思いなおして、駐車場へ乗り入れると、彼がプールの建物の前にあるベンチに座っているのが見えた。約束通りだ。もっとも、彼が大学にいけるかどうかの瀬戸際なのだから、当然といえば当然か。

私に気がついたパヴェルは、大股で歩いてきた。やっぱりほっそりしているけど、がりがりではない。薄い筋肉が適度に付いていて、しなやかな体である。ボディビルダーみたいな体は私の好みではない。

「おはよう。早めに着いたと思ったけど。いつから待っていたの?」

「おはようございます。5分くらいです。あなたを待たせてはいけないと思って。迎えに来てくれてありがとうございます。」

「必要な書類持ってる? 銀行の口座を作るには社会保障番号がいるけど。それに何か身分証明書がいると思う。」

「キッチンでお給料を貰ってるので、番号はあります。あとは、関係のありそうな書類は全部ここに持ってきました。」

「じゃあ、大丈夫ね。口座の名義はもちろんあなただけど、住所はうちの気付にしたらどうかと思うの。これから明細書なんかも届くだろうし。」

「そうですか。ご迷惑でなければ、お願いします。そうしていただけると。」

「じゃあそうしましょう。私はシティバンクを使ってないけど、手続きはどこでも同じだと思うわ。」

・・・

銀行に着くまでの30分間、また私と彼はいろいろな話をした。キャンプの短い時間に話したベラルーシやロシア語についてではなく、もっぱら彼自身のことだった。

私はささいなことも聞き逃すまいとした。そして、ベラルーシの大学生だった彼、ドイツでオーペアをしていた彼の姿を想像した。まだ21歳なのに、私なんかよりずいぶんいろんな体験をしている。でも、やはり21歳、ときおり言うことが幼い。

私と目が合うとにっこりと微笑んだ。私にずいぶん気を使っている。彼にとって4000ドルは大金だ。

銀行の窓口で口座を作り、さっそく小切手を預けた。これで残高は5000ドル近いはず。

ふと、この小切手が換金されるのにどれくらい時間がかかるかと聞いてみた。「5日間です。金額が大きいので、2日目で500ドル、3日目で1500ドルといった具合です。だから全額となると5日間ですね。」

それでは間に合わない。なんとか一両日中にできないかと聞いたが、だめだった。「これが現金か、あるいは銀行小切手ならその場で残高に反映されるんですが。」

パヴェルに会えることで頭がいっぱいだった私は、銀行間の決済に要する時間を考えていなかった。これでは何のために小切手を切ったのかわからない。

「パヴェル。この小切手が換金されるのを待っていたら、ビザは下りないと思うわ。もう一度戻って、今度は私の銀行に行きます。そこで銀行小切手を用意して、もう一度シティに来ましょう。それしか方法がないもの。」

彼は銀行の仕組みがよくわかっていないようだったが、私に従ってまた車に舞い戻った。

また4000ドルにすると、同じ金額で混乱しそうだ。こっちは5000ドルにしよう。3000ドルでは、夫の言うようにギリギリかもしれない。

・・・

予定外の問題で彼は少し慌てていた。まだ21歳だし、1年前まで閉鎖的な旧共産圏で暮らしていたのだから、無理もない。私は彼を保護したくなった。

私の銀行に行き、窓口で5000ドルの銀行小切手を作らせた。そうして、シティバンクに戻って入金し、無事に6000ドルの残高証明がもらえた。あと5日すれば4000ドルもクリアして、総額1万ドル。もしだめなら、その証明もファクスしよう。

パヴェルは、合計9000ドルものお金を私が融通することに恐縮していた。

「いいのよ。これは非常時のために用意しておいたお金なんだから。今がまさに非常時じゃないの。ビザが下りて、あなたが無事にドイツに行って、入学手続きが終わったら返してくれればいいの。返してくれなかったら、M大学まで集金に行きますからね。」

彼の不安を取り除こうと、からかい半分で言った。彼の行く大学、彼の住む部屋を見てみたい。もちろんそんなことはできない。

彼は私に恩を感じているが、私はもっともっと手助けしたいのだ。あと1ヶ月近くはNYにいるらしい。

その間にできることはたくさんありそうな気がした。

(次回その13に続く)


<今日の英語>

You have just lucked out.
うまくやったなあ。


兄猫は毎朝私を4時に起こしては、叱られる。でも、今日は次男がバナナケーキをほとんど一人で全部食べてしまって、私に怒られた。一部始終を聞いていた夫が兄猫へ言った一言。これで家の中で一番悪いのは、おまえじゃなくて次男になったよ。自分では何の努力もしてないのに、ラッキーだね。―それでも、明日の朝はやっぱり4時起きで、首位奪回でしょうよ。



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