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信頼のかけら

2010.10.02 (土)



その後、夫は部屋からほとんど出てこない。

木曜日にヘルニア手術のフォローアップで医者に行き、また痛み止めの処方箋をもらってきた。その2日前には精神科医からもいつもの処方箋を持ち帰り、その処理について私に尋ねた。

夫は事務的なことが苦手なので、結婚以来ずっと私が引き受けている。そうしないと、ほったらかしになるか、まちがえるかで、結局私の仕事が増えるのだ。

処方箋を私に手渡した後、夫はいつも以上に部屋にこもりっきりになった。

最初のうちは、ドアを少し開けていた。子どもたちがドアの施錠をどう受け止めるかと私に言われたので、ほんの少し反省のデモンストレーションをしただけだ。そのうち以前のようにきっちり閉めて、ドアに鍵もかけるようになった。

何も変わっていない。

もう45時間以上、夫は私に顔を見せない。私はドアが開いていようが閉まっていようが、どうでもよくなった。

夫は、私が2階にいるときに台所で何か食べ、私が出かけているときを見計らってシャワーに入っているらしい。

ルーマニアへの送金で私と口論し、お金を引き出させた後は、必ずそうなる。

夫だってバカじゃない。私に指摘されるまでもなく、自分の話がどれくらい非常識かわかっている。そういう後ろめたいことをした自分を私の前に出せないのだ。普段どおりに振舞えないのがいい証拠である。

それでも夫は強行した。私には絶対に真実を言おうとしないまま。


          *


信頼は大きな岩だった。

夫がこういうことをするたびに、ノミで削り落とされていく。元の岩はだんだん小さくなる。

削り落とされた衝撃で、岩はだんだん崩れやすくなるので、ちょっとしたことですぐにかけらがポロポロ落ちるようになる。非常に大きな力でノミが振られたり、あるいはあまりにも大きなかけらが落ちたりすると、岩全部が崩壊する。

そうやって落ちてしまった信頼のかけらは、戻らない。くっつけようとしても、はがれる。

私の中にあった夫への信頼は、10年ほど前にガラガラと崩れ落ちた。また少しずつ信頼の岩を育てねばならなかった。最初はごく小さな砂粒でしかなかったが、長い時間をかけて石ころくらいにはなった。

でも、絶対に元の大きさにはならない。そして、元の大きな岩に比べたら、とてももろい。信頼という言葉が大げさに思えるくらい、同居人としてのマナー程度のものだ。

夫はそれすらも簡単に破壊してしまう。

それでいて、私への後ろめたさは隠しおおせない。


          *


私は夫にあいそをつかしているのだろうか。それとも、こんなことにも慣れてしまうのだろうか。

なぜか今回はそんなに落ちこまない。ふつうにご飯を作ったり、子どもたちと話したりできる。むしろ考えるのも億劫で、もうどうでもいいというべきか。DV被害者が判断力を失うのに似ているなと思う。

夫が私の信頼や感情よりはルーマニア人との取引を選んだという事実は動かせない。

見損なったとか失望したとかいう段階は、とっくに通り過ぎた。これ以上、私の精神状態を乱されないためには、同居人の愚行として突きはなして見るしかない。

そういう自己防衛のメカニズムが働いているのかもしれない。

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 |  わたし  |  コメント(3)

<今日の英語> 2010年9月掲載

2010.10.04 (月)



9/2/10
Whatever makes you happy.
あなたがよければ、それでいい。

9/4/10
She didn't take the hint.
彼女は察してくれなかった。

9/6/10
You do the math.
計算すればわかります。

9/9/10
She's got good athletic genes.
彼女はすぐれた運動神経の遺伝子を受け継いでいる。

9/10/10
That will set you back 100 dollars.
それで100ドルかかります。

9/11/10
Don't jinx it!
縁起でもない!

9/18/10
We are down to the wire.
いよいよです。

9/22/10
Don't worry. It's on me.
心配しないで。私のおごりよ。

9/26/10
That's just wishful thinking.
それはただの希望的観測だ。

9/27/10
Why are you making yourself so crazy?
どうしてそんなにイライラしてるの?

9/29/10
We'll see.
そのうちわかるでしょう。




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人生は短し

2010.10.05 (火)



子どもたちが学校へ出かけてから、朝食の後かたづけをした。

台所の窓の外には枯葉が舞っていて、カレンダーはもう10月。ついこの間、冬のジャケットをしまった気がするが、昨日あたりから気温ががくんと下がった。

猫たちもいつのまにか冬の仕様になったらしく、毛がフカフカしている(年中空調された室内にいるのに、ちゃんと季節に合わせて毛皮が変わることに驚く)。

お皿をゆすいでいるとき、突然"Life is short."という言葉が浮かんだ。

"Life is short. Be Happy."ではなく、「芸術は長く、人生は短し。」でもない。ただの"Life is short."だった。

家事は同じことの繰り返しで、終わりがない。特に台所では、お皿を出す、使う、汚す、洗う、しまう、また出すが延々と繰り返される。まるで巨大な岩を山頂に上げるように命じられたシジフォスの神話みたいに、やってもやってもきりがない。

毎日ではないが、そう思うことがときどきある。今朝がそうだった。

特に昨夜皿洗い機を回して、ぜんぶきれいにしたところだったので、あーまたかーとガックリしたのだ。こんなことしてるうちに人間の一生は終わるんだなと思った。おそらく、それが"Life is short." につながったんだろう。

もっとも日本人女性の平均寿命が86歳で、アメリカ暮らしで運動不足と脂肪摂取過剰の私だから、6年引いて80歳としても、まだ30年ある。そう考えると、あまり短い気もしない。

特に「死ぬ前に絶対にどこへ行って、あれを見てこれをしたい!」という計画がない人間には、時間があっても結局あまり何もしないまま終わりそうだ。

私は本を読んだり、文を書いたりするのが好きだから、最後まで視力が残ってくれればいい。聴力は4分の1になってもいいが、おいしいものを味わえる舌と胃袋はほしい。最低限動き回れるだけの脚力は必要。本を持ったり、タイプしたりする力もいるか。

案外、欲張るものである。

もっともその頃には iPad が骨董品扱いされるくらい技術が進歩するかもしれない。せめて日本語なまりの英語をさっと理解する音声解読インターフェイスは完成しておいてもらいたい。


         *


夫は92時間ぶりにまともに私に話しかけた。

「お茶を入れるんだけど、飲む?」

「いいえ、結構。」と私。今までの引きこもりは何よ。

「えーと、お金はいつ銀行に入るのかな。」

あー、はいはい、目的はそれでしたね。

「明日。」 本当は今日にでも引き出せるが、夫は知らない。

「明日。明日はドクターGはないから、でもドクターWの後に寄れば…でも、そうすると…。」と夫はぶつぶつ言っている。私以上にどこにも行かない夫が、ルーマニアのためなら銀行でも郵便局でもそのためだけに出かけるのだ。

夫は昨夜、長男を呼んだ。そして、自室のドアを閉めさせた。

てっきりルーマニア人とチャットさせているのだと思ったが、「ルーマニア人の作った家とか、飼ってる犬とか、すごい大きいハスキー犬みたいなのが2匹もいるんだよ。家は自分で作ったんだって。」と後から長男が言った。

「あーら、家は燃えたんじゃなかったの?お金がないのにハスキー犬のえさはどうするのよ。」

「それは別の人じゃない? ダディが見せた写真は女の人が飼ってる犬だったし、赤ちゃんの写真もなかった。」

「あんた、いったい誰と話したの? お金がないのに、犬を飼ったり、家を建てたりできるわけね。」

「誰とも話してない。ただ写真を見せられただけ。名前は知らない。」

「どうしてそこでダディに新しいパソコン買ってって言わないの?」

「だって、ダディ怒るもん。」

「怒ったっていいじゃない。」

これもいつもと同じだ。

そして、夫は子どもたちといっしょにスパイもののテレビドラマを見た。

夫は私を怒らせ、3日くらい私と顔を合わせないようにして、お金が引き出せそうな日に解禁する。その頃には、子どもたちにもふつうに接するようになり、彼らにわざわざルーマニアの話を持ち出す。まるっきりパターン化している。

 
          *


おそらく、ルーマニア人たちはそれほど貧乏ではない。

アメリカの生活水準とは比べものにならないだろうが、ルーマニアの平均的な暮らしをしていると思う。だから、夫が送るお金は、彼らの生活を助けるためのでなく、彼らが(あるいは夫もいっしょに)何らかのビジネスを始めて、夫が資金援助をしているような気がする。

しかし、それも考えるのがめんどくさくなってきた。

夫はいくら私に約束しても、どうにかしてお金をあげる方法を見つけるのだ。下手な嘘をついて。そう思うと、もうどうでもよくなってくる。

夫の給料が半額になったとはいえ、何ヶ月かに1回数百ドル単位のお金がなくなっても、うちは破産しない。これがギリギリの生活をしていたら、10ドルだって出せない。そもそも夫はそんなことを私に頼まないだろう。

不快なことには変わりないが、それが現実である。

人生は短し。

夫は私より10年年上だし、アメリカ人男性の平均寿命は75.6歳(ちなみに女性は80.8歳)。あと18年もないのに、こんなことをしている。

もっとも夫の父親は、持病はあるが元気な85歳だし、夫の祖母の1人は100歳近くまで生きた。長寿の家系ではある。

それにしても、夫はせっかく稼いだお金を赤の他人にあげては、怒る私から逃げて、ストレスのたまりそうな数日を過ごす。そうなるとわかっていて止めないのだから、あきれる。

私はそれに振り回されないようにしよう。

せめて、次に夫がこの話を持ち出すまでは、深く考えないようにしよう。

2年後には長男が大学に行って、そのまた2年後には次男も家を出る。その2大イベントを無事に乗り切れたら、私の仕事は終わる。


<今日の英語>

I almost fell over.
倒れそうなほど驚きました。


アメリカが1940年代にグアテマラで性病の人体実験をしていたことが明らかになった。未公開だった資料を発見した女性研究者が、そのときの衝撃を語った一言。



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体がついていかない

2010.10.07 (木)



先週末からなんだかバタバタしていた。

ハイスクールのクラブがあり、プレイデートがあり、それぞれに送り迎えをした。長男を診療所に連れて行き、ハイスクールのオープンハウスで初めての掛け持ちをした。整形外科医にも眼科検診にも行った。

もともと体力がなく、ふだん動かない私は、これっぽちでくたくたになってしまう。昼寝をして夜も早く寝て、どうにか持ちこたえていた。

ふしぎなことに気力はあった。ただ、体がついていかないという状態である。

ブログを書きたいと思う。話し相手のいない私にとって、ブログに書くことはいろんな意味で大切なのだが、大げさに言えばパソコンを持ち上げる体力がないという感じ。

涼しくなってきたので、例によってお菓子を焼きたいと思う。材料はいつもうちにある。砂糖と小麦粉と卵とバター。私が作るのは本当に簡単なものばかりで、手間というほどではない。それになにより、外で売っているモノが不味すぎる。おいしいお菓子が食べたいと切実に思う。それなのに、疲労困憊していて、手抜き夕食を作っただけでクタクタになった。

なぜかわからない。

更年期障害かもしれないし、単に年を取ったせいかもしれない。あるときにガクッと体力が落ちると聞く。

夫のせいでストレスがたまっていたので、体に出た可能性もある。夫の愚行が引き起こす緊張感は大きい。

あるいは、タグセールの後片付けがやっと終わって、最後のゴミ袋を出せるまでになり、これまでの疲れがどっと出たか。


         *


仕事を持っている人から見たら、ちゃんちゃらおかしいだろう。そういえば、私は仕事をしていたときも、週末は寝たきりになったりした。スタミナはゼロだった。

将来の医療費を抑えるためにも、なんとかしなければと初めて真剣に思う。

近所を散歩したり、ハイスクールのトラックをぐるぐると歩き続ける人たちがいるが、私はそういうのはダメだ。すぐ飽きる。テニスならやってもいいが、レッスンにはお金がかかるし、なによりもまだテニスひじが完治していない。

整形外科のドクターFに、週3回6週間のフィジカル・セラピーを受けるように言われた。レントゲン写真では異常がなく、手術の対象ではなかった。

「痛み止めの注射をしてもいいんですが、私はなるべくやらないようにしています。あれはよく効くので、患者さんが勝手にセラピーを中断してしまうんですよ。」とドクターF。

私はまじめな患者なので、お医者の言うことに従う。さっそく教えてもらったひじのストレッチ(朝晩10回ずつ)も始めた。

そして、今日の午後からセラピーが始まる。

電話で予約をしたら、「これまでフィジカル・セラピーを受けたことはありますか。」と聞かれた。

「ありません。」

アメリカに長く住んで、たいていのことは経験してきたつもりでも、まだまだ初めてのことはあるのだった。そういえば、ひじのレントゲンも初めてだった。

初回は1時間半かかると言われた。週3回も出かけるのは億劫だが、セラピーの場所はうちから5分のところにある。マッサージしてくれるなら、通うのも苦にならないなと期待が高まる。

テニスひじの症状が出てから、すでに4ヶ月。ひどい痛みはないが、ちょっと力がかかるとズキッとする。保険のあるうちに治さねば。

セラピーでどこまでよくなるのかわからないが、セラピーが終わる6週間後にもう一度ドクターFの診察が待っている。


          *


ドクターFのオフィスは大きくて、松葉杖や歩行器を使っている人を何人も見かけた。いかにもスポーツをしていそうな若者もいたし、手術後らしき中年の人もいた。

私はかなり軽症の患者らしい。

ドクターFのあと、いったん家に戻って、30分後には眼科検診へ行った。こちらは車で25分と遠い。

受付ロビーで待っている間、さっそく覚えたひじのストレッチをしていたら、真向かいに座っていたおばあさんが「あの子、エキササイズをしてるね。」ととなりにいた娘さんらしき中年女性に言った。

「テニスひじになったものですから。」と私。

でも、おばあさんは耳が遠いらしい。

「テニスひじですって。」と娘さんがおばあさんの耳元で大きい声で言った。

「ああ、そうなの。」とおばあさん。

私に何か聞きたそうだったが、眼科医のアシスタントがおばあさんを呼びに来た。

おばあさんは1人で立てない。「立てないよ。」とふらつくおばあさん。ちょっと離れたソファにいた若い黒人女性が駆け寄り、娘さんと2人でおばあさんを抱きかかえるようにして立ち上がらせた。

このへんでは黒人は珍しいなと思ったら、ヘルパーだったか。娘さんだって中年というより初老なのだから、力が足らないらしい。

自分が年を取ってきたせいか、老人人口が増えてきたせいか、そういう光景が以前よりも目につく。

私より10歳年上の夫を助手席に乗せ、歩くときには腕を貸してやる自分の将来が浮かんだ。

15歳も年上の夫を持つ義母は、もう何年もそれをやっている。「あなたもそうなるのよ。」と笑って言われたことがある。そんなときまでいっしょに暮らしていればの話ですけどね、と心の中で思った。

そのときからすでにかなりの年月が経った。


<今日の英語>

It was very much a Band-Aid.
一時しのぎにすぎなかった。


政府の失業対策について、テネシー州のある市長がコメントした。「あれは絆創膏を張るという間に合わせ程度のことで、根本的な解決ではなかった。しかも、いまや絆創膏は剥がれかかっている。」




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覚えていない

2010.10.08 (金)



気力はあっても体が動かないので、寝転がって本を読んだ。

こういうときは軽い娯楽読み物がいいなと思ったら、本棚の隅にジェフリー・アーチャーの文庫本が1冊あった。日本語訳である。

500ページと厚めだが、彼の本はすぐ読める。考えなくても読める。何冊も読んだが、ほとんど読み捨て感覚だった。まだ置いてあったのかと驚いた。

モノを減らすべく努力しているが、日本語の本だけはなかなか処分できない。古本で手に入れたものも多く、たいした蔵書ではない。でも、日本語というだけで貴重だ。

アーチャーの本はたいてい10ページも読むと、登場人物の関係や背景がわかる。Page-turner というのはこういうのだなと思いつつ、続きが気になってページをめくる。

いかにも彼が書きそうな設定やら陳腐な表現やらに文句を言いながら、読み進めた。そのうちに本を閉じられなくなった。古本らしいこの本は、ずっと本棚に埋もれていたんだろうか。

315ページ目でハタと気がついた。

この本、読んだことがある!


