予約だけで疲労困憊

2013.04.25 (木)


日本に行くとなれば、まずは切符の手配である。

しかし、すぐに取り掛からなかった。たまに切符の値段を調べたりしたが、真冬なのに高く、格安はまだ出ないだろうと思った。

パート仕事はしていたし、次男の病院は遠く、医者や学校とのやり取りもあって、落ち着かなかった。そのうち、冬のジャケットが要らなくなり、台所の窓から見えるクラブ・アップルが芽吹き始めた。

すでに3月末。出発予定日まで2ヶ月を切っていた。

いつもJFKから成田だったが、今回は羽田という選択肢がある。あの成田エキスプレスに乗らなくて済むぞと、気分も軽くなる。実家は地方なので、東京駅から新幹線、さらに在来線にも乗り換えねばならない。NYの自宅を出てから実家の玄関に入るまで、24時間の旅だ。少しでも短いほうがありがたい。

しかし、現実は甘くなかった

羽田着は夜の10時15分。帰りは早朝6時55分発。いかにもビジネスマン向けのスケジュールである。

これではとても地方へ直行できないし、帰りはいったい朝何時に起きればいいのだろうか。成田のほうがまだしも便利かもしれない。しかし、成田エキスプレスはどうする。あんなものにお金を払いたいのか。東京駅についてから新幹線乗り場への迷路はどうする。いつも迷ってクタクタになるではないか。

だんだんイライラしてきて、そのうち、いったい誰がこんな時刻表を作ったのよ!と夫に当たってもしょうがないが、言わないではいられない。

JFKへの送り迎えは夫に頼むが、平日の早朝はラッシュアワー。短気な夫には危険だ。帰りは週末にするしかない。


         *


巷のうわさどおり、もはや格安なんてなかった。昔を知っているだけに、どれを見ても高く、決断できない。

窓際に二人一緒に座ろうと思うと、行きはお得意様の優先席しかなく、どうにか通路側とその横が取れた。モタモタしていたら、取れなくなってしまう。5月で学校が終わる州もあるし、悩んでいる余裕はない。帰りはさすがにまだ座席が残っていた。

燃料費と税金込みで、一人当たり1,222ドル。長男と二人分で2,444ドル。切符代と燃料費が半々くらいだった。

夏休みに入ってからならともかく、5月20日前後なのに安くない。

安くないが、よく考えたら、地球の反対側まで13時間で連れて行ってくれるのである。500ドル分の燃料くらいは必要かもしれない。それに、パイロットにフライト・アテンダントにメカニック、空港で働く人たちの給料も払わねばならない。そんなに安く飛べるわけがないのだ。

そうやって自分に言い聞かせ、その後の値段の推移は見ないようにしている。精神衛生に悪い。

ケチな私は、返金不可の切符を買ったからには、それを無駄にできない。

日本行きの覚悟を決めた。


          *


いつもだったら新幹線の時間を調べるところだが、今回は東京に一泊するためにホテル探しである。

ホテルのロビーを出たらチェックイン・カウンターと言うエクセル東急にするつもりが、国際便ターミナルにはシャトルバスに乗って10分もかかると知り、がっかりした。なんで繋げないのだ?!

期待していただけに、フライトスケジュールとこれで、羽田のイメージががくんと落ちた。

地図を見てもよくわからないが、動く歩道が作れないのだろうか。しかも、朝一番の出発バスは5時だった。それで間に合うのか。バスが満員だったら次のバスに乗れとある。ずれ込んでいったらどうするのだ。

こっちも悩み、あちこち検索して、もっと早い早朝バスが出る別のホテルにした。朝食込み大人二人で14,200円。帰りは朝食を空港で取ることにしたので、少し安い。

この価格が適当なのかどうかわからないが、それ以上検索する気力がなくなった。

旅行が好きな人は、計画段階からわくわくするらしい。自分が行かなくても、他人の旅行計画を立てるのが楽しいなんていう人もいるらしい。

私は座席指定のサイトを見るだけで、気分が悪くなる。飛行機とホテルの手配だけで疲労困憊してしまった。


         *


これで飛行機もホテルも確保できた。

ところが、旅行も出張も軽々とこなす姉がはりきって提案する。

せっかく東京に一泊するなら、そのまま田舎に行くのはもったいない。到着日だけ羽田付近に止まって、そのあとは横浜に2泊しろという。そして、東京、横浜、鎌倉に長男を連れて行きたいという。

私はホテル検索に戻り、ふだん縁のない日本の旅行サイトをウロウロした。

幸い、姉が2件に絞ってくれたので、姉の会社に近いほうに決めた。2泊で朝食付き、22,000円。長男と二人で42,000円。

時期的に割引率が高いせいか、姉の会社で使える割引とどっちも同じくらいだった。

「もっと安いホテルでもいいんだけど」とお金を出し渋る私に、「あー、だめだめ。あんたにはビジネスホテルなんか泊まれないわよ」と姉。確かに私は文句が多いし、神経質だが、か弱くもない。

むかし、アラバマかテネシーの田舎で親戚の結婚式に呼ばれたとき、皆が泊まったホテルがいわゆるモーテルだった。

なんだかねっとりしたシーツと枕。部屋にこもる妙な臭いと、隣や上下の部屋から聞こえる音。あれは最悪だった。2泊したが、私は2日目はもっとまともなところに泊まろうと夫に訴えた。そのときの話を姉は覚えているのかもしれない。東京ならそんなひどいところはないと思うのだが。


          *


東京周辺の観光は姉に一任した。

私はどこになにがあるのか知らないし、知っていてもどうやって行くのかわからない。人ごみも観光も苦手だから、一人でホテルで昼寝したいくらいである。せっかく高いお金を出すのに、シャワーに入って夜寝るだけなんてもったいない。

これまでの出費をまとめてみる。

飛行機の切符 244,400円
羽田のホテル到着日 14,200円
羽田のホテル出発日 12,900円
横浜のホテル 42,000円
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合計 313,500円

これに、新幹線の切符が加わる。自由席なら二人で16,000円。指定席なら18,000円。

実家では宿泊無料三食昼寝付きではあるが、姉は長男を京都と奈良に2泊3日で連れて行くという。美術専攻ならぜったいに(どこそこのなんとかを)見るべきだと主張する。

すでに、いいホテルを予約したと聞いて、「そんな高いところ払えないわよ。もっと安いとこにして」と言ったら、「あんたが払うんじゃないの。私が払うんだからいいの」とのありがたいお言葉であった。

持つべきものは、独身でキャリアウーマン、かつ気前のいい姉である。


          *


パートではどうせ3週間も休みをもらえないだろうし、たぶんレイオフされる。そうでなくとも、いいかげん飽きてきた。パソコンの仕事なので目も疲れる。この機会に仕事を辞めようと思っていたが、上の数字を見て首になるまで続けることにした。

一銭にもならないブログなんか書いている場合じゃないのだ(でも、書くことが好きなのでやっている。言いたい放題できて、ストレス発散にもなる)。

勝手に増えるアクセス・カウンターを見て、あの数字の前に$とは言わない、せめて¥のマークがついて、私のものだったらなあと妄想する。

あるいは、夫が手伝っているG氏のスタートアップが大成功してお金が儲かったら、ビジネスクラスで日本に行くぞ!と思う。ファーストクラスじゃないところが、私の貧乏性たる所以である。
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