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まだルーマニア娘と

2010.03.01 (月)


夫はまだ隠し事をしている。だから、私もそれとなく観察を続ける。

つい先週も、夫は現金200ドルを引き出したが、何のために使うのかは白状しない。私も表立っては追及しない。

夫の精神の均衡が最優先事項なので、ただ見逃している。今のところは。

ER騒動のずっと前に、夫は自分だけの口座を近くのM銀行に作った。

M銀行にはすでに私たちの共通の当座も私個人の普通預金もあり、すべて私がオンラインで管理している。夫の口座もついでに登録しようとしたら、「口座番号は教えたくない。」と夫は言い張った。それは予想できたことである。

ずっと前にタイ女のことが私にばれてから、夫はこそこそと複数の銀行にいくつかの口座を作った。そのときは口座を開設したことすら隠していたが、いくらでもヒントがあり、私は銀行名だけは把握していた。

銀行が一般向けにダイレクトメールで出すものと、口座所有者に出すものとは違う。夫は私に彼宛の封書を開けさせなかったので、大丈夫だと愚かにも思ったらしい。

いろいろあって、私がタイ女に電話したあと、夫は口座を閉じた。

ただ1件は忘れたらしく、1年ほどして「全く口座にアクセスしておられません。口座を閉鎖する手続きをしないと、残金は州政府へ譲渡されます。」という手紙が来た(夫はPCの上にその封書を置きっぱなしにしていた)。

金額は1000ドルほどだったが、夫のような性格では秘密口座の管理なんて無理なのである

       *

昨日、M銀行から明細書が届いた。私は夫には告げず、キッチンのカウンターの上に他の郵便物といっしょに出しておいた。夫宛なので開けない。でも、M銀行のスタイルで明細書だとわかった。

しばらくして見ると、それだけ消えていた。他の封書は開けてもいない。

オンラインで明細を受け取れば、私に見られなくて済んだのに。やっぱり向いてないなあと思う。

明細書は用心して自分の部屋のどこかに隠したのかもしれないが、探そうと思えば私は簡単に見つけられる。でも、残高もだいたい把握できているし、しばらくは見逃すことにする。

       *

朝4時ごろ、猫に起こされて廊下に出ると、夫がかなり大きい声で話しているのが聞こえた。

G氏との早朝電話かと思ったが、ルーマニア娘だった

簡単に切れる関係だとは思っていなかったが、まったく何をやってるんだか。ヘッドフォンを使っているらしく、自分の声がどれだけ大きいのか気づかないらしい。

ほんの数分だけ立ち聞きした。彼女の名前はステファニーだが、ステフと呼んでいた。

「きみにはルーマニア人のボーイフレンドがいたのか。ぼくにもチャンスはあるかと思って、期待していたのに!」と大げさな夫。泣いているような声だったので、ぎょっとしたが、嘘泣きだった。ステフには、子どもたちもスカイプで話したというマリウスという夫がいるのだし、おふざけというか、flirt をしていたのだ。

ステフの声は私には聞こえないが、夫の言うことだけでなんとなく想像できる。

彼女がルーマニア語で何が言ったらしく、夫はさらに声が大きくなった。荒げたといったほうが正しいかもしれない。

「いま、何て言った? ルーマニア語でそれはどういう意味なんだ?」

ステフは答えないらしい。

「マリウスはそこにいるんだろう? マリウスをPCまで連れて来なさい。たまには役に立てと言って、引っ張って来られるだろう。君が教えないなら、彼に今の言葉の意味を説明してもらうから。」

いったい夫とステフはどういう関係なのか

明らかにステフとマリウスはまだいっしょにいる。そして、マリウスは自分の妻がアメリカの男と長電話をしているのを知っているのだ。

夫はステフから習ったと思われるルーマニア語らしきフレーズをいくつか口にした。私はカタカナで書き取っておいたが、調べるのもばからしくなった。

電話が終わったあと、夫は「今朝もGとの電話は長かったよ。これから一眠りするから。」とわざわざ私の部屋に来て言った。そういう嘘をつくときの夫の顔は赤い。もうちょっと上手にやりなさいよと思う。

「あらー、ステフもG氏のプロジェクトを手伝ってたなんて、知らなかったわ。あなたはルーマニア語も覚えなくちゃいけないし、大変よねえ。」とからかうこともできたが、やめた。