かつてベトナムで自分を救ってくれた友人のために自分が身代わりで死刑になるというところだった。そこまでまったく思い出せなかった。そのあとの話は、読み進めるうちに、「ああ、そうだった。」と記憶が戻った。

こういうことは前にもあった。

とくに文庫に起こる確率が高い。同じ本を2度買ってしまう。だいたい手にとっておもしろそうなのを買うのだから、そういうこともありうる。

買った本を読み進めて、たいていは10ページか15ページ目あたりで気がつき、しまった!となる。でも、今回のように、半分以上読んで思い出したことはない。

いよいよ危なくなってきたか。

唯一のメリットは、同じ本を新刊みたいに読めることだが、それにしても今回はひどかった。あんまり驚いて、子どもたちに何度も話したらしく、「お母さん、それもう聞いたよ。」と自分が話したことも覚えてないのかと同情された。

だいたいアーチャーみたいな娯楽本なんか、読んでも記憶に残らなくて当然だと自分をごまかしてみた。たとえばアンナ・カレーニナだったら、そうならない。

第一、わたしはどの本も活字を追うことが一番楽しくて、どんな本でも内容はたいして頭に残らないのである。


          *


眼科検診でいくつかの検査をしたあと、「これで終わりです。診察までロビーでお待ちください。」と言われたのに、しばらくして別の検査を追加された。

検査機器の前に座って、あごとおでこをつけると、目の前が真っ赤になった。そして、緑の線でできた大きな印を見るように言われた。視点が定まらず、「あちこち見ないで!」と注意され、なんとか左右の目のイメージを撮り終えた。

それから、やっと眼科医の診察室へ通された。

「さっき、緑のクロスを見る検査をしたでしょう。」とドクター。

「はい。」

「カルテでは2~3年前にやったきりだったので、今日やってもらったんですよ。」

「えっ、あんな検査やったことありましたか。ぜんぜん覚えてないんですけど。」と私はうろたえた。

「ええ、やりましたよ。イメージをお見せしましょうか。視神経です。」とドクター。

「いえ、別にいいです。」どうせ見たってわからない。

あなたの視神経は太いんですよ。3年前もそうだし、今日もそうです。」

そんなことを言われた記憶はまったくない。

「視神経が太いのは、いいことなんですか。それとも悪いこと?」 なんだか不安になって聞いた。

glaucoma(緑内障)になりやすいですね。でも、あなたの場合、生まれつきかもしれないし、この3年でサイズが変わっていないのはいいことですよ。」

緑内障についてはよく知らないが、視野が狭くなって、最悪の場合は失明するんじゃないだろうか。活字中毒の私にとっては、死刑宣告に近い。

呆然としていると、大きなレンズで私の右目を診察していたドクターが言った。

「あなたの右目の角膜に小さな傷がありますね。なにか思い当たるふしはありますか。」

ぜんぜんない。傷ってどんな? 普通に見えているし、痛くもないし、これもまったく予想外だった。もしかして、地下室の片づけをしたときに埃が目に入って、こすったかもしれない。

そうドクターに説明した。今すぐどうにかしなくてはいけない傷ではないらしい。自然に治るかもしれない。

それにしても、最近はお医者に行くたびに、新しい問題が見つかる。

知らなければ済んだようなことが、検査でわかったりする。それで助かることもあるが、命に別状なければ知らないほうがよかったということもある。もっとも、この記憶力では、教えてもらっても全部は覚えていない。


         *


初めて整形外科医に行ったので、長い問診票に記入しなくてはならなかった。

ここでも記憶力が試された。

夫や子どもの誕生日や病歴はともかく、両親や兄弟姉妹の病歴、私がかつて受けた手術の内容と日付、服用している薬(これはリストを作っておいた)、現在の症状(テニスひじ)の発症と経過など。

予想できる質問もあったが、あとはもうハテナマークが飛び交った。

テニスひじについては、炎症を抑える薬のビンに処方された日付があったので、それを持参してよかった。

発症と経緯は絶対に聞かれるだろうと思って、前日に自分のブログを読み直した。いつごろ始まって、いつ主治医に行ったのか、私の記憶とは違っていた。

私のブログは日記ではないが、大きな事件(?)は書いているので、思いがけず助かった。

アメリカでもカルテが電子化されつつある。主治医のオフィスはほとんどペーパーレスになった。そうやって私のデータが蓄積されていく。どこかで私についてのデータベースができているのだろうか。

本人の記憶が頼りにならないとあっては、「komatta3の病歴のすべて」にアクセスしても、こんなは病気していませんと言い出しそうである。

さすがにブログだったら、自分が書いたことなので疑いようもないが、それにも自信がなくなりつつある。


<今日の英語>

After all, I can’t take it with me.
どっちみち、持って行けない。


ある会社の社長が、株の分配によって従業員に会社をあげることを決めた。「投資家から買いたいという申し出がいくつもありましたが、会社が大きくなったのは従業員のおかげだし、彼らが所有すべきだと結論を出しました。私はもう81歳ですし、しょせんはお墓に持って行けないんですから。」



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 |  わたし  |  コメント(3)

フィジカル・セラピー初日

2010.10.09 (土)



初めてのフィジカル・セラピーに行ってきた。

ドクターFがくれたセラピストのリストを見ると、こんな田舎でも各町に3箇所はある。ナースにどこがお薦めかを尋ねたが、「どこもいいですよ~。」と言われた。「どこに行ってもたいしたことないですよ~。」と聞こえた。

頻繁に通うことを考えて、家から一番近いところを選んだ。出不精で運転の嫌いな私には、重要な要素である。

そこはわりと新しいメディカル・オフィス・コンプレックスと呼ばれる大きな建物で、いろんな医療機関が入っている。私の産婦人科医もここでクリニックを持っているので、迷わずにすんだ。

フィジカル・セラピーの場所は思ったより狭かった。入ってすぐ左にガラス窓があり、そこから見える小部屋が受付兼事務室。右手に椅子が3脚あって、両側にいくつかドアが見えたが、いきなりセラピーの広い場所になっていた。

珍しくて、ついきょろきょろと見回す。

音楽がかかっていて、エキササイズ・マシーンやボールがあって、スポーツ・ジムのようにも見えるが、皮製のベッドや治療用の器具が並んでいるところが違う。そして、起き上がるのも難儀そうなおじいさんや、歩行器で移動するおばあさんがいて、ここは治療の場だとわかる。7人くらい来ていた。

私は初診なので、また問診票に記入するところから始まった。なんだか最近こんなことばかりしているなあと思いつつ、だんだん適当になってくる。


          *


しばらくして、アジア風の顔つきをした青年が私のカルテを持ってやってきた。英語になまりがあるが、どこの国かわからない。ベトナム人だろうか。

整形外科医のドクターFもそうだが、最近はお医者さんが若くて驚く。私が年を取っただけなのに、こんな若い人がお医者さんかと感心する。

セラピストの青年はNorman と名乗ったと思ったが、あとで他のセラピストが呼んでいたのはArnold だった。主に彼が見てくれたが、セラピストより患者の数が多くて、3~4人のセラピストが全体を見回っているように見えた。

Norman/Arnold は、私の話を聞き、腕を動かしたり、質問したりして、さっそくセラピー開始となった。

まずベッドに横になり、腕にあったかいものを巻かれた。10分そのままにしていろと言う。ホカホカで快適だが、右腕以外の部分が寒い。全身これに包まれたらさぞかし気持ちがいいだろうと想像した。

寝ているだけだから、楽チンではあるものの、非常に退屈。本でも読みたいところだが、セラピー中にそんなことをしている人は誰もいない。BGMは若者向けでうるさい。テレビはスポーツ中継をしていたが、寝ていては見られない。

横目で他の人のセラピーを眺めた。ぱっと見にはどこが悪いのかわからない人のほうが多い。その中でも特に私は軽症だ。

そういえば問診票で「今のあなたの痛みのレベルはどれですか。今すぐERに行く必要がある痛みを10として、1から10の数字で答えてください。」というのがあった。こういう主観的な質問は難しい。ひじの不快感に慣れてしまって、正常な状態がわからない。根拠もなく、2に印をつけておいた。


           *


腕を暖めたのは、文字通りウォームアップだった。

それからは、ペダルを手でくるくる回したり(永遠の10分間)、ハート型のプラスチックのボールを握ったり離したり、握力テストみたいな器具を指で一本ずつ押したり、穴のたくさんあいたシートに5本指を入れて広げたりした。

こんなに右腕を使ったのは久しぶりである。ともかく腕の筋肉を鍛えなくてはいけない。

それにしても、どの動作も単純で退屈そのもの。本が読めなくても、せめてNPRのラジオ番組が聞きたい。ダメもとで、次回はMP3を持って行こう。

やっとお待ちかねのマッサージになった。

Norman/Arnold がマッサージクリームをつけて、私の右腕を押したり伸ばしたりした。なんだか素人くさい。

マッサージだけでなく、プログラムそのものが「こんなことで効果があるんだろうか。」と疑わしくなった。

マッサージはまあ気持ちがいいのだが、ネイルサロンに毛が生えた程度に思えた。本当にセラピストなのか、ただのアシスタントなのか。本当に資格を持ってるんだろうか。器具やベッドの消毒はちゃんとやってるんだろうか。

私はもともと猜疑心が強く、しかも精神でも肉体でもセラピーと呼ばれるものを信用していない。医学部を出たMedical Doctor である主治医と整形外科医がフィジカル・セラピーを受けろというのでやっているだけだ。

ハンド・マッサージのあとは、超音波の出る器具でマッサージ。そして、電気の流れる器具につながれて、氷の入ったビニール袋をひじの上に置かれて、ビリビリと10分間。

炎症を抑えるためには冷やさなくてはいけないそうだ。暖かいほうが何倍も気持ちがいいが、あれはエキササイズの前だけだと言われた。


       *


こんなメニューをこなして1時間半が過ぎた。

これを週3回、6週間もやるのか。ああ、めんどくさい。

しかも、痛みはセラピーのあとのほうが強くなった。ウェブサイトに初回はそういうケースが多いと書いてあったが、フィジカル・セラピーは科学的に証明されているんだろうかとまた疑いはじめる。

すぐに効果が出るわけではないとわかっていても、なんだかがっかりした。

そういう不届きな考えを持っているのは私くらいなものだ。

スポーツで故障したらしい若い男の子も、ひざの手術をしたという中年女性も、歩行器につかまっているおばあさんも、かなり高齢のおじいさんも、真剣に取り組んでいる。怪我や後遺症を克服したいという意欲が伝わってくる。

今日は男性のセラピストばかりだったが、次回の時間帯にはシンディという女性が来るとのこと。このセラピー・センターのオーナーらしい。彼女に期待しよう。


<今日の英語>

I can go grab one.
私が取ってきます。


スーパーのレジで、アボカドの一つが傷んでいることに気づいた買い物客の女性。レジの人が、誰かに代わりを取ってこさせましょうかと申し出た。でも、身軽そうな彼女は自分でやったほうが早いと思ったのか、「自分で取ってきます。すぐ戻ります。」と果物売り場へ向かった。



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夫の小遣い要求 

2010.10.10 (日)



私がベッドでパソコンをしていると、夫がドアの前を通りがかった。

夫にブラシをかけてもらうのが好きな妹猫が、みゃおみゃお騒いだ。このところ夫が私を避けていたため、必然的に妹猫も無視されっぱなしだった。彼女は怠慢なブラシ係りに苦情を述べたのだ。

"All right, all right."となだめつつ、ベッドの端っこでブラシを始めた夫は、「ちょっとセンシティブな話になるかもしれないけど、提案がある。」と言う。

どうしてこういうパターンになるのだろう。

以前はセックスの話のほうが大きな比重を占めていたが、最近はまずお金の問題と思って間違いない。もちろん、お金の話の裏にいろいろあるのだが、表向きは「うちのお金を他人にくれてやるかどうか」がテーマである。

私は返事もせず、そのままパソコンの画面を見ていた。

手を休めると妹猫が抗議するので、夫はブラシを続けながら切り出した。

「前に会社に行っていたときは、1週間100ドルのallowance をくれてたね。」

「あれは会社でランチを買うためでしょ。それ以外は何でもクレジットカードで買ってたじゃない。」

「それはそうだけど。今は給料が半分だから、半額の50ドルをもらえないかな。そうしたら、何か買うときにはその予算から出すよ。クレジットカードを使ったら、きみに現金を渡す。」

「あなたが買うのは、本とゲームとオンラインの購読くらいでしょ。それに気をつければいいだけじゃない。50ドルにしたって、結局ルーマニアに流れるんだったら、私の答えはノー。」

ちょうどそのとき玄関の呼び鈴が鳴り、長男の友だちがやってきた。久々のお泊りである。

私はまだ何か言いたそうな夫を残して、玄関に下りていった。


         *


送ってきたお母さんと5分ほど立ち話をして2階に戻ると、夫もまたやってきた。

「だから、50ドルと決まっていれば、何かを買うときに考えるだろうと思ってるだけだよ。ルーマニアじゃない。」

前科者はどう言い訳しても白々しい。

「そんな金額を設定しなくても、何か買いたいと思ったら私に聞けば? その場で決めてあげるから。」

「ぼくは夜中の3時にアマゾンを見たりするんだよ。きみに一々お伺いを立てるなんてやりたくないね。」

「じゃあ、これから私がクレジットカードの明細を毎日見て、あなたが使いすぎてたら警告します。それでいいでしょ。なんで50ドルの現金を動かす必要があるわけ? そんなことしたって意味がないでしょ。アマゾンのギフトカードを買ったりするんじゃあね。だいたいあなたにはペイパルもあるし、自分だけの普通預金口座も開いたし、そこから買えば?」

「銀行口座には何も入ってない。支出を抑えるアイディアだったんだけど、じゃあクレジットカードの明細を見ててくれ。」

夫はとりあえず引き下がった。


        *


夫が休職願いを出してからもう1年半になるが、それまで一度たりとも「お小遣い」の話は出なかった。家にほとんどいるのに、なんでお小遣いがいるのだ。

だいたいあれはお小遣いではなくて、カフェテリアでの昼食代だった。自動販売機でスナックやソーダを買ったり、たまには同僚と外でランチを食べたりするだろうという理由で、多めに現金を渡しただけだ。

毎週きっちり100ドルではなく、夫が自宅で仕事をする日が多ければ翌週は渡さなかったし、夫が手持ちが少なくなったと言えば適当に追加した。それで何の問題もなかった。

夫は文句を言うどころか、私がATMで現金を引き出すという雑用を引き受けたことに感謝していた。

それなのに、今頃になってこんな話を持ちかけてくる。

この間の600ドル送金の際に、もうルーマニアへは送金しないという念書を書きながら、夫はまだ抜け道を探しているのだ。


         *


私はこのところ電気毛布を買うべきかどうかで悩んでいた。よさそうなのが20%割引になっていて送料無料なのに、決められない。普通の毛布はあるし、ヒーターはあるし、猫と寝れば暖かい。電気毛布がなくても生きていける、モノを増やしちゃいけないと迷っていた。

しかし、こんなふうに夫がおかしなことを言い始めると、とたんに悩んでいるのが馬鹿らしくなる。

私にはお小遣いはない。買いたいものを買う。ただし、もともとケチで、アメリカでは買いたいものもめったにないので、支出が自然にコントロールされている。

電気毛布はひじを暖めるのに使えるし、最近は更年期障害のほてりもなく、逆に冷え症になってきた。決して無駄な買い物ではない。むしろ必需品に近い。それでもなかなか決心がつかず、購入のボタンをクリックできなかった。

夫の下心のありそうな提案は、はからずも私の電気毛布購入を後押しすることになった。




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信ずるものは救われる?

