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愛人ごっこ その9

2009.07.08 (水)


(前回その8の続き)

都会と違って、ここにはタクシー会社が2社くらいしかない。パヴェルが電話しても、すぐには配車できないかもしれない。でも30分ちょっとあれば来られるだろう。

45分経っても、彼は現れなかった。タクシーがつかまらないのか、お金がないのか。それとも気が変わったのか。

パヴェルがうちに来ると知って、子どもたちは興奮していた。そして、長いドライブウェイの端っこまで行って待つと言う。それは危ないから、せめて玄関で待ちなさいと言い聞かせなくてはならない。

すぐには来ないわよとクギを刺しておいたのに、まだ時間の感覚が発達していない子どもたちは、何度も「まだ? まだ来ないの?」とうるさい。

1時間を過ぎて、もしかして用事ができたかもしれない、今日は来ないかもしれないと子供たちをなだめて、子ども部屋に行かせた。

私があきらめてかけていたころ、二階の窓から見ていたらしい子どもたちが「車が来た!パヴェルだよ!」と叫んだ。

・・・

本当に来たんだろうか。深呼吸して、気持ちを落ち着かせる間もなく、彼はデッキの方から姿を見せた。目と目が合った。

私たちは歩み寄り、ごく自然にごく軽く、初めて抱擁した。彼の体臭はほとんどわからなかった。

「こんにちは。どっちから入っていいかわからなくて。突然すみません。」

「あやまらなくていいの。そっちは裏口だけど、どっちでもいいわよ。お久しぶりね。もう子どもたちが喜んじゃって困ったわ。タクシーが来なかったの?」

「運転手がこのへんの地理に疎くて、ぐるぐる回ってしまいました。遅くなってごめんなさい。」

彼は携帯電話なんて持っていなかったし、だいいち森に囲まれたうちの周辺では携帯はつながりにくい。

「大変だったわね。ともかくお入りなさい。なにか飲み物でもいかが?」

最初に会ったときと同じ、思いつめた顔をしたパヴェルは何もいらないと言い、電話でできなかった話を始めた。

・・・

「あなたに言わなかったけれど、キャンプに来る前にぼくはドイツのM大学入学願書を出していました。ベラルーシのぼくを受け入れてくれるかどうか、確率は半々だと思って、家族とドイツのホストファミリーにしか話をしてませんでした。

8月になっても返事が来なかったから、やっぱりだめだったとあきらめていましたが、一昨日手紙が来ました。今度のセメスターから大学に行けるんです。」

「まあ、よかったじゃない。Mっていう町の名前、聞いたことがあるわ。キャンプの後どうするかわからないって言っていたのは、そういうことだったのね。それで、ドイツに行くかどうか迷ってるの?」

「いえ、行きたいです。こんなチャンスは逃したくない。でも、大学はぼくの銀行にお金がないと、学生ビザは発給されないと言ってきました。ぼくはオーペアをしてお金をためて、カウンセラーの仕事もして、いくらかあるんですけど、それでは足らないと言われました。」

―なあに、やっぱりお金の話じゃないの。ドイツの大学っていくらなのかしら。アメリカと違ってヨーロッパは無料だと聞いてたけど、授業料じゃなくて生活費かしら。

「それで、お金を貸してほしいんです。知り合ったばかりのあなたにお願いするべきじゃないとわかっていますが…。」

「あら、そんなことないでしょ。それにあげるんじゃなくて、貸せばいいのね?」

「ええ、銀行の残高証明を提出して、ビザが下りたら、すぐお返しします。」

「銀行にはいくらあればいいの?」

「それが大学の書類にはいくらとは書いてないんです。ぼくはいま1000ドルあるので、たぶんトータルで3000ドルあればいいんじゃないかと思うんですが。」

お金に余裕のあるときだった。2000ドルならたいしたことない。それに、あげるんじゃないんだし。

「私はあなたに貸してもいいんだけど、に聞いてみないとね。このごろ帰宅が遅いから、今夜夫と話して、明日あなたに電話してもいいかしら。」

「あんまり時間がないんです。期限までに残高証明を送らないと、入学許可が取り消されます。」

会社に電話してみようか。でも、夫はパヴェルのことは話だけで、一度も会ったことがない。1日遅くてもだめなのかしら。ほんとに大学に必要なお金? 

私は迷い始めた。

(次回その10に続く)


<今日の英語>

It's a drop in the bucket.
それは焼け石に水です。


NPRラジオで経済学者の一言。フード・スタンプ(アメリカ政府が生活保護者に発行する食料配給券)をもっとたくさん発行しても、経済成長には結びつかない。全体から見て、効果はいかにも少ない。a drop in the ocean とも言う。



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