         *

先週、夫が出かけているときに、夫の部屋でポストイットを見つけた。

それには鉛筆でステフのフルネームとルーマニアの住所が書いてあった。

こんなものをPCの横にごちゃごちゃ置いていくなんて、とまた呆れる。本人は隠したつもりだったのだろうが、紙を2,3枚どかしただけで出てきた。別にそれを探そうと思って探したのではない。

私は自分のPCにその情報をタイプして、ポストイットを元の位置に戻した。こうやって証拠が集まっていくのだ

住所を聞いたということは、やはり彼女に小切手をお金を送ったことがあるのだろう。夫がERに行く前の話である。その後はおそらく何も送っていない。でも、電話は続いている。

この間ファイルした確定申告によって、もうすぐ払い戻しがある。金額は5桁。すぐに引き出せるお金は最小限にして、他は投資すべきか。

個人年金や学資口座、それに家のローンの元本返済にも充てて、「ルーマニアへあげるお金はないわよ。」という無言のメッセージを送ることにする。
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アクセス・ランキング考

2010.03.02 (火)



1ヶ月前に夫の容態が悪くなり、ほぼ毎日書いていたこのブログをどうしようかと迷った。

私は働いていないし、子どもたちも大きくなったし、ふだんから時間だけはある。でも、夫が自殺をほのめかしたり、ERにお世話になったり、何度も精神科医と心理学者に会いに行ったり、そのたびに薬の種類や量を変えたりという状況では、落ち着いて書けない。

それで、いったん止めることにした。
 

       *


ちょうど去年の今頃、ブログを始めたとき、よくわからないままランキングに登録してみた。

いろんなジャンルの中から、アメリカ情報国際結婚を選んだ。

ハーフの子育てというジャンルもあったが、アメリカの田舎暮らしでは、日本でいうハーフの認識がない。人に聞かれることも、自分から言うこともない。少なくとも私はそうだ。

第一、子どもの話を中心に書くつもりはなかった。

自分の子どもを見て、ハーフだとは思わなくなっている。彼らの顔はもう見慣れてしまって、ことさらに意識しない(それは夫に対しても同じか)。それより、そのくしゃくしゃの髪で学校に行くの?とか、あのポツンはニキビかなとか、そういうことがまず目に付く。

日本に行くと違いが目立つので、あんなにクドイ顔をしていたんだっけ?ずいぶん白かったんだなと思うが、一瞬のことである。

でも、結婚して20年が過ぎ、いまさら国際も国内もなく、「国際結婚をしました」という意識もまた薄いのだ。結婚してすぐアメリカに来たせいかもしれない。

それに、私はアメリカ生活は長いが、出不精で人付き合いが悪く、仕事もしていないので、目新しい地域情報は持っていない。

これでは「看板に偽りあり」だと思ったが、ポイント数が各記事への共感度を測る尺度になりそうではあった(ただし、それは私の勘違いだったと思われる。記事内容とポイント数に、さほど相関関係はないらしい)。

更新しなければアクセスもなくなるから、ランキングに残る意味はない。それで、ランキングのサイトで退会手続きをし、リンクバナーも外したという経緯である。


       *


夫はしだいに落ち着きを取り戻し、私はブログを再開することができた。

私はふだん日本人との付き合いがほとんどないので、日本語で書けるブログはちょうどいいアウトプットの場であり、再開早々に長い記事を書き連ねたのだった。3週間書かなかった反動かもしれない。

すると、もっとおおぜいの人に読んでもらえるようにランキングに再参加したらどうかという趣旨のコメントが公開・非公開で届いた。

私に洞察力があるというのは、美しい誤解である。きっと、私の愛想のない文体からそう受け取られるのだと思う。

日本で大学を出て3年働き、アメリカで何度か事務のアシスタントをしただけで、社会経験は少なく視野も狭い。物事の上っ面しか見えない。本は好きだが、消化しないでただ読むだけなので、知識の蓄積がない。半世紀近く生きていて、自分の無知さ加減に呆れるほどである。

アメリカに住んでいても、経済的には夫がちゃんと稼いでいて(これからどうなるかわからないが)、私は夫との関係でごたごたしたけれど、本当にぼんやりと過ごしてきたのだった。

そんな私の書くブログがランキングで上位になったことがまず信じがたい。

ブログに貼ったアクセス・カウンターも、最初はゼロだったのに、今は23万を超えている(見まちがいかと思って、桁数を数え直した)。

ちょうど1年くらいだから、単純に365で割ると、630。これには、うちのPCからのアクセスは入らない。同じPCからのアクセスは、1回でも5回でも1日1回(ユニーク・アクセス)と数える設定なので、1日当たり630人が私のブログを開いてくれたことになる。