2010.10.11 (月)


フィジカル・セラピー2回目は土曜日の朝10時だったが、思ったより空いていた。

ここは仕事や学校のある人たちに合わせて、平日は朝6時から夜8時まで開いている。だから、週末が特に混むということはないらしい。

私は毎日が日曜日だけれど、特に土日は出かけたくない。最初のセッションが木曜日だったので、月曜日では時間が空きすぎるという理由で土曜日になってしまった。次からは月水金にしてある。

受付で記名し、待つこと5分。

今日は女性のセラピストの方が多い。初日にもいたのは、大柄で声も大きい男の人だけだった。彼は有資格者らしく、いろんな施術をほどこしていた。

レジーナと名乗る若い女性に案内されて、まず右腕を暖めるところから。彼女も素人っぽいが、「これでいいですか。熱くなり過ぎたら呼んでください。」などと気を使ってくれる。

MP3を持ってくるのを忘れたので、10分間ぼんやりすることにした。かなり熱いが、こんなもんだろうと思って我慢したら、腕の内側がほんの少し低温やけどみたいに赤くなってしまった。

「シンディがすぐに来ますから、ここでお待ちください。」とレジーナ。

金髪の中年女性がやってきて、「ハーイ。じゃあ、マッサージを始めましょうか。」 

話し方にも態度にも自信が感じられる。そして、初回のアーノルドに比べると、かなり強い力でぐいぐい私の腕を押す。痛いが、これくらいでないと効果はないのだろうと我慢する。素人離れした押し方なので、ついでに腰のマッサージもお願いしたくなった。

私の質問に答えたり、筋肉をほぐしながらも、レジーナやもう1人の女の子にあれこれ指示を出している。若い子たちはお互いを練習台にして勉強していた。

やはりシンディは資格のあるセラピストだ。もしかしたら、彼女とあの大柄な男の人の2人だけが本当のセラピストで、他は単なるアシスタントではないかと思えてきた。


          *


ハンド・マッサージに続いて、レーザーを使ったマッサージ。シンディがやってくれたが、玩具みたいな器具で、あいかわらず私は疑いの目で見る。

1ポンドのウェイトを使って腕の曲げ伸ばし。ふだん何のトレーニングもしない私に、450グラムは重かった。でも、それが一番軽いものだった。

あとは、ゴムのボールを握ったり離したり、フレキシブルな棒を左右に振ったり、伸縮するゴムの布を足で踏んで端っこを持ち上げたり、前回とは違うメニューになった。でも、やっぱり退屈。

そして、抵抗をつけてのペダル回し10分間。あまりに単調なので、一句ひねろうとしたが、何も浮かばない。

最後に、アイスパックをしながら電気を流した。

今回のコースも1時間半かかった。ときどき待ち時間があったので、実際は1時間ちょっとだったか。なまけもののくせに時間が惜しい私は、ぼんやりする以外に時間を有効に使う方法はないものかと考える。

そして、今日も老若男女さまざまな故障をかかえた人が来た。

高校生らしい男の子と女の子は、どちらもひざを痛めたらしい。ショーツをはいた女の子の足は見とれるくらいスラリとしていた。男の子は、母親が買ってきたダンキン・ドーナッツのベーグルをかじりながらやっていた。アメリカ人はどうしてこういつも食べたがるんだろう。食べ盛りにしても、私ならセラピーの真っ最中に差し入れなんかしない。

どの人も自分のやるべきことがわかっているらしく、セラピストにいちいち聞かず自分でいろんな器具に移動してやっていた。私だけが、次に何をしたらいいのかわからない。

終わったあとは、やはりズキズキした。でも、シンディのおかげでわずかながらセラピーに期待が持てた。


         *


1回目のセッションの後で、「フィジカル・セラピーってどうも信用できないのよ。あんなの、医学的に証明できないじゃない。時間とお金の無駄だと思うのよ。」と長男に言ったら、「お母さん、信じてやる人のほうが効き目があるんだって、知ってた? なんでもそうなんだよ。お母さんもね、信じなくちゃだめなんだよ。」とたしなめられた。

信じるものは救われるじゃないが、素直に取り組む人は体も素直なのかもしれない。頑固で人の意見を聞かない私は、筋肉も抵抗しているのかもしれない。

セラピーはあと16回残っている。


<今日の英語>

I can stay.
まだ居られます。


隣のベッドでひざに電気を流していた男の子が、「アイスをする時間ある?それとも、もうお迎えが来る?」とシンディに聞かれたときの返事。




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カシミアを選ぶ猫

2010.10.13 (水)



朝夕は寒いくらいで、昼間も温度が低い日があるが、まだヒーターが必要ではない。空調がなくてもやっていける。

それなのに、うちではエアコンがついている。

アレルギー持ちで暑がりな夫が自分の部屋のドアを閉めているからである。

気温が上がると自動的にファンが稼動する設定だが、どうもファンがいつまでも止まらないなと思って見ると、ON にしてあった。そんなことをしても、ドアを開けない限りは空気は循環しない。うるさいし、電気ももったいないので、私は勝手に AUTO に戻す。

ヒーターに切り替えると部屋がもっと乾燥する。それに灯油の減りが早くなる。

灯油は地下室にある巨大なタンクに定期的に配達してもらっていて、1回当たり500ドルはかかる。お湯もオイルで温めているので、年中使っているのだが、ヒーターを入れるとオイルが目に見えて減っていく。

電気毛布も注文したことだし、ヒーターはギリギリになるまで入れなくても私は平気である。

私がこれまで使っていたフリースの毛布は、throw と呼ばれる小さめの毛布しかなかった次男にあげることになった。


         *


ヒーターが必要になっても、部屋の温度は低めにするのが常である。

実際どこまで電気代と灯油代が節約できているのかわからないが、気温が高いほど空気が乾燥するらしい。

小さい頃、ぜんそく気味だった長男が咳き込んで小児科に連れて行くと、「部屋の温度を下げなさい。」とよく言われた。呼吸器系統があまり強くない夫も、肺がどうの喉がどうのとすぐに弱音を吐く。

だから、うちの中は真冬でもそんなにホカホカではない。

それでも機密性が高いせいか、家の中はじゅうぶん暖かい。半そでシャツ1枚でOKとはいかないにせよ、家中にヒーターが行き渡る快適さは一度知ったら手放せない。

次男が生まれる前、長男を連れて2月に日本に帰ったことがある。

ニューヨークに比べたら、戸外の寒さは知れている。でも、家の中の寒さにたまげた。

普通のアルミサッシなのだが、二重ガラスでないせいか、窓の近くになんとなく冷たい空気がある。コタツは背中が寒いし、あの姿勢を保つのも妙に疲れる。

ヒーターのある部屋はまだいい。廊下やトイレやお風呂の寒さにはまいった。セントラル・ヒーティングの生活に慣れた体には、室内での気温の変化がことのほかきつかった。

そのとき以来、冬に帰ったことはない。もう15年前の話だ。


          *


うちの猫たちは、とっくに冬支度ができている。

夏の間はエアコンがあってもあまり近づいてほしくなかったが、これからの季節はさわってよし、くっついてよし。

生まれたときから同じ模様の毛皮が、秋口にはフカフカになる。もともとビッシリ生えているところへ、密集度がさらに高くなる。長毛種ではないが(母親は100%野良猫だったので、いろんな血が混ざっている)、見るからに暖かそうな格好をしている。

自前の防寒着でじゅうぶん保温できているはずなのに、猫は常に快適性を追及する。もっとも安楽で心地よいものを探し、すばやく見極めてランク付けする。

その才能には恐れ入る。

私のベッドの上に何かを置いてあれこれやっていると、賢い妹猫もぼ~っとした兄猫もやってくる。洗濯物をたたんだり、かたづけたりしている間に、各自選んだものの上に座る。

一番人気はカシミア。次はフリース。そして、コットンの薄いセーター、Tシャツ、シーツ、タオル、雑誌。

Tシャツ以下はたいして違わないらしい。暇なときに実験してみたが、カシミアへの食いつきはダントツだった。フミフミにはフリースのほうがしっかりしていていいのかもしれないが、体の下に敷くのにはカシミアが最高なのだろう。ヒマラヤに生息するヤギのお腹の毛で編んだセーターの価値を、猫はちゃんと知っている。

毛だらけになる前にどかそうとすると、非常に迷惑そうな顔をする。ときには手で押さえて離さない。

ここへ電気毛布が登場したらどうなるか。

なんだかんだ言って、私も暇である。他にやるべきことも考えるべきこともあるのだが、先延ばししている。


<今日の英語>

If I make an exception for you, then I have to make an exception for everyone.
あなたを例外にすると、全員を例外にしなくてはなりません。


子供向けプログラムに双子を連れて参加しようとした母親。子ども1人につき付き添いの大人が1人というルールだが、ちゃんと見張るからなんとか特例として認めてくれと頼んだ。でも、係りの人にあっさり拒否された。



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協定破り

2010.10.14 (木)



夫が600ドルをルーマニアに送ってから、2週間が過ぎた。

私は毎日クレジットカードのサイトで明細を見るが、夫が週に1回はチャージしていた74.99ドルは現れなかった。それを止めるから600ドルをくれというのが交換条件で、無駄と知りながら、前回と同じくメールで念書らしきものを夫から受け取った。

あの定期的にチャージしていたものはゲームだと夫は言ったが、詳しいことは教えてくれなかった。

600ドルに相当する期間は自粛するという約束もばからしいが、私はもう夫と口論するのもいやになった。夫の言うことはとっくに信用できなくなっていた。

そして、夫は今度もあっさり協定を破った。

10月11日付でこれまで見たことのない会社に149.99ドルを支払っていたのだ。どうせそうなるだろうと思っていたが、それでもどんよりした気持ちになった。

たぶん2回分をまとめて払ったのだろう。ちょうど2倍くらいの金額になっている。そして、別のルートから支払えば私にはばれないと思ったのだろう。

ところが、今回の会社名をサーチしたら、支払い先がわかった。夫が何か隠そうと工作すると、ほとんど裏目に出る。

Secure Credit Card Transaction Processing という支払い代行業者である点は同じだったが、明細に出ていた最初の頭文字から元のサイトが割り出せた。

Adult Web Cam Community

そんなことだろうと思った。

ルーマニア女とはここで知り合ったのだろう。何百人もの「モデル」がきわどいポーズで並んでいる。「836人がログイン中です。」と書いてある。

結婚相手を探すサイトでも、既婚男性が半数以上も登録しているとどこかで読んだ。アダルトサイトもきっと似たようなもんだ。インターネットでポルノが莫大な収益を上げているのは容易に想像がつく。

それはわかっていても、実際に夫がそんなことにお金と時間を費やしていると思うと、げんなりする。セックスレスだからそれで発散するならどうぞご自由にと言いたいところだが、毎月400ドルも払うなんてバカじゃないかと思う。

「あの約束はどうなったの?」とは聞かずに、クレジットカードのサイトから、その行だけコピーして夫にメールした。

返事はない。


             *


このアダルトサイトは、.org という別のサイトを持っていた。

それによると、Google.org に触発されて、ソーシャル・ネットワーキングを通じて、自然災害や飢餓、病気など人類が直面している問題を広く知らしめ、解決・援助するために資金を集めていると言う。豊かな国の1ドルが貧しい国では非常に大きな効果をもたらすとも書いてある。

最近のプロジェクトとして、2009年9月のフィリピンでの洪水がひとつだけ載せてある。10万人が被災し、10億ドル以上の損害が出たので、「メンバーとモデルたちが協力して、この人たちを助けましょう。」という呼びかけ。

これまた胡散臭い。

2009年9月以降は何をしていたのか。そのあとも大災害があちこちで起きたではないか。ハイチやチリで地震があったし、パキスタンの洪水、ロシアの山火事もあった。

「うちはアダルトサイト運営だけじゃなくて、慈善事業もしています」というポーズにしか受け取れない。本当に募金を赤十字に渡しているのか疑わしい。

夫がルーマニア人にお金をあげているのは、たぶんこれとは関係ないと思う。夫は自分のルートで送金している。

どっちにしても、お金を捨てていることは同じだ。そして、私に嘘をついていることも。



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チリ鉱山労働者の妻たち

2010.10.15 (金)



チリの鉱山労働者33名の救出実況中継をかなり真剣に見た。

子どもたちも夫も関心がないらしく、私1人でCNNをつけっぱなしにして、NYタイムズで更新されるたびに読んだ。

私は出不精で怠け者のくせに、こういう極限状況に置かれた人間の話になぜか惹かれる。エンデュアランス号で南極探検をしたシャックルトンが一番のお気に入りだが、エベレストや北極で遭難した話とか、シエラネバダの雪山で遭難したダナー・パーティとか、飛行機がアンデス山脈に墜落したときの生存者の話とか、実際に起きた話がいい。

一時期そんなものばかり読んでいた。

チリの鉱山事故については、救出作業が始まるまでそれほど興味はなかった。ただ、リーダーが最初の17日間どのように仲間を指揮したかは、シャックルトンに通じるところがあり、詳しく知りたいと思った。

それにしても、深い地下からの生中継には驚いた。

MP3のボタン操作に困る私には想像もつかない。ぎくしゃくした映像が、まるでアポロの月面着陸でふわふわ歩いていた飛行士みたいに見えた。

地上での中継では、カプセルを点検するエンジニアの爪の汚れまでくっきり映っていた。そして、次々と呼ばれる鉱山労働者の家族がアップになった。

アメリカ生活で感化された私は、こんなときでもつい彼らの歯が気になってしまうのである。


         *


小奇麗で大金持ちの大統領夫人は、いかにもブルーカラーという奥さんたちの間で浮いていた。

垢抜けない奥さんたちは、それでも化粧していた。マニキュアをしている人もいた。砂漠にある鉱山近くの仮住居テントで、かなり太った中年女性がマスカラを塗っている映像も見た。夫にきれいな自分を見せたいのか、カメラの目を意識していたのか。

作業員がカプセルから出てくるたびに、ハグとキスが繰り返された。西洋人だなと思った。

あれが日本だったら、せいぜい肩に手をかけるくらいじゃないだろうか。そして、奥さんは周りに「お世話になりました。」とお辞儀をする。そもそも奥さんたちを1人ずつ再会の場面に登場させるかどうか。公の場での大っぴらな愛情表現を見るたびに、「日本人だったら」とつい考える。

こういう危機に面すると、人間関係が浮き上がる。作業員同士もそうだが、私は彼らの夫婦関係が気になった。

いつまでも抱擁している夫婦は、本当に愛し合っているのか。事故が起きる前に離婚話が出ていた夫婦は、これで修復できるのか。感激の対面シーンからは伺えない。

ある奥さんは作業員である夫と別居中で、娘だけを現場に向かわせた。33人もいれば、そういうカップルがいてもおかしくない。

この事故のために、奥さんに愛人の存在がばれたという作業員が1人いた。この奥さんも救出のときには自宅にいて、愛人が作業員と抱き合う場面が世界に流れた。結婚生活28年の奥さんは、彼が愛人と新しい人生を歩きたいならそれでいいと言っている。きっとうすうす気がついていたんだろう。

一方で、奥さんにラブレターを何通も書いた年配の作業員もいたし、結婚して25年目にして奥さんの望みどおり教会で式をあげるという人もいた。

うちの夫はずっとデスクワークなので、危険なのはせいぜい飛行機での出張か。今はないが、かつては海外出張もかなり頻繁だったし、韓国に半年だけ単身赴任していたこともあった。