実際は、ブログを始めたばかりのころは1日に数人で、たとえば12月は800人くらいだったと思われる。

ありえない数字である。


       *


私はランキングでなく、書くのが目的でブログをやっている。つまり、エベレスト登頂ではなくて、山を登っていく行為そのものが目的というのと似ている。

1年の間に、自分のスタイルもなんとなく決まってきた。

幸い、私はタイプ(だけ)は早い。長い記事を書くのが苦手どころか、こんなにたくさんスペースを使える!とうれしくなる。

しばらく更新しなかったので、おそらく以前よりアクセスは減ったはずだけれど、それでも充分に広く読んでもらっていると思う。

Mixi や Facebook のようなSNS は、しがらみができそうなのでやらない。

すでに世の中は Twitter に移行しているのかもしれないが、それもやったことがない。140文字の制限でその場限りでちょくちょく書きこむのは、私のスタイルに合わない。

公にしているブログなので、読んでもらえるのは評価されたみたいでうれしいものだ。その反面、皆さんの貴重な時間をこんなブログを読むのに費やしていいんですか?と心配してしまう。

その上、バナーをクリックして他のサイトを開く手間をかけさせるのは、どうも気が引ける。ランキングで他のもっといいブログが見つかる可能性は別にして、読者には何のメリットもないのだから。

ランキングに載らなくても、検索で私のブログが引っかかることもあるようだし、「何かの拍子にひょっこりここにたどり着きました」というコメントをときどきもらう。

そういう縁のほうがおもしろいのかもしれない。

しかも、私はめったにコメントに返事をしないし、コメントを残してくれた人のブログも見に行かないのだ。そんな自分勝手な人間がランキングに参加するのも、変な話である。あれは、もっと協調性または社交性がある人たちのものじゃないかという気がする。

結局、ランキングの世界には戻らないことにした。



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ブドウの皮膚

2010.03.03 (水)


例年ならスーパーにたくさんイチゴが並ぶ時期なのに、フロリダの天気が悪かったせいで、ほんの10パックぐらいしか置いていない。しなびているのに、1パック4ドル99セントもする。

しかたがないので、緑色のブドウ(green seedless grapes。品種は知らない) を買った。特売品でカートに山と積んであった。

台所で次男とそれを食べたのだが、酸味が強い。皮は食べられるというか、ツルッとむけないので食べるしかない。南米産かもしれないが、もう少しどうにかならないものかと思う。

「日本のブドウ、おいしかったねえ。デラウェアも巨峰も。デラウェアって小さいので、巨峰は大きいのよ。覚えてるでしょ。甘いし、ジュースがいっぱいだし。どうしてアメリカのスーパーはこんなブドウしか売ってないのかしらねえ。」

と私がこぼすと、次男もウンウンとうなづく。彼は食いしん坊である。

「でも、お母さんも長男くんもよくないんだよ。」

「どういう意味?」

2人とも、ブドウの皮膚を食べなかったもん。おいしいのに。」

久々に子どもの発する日本語にドキッとした。

次男はタネ以外ぜんぶ食べたらしい。私は巨峰もデラウェアも皮を残す。

「皮膚って、皮のこと? 皮膚は人間のこれなんだけど。」と私の肌に触ってみせる。「ブドウは皮。ブドウの皮膚なんていうと、ブドウが生き物みたいに聞こえるじゃない。あー、びっくりした。」

予期しなかった効果に次男は笑った。うちのバイリンガルはこんな程度である。

       *

アメリカで子どもに日本語を教えているお母さんなら、しょっちゅうこんなことに遭遇すると思う。

寒い水(冷たい水)、熱い水(お湯)、シャワーを取る(入る)、薬を取る(飲む)、靴下を着る(履く)、ダディを持って来る(連れて来る)、いま来るよ(行くよ)、インターネットに乗る(パソコンを踏みつぶすつもり?!)。

言わんとするところは、わかる。よーくわかるのだが、一瞬ギョッあるいはガクッとさせられる

その都度、直しているので、子どもたちも「あ、また言っちゃった。」という反応をする。「正しい日本語を話せ。」という説教ではなく、だいたい笑い話になる。

見逃してあげるお母さんもいるだろうが、私は彼らが小さいときからずっと指摘してきた。いちいち直されては、子どもが日本語を嫌いになるかもしれないとは思わなかった。

子どもたちの話す日本語が、ほぼ唯一私の耳に入ってくる日本語である。言葉が好きな私としては、ほっておけない。暇だったせいもある。

猫が1個あった。」なんて何度聞かされたことだろう。そのたびに「猫は物じゃないから、1匹、2匹でしょ。それにあったじゃなくて、いた、でしょ。」と教え、しばらく意識して動物を話題にした。