でも、私はぜんぜん心配しなかった。むしろ自由を満喫していた。

仮に夫が何らかの事故に巻き込まれて、私がその現場で待機しなければならなかったらと想像してみた。

まず心に浮かんだのが、「めんどくさい。出かけたくない。」 自宅で待ってますので、救出されたら電話してください。そしたら(行きたくないけど)行きます。

そして、対面の場面をテレビ中継されるのは断固拒否したい。私は長いあいだ夫にハグもキスもしていない。それでも世界中に放映されるなら、演技をしなければなるまい。見る人が見れば、「あの女の人、イヤイヤやってるね。」とバレそうである。


          *


余談だが、1人生還するたびに沸き起こった "Chi! Chi! Chi! Le! Le! Le! Los mineros de Chile! "はよかった。アメリカ人がオリンピックで連呼する "USA! USA!" のシュプレヒコールより何倍もよかった。日本にはああいうのはないなと思った(全員救出後に大統領以下みんなでチリの国歌を斉唱していたが、あのような場面では君が代も合わない)。

この歌はこれまで知らなかったが、私の耳には三三七拍子とそっくりな節に聞こえた。


<今日の英語>

I hate seeing an empty room with the lights on.
誰もいない部屋に電気がついているのを見るのは、とても嫌だ。


部屋を出るときは電気を消すよう父親に厳しく言われて育った人が、何十年経った今でもそれがとても気になると述べた一言。



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衰退する日本

2010.10.17 (日)



今朝、NYタイムズで一番読まれた記事は日本の不況についてだった。

メール送信された記事のランクで3位、ブログで取り上げられた記事のランクでも5位と目立つ。

日本の中流神話は終わったとか、GDPで中国に抜かれて世界第3位に落ちたとか、失われた10年とか、バブルがはじけてからの日本についてはたびたび取り上げられたが、今回の記事はとりわけ悲観的である。

もう日本は立ち直れないような印象を与える。

私は経済に明るくないので、デフレでスタグネーションでペシミズムでと言われたら、なるほどそうなのかと思う。

そして、1ドル=81円という数字を見て、日本に帰ってクレジットカードで買い物をしてドル建ての請求書が来たら大変なことになるなあと心配する。

一方で、日本の駅ビルにあるレストラン評を読んで、「こんなにおいしそうで気の利いたランチがたったの千円で食べられるなんて!しかも駅で!」とアメリカのまずくて決して安くない、しかも遠出してチップも払わねばならない食生活がとことん嫌になる。

しかし、この記事ではデフレの例として「自動販売機で売っている1缶10円の飲み物、レストランでの50円ビール、アパートの1ヶ月目の家賃が100円」が挙げられている。出かけず、モノを買わない私が言うのもなんだが、まさにデフレ・スパイラルの恐ろしい見本だ。

安いランチをうらやましがっている場合ではない。


          *


私は昔からケチで貯金が好きなので、日本に住んでいたときもアメリカに来てからも、散財したことがない。移住したのが21年前だから、バブルの最盛期もはじけたときもその後の不況も直接は知らない。

調べたら、三菱地所がロックフェラーセンターを買ったのも、ソニーがコロンビアピクチャーズを買収したのも1989年だった。

私はアメリカ人と結婚してアメリカに永住するかもしれない自分のことで頭がいっぱいだった頃だ。「アメリカの象徴みたいなものを買わなくたっていいのに。成金丸出しじゃないの。」と思ったくらいで、よく覚えてない。

その後、田舎にある実家に帰るたびに、電車の本数が減り、無人駅が増え、商店街にシャッターが下りたままで、山間の町はさびれていく一方だった。

そして、老人が目立つようになった。子どもたちを体験入学させたら、教室の半分はプールのための着替え室やレクリエーションルームになっていて、一クラスの人数がすごく少なくて驚いた。

その反面、あんな田舎にも日系ブラジル人が何人も住むようになっていた。もっとも、去年の夏に帰ったときは、仕事がなくなった彼らはとっくにブラジルに帰国していて、まったく見かけなかった。

私は日本の年金を払っていないし、日本に帰るつもりもない。

だから、日本の年金は他人事なのだが、今50歳くらいの人の老後はどうなるんだろうと考えるとゾッとする。デンマークみたいに高い税金で老後は安心でもなく、財政赤字は膨らむ一方で、どうやって年金(そのデータ管理は杜撰だったという)を支払うんだろう。

アメリカのソーシャル・セキュリティも心配だが、日本の年金よりはいくらか頼りになるんじゃないかと思う。もちろんそれだけでは足らないので、貯金に励む。


          *


かつてはアメリカの大学での日本語コースが人気だったのに、もう完全に中国語に押しやられている。

レーガン政権で貿易交渉を担当していたというアメリカ人の話がタイムズに出ていた。彼は日本がアメリカにとって脅威的な存在であると警告していたのに、もう日本にはめったに行かず、中国語を勉強しているらしい。

うちの学校区でも中国語会話を提供しているし、都会では幼児向けの中国語クラスもあると聞く。いま日本語を習いたいのは、アニメファンくらいかもしれない。

金の切れ目が縁の切れ目だからしょうがないか。

15年前に50万ドル相当で買った大阪のマンションが18万5千ドルでしか売れず、11万ドルのローンが残っている人の話も出ていた。残る道は自己破産。いくら節約しても、簡単に返せる額ではない。

コンクリート製の「マイクロハウス」は初耳だった。

SUVをやっと駐車できるくらいのマッチ箱サイズの家で、クロゼットサイズの寝室が3階建てになっていて、スーツケースサイズのクロゼットと、潜水艦にありそうな小さいキッチンがついているという。値段はわからない。

うちの主寝室にあるウォークイン・クロゼットで想像してみた。ウサギ小屋と揶揄されたものよりもっとひどい。ほとんどスラムじゃないかと思う。日本にまともな住宅政策はあるのか。他の問題でも、日本政府は的外れな政策しか持っていないように見える。


          *


帰国するたびに、日本の物価は安いと思う。値段だけではなくて、品質の割りに安い。安くていいものが多い。100円ショップに相当するアメリカのダラー・ストアに並ぶ商品のみすぼらしさといったらない。

ちょっとした文房具一つにも、日本人のきめ細やかな気配りや完成度の高さが感じられる。私はよくできた日本製品をネットで見つけると、つい子どもたちに自慢する。「これ、見て! いいでしょ? こういうのはアメリカにはないのよね。」

そういう強味をもっと世界にアピールすればいいのにと思う。

一生懸命やって成功している会社もあるんだろうが、こういうセンセーショナルでネガティブな記事ばかりでは伝わってこない。

日本が衰退の一途だと書かれると、真偽はどうあれ、ちょっとつらい。


<今日の英語>

I'll meet you at the front.
レジで待ってるから。


スーパーのデリ・カウンターで順番を待っていた男性に、奥さんらしき人が呼びかけた一言。



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歩けない話せないマイケル

2010.10.18 (月)



フィジカル・セラピーには5回通った。あと13回残っている。

効果のほどはよくわからない。セラピーのあとは筋肉が痛いし、ふだんでもちょっとひじに負担がかかると、まだピリッと来る。

セラピストの指示で、いろんな器具を使って右腕を鍛える。ゴム布を引っ張ったり、ゴムボールを握ったり、握力検査の道具みたいなのを指で押したりという単純な動作だ。それでも、時には顔をしかめるくらい、ひじに響く。

ためしに左手でやってみたら、びっくりするほどスイスイできた。たとえば、右腕が60歳だとすると、左は25歳くらいの感じ。やはり右はかなりのダメージを受けているようだ。

整形外科医に言われたとおり、朝晩のストレッチもやっている。

車のシフトギアを前後に動かすのも難しいときがあったので、その頃に比べたらよくなっているはずなのに、痛みや不快感が消えない。

最初に異常に気がついたのは6月だった。すぐに専門医に見てもらうべきだったと悔やむが、もう遅い。

長男に「信じないと直らないよ。」と言われてから、セラピー中は「これは効果がある。これできっと直る。」と自分に暗示をかけるようにしている。

そういえば、ある美容の専門家は、化粧水やクリームをつけるときに「皮膚の奥までちゃんと届けてよ。」とか「これは高かったから絶対に効き目があるのよ。」とか肌に話しかけながらやるそうだ。だいぶ違うらしい。

私の場合、心のどこかでセラピーと名のつくものを疑っているので、あまり期待できない。


          *


セラピーの曜日や時間はいろいろだったが、おなじみの顔が増えてきた。

その中でも毎回必ず会うのが、20代半ばくらいの白人青年マイケル。長身でがっしりしている。

彼にはいつも同じセラピストがつきっきりで相手をしている。まだ若くて、とても明るい白人女性ジャッキー。アメリカ人女性にしては小柄なので、マイケルの横に並ぶと頼りなく見える。

初めてマイケルの声を聞いたときは、変わった笑い方をする人だなと思った。姿は見えなかった。そして、セラピストの話しかけに答える彼の声を聞いて、やっと発声に障害があるのだとわかった。顔にも麻痺があった。

その後、何回も彼のセラピーを見かけた。

バスケットボールを手で背中のほうに回して、お腹へ戻したり、手を伸ばして何かをつかんだり、椅子から立ち上がったり、どれも危なっかしかった。バランスが保てず、全身がグラグラする。

セラピストは冗談を言いながら励まし、根気よくマッサージをした。

マイケルは話しかけられることは全部理解でき、周囲で起きていることもわかっているようだ。ただ、うまく発声できないので、「うあ~うあ~。」としか私には聞こえない。

セラピストも聞き取れないらしく、何度も言わせたり、スペリングを言わせてみたり(アルファベットでも私にはさっぱりわからない)、「シャツ? タオル?」などとあてずっぽうをしたりしていた。マイケルの顔に疲れが浮かぶ。

一生懸命繰り返す彼に対して、理解できないこちらのほうが申し訳なくなる。

 
         *


マイケルはセラピーに来ている人たちの中で一番重症だ。

歩くというより、まず片足を持ち上げ、前方に下ろし、体を前に傾け、次は後ろに残った足を持ち上げという具合で、ごくゆっくりやってもよろけるので、ジャッキーとアシスタントが両側に立つ。

出入り口のドアから出て、しばらく戻らなかったときがあった。廊下と階段で歩く練習をしていたらしい。私はちょうど腕にアイスパックをしながら、入り口近くのの椅子に座っていた。

2人に付き添われて椅子の前に立ち、ふらつきながらゆっくり腰を下ろした彼に、「お水飲む? ストローもほしい?」とアシスタントが話しかけた。

プラスチックのコップを渡されて、そっとつかみ、むせながら飲んでいた。コップを落としそうで、真向かいに座っていた私はハラハラした。

ジャッキーが「クッキー、食べる?」と聞く。マイケルは「うあ~。」と答える。チョコレートチップ入りのクッキーを一枚、紙ナプキンと共に渡された彼は、これも慎重に持ち上げ、一口ずつやはりむせながら食べた。

彼は私には話しかけない。私も見ているだけで何もしない。見ては失礼なのだろうが、つい目が向いてしまう。

そして、たかがテニスひじでフィジカル・セラピーにきている自分を場違いに思う。マイケルみたいな人こそ、セラピーが必要で、手や足の動きがほんの少しでもよくなるように奮闘しているのだ。

テニスひじの治療で穴の開いたゴム板に指を入れて、ぎゅっとこぶしを作ったり、左右にひねったりするものがある。シンディは web と呼ぶ。

私はあれがきつくて大嫌いで、器具を渡すアシスタントに文句を言う。でも、マイケルが近くにいるときは黙ってやる。普通に歩けて話せる人間が贅沢を言うなと思う。その代わりに、心の中で「これでテニスひじが治るという根拠はあるのか?!」と悪態をつく。


          *


前回のセッションで、初めてマイケルの両親を見た。

60歳くらいだろう。お父さんの髪は白かった。服装からして、生活にいくらか余裕のありそうな人たちだった。

マイケルが一歩ずつ歩いて、小部屋に入り、椅子に座るのを見て、お母さんが「信じられない。」とつぶやいた。前はもっと不自由だったのだろう。

ふだんは廊下で若い黒人男性が待機している。マイケルが移動に使うらしい車椅子が置いてある。送り迎えだけでなく、24時間誰かがついていなければならない生活。

どういう事情で彼がこうなったのかは知らない。それまではごく普通の生活をしていたらしく、生まれつきというより、たぶん事故で脳挫傷にでもなったのではないかと思う。体格がいいので、スポーツ中の怪我が原因かもしれない。

運転の下手な私は、高速道路で事故を起こしたら終わりだなとときどき考える。植物人間や寝たきりになるくらいなら即死のほうがましだ。でも、うっかり中途半端に助かってしまったらどうしよう。

マイケルはいつも笑顔で、弱音を吐かない。彼の両親も前向きだ。

ここまで来るのに大変な思いをしたのだろうが、今はマイケルがフィジカル・セラピーで体の機能を回復することだけを目標にしているらしかった。たぶんスピーチ・セラピーもやっている。

私のセラピーは最初は1時間半だったが、このごろは1時間で終わる。しかも週3回だけ。マイケルはたぶん毎日3時間以上かけていると思う。それが彼の日課で仕事でもある。

私と違って、彼はきっと直ると信じているように見える。


<今日の英語>

Nice and easy.
無理しないで、そうっと。


がんばりすぎていたマイケルにセラピストが一言。実際には "Nice'n easy." と聞こえる。立ち上がる練習をしていたときは、"Nice'n tall." 私はペダルを早く回し過ぎていたときに、"Nice'n slow." と言われた。



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男たちの買い出し

2010.10.19 (火)


夫が子どもたちを散髪に連れて行った。

もう何週間も前から切らせようとしていたのだが、「まだいいよ。」と本人たちが言うので、ほっておいた。説得する気力もないし、以前は人目も気になったが、最近はどうでもいい。私が出かけなくていいなら、それも結構。

そうしたら、さすがに長男が「ぼく、ヘアカットに行ったほうがいいと思うんだよね。」とのたまう。

そうだ、彼らの自主性に任せればいいのだ。

ドラッグでも万引きでも暴力でもない。たかが髪の毛。しかも、七色に染めるとか、腰まで届くとか、モヒカン刈りとかでもない。ただボサボサに伸びているだけで、誰にも迷惑はかけていない。

長男は前髪をこうしたいなどと言うことはあるが、うちの息子たちはファッションと無縁である。私が適当に選んで買う服を黙って着る。何でもいいんだそうだ。せめて色違いでと思うが、「これと同じ色にして。」と紺色のズボンを差し出す。

張り合いがない。

彼らが散髪に行きたがらない理由の一つは、アメリカのヘアサロンが嫌いだから。

なにしろ、切られた髪が大量に背中に入ってかゆい。格安サロンなので、スタイルがどうのという問題ではなく、とにかく短くなればいいのであって、左右の長さが多少違うことも珍しくない。

ただし、格安と言っても、12歳以上はシャンプーなしで(つまり切るだけで)16ドルもする。安くない。

日本の格安サロンを体験した彼らは、「日本だったら毎週行くよ。」と言う。

マッサージつきのちゃんとごしごし洗ってくれるシャンプーで、スタイリストは上手で髪型はかっこよく決まる。ホカホカのタオルを顔にのせてくれるし、ほんの少し首についた髪もきれいにふいて、パウダーをはたいてくれる。それで千円だった。チップなし。

しかし、そのためだけに飛行機に乗るわけにも行かない。

やっと長男がやる気になったところで、ついでに次男の予約も入れる。こういうとき、次男の意向は聞かない。どちらかがやる気になったら、2人いっぺんにやって片付ける。


           *


私が連れて行くつもりだったが、夫がドラッグストアに行くついでに引率すると言う。出かけたくない私は、もちろん承諾した。

ヘアサロンとドラッグストアは同じショッピング・センター内にあり、同じ敷地内にスーパーもある。それじゃあ、ついでにスーパーにも寄ってもらいましょうと、買い物リストを作った。

こういうとき、野菜や肉などの難易度が高いものを入れてはいけない。猫砂なども種類が多いので不可。違うのを買ってきたら、うちの猫たちは使わない。

牛乳(無脂肪、1%、2%の3種類と明記)、オレンジジュース、炭酸水、サンドイッチ用のロールパン(これは次男がよくわかっている)、ピタチップス(これは長男)、アメリカンチーズ(これは夫が食べる)、バナナなど、間違えようのないものだけにした。

「アップルサイダーはふつうのを買ってよ。シナモン入りじゃないやつね。バナナはすぐ黄色くなるから、なるべく青いのを選んで。あんまりたくさん買わないでよ。ダディを見張ってよ。」と子どもたちに指示した。

誰もいない静かな時間はあっという間に終わる。ガレージドアが開き、台所が騒がしいので、私も下りて行った。


          *


カウンターにスーパーの袋が山になって置いてある。炭酸水は重いので、たくさん買ってきてくれると助かると頼んだ。

しかし、それ以外のものはいったん何なのか。

猫2匹が収まるくらい大きい箱に入ったブラウニー。しかも、Manager's Special というラベルがついている。賞味期限が迫っていて、割引になっているものだ。このブラウニーは、しばらく前に長男がほしがって買ったことがあるが、ひどかった。二度とスーパーのベーカリーでお菓子は買わないぞと宣言したところだったのに。今回のは見るからにぱさついている。誰が食べるのよ?

そして、アップル・ターンオーバー。これは夫の好物で、煮りんごの入ったデニッシュ風ペイストリー。これもいったい何が入っているのかわからない。妙な後味がある。まあ夫がスーパーに行くと必ず買うので、予想はしていた。

バケツみたいに大きいアイスクリーム。しかも、ストアブランド。しかも、2個。

「どうしてハーゲンダッツを買わないのよ?」

「高いもん。ハーゲンダッツの小さいのと、この大きいのと同じ値段なんだよ。」と次男。

「お母さんはね、ハーゲンダッツしか食べないの。他のは、なんとかガムとか変なものが入ってるじゃない。よりにもよって、ストアブランドを買うことないでしょ。しかも、ピスタチオはともかく、カシューナッツのアイスクリームって何よ?」

「だってお母さん、アイスクリーム買わないもん。」

「ハーゲンダッツが安売りしてたら買うわよ。あんたたち、安くてまずいのを食べたいの? 特にここのスーパーのストアブランドはまずいのよ。あんたがついていながら、何でこんなものを買うの?」と3人の中では一番舌が肥えている長男を問い詰めたが、すでに巨大アイス容器は冷蔵庫に鎮座ましましている。


           *


このスーパーには間口3メートルくらいの魚売り場がある。

おいしくないので、私はめったに買わない。唯一合格なのが、本物のカニ肉を使ったクラブ・ケーキ(コロッケみたいにみえるが、ジャガイモは入っていない)。

2年位前、1ポンド3ドル99セントと書いてあったので、試しに2つ買った。受け取ったときに8ドル近くだったのに驚いて、値段がおかしいと文句を言うと、実は1個につき3ドル99セントなのを書き間違えていたのがわかった。でも、お店のミスなので、1ポンド当たりで計算してくれて、得をした。味もまあまあ。

それ以来、売り出しなら買おうと思いつつ、めったに安くならず、横目で見るだけだった。たまに夫がスーパーに寄ると、まとめて4つ買ってきたりして、「高いじゃない。」とこぼすと、夫は「でも好きなんだろう。」と差し出した。夫も子どもたちも好きなのだ。

それが、今回は6個だった。これだけで24ドル。値札を見て、クラクラッときた。

これ以外にも、1個1ドルの安物シュリンプケーキやらロブスターケーキを8個ずつ。これはおいしくない。

いったい誰が食べるのだ。うちは田舎だけれど、スーパーまで車で8分で行ける。大量に買い込む必要がどこにある? 冷蔵庫はいっぱいになるし、日にちが経てば味が落ちる。

そして、頼んだバナナは「ぜんぜん熟していませんが、バナナの木から無理やりむしり取りました」といいたげな、濃い緑色。しかも、12本くらいある。ここまで青いのを買うことないでしょと長男に言うと、「お母さん、青いのって言ったよ。それに、みんなこんな色だったよ。」

もうちょっと想像力を働かせることはできんのか。

私の腕が痛いので、クオートサイズしか買わないようにしているのに、アップルサイダーは1ガロン。それでいて、ロールパンはたったの一袋。2日も持たない量である。でも、チーズは特大パッケージが2つ。しかも、ストアブランド。私は食べない。


           *


確かに私は出かけずに済んだ。子どもたちの髪も短くなった。重い炭酸水も確保できた。

しかし、夫と子どもたちだけで買出しに行ったあとは、必ず落胆する。

男に家事を覚えさせるには、やらせてみて、ほめてみて、おだててやらないとダメだと聞く。私にはそういう辛抱がない。でも、その分、期待値も低い。今回も簡単な買い出し、しかもリスト付き、解説付きだったのに。

やっぱり自分で行こう。


<今日の英語>

You should take it with a grain of salt.
話半分に聞いておいたほうがいいですよ。


コンシューマー・レポートが心臓バイパス手術をする外科医をランク付けするという。生存率や術後のトラブルなどを基準にして、最高は3つ星。ただし、信憑性は疑問視されている。うのみにしないようにと警告したジャーナリストの一言。直訳は「一粒の塩をつけて食べるべきです。」 

塩気がないものはそのままでは食べられないことから、偏った情報や信用できない話(塩を加えないと食べられない代物)は疑ってかかるようにという意味になったらしい。あるいは、昔は塩が解毒剤の役目もしていたので、怪しげな話には塩をかけて疑いつつ受け入れるように、という説明もある。



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ブログでデジャ・ヴュ

2010.10.20 (水)



このブログを始めて1年8ヶ月。

春夏秋冬も二巡目だが、出不精で付き合いの悪い私の生活には変化がない。それでも、夫がよからぬことをしたとか、私がお医者に行ったとか、猫や子どもがうるさいとか、毎日何かしら起きる。

そういう些細なことをいくらでも好きに書けるのがいい。しかも、私には暇という強い味方がいる。

新聞やラジオで見聞きしたことについて、勝手な解釈をするのも楽しい。ただ、もともと関心の範囲が狭いので、同じようなテーマが多いはずである。

このブログでは、新しい記事を書くと自動的に続き番号が振られる。今回は647と出た。つまり、これが647件目の記事ということになる。

一つのブログにどれくらいの容量が与えられているのか知らないが、めったに写真を載せない分、かなり長いあいだ書き続けられるのではないかと思う。ブログよりもツイッターが流行っているらしいので、ブログ会社が消滅しなければの話だ。


          *


最近は一度書いたものをあまり読み返さなくなった。ぱーっと書いて、誤字脱字だけチェックして投稿して終わりという日もある。

気が向くと、ランダムに過去記事をクリックして、ちょこちょこ表現を直したり、関連記事のリンクをつけたりすることもある。でも、だんだんどうでもよくなってきて、"As is"(中古品販売で使われる言い回し。汚れや傷がついた現状のまま、無保証で売りますの意)とでも表示したくなる。

この頃は物忘れが激しく、同じ話を何度もする(らしい)。

子どもたちに「お母さん、その話、もう聞いたよ。」とすぐに打ち切られると、私もすでに話したような気になるが、それが誰だったか思い出せない。夫だったか、長男か次男のどちらだったか、はたまた猫だったか、

この間も500ページの本を300ページ以上読み進んだところで、前に読んだことがあるのをやっと思い出したくらいである。

昨日書いた「男たちの買い出し」を読み返して、「これとまったく同じことを前にも書いたんじゃないだろうか。」と不安になった。

夫が子どもたちをヘアサロンに連れて行き、帰りにスーパーで買出しをするのは、これが初めてではない。いや、何度もあった。そして、毎回同じように買わなくてもいいものを買ったり、頼んだものを忘れたりするのだ。

子どもたちが日本のヘアサロンが好きなことも絶対に前に書いた。あれは彼らの日本滞在中のメイン・イベントの一つだった。

そう思い始めると、「猫がカシミアを一番気に入っている」という話も去年の秋に書いたかもしれないし、だいたい英語のフレーズもきっと同じものを何度か選んでいるかもしれないという気になってくる。

検索すればわかるのだろうが、怖いのでやめた。


            *


これだけ貯まったブログ記事をどうするか。

「バックアップを取りましょう」と書いてあったので、ツールの「データのバックアップ」をクリックしたら、保存したテキストは文字化けしていた。メモ帳ではないテキスト・エディターでやればちゃんと読めるらしいが、まだ試していない。

ツールの中にあった「ブログ書籍化」をクリックしてみた。オプションがたくさんあるが、めんどくさいので、ディフォルトのまま。

600件もの記事を印刷したら手にもてないくら厚くなるだろうと思って、レシピの記事だけ選んで、見本PDFを作ってみた。このお試し版は何回作っても無料だそうだ。

「ツルハシを持った河童」のイラストと「見本SAMPLE」の文字がびっしり透かしになっている。

でも、読めないことはない。横書きでブログの表示の通りに出ていて感心する。印刷してホチキスで閉じればホームメードの本ができそうだ。もちろん、透かしは消せない。

しかし、レシピ記事はたった16件なのに、全部で35ページにもなる。これというのも、私の記事が長いからいけないのだが、料金の見積もりは、カラー印刷の場合は、標準タイプ2240円、上製本タイプ4990円。モノクロ印刷の場合は、標準タイプ 1120円、上製本タイプ4080円とある。

高い。

これはもっとちゃんとしたレシピ集とか動物の写真集とか子どもの成長記録とか旅行記とか、そういう保存する価値のあるブログが対象だったのか。

私はそんなお金を払ってまで本の体裁にするつもりはない。それに、記事16件でこれだ。647件だったらどうなる?

廉価な、あるいは無料の電子出版になるまで待つことにする。そんなサービスは遠からずやってくるんじゃないだろうか。これからますます目が悪くなるのだから、文字を大きくしたり画面を明るくできたりする電子書籍のほうがありがたいかもしれない。

だいたい私が自己満足で書いているものを印刷しておいて、私の老後の楽しみにこっそり読めたらそれでいいのである。

そして、自分が書いたことなどすっかり忘れて、「まあ、こんなことがあったんですか。」と毎回初めて読む(他人の)話だと思ってページをめくる。

そうなったら、もうデジャ・ヴュどころではない。


<今日の英語>

What if it doesn't work?
もしうまく行かなかったらどうするの。


年老いた女性たちが共同生活をしながら老後を過ごすというライフスタイルがなかなか広まらないことについて、夫亡き後、大きな家に1人で暮らす女性が「空いている部屋を誰かに貸すことの利点はよく考えます。でも、『もしうまくいかなかったらどうしよう。』といつも迷ってしまって、決心がつきません。」



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「スコシ、イタイ?」

2010.10.21 (木)



セラピー・センターには4人のセラピストとその倍くらいのアシスタントがいる。

初日はアーノルドだったが、そのあとはシンディが私の担当になった。今週は婦人科検診やマモグラフィーの予約が入っていたので、セラピーの時間を変えてもらった。

「今週の午後はシンディがいないので、エンジェルですけど、いいですか。」と受付の女性。はい、誰でもいいです。

エンジェルという人はよく見かけた。男である。体育の教師みたいな体つきをしていて、声も大きく、頭はつるつるに剃りあげている。でも、一度も話したことはなかった。

初めてエンジェルという名前の人に会ったのは、長男のナーサリー・スクールを探していたときだ。ある施設を見学しに行ったら、案内してくれたのがエンジェルだった。

Angel? 天使?ここはキリスト教系なのだろうかと一瞬思った。でも、そうではなかった。単なる名前なのだ。ずっとあとになって、わりとありふれた名前だとわかった。

そういえば、日本で子どもに悪魔という名前をつけようとして、市役所で拒否された親がいたことを思い出した。天使という名前の子はいるのだろうか。

セラピストのエンジェルは、宗教画に描かれた天使とはずいぶん見かけが違うが、それとなく耳に入ってくる患者への指示はわかりやすい。マッサージも上手そうだ。この際、セラピスト全員の施術を体験しよう。


        *


予約の時間に入り口の椅子で待っていると、エンジェルがやってきた。"Hi, I'm Angel. Nice to meet you."

私も定型挨拶を返す。あいかわらず、握手に力が入らない。

エンジェルは何か考えているふうだったので、私も黙って彼の指示を待った。すると、突然日本語が聞こえた。

「スコシ、イタイ?」

驚きつつ、せっかくなので、日本語で答える。

「はい、少し痛いです。」

「ミギ? ヒダリ?」

「右です。」

ここから英語になった。片言の日本語らしいが、それにしてもまったく予告がなかったので、驚いた。

私が日本人であることは名前でわかったそうだ。そして、エンジェルは合気道4段。20年前に習い始め、日本人の先生の元で修行したという。あれは武道家の体だったのか。

マッサージをしながら、私の知らない合気道の有名な流派や先生の名前を口にする。

彼の日本語は、「手首、ひじ、ひざ、投げ、表、裏」など明らかに合気道で習い覚えたものがほとんどである。あとは、おはようございますなどの挨拶。会話が続くレベルではない。


           *


こんな田舎でも、たまにこういうことがある。

何年か前にモールの携帯ショップへ相談に行ったら、「ニホンジンデスカ?」と流暢に聞いてきた黒人のセールスマンがいた。彼は入門編よりはもう少しレベルが上だった。「ニホンノブンカガ、スキデス。ジブンデ、ベンキョウシマシタ。」 アニメファンではないという。

私が普通に話すと、さすがに「ワカリマセン。」となったが、私は本当に驚いた。

私が日本人だとわかると、「カニチワ(こんにちはのつもり)」「オハイオー(おはようのつもり」「アーリガットー(ありがとうのつもり」と言う人もわりといる。親愛やサービス精神から言ってくれるのだが、あれは妙に疲れるのだ。

せっかく一生懸命日本語で挨拶してくれたんだからと、私も「こんにちは。」「さようなら。」と相手をする。

ちょっとくすぐったい。そして、なぜかちょっとむなしくなる。

ところが、語学が好きな私はいろんな国の言葉をかじっては、その言葉のネイティブ・スピーカーに話しかけるチャンスを待っているのだ。肩を痛めたポーランド女性がストレッチするのを見ながら、「ロシア人が来ないかな。」などと考える。

たいていの人は「どこで覚えたの?」と驚き、ほめてくれる。覚えたてのカタコト外国語を使うのは、わくわくして楽しい。

しかし、私自身は誰かのカタコト日本語につきあう忍耐力はない。困ったものである。




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フランスのイメージ

2010.10.23 (土)



私はフランスに行ったことがない。フランスだけでなく、ヨーロッパのどこの国にも飛行機の乗り換えでさえ寄ったことがない。

ニューヨークから飛べばヨーロッパはそれほど遠くないはずだが、観光に興味がなく、移動がきらいで方向音痴ときている。それに、私がまともに話せるのは英語だけなので、誰かがつきっきりで通訳ガイドをしてくれるのでなければ、言葉が通じない国へ行っても困ると思う。

私の知っているヨーロッパは、すべてニュースや映画や書物から想像したものである。しかも、私の情報収集はかなり偏っているので、当然できあがったイメージも歪んでいるはずだ。

大学生のころまでは、フランスは憧れだった。

フランス語は美しく、ベルサイユ宮殿は輝き、フランスの料理もお菓子も美味で、パリジェンヌはおしゃれで、フランス男の代表はアラン・ドロン。書いていて恥ずかしくなるくらいである。