さすがに今は動物を数えるときは「匹」を使ってくれるが、裏庭に来る大きい角の生えた鹿も「1匹」なのである。あきらめつつも、「大きい動物は1頭、2頭でしょ。」と一応は解説してみる。

        *

でも、と私は自分を振り返って思う。

私の英語もこうやってアメリカ人をギョッとさせているはずである

夫以外のアメリカ人は、おそらく聞かないフリをしてくれる。あるいは、間違ってますよとは言わずに、正しい言い方をさりげなく交えて会話を続けてくれる。

いまだに考えながら使うのは、nail とclaw。日本語なら、どちらも爪。ネイルを先に覚えたし、使用頻度が高いので、猫の爪が長いという話をするときにもついクローでなく、ネイルと言いそうになる。

言いながら自分でもよくわかっていないのは、果物の皮。

そもそも次男がブドウの皮を皮膚と呼んだのは、英語ならどちらも skin だから。

でも、rind や peel という言い方もある。ちょっと調べてみた。

  • skin は、玉ねぎ・じゃがいも・桃などの薄い皮。ソーセージの皮。動物からはいだ皮。もちろん人間の肌。
  • rind は、樹木・ベーコン・チーズなどの硬い皮。メロン・レモンなどの外皮。
  • peel は、オレンジ・レモンの皮。じゃがいもの皮

バナナは、じゃがいもと同様に skin と peel のどちらでも使うらしい。まだむいていないときの皮はskin で、本体(?)から離れたのが peel (動詞なら [皮を] むくという意味)ではないかと想像するが、自信はない。rind は名詞だけ。

これらの違いを子どもたちに尋ねたが、要領を得ない説明だった。ネイティブ・スピーカーだからこそ、定義しなくても使えるのだ。

レモンも lemon rind と lemon peel の両方を耳にする。lemon zest もあった。これは一番外側の皮(色のついた表層部分)をすりおろしたもので、zest には風味や趣きという意味もある。

         *

余談。こんなサイトを見つけた。

鹿を検索したら、一匹、一頭、一蹄(てい)と出た。犬は一匹だが、大きければ一頭。では、鹿はバンビでもお父さん鹿でも一匹でいいのか。明確な基準はないらしい。

うさぎは一羽と習ったが、羽もないのに、一羽とは呼びがたい。私は一匹と呼ぶ。上記サイトでは、「一匹、一羽(わ)、一疋、片耳、一耳(二匹)」。

なぜか豚や羊は登録されていない。私なら、抱っこできるくらいの子豚や子羊は一匹と呼びたい。

要するに、自分の感覚で好きなようにやっているのであった。


<今日の英語>

It didn't faze him.
あいつは平然としていた。


夫にハーシーズのキャンディをもらい、弟に見せびらかしに行った長男。でも、ゲームに夢中だった次男は、ふーんと言ったきり、まったく動じず、また仮想世界へ。期待した反応(ずるーい!ぼくもほしい!)が得られずにがっかりした長男が、夫にわざわざ伝えた一言。



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<今日の英語> 2010年2月掲載

2010.03.04 (木)



2/25/10
I had the time of my life.
最高に楽しみました。

No one else thinks about it.
誰もそんな風に思っていませんよ。

2/26/10
Where is the remorse?
あなたは反省しているのですか。

2/27/10
We don't have heat.
暖房がない。




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チップ論争

2010.03.07 (日)


先週のNYタイムズで、レストランやコーヒーショップでのチップに関するコラムがあった。原題は「ちょっと、ウェイターさん!いったいいくらチップをはずんでもらえると思ってるんですか。」

ニューヨークシティ在住のコラムニストが軽い感じで書いたのだが、1週間のうちに、コメントが1200件近く寄せられた。

著者はもともとチップ制度に不満を持っていた人だと思われるが、事の発端はカフェでのできごとである。コーヒーとスコーンを買ったら、5ドル75セントだった。そこで10ドル紙幣を渡すと、「おつりは要りますか。」と聞かれたのだ。これは70パーセントのチップに