でも、私は第二外国語でフランス語を取らなかったし、インターネットが広まるまではヨーロッパのニュースを詳しく読むこともなかった。

そういう少女漫画みたいなイメージを抱えたまま、アメリカに来た。


        *


その後、アメリカに駐在しているフランス人にも会ったし、フランス人と結婚している日本人女性にも出会った。

その中の1人、Gさんは個性的なおしゃれをしていた。さすがフランス仕込みだとひそかに観察した。

なぜかご主人は日本語のできる人が多かった。子どもたちは、決まって日仏英の3ヶ国語を勉強していた。うちは英語と日本語だけで行き詰っていたので、アメリカに住んでフレンチ・スクールに通って家では日本語という生活を当然のようにしていた彼女たちが、とても有能に見えた。

その後、フランスに関係ある人たちとの縁がなくなった。

アメリカ人はフランス人をけなしつつ、フランスに対する憧れはかなり根強い。しかし、それは片思いらしい。どうもアメリカはフランスに馬鹿にされているようだ。アメリカもそれを感じているので、フランスを悪く言ったりして憂さを晴らす。

パリへ観光にやってくるアメリカ人は、Tシャツとショートパンツあるいはジーンズで、スニーカーを履き、声が大きく、太っていて、どこでも英語が通用すると思っている田舎もんと鼻であしらわれるという話を聞く。最近は観光客相手の店なら英語も通じるようになったらしいが、実際はどうなのか知らない。

フランスもフランス人も直接知らない私が、アメリカ生活21年で作り上げたフランス人像はこんな感じ。

タバコとコーヒーが好き。
毎日ワインとチーズをほしがる。
埃っぽい道路わきのカフェに、特に何もしないで長時間居座る。
犬の落し物の始末をしない(カフェの横には落ちていないのか、平気なのか?)
マーケットで売っている果物に触ると、怒る。
痩せている(アメリカ人と比較したらどこの国だってそうかも)。
黒っぽい服を着ている。
底意地が悪い。
皮肉屋。
どうでもいいことにも議論を吹っかけ、引き下がらない。
自分は正しい。
褒めない。「悪くない」などと遠まわしに言う。
素直じゃない。
外国人が嫌い。
屁理屈を言う。
フランスが世界で一番優れた国だと思っている。
フランス語を話さない人間は相手にしない。
平気で人を無視する。
自分のことしか考えない。
自分さえよければいい。

改めて書き出してみると、これはひどい。

もちろん単なるイメージであって、私はフランス人に恨みはない。むしろ、利己的で意地悪なフランス人に親近感すら覚える。


           *


ここ数年で追加されたのは、「フランス人はストライキをする。」

ギリシャでもスペインでもストライキやデモをするらしいが、フランスのストライキは筋金入りだと思う。飛行機が飛ばなかったり、電車が止まったり、ガソリンがなくなったり、さぞかし不便だろうに、なんだかしょっちゅうストライキをしているというイメージがある。

このところ気炎を上げている年金改革反対デモには高校生も参加しているそうで、授業はどうなっているんだろうと他人事ながら心配になる。先生もストライキで不在なのだろうか。

だいたい週35時間しか働かず、毎年1ヶ月ものバカンスを取り、60歳で引退なんて、普通のアメリカ人からみたら信じられないほどぜいたくだ。

フランスだって高齢化が進むだろうし、なぜ62歳まで働く程度の折り合いがつけられないのかわからない(専業主婦の私が言っても説得力はなかろうが)。今のままで将来の年金が枯渇したらと考えないんだろうか。

私がアメリカに来て驚いたことの一つが、「アメリカの休みは少ない。」 

アメリカ人のバケーションなんて、フランス人のバカンスの「バ」くらい。

でも、「もっと休みをよこせー!」などというデモは、アメリカでは聞いたことがない。フランス人に比べたら、アメリカ人の自己主張は幼児のお遊戯並みである。

これだけの不況で、高齢化は加速する一方で、少しは妥協すればいいのに、と大きな池(大西洋)の反対側から眺める。手厚い福祉が整っている(らしい)フランスとは違って、アメリカなんかやっと国民皆保険が実現するかどうかという話をしているのだ。いくらなんでも自分勝手じゃないかと思う。

でも、その反面、さすがフランス人、ここまで既得権益にしがみつくか、フランス革命を成し遂げた人たちの子孫だけのことはあるなと感心する。

私がフランスに行く機会は永遠になさそうだが、道路掃除の人たちもストライキに参加しているなら、犬の落し物がパリの道端に溜まってしまうんじゃないだろうかと、くだらないことが気になる。


<今日の英語>

I can vouch for that.
それは私が保証します。


セラピーセンターにて。最近はペットのFacebookもあるらしいと言った人に、アイスパックをしていた女性が「それは本当よ。私が保証するわ。だって、うちの犬のページがあるから。」



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ありがた迷惑なお誘い

2010.10.24 (日)



郵便受けにブレスレットの写真がついた葉書きが入っていた。

lia sophia
Share the Love of Jewelry

と印刷してある。聞いたことがない会社だが、ただのダイレクトメールに見えた。もうクリスマスのセールスかと思って裏返すと、隣のメアリの名前と住所が書いてあった。

そして、「あなたのスタイルに合ったパーソナルなジュエリー・ショッピングに
いらっしゃいませんか。」

時間は11月7日(日)正午。場所はメアリの自宅。

私は彼女のメーリング・リストに入っているらしく、私の名前と住所を印刷したラベルが張ってある。

これまでにもメアリからは福祉団体への寄付依頼葉書きが何度か送られてきた(お互いの郵便受けは20メートルしか離れていないのに、切手を貼って郵便屋に配達させている。他人の郵便受けを開くのは違法ということになっている)。

「あなたのご近所のメアリさんからの個人的アピールです。」みたいな文章が印刷してあり、そういう作戦なのだとわかった。

私はそういうのは全部ゴミ箱へ入れる。誰にも何の返事もしない。最初は気が引けたが、今は平気になった。

いったん寄付すると、あらゆる非営利団体に私のデータが流れるらしく、しばらくは郵便や電話に悩まされるからだ。それに、ご近所さんに頼まれたら断りづらいだろうという魂胆が気に入らない。

私が近所付き合いで買うのは、ボーイスカウトが売るクリスマスのリース(自宅に届けてくれるのはありがたい)とガールスカウトが売るクッキー(食べられた代物ではないが、夫は好きらしい)だけである。

昔、日本人の集まりに呼ばれたら、実は化粧品販売のデモンストレーションが主目的だったということがあった。事前に「何も買わなくていいのよ。」と言われ、けちな私は何も買わなかったけれど、なんとも居心地が悪かった。

そういうものには出席しないに限る。


          *


子どもたちが小さい頃は、スクールバスの見送りとお迎えで近所のお母さんたちと毎日会った。

7人もいれば、その中で1人くらいはパーティ形式のセールスをする人がいた。

口頭で誘われたり(すっごく楽しいわよ~。ぜひ来てちょうだい。何も買わなくていいの)、葉書きを受け取ったりしたが、私はなんだかんだと理由をつけて一度も行かなかった。どっちみちアジア人は私1人だ。付き合いが悪い人ねと思われても平気だった。最初から深い付き合いをするつもりはなかった。

一番多かったのが、Pampered Chef. 自分の台所で料理の実演や試食会をしながら、その場で料理道具を売る。品質は悪くないが、かなり割高だと聞いた。会員になれば品物は安く買えて、もし売れたらコミッションが入るのだろう。偏食でアメリカの食事をおいしいと思えない私は、遠慮して正解である。

何よりも、ご近所や友だちを利用して儲けようという考えが気に入らない。

「この道具、すごくいいから、あなたにもぜひ紹介したいわ。」というのが決まり文句だが、聞いているほうは白ける。

こういうセールスは Tupperware Party が元祖で、台所用品に限らず、いろんな製品がこの方式を採用しているらしい。パーティが盛んなアメリカならではの商法かもしれない。大人の玩具パーティ体験記を新聞で読んだことがある。保守的な南部での話だったので、とても驚いた。

日本人の駐在家庭では Longaberger というバスケットの自宅販売デモが人気だったようだが、私は実物を見たことすらない。一時的なブームだったのか、今も根強いのか知らない。そんなにかごを集めてどうする?

アムウェイには誘われたことがない。この地方では流行ってないのかもしれない。実は、私はアムウェイは日本の会社だと長い間思いこんでいた。パーティにも買い物にも縁が薄いと、アメリカに住んでもこんなもんである。

調べたら、アメリカのアムウェイは1959年創業、日本アムウェイは1979年開業だった。私はその後10年は日本に住んでいたのに、やはり関わりはなかった。


           *


さて、メアリのジュエリー・パーティ。

私は貴金属や宝石には興味がない。タダであげますと言われたら、もらってもいいが(これこそ一番高くつくのか)、たぶん現金にして投資したくなる。金(ゴールド)なら銀行の金庫に預ける。それで自分を装飾しようとは思わない。指輪より金塊がほしい。

婚約指輪も結婚指輪もしない。持っていないのだから、つけようがない。

そういえば、むかし補習校で「kometto3は指輪しないんですね。」と聞かれたことがある。よく他人の指なんか観察する余裕があるなあと思いつつ、「持ってないから。」と答えた。結婚指輪も買えないほど貧しい国際結婚なのね、お気の毒にと思われたかもしれない。

首飾りも腕輪もうっとうしい。耳たぶに穴が開いてないので、ピアスもできない。ねじで留めるイヤリングは痛いし、すぐ落ちる。

仮に私がジュエリー大好きだとしても、誰かの個人宅に集まって売り買いする方法はいやだ。

アメリカのとあるサイトでは、上司にこれをやられて出席せざるを得なかった人や、これで友だちをなくした人の話が出ていた。どこの国でも同じだ。

"Please RSVP."とメアリの電話番号が書いてある。

彼女はいい人だが、中年になった私はいやなことはいやだと断るくらいずうずうしくなった。義理でいやいや出席して、お愛想笑いをしつつ、一生懸命断るか、あるいはどうしてもと押されて一つ買わされるよりはましだ。

ネットで調べたら、ジュエリー・パーティでは19ドルから250ドルくらいの品物が販売されるとわかった。コンサルタントと呼ばれるホステスは$100相当の品物を4つまで$15で購入できる。そして、売り上げの20%相当のジュエリー1つが無料で、さらに2品が半額で買える。パーティを主催するだけで特別なギフト(プラスチックだったわよ!という怒りの投稿があった)がもらえる。自分の紹介で他の人がパーティを開くと、もう1品が半額。お客10人とホステス2人を確保すれば、また割引がある。

現金の儲けではなくて、ジュエリーが報酬か。そんなにたくさん集めてどうするんだろう。しかも20ドルのジュエリーに価値があるとは思えない。ただのジャンクというコメントがたくさんある。

メアリはなぜこんなものに手を出すのだろう。

私たちは友だちというより単なるご近所同士だが、一切関わらないにかぎる。

タグセールが終わってから、私はご近所の誰ともまともに話していない。メールも電話もしない。ごみの日にも会わない。そういう孤立した生活に戻った。私はちっともかまわない。こんなお誘いの葉書きを受け取ると、ますます人付き合いが億劫になる。

メアリから「葉書き、受け取った? 来てくれる?」という電話がかかってこないことを願う。


<今日の英語>

It's not for me.
それは私の趣味じゃないの。


パーティを装ったセールスに誘われたときに、どうやって断るべきかと言う投稿より。"No, thank you."とはっきり言えば早いのだが、ちょっと言いにくい相手のときは、「それは好きじゃないから。」で押し通す。「xx日には何か用事がある?」と誘導尋問されたら、"Yes, why do you ask?"と予防線を張っておく。もしセールスとは無関係の集まりで参加したいと思えば、先の予定を変更すると言えばよい。セールスだったら、もちろん「予定があるから行けない。」と断る。



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鼻スプレーと予防注射

2010.10.26 (火)



医者通いの多いこの頃、昨日は主治医のドクターBに行って来た。

フォローアップに来なさいと言われて、かなり前から予約が入っていたのだが、何のフォローアップだったのか記憶があいまいになる。

テニスひじがあって、埃アレルギーがあって、整形外科医のドクターFに行くように言われて、マモグラフィーはやったかと聞かれて、その通りにこなしてきた。もはや特定の症状の経過観察ではない。ともかく主治医のところへ自分を連れて行き、「他に悪いところ」を見つけてもらう感じ。

診察室ではいつものようにナースが脈や血圧(100/60)を測ったり、パソコンの問診票に記入したりした。

「いま飲んでいる薬は?」とすでに私のファイルにあるものを読み上げる。血圧降下剤、抗うつ剤、カルシウムとビタミンD,マルチビタミン、鉄剤。ノーと答えたのは、テニスひじで最初に処方された関節炎の薬だけ。マルチビタミン剤は気の向いたときにしか飲まないが、いちいち説明するのも面倒なので、イエスとした。

明るいドクターBは「ハーイ、kometto3!元気?今日はフォローアップね? 咳はどう?」と診察室に入ってきた。

「咳はほとんどなくなって、そろそろ量を減らそうかと思ってます。」と私。

「そうね。じゃあ、朝晩1回ずつにして、1週間したら夜だけにしましょう。それで止めていいわよ。」

「咳はいいんですけど、post nasal drip が不愉快です。咳と関係あるんでしょうか。」と今度は鼻水の症状を訴えた。もしかしたら副鼻腔炎か別のアレルギーかとも思ったが、ドクターBは私の鼻を見もしないで、「鼻スプレーが必要ね。」

一つ薬が終わると、また別の薬が始まる。しかし、不快感をどうにかしたい私は、素直に従う。

「これも朝晩1回ずつ、1週間だけやってください。またフォローアップに来て、今度は薬にさよならできるようにしましょう。」とドクター。

そのときにはまたちがう症状が出て、別の処方薬を服用するはめになるのではという予感がした。


        *


ドクターに聞かれる前に、自分からテニスひじの話をした。

整形外科医で撮ったレントゲンでは正常だったこと、週3回6週間のフィジカル・セラピーを処方されてまじめに通っていること、でも、まだ痛みがあること、4週間後にもう一度ドクターFの予約が入っていること。

「コルチゾン注射をしてもらったらどうかしら。」とドクターB。

「注射は3ヶ月くらいで効き目がなくなるんじゃないですか。何度もやらないとだめだと思ってました。」と私はうろ覚えの情報を持ち出した。

「3ヶ月かもしれないし、一生かもしれない。注射で痛みと永遠にさよならできるかもしれないわよ。特にあなたの症状だったら。」

すでに4ヶ月もこの痛みを抱えている私は、飛び上がるほど痛いというその注射を受けてみようかと言う気になった。

「フィジカル・セラピー! 誰があんなくだらないことをやる時間があるって言うの?」とドクターBはバッサリ切り捨てた。

やっぱり!最初からフィジカル・セラピーに懐疑的で、いくら自己暗示をかけても効果が感じられないでいた私は、まさに我が意を得たり。

1時間で終わるのは、エンジェルがいなくて、アシスタントがたるんでいたり、適当に切り上げてOKだったりした日だ。たいていは1時間半かかる。往復の時間や待ち時間を入れると2時間。

私は主婦だからいつでも行けるが、もし働いていたらそうはいかない。

それでめきめき回復すればまだしも、これが医療行為かと疑いたくなる程度の運動や施術なのだ。整形外科医がやれというのでやっているが、医者とセラピストがぐるになっている業界じゃないかと思いたくなる。


            *


flu shot (インフルエンザの予防注射)はもうやった?」とドクターB。

「まだです。」とまったく受ける気のない私。

去年(一昨年かもしれない)はH1N1騒ぎで、家は全員注射してもらった。町が確保したワクチンを、ハイスクールのジムで無料提供していたのだ。私は風邪やインフルエンザには強いので、受けるつもりはなかったが、気管支の弱い夫が騒ぐので子どもたちも連れて出かけた。もうブームが廃れ始めていたころで、最初は6歳以下と老人と持病のある人限定となっていたのに、ワクチンがたくさんありすぎて「住民なら誰でもどうぞ。」とあいなった。

「じゃあ、今日帰る前に注射してもらってください。」

そんなことを言われたのは初めてだった。

「やらなくちゃいけないんですか。年齢のせいですか。」と聞いてみた。

「あなたはこのところ喘息症状みたいなトラブルがあったでしょう。だから、もしインフルエンザにかかって肺がやられたら悪化しますよ。」

そうか。埃で咳喘息になって、直りかけたら今度は鼻に来て、呼吸器系統が弱っているところへやられたらイチコロなのかもしれない。

別の部屋で予防注射の順番を待つ。

やってきたナースは「あなたの保険会社は?」と私に尋ね、ワクチンをしまってある冷蔵庫のドアを開けて探し始めた。保険会社によって使うワクチンが違うのだろうか。

「ここにサインしてください。」と紙を差し出された。

ワクチンの副作用についての書類かと思ったら、「もし保険会社が注射の費用を払わないなら、あなたが35ドル全額を払うという同意書です。たぶん大丈夫だと思うけど、保険会社によっては支払いを拒否するので。」とナース。

なんともせちがらい話だ。予防注射さえカバーしないなんて。これが最後の超大国ということになっているアメリカの現実である。

もし拒否されたら、私は保険会社と断固戦うぞと決心した。たかが35ドルであっても、「医者が医学的に必要だと判断した」という水戸黄門の印籠で押すのだ。

誰が決めたか知らないが、予防注射の費用を出し渋る輩が気に入らない。

【追記】 保険会社の明細書によると、この日の医療費は以下の通り。カッコ内は保険会社が認めた適用金額。私には差額を払う責任はない。

外来受診 170.00 (102.02)
予防接種 28.00 (15.00)
予防接種 56.00 (36.76)
---------------------------------
合計 254.00 (153.78)

自己負担額は、上から20.40、3.00、7.35で合計30.75ドル。予防接種が2回あるのは、28ドルが注射の中身で、56ドルは施術料だと思われる。


<今日の英語>

Who has time for that crap?
誰がそんなくだらないことをやる時間があるの?


ドクターBがフィジカル・セラピーを一蹴したときの一言。crap はshit ほど強烈ではないが、決して上品ではない。どちらも糞を意味する。



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ヘルニア手術の費用

2010.10.27 (水)



先月夫が受けたヘルニア手術の請求書が届いた。

まず病院。

手術室 11464ドル
回復室 953ドル
医薬品1 23ドル
医薬品2 47ドル
備品 855ドル
----------------
合計 13343ドル

高いのか安いのかわからない。日帰りとはいえ、お腹を切ったんだからこれくらいは当然か。

すべて保険が適用されたが、患者負担分は638ドル。加えて、なんだか知らないが、NY州追加料金として61ドル52セントが加算された。

夫が支払うべき金額は700ドル。総費用の5%である。保険がなかったら、1ドル81円として165万円が飛ぶところだ。

次は麻酔関係。

麻酔1300ドル。適用額は918ドル。夫の負担分は183ドル。
手術1040ドル。適用額は362ドル。夫の負担分は72ドル。

次は執刀医。

手術1851ドル。適用額923ドル。夫の負担185ドル。

当日にかかった費用は以上。おおざっぱに見て、請求額が17534ドル。そのうち夫が払うのは1140ドル(6.5%)。割合としてみると低いが、千ドル以上の自己負担は大きい。


         *


手術の前にもお金がかかった。

手術前の血液検査その1に142ドル。保険が全額負担。
手術前の血液検査その2に142ドル。なぜかこちらは夫の負担額4ドル44セント。

主治医の診察と検査に322ドル。保険が198ドル。夫の負担40ドル。
専門医の診察に381ドル。保険が195ドル。夫の負担39ドル。

手術前の費用は合計987ドル。夫の負担は合計83ドル(8.4%)

手術して1週間後に、夫は執刀医の術後診察を受けた。その費用はまだ精算されていない。


         *


私が日本にいたころ、サラリーマンの自己負担額は1割だった。その後どうやって増えたのかしらないが、今は3割だと聞いた。国民健康保険もそうらしい。

それに比べると、うちの保険の適用範囲は一割以下なので、かなり手厚い気もするが、なにしろ元の請求額が大きい。しかも、この保険も夫が会社を辞めたら終わりだ。

医者になるには相当の勉強と訓練が必要だから、お腹を切って病気を治してまたお腹を閉じてもらうのに、それ相応のお金を出すべきだと思う。

うちはまだ貯金から出せるが、もし毎月ギリギリの生活をしていて保険がなかったら、あっという間に借金が膨らみ、自己破産まっしぐらになる。

中間選挙で共和党が多数派になって健康保険改革案が振り出しに戻ったらと思うと、不安になる。

でも、この国では「医療保険の『国有化』ハンターイ!社会主義ハンターイ!」などと黄色い声で叫ぶお茶会派がもてはやされているのだ。国民皆保険がないことがどれくらい異常かという自覚のないアメリカ人が多すぎる。

先進国から移住した人は、国が健康保険を提供するのが普通だと考えるので(むしろ当たり前すぎて考える必要がない)、弱肉強食の医療制度にショックを受ける。でも、アメリカから出ない人は現状しか知らないので、そんなもんだと思うのかもしれない。

アメリカは世界を知らない田舎者だという評価は、あながち嘘ではない。

アメリカ建国の際の自立自助精神が脈々と流れているのだと解説されても、「あんたはヘルニアの手術をDIYで済ませる気?」と嫌味を言いたくなる。




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ぼったくりセラピー

2010.10.28 (木)



整形外科医のドクターFは、私のテニスひじに週3回6週間のフィジカル・セラピーを処方した。

今日は10回目だったので、半分を過ぎたところだ。

うちの健康保険は、年間40回までのセラピーをカバーするとなっているが(それ以上セラピーを受けたい場合は、事前に保険会社の承諾が必要)、いまだにセラピー・センターは一度も請求書を送ってこない。月末にまとめて郵送するのだろうか。

ちょっと心配になって、保険会社のサイトで調べることにした。

先週の時点ではまだ処理中らしく、何のデータも出ていなかった。医療機関と保険会社の両方で事務処理があるので、時間がかかるのは珍しくない。

今日クレーム・センターのリンクを開けて驚いた。

750ドル、475ドル、350ドル、475ドル、400ドル、500ドル。初回から6回目までの請求金額で、6日間で合計2,950ドル!

心臓が止まりそうになった。

1ドル81円として238,950円である。ジムでのエキササイズとネイルサロンのマッサージに毛が生えた程度の施術と玩具みたいな医療器具で、こんなにふっかけるのか。これをぼったくりと言わずして、なんとしよう。


        *


保険会社がカバーしたのは1回あたり60ドル。その日にいくら請求されようが、60ドルに決まっているらしい。そのうち、私の自己負担分は初日だけが28ドルで、2回目からは12ドルになっている。

それでも元の請求額の大きさにたまげた。

差額の690ドルやら415ドルやらは、まさか私に支払い義務があるんじゃないでしょうねと怖くなって、セラピー・センターに電話してみた。

「あなたが払わなくてはいけないのは、保険会社が決めた自己負担額です。」

(あ~、よかった~)それはわかってます。でも、そうすると750ドルの請求に対して60ドルしか支払われないと思うんですけど。

「うちと保険会社の契約でそうなっているので、それでいいんです。」

こどもたちの小児科でも、夫や私の主治医でも専門医でも、確かに請求額の通りに支払われることはない。まず保険会社が認める金額があり、そこから私の deductible やco-pay といった自己負担分を差し引いた金額を保険会社が医者に払い、私は私の分を医者に直接払う。

だから驚くことはないのだが、どうやったらあのエキササイズやマッサージ(これは正味10分)に100ドル単位の請求ができるのか。

あっさり60ドルで引き下がるのも腑に落ちない。請求額と差がありすぎる。いったいどんな契約なんだろう。個々の請求とは別に保険会社からの支払いがあるのだろうか。

しかも、初日を例に取ると、750ドルの内訳がわからない。

いずれも Physical Therapy としか書いてない。その名目のくり返しで、ただ100ドル、150ドルなどの金額が横に出ている。これでは実際何にいくらかかったのかまったくわからない。

Physical Therapy という項目がいくつ続いても、60ドルが適用されるのは最初の項目だけ。あとは 0(適用額ゼロ)で、「認めません」と言う意味のややこしい文章が書いてある。他の日も同様。

セラピーセンターでの医療費明細なのだから、どれも物理療法に決まっている。せめてマッサージとか電気療法とか温湿布とか書くべきじゃないだろうか。

これではスーパーのレシートにすべて「食べもの」と書いてあるようなものだ。

「どうせ60ドルしか払ってくれないから、テキトーに多めに請求すれば?」と最初から投げているセラピー・センターの経理の光景が頭に浮かんだ。保険会社も変だが、医療機関もおかしい。どうしてこんなナンセンスが堂々とまかり通っているのか。不条理が当たり前で、もはや誰も驚かないのか。

まるで不思議の国のアリスの世界。


         *


こういうときはやっぱり検索である。

フィジカル・セラピーのコストを調べてみたが、どこも似たり寄ったりらしい。

アメリカの情報交換サイトでは、普通にジムでできるような運動で600ドルもチャージされたとか、セラピストは他の人の相手をしていて、ぼくはほったらかしにされたのに200ドルだよとか、文句たらたら。中には、最初の請求書でびっくりして、残りの予約を全部キャンセルした人もいた。アイスパックなんかやってもらっちゃだめ!あれで100ドルですって!馬鹿にしてる!氷ならうちの冷蔵庫にあるわよ!

私は保険が適用されると思って、費用はそれほど心配していなかった。

だから、レーザーをやりましょう、超音波もやりましょうとセラピストに言われるたびに黙って従った。「必要な治療だから。」と説明されたら反論できない。

保険がない人はどうするんだろうと思ったら、セラピストに現金払いの割引を交渉したという人のコメントがあった。その人はフィジカル・セラピーの効用を信じていたのだろう。

私はもし保険がなければ、もったいなくて行かない。そもそもセラピーの類は最初から信用していない。我慢できない痛みではないし、腕のストレッチはドクターFが教えてくれた。家で1人でできる。

10回のセラピーでよくなったのかどうかも、はっきりしない。パソコンでタイプするのは痛くないが、包丁やはさみを使ったり、ビンのふたを開けたり、腕を曲げのばししたりすると、わずかにピリッとする。セラピー前とまったく同じだ。

フィジカル・セラピーを「あんなくだらないこと!」と一蹴したドクターBの一言がよみがえる。

ドクターFの指示なので最後まで通うつもりだが、次回のセッションから「これで100ドル。これは150ドルか。」と頭の中で計算しそうである。


<今日の英語>

You are not missing a thing.
あなたは何も見逃していませんよ。


フィジカル・セラピーを続ける時間もお金もなくて途中で止めてしまった人に、「大丈夫。私はあなたとそっくりのひざの故障があって、保険のおかげで週2回2ヶ月間通ったけど、セラピーに行かなくたって、それで何か見逃したとかせっかくの機会を失ったっていうことは全然ないから。自分でエキササイズして、ドラッグストアで売ってるひざ用のブレースをしておけばおんなじことよ。」と経験者がお気楽アドバイス。



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アダルトサイトというもの

2010.10.29 (金)



定期的なクレジットカードのチャージをしばらく止めるから600ドルくれと夫が言ってから、20日経った。

夫は念書を書いたが、2週間後にあっさり約束を破り、いつもの倍の150ドルを使った。金額が違えばバレないとでも思ったのか、バレても平気だったのか。
今日までに150ドルが2回、ペイパルを通してのチャージ75ドルが1回あった。

そして、毎月1回クレジットカードの締めのときに、決まって海外での取引手数料が5ドルくらい取られる。

これらはすべて adult webcam community サイトへの支払いである。

ここでの支払いは、第三者である代行業者7社が請け負っているらしい。もちろんクレジットカードの明細にはアダルトサイトなどという表示は出ない。でも、一見まじめな社名を検索して関連リンクをたどって行けば、簡単にわかる。

うちは私がお金を管理しているので、夫がこういうことをすれば追跡できる。

でも、夫婦でも財布が別、あるいは夫が全部引き受けているという場合は、アダルトサイトにお金を使ってもばれない。

ある統計によれば、世界中のポルノ業界の収入は2006年度で970億ドル。1秒に3075ドルがポルノに費やされていて、1秒に28258人がネットでポルノを見ているという。

970億ドルは、ベトナムのGDPより大きい数字である。

男だけとは言わないが、圧倒的に男だ。少なくともアダルト業界の一番のお得意様は男だろう。だから男向けの即物的な独りよがりのポルノしか作れない。男たちは、堂々とあるいはコソコソと、そういうアダルトサイトに日参している。

まったくご苦労なことである。


           *


ルーマニア人に数百ドルをあげてしまうよりは、まだしも夫が自分の楽しみにお金を使ったという妙なあきらめはつくものの、私が医療費の件でやきもきしているのに、どうして夫はこういう愚かな浪費をするのだろう。

結婚生活22年目の私は、夫のポルノを発見して動揺する若妻ではない。私の見ていないところで証拠を残さずにやるなら、どうぞご自由にと思う。やりたくもないセックス(「夜のお勤め」なんてえげつない名前をつけたのは誰だ?)を強要されるより何倍もましだ。

ただし、無料のポルノに限る。

これだけネットにアダルトものが氾濫しているのだから、いくらでも無料の画像や動画が見つかるはずである。どうして75ドル(1回分か1週間分かわからない)も払うのだ。もったいない。

ウェブキャムでコミュニティと名乗っているので、相手の姿が見えて会話もできるサービスだと思われる。そのサイトのトップページには、若い女の写真がずらーっと出ていた。実際に会って体を提供するのではないなら、売春よりは安全で割がいいのかもしれない。

でも彼女たちが手にするのは75ドルではない。このアダルトサイトを運営している会社ががっぽり儲けて、彼女らにはほんの数ドルしか渡らないと思う。こういう世界では搾取が基本だ。

一人一人の写真にプロフィールのリンクがあったが、私はクリックしなかった。半裸で媚びたポーズを取る何十人もの女の写真に圧倒されたせいもあるが、どういう理由であれ、こうやって稼がなくてはならない彼女たちをまともに見たくなかった。


           *


10年以上前、NYタイムズ・マガジンにセックス中毒についての詳細な記事が載った。

私は少しだけ読んで、その辺に置いておいたのだが、夫が持っていってしまった。しばらくして夫は「自分もこれだと思う。」とまじめな顔をして、マガジンを手にやってきた。私はまだ全部読んでいないと答えたが、そのマガジンは戻ってこなかった。結局どういう話だったのかわからずじまい。

その後、sexual addiction の文字はあちこちで見るようになり、有名人のだれそれがそうだと取りざたされたりした。最近では、タイガーウッズがセックス中毒患者として「治療」だか「リハビリ」を受けたという報道もあった。

アルコールやドラッグにおぼれて中毒になるのは理解できるが、セックス中毒という病気は本当にあるのか。単に自分の行動をコントロールできないだけじゃないか。病名をつければ何をしても許されるような風潮にうんざりする。

夫はセックス中毒ではないと思う。ポルノを見たがる、たくさんの男たちの中の1人というだけだ。

あんなものどれでも同じだろうに、よく飽きないもんだ。

アダルト業界は、それでも目新しい何かを求めて、より強い刺激を与えるべく、日夜励んでいるのだろうか。

そういえば、この間ロサンゼルスでポルノ映画に出ていた男性俳優がHIVに感染していたというニュースがあった。彼はゲイもストレートも相手にしていて、彼と関わった会社は撮影を延期しているそうだ。

安全のためにコンドームを使わせるべきだという声に対して、ポルノ映画会社の重役連中は「コンドームは視聴者が好まない。ファンタジーが台無しになる。」と反論する。

「定期的に全員をテストすれば、コンドームを着けなくたって感染のリスクは低いんじゃなぁい?」と言うポルノ女優の声があった。まあ、勝手にしてください。

コンドームを使わないポルノを見た観衆への悪影響は見過ごせないという。

コンドームを使わなくても大丈夫だと洗脳されるそうだ。そうでなくても、アダルトビデオのシーンを再現したがるような男には、女が迷惑しているのに。

私は画像より文字が好きだし、怪しげなサイトでウイルスに感染すると困るので、ポルノは見ない。たまに、何かのリンクを開けると、いきなり性行為の画面が出てきてギョッとする。たいてい男のために作った映像なのだとわかる。そういうのが好きな女性もいるのだろうが、私はゲンナリする。

とにかく、いつも同じような実も蓋もないイメージなのだ。もう少し想像力と創造力を発揮できないのかと思う。


          *


夫がこのアダルトサイトにチャージするたびに、クレジットカードの会社から電話がかかってくるようになった。

「不正使用があったかもしれないという警告です。x月x日の149ドル99セントに覚えはありますか。クレジットカードはお手元にお持ちですか。」

これまでは「夫が使いました。」と答えていたけれど、今回は気が変わって、夫に直接話をさせることにした。

夫の部屋のドアは閉まっていたが、ノックしながらドアを押してみた。どうせ鍵がかかっているだろうと思ったのに、開いた。

夫はヘッドフォーンをつけていたので、気がつかなかったらしい。

私は大きな声で「シティバンクよ!不審なチャージがあるって!」と呼びかけた。

夫は慌てて画面を切り替えてヘッドフォーンをはずした。

ほんの2秒くらいだったが、画面には女たちの写真がずらーっと並んでいた。調査済みなので驚かないが、どうしてこういうときにドアをロックしないのだ。夫は赤い顔をしてシティバンクの電話に出た。

次の日、夫は心理学者とのカウンセリングを忘れていて、私が呼びに行った。ノックしたが返事がない。ドアを押したら開いた。また同じような画面だった。

本当に呆れる。

夫は「Gとチャットしていたんだよ。悪いけど、カウンセラーにちょっと遅れると電話してくれないかな。」

バレバレなのに、嘘をつく。

先日の朝日新聞に、ネット取引決算代行業者とのトラブルが急増しているという記事があった。

「インターネットで出会い系サイトなどを利用して、クレジットカードで料金を支払う手続きをとったら、海外のカード決済代行業者から覚えのない料金を請求され、連絡も取れない」

出会い系とは売春の婉曲表現か。どこの国でもなぜか海外の代行業者が関わっているらしい。それでうちのクレジットカード会社でも「詐欺の疑いあり」という警告が自動的に出るのだろう。

夫の場合は身に覚えのない料金ではないが、これからは夫にシティバンクと話をさせよう。それで夫がやめるとは思わないが、チクリと刺して憂さを晴らすのだ。


             *


なにごとも需要があってこその供給である。

売春は世界最古の職業だそうだから、アダルト・サイトもその流れで需要には事欠かないと思われる。

動物が種の保存を目的とする、あとくされのない単純な交尾を発情期限定で済ませるのに比べて、人間は快楽を目的をする性行為が(理論的には)いつでもできるようになってしまった。そして、人間のセックスは愛だの結婚だのお金だのテクニックだの、いろんな要素が絡んで複雑になった。

商品化はその最たるものである。

たとえば、人間に最も近いとされているボノボがポルノを見るだろうか(ウィキペディアには、ボノボはビデオゲームをやると書いてあった。それくらいの知能がある)。

ボノボはパンツをはかないから、目の前にいくらでも裸があって、しかも乱婚型でしょっちゅう触れ合っている。だから、ポルノはいらないのかもしれない。

でも、ものすごい美貌で色っぽいメスのボノボがモニターに映し出されたら、オスのボノボはどう反応するだろう。匂いが届かなくて触れることができなくても、興味を示すか。そういう研究の話は聞いたことがないが、人間のオスとボノボのオスを並べて実験したらおもしろそう。

夢中でモニターにかじりつく人間に、ボノボが「こんなの何が楽しいんだ?」と冷たい視線を投げかけたりして。

いや、やっぱりオス同士、どっちもポルノに夢中になるかもしれない。

そうしたら、メスのボノボも「なんか知らないけど、助かるわー。いっつもうっとうしいのよねえ。」とせいせいして、メス同士連れ立って遠くの森に出かけたりして。




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自分で選ぶ健康保険

2010.10.30 (土)



来年度の健康保険を決める時期になった。

夫は3月に職場復帰あるいは退職の決断を迫られるはずなので、たった3ヶ月間で終わりかもしれない。それでも、春までは病気になっても大丈夫だと思うと心強い。

もう慣れっこになったが、アメリカに来た当初は、毎年秋に Benefit Enrollment と称して、いろんなオプションから保険を選ぶことに戸惑った。

会社は複数の保険会社と契約して、従業員に提供する。どういう適用範囲で、自己負担額は何ドルまで、自分が選んだ医者に行けるのか、ネットワークに所属する医者しかだめなのか。まるでカフェテリアのメニューみたいに、自分で考えて選ぶ仕組みである。

コンピュータ化されるまでは、毎年秋に分厚い書類が郵便箱に届いたものだ。
とても全部読みおおせるものではなかった。

夫も私もまあ健康だったので、適当によさそうなのを選び、たいてい毎年同じオプションにしていた。

せっかく会社が提供しているのに、「歯科保険は不要」という選択肢があって驚いた。歯が丈夫で虫歯にも歯周病にも縁がなければ、毎月の保険料を払うよりは年1~2回のクリーニングを自腹でまかなったほうが割がいいのだろう。

歯が弱い私には信じられない話だが、保険というのは「ある日突然悪いことが起きるかもしれない」場合に備えて入っておくものじゃないだろうかと、他人事ながら心配になった。

眼科保険も同じだった。さすがに医療保険には「入らない」という選択肢はなかった。


         *


うちの2010年度の毎月の保険料は

Medical 92ドル
Dental 60ドル
Vision 30.15ドル
---------------------
合計182.15ドル


1ドル81円とすべきだろうが、めんどうなので1ドル100円として、1ヶ月当たり18200円。これは家族4人全員の眼科と歯科も含む医療保険である。つまり、
一人当たり毎月45ドルを払っている計算になる。

年間の自己負担額は一人当たり500ドルまで。家族としての自己負担限度額は1520ドルまで。

さらに医者にかかるたびに Co-Pay という自己負担分があり、ネットワーク内の医者なら20%、ネットワーク外なら40%を払わねばならない。幸い、ほとんどの医者はネットワークに所属している。例外は私の歯医者。

ERや入院、メンタルヘルス、各種検査、処方薬などには、それぞれ細かい規定がある。たとえば、歯科矯正は契約で認められた料金の50%が保険でカバーされるが、最大2500ドルまでとなっている。

大企業の福利厚生なので、アメリカではかなりいいはずだが、世界的に見てどうなのかはわからない。もっとも、10年前、20年前はもっと手厚く、保険料も安かった。

Vision では、年1回の眼科検診のほかに、メガネのフレーム1組が無料(120ドルまで)、基本的なレンズは無料である。私のように乱視があったり、極薄にしたかったり、反射しないレンズを選んだりすると、自己負担の額が増える。

もっとも、私はメガネは保険が効かなくても日本で作りたいので、この保険は目の病気を発見するために入っているに過ぎない。


            *


夫や私はちょくちょく医者にかかるが、子どもたちはいたって健康で、本当に助かる。

年1回の健康診断以外で小児科で診てもらうのは、のどが痛いか、咳が出るときくらい。長男が指を縫う怪我をしてERに連れて行ったのは例外中の例外だ。

長男は目がいいし、2人とも年2回の歯の検診とクリーニングで虫歯はない。長男の歯科矯正は終わったし、もともと歯並びがそれほど悪くない次男の矯正はあと2回程度で終わるはずだ。

子どもが先天性の病気を持っていたり、病弱だったりすると、医療費の負担が非常に大きくなる。親は医療保険のために仕事を辞められない。

健康保険改革法案が通る前には、既往症があると保険に入れないということが普通にあった(中間選挙の結果によっては、法案がどうなるかわからない)。そういう人がレイオフされて健康保険がなくなったら、本当に深刻な状況になる。貯金を使い果たして貧困世帯となれば、メディケイド(低所得者向けの公的医療扶助)の世話になれるが、それもCo-Pay が高いとか、患者を拒否する医療機関があるとか、十分な補償にはほど遠い。

アメリカでは、健康は文字通り「財産」だと思う。


            *


うちは来年度も今年と同じ保険を選ぶつもりでいるが、事務手続きが嫌いな夫は、こんなことも私に一任しているのだ。

休職中の夫は、会社のウェブサイトへのアクセスを制限されている。私は社員ではないので、電話をしても「配偶者にはお答えできません。」と教えてもらえないこともある。

かろうじて11月19日が申し込みの期限だとわかった。保険会社のサイトではまだ申し込みができず、2011年度の保険料がいくらになるのかもわからない。

夫はヘルニア手術の跡がまだ痛むと言い始めた。執刀医のオフィスに電話してくれと死にそうな声で訴える。

「自分で電話すればいいじゃない。英語でしょ。だいたいどれくらいの痛みなのか、私には説明できないんだから。」と言いつつ、さっそく電話すると、来週の木曜日に診てくれるという。

夫は医者の予約を取るのも嫌いなので、ほっておくと年が明けてしまう。確実に保険が使える今年度中に済ませねばならない。

子どもたちにも、「病気になるなら、今年中になってよ。」と理不尽なことを言い、「歯ブラシした?虫歯を治すのに1000ドルはかかると思ってよ。」とでまかせを言う。

保険のことでストレスがたまって病気になる人もいるんじゃないだろうか。


<今日の英語>

Why don't you look it up on the internet?
ネットで調べてみたら?


子どもたちに何か質問されて、説明がめんどくさくなったときの夫の回答。




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ホリデー・シーズン突入

2010.10.31 (日)



いやだいやだと思っていることは、すぐにやってくる。

新学期が始まって、さっそく例年通りハロウィーンのキャンディが店頭に並び、「もう?!」と毎度おなじみの軽いショックを受けたのは9月のこと。

ハロウィーンは、他の祝日のように第3木曜日だの第1月曜日だのと日にちが移動しない。10月31日と決まっている。その点は覚えやすくてよい。

あと2ヶ月先だと知らん顔をしていたら、もう今夜に迫った。

キャンディはやっと今週スーパーで買い込み、車のトランクにしまっておいた。台所のキャビネやパントリーでは、子どもたちに見つかる。2人とも甘党だ。彼らに食べられて、配る分がなくなったら困る。

そうやって隠しておいたのだが、テニス・レッスンから帰ったとき、次男に食料品をトランクから運ばせたら見つかってしまった。

「1個ちょうだい。」

「だめ。これは配るやつなの。今年はあんまり買ってないから。」

次男はすぐ引き下がった。どうせもう3日もすれば、よそでたくさんキャンディがもらえるんだから大丈夫だろうと思った。

甘かった。

         *


次の日、次男のベッドのシーツを替えようと思って、ベッドと壁の間を見たら、キットカットの赤い袋と食べ散らかした包みが山になっていた。

先に帰った長男に「ちょっと聞いて!次男がキットカット、勝手に開けたのよ!ひどいでしょ。」と文句を言った。長男は「ええー!ばかだなー。あいつはいつもそうなんだよね。」と私といっしょになって憤慨した。

続いて帰宅した次男に「どうして食べちゃうのよ!勝手に開けていいと思ってんの?」と私は問い詰めた。

「えへへー。ごめん。だってー。でも、ぼくだけじゃないよ。長男くんも食べたんだよ。」と次男。

「えええー。ちょっと何よ、さっきの言い分は?」と今度は長男を問い詰める。

「ぼくは開けてない。次男が開けたんだよ。それに、ぼくは半分より少ししか食べてない。」と説得力のない言い訳をする長男。

まったくどうしてこんな催し物があるのか。

さすがに長男はもう仮装しないし、キャンディをもらいに出歩くこともしない。でも、友だちの家に集まって、午後1時から夜9時までゲームをするのだそうだ。

次男はいつもの仲良しグループ宅に集まり、彼の家の近所を皆で練り歩くという。仮装はゲームのキャラクターらしいが、私は関与しない。自分で準備させる。

子どもたちが小さい頃は、近所を回るのに付き添わねばならず、あちこちでお愛想を言って気疲れした。

早く彼らが大きくなって子供だけで出歩けるようになり、もっと大きくなって「ハロウィーンなんて子どものやることだよ。」と、小さい子たちにキャンディを配るのを引き受けてくれたらなあと思っていた。

しかし、実際にそういう年齢になったところで、彼らは家にいないのである。

まあ誘ってくれる友達がいるのはありがたいことでもあり、行くなとも言えない。


         *


夫は夫で、この国で生まれ育って50回以上ハロウィンを経験しているはずなのに、うちでキャンディを配る役目は嫌だと言う。こういうときだけ、躁鬱病を持ち出す。

私だって嫌だ。私だって抗うつ剤を飲んでいる。こんなストレスのたまることはしてはいけないのだ。

できれば、玄関のライトも家の中のライトも消して、暗闇でひっそりと数時間やり過ごしたいところだが、ご近所の手前そういうわけにもいかない。

結局、夕方4時半ごろから夜8時過ぎまで、私がキャンディ配布係になるのだ。あれもまとめてきてくれたらいいのだが、五月雨式にピンポーン、ピンポーンとなるので、しょっちゅう玄関を開けたり閉めたりしていて、他には何もできない。

いちいち Happy Halloween! と言ってやり、すてきなコスチュームねと付き添いの親に聞こえるようにほめてやり、キャンディを3つ4つ袋に入れてやる。You're welcome!

最後はぐったりする。

猫たちは最初のピンポーンでパニックに陥り、先を争って地下室へ駆け下りる。しばらくして、そーっと出てくるものの、またピンポーンで地下室へ。その繰り返しで彼らもクタクタになる。


         *


ハロウィーンが終わってやれやれと一息つくと、もうすぐ感謝祭。そしてクリスマスが終わるまで、長いホリデー・シーズンが続く。

どっちの日も、おいしくもない同じような食べ物が並ぶ。スーパーの広告を見るだけで食傷気味になる。あんなのじゃなくて、おもちをトースターで焼いて、しょうゆにじゅっとつけて、のりを巻いて食べたいなあと思う。

私はハロウィーンには張りぼてのかぼちゃ(中で電球が光る)を玄関に出すだけだし、クリスマスにはストッキングをぶらさげ(子どもたちが小さく私が若かったときは、大きいツリーを出した。もはやそんな気力も体力も残っていない)、夫が子どもたちに1つ2つプレゼントを用意するだけでなので、ぜんぜんホリデー気分ではない。

親戚にはカードも贈り物も一切しない。義父母もあきれているだろうが、自分勝手で融通の利かない私の性格をよく知っているらしく、少なくとも私に向かっては何も言わない。

それでも、誰かに会えば Happy Halloween! Happy Thanksgiving! Merry Christmas! Happy Holidays! とお決まりの挨拶をせねばならない。

私はハッピーでもなんでもなく、むしろ憂鬱になるのだが、義母や彼女の娘たちはこういうことが大好き。近くに住んでいなくてよかったと心底ほっとする。

そして、12月26日がくるのをじっと待つ。


<今日の英語>

More later.
詳しいことは後で。


G氏が夫に当てたメールより。「今日はうちもヤードセールをやるから、午前中はセットアップで忙しくなる。3年前に元の家を売ったときにも大量の物を破棄したんだけど、今の家に3年住んだらやっぱりものすごく増えてた。卓球台とか、ビッグスクリーンTVとか不要な家具とか。詳しくは後で。」 More of this later. とも言う。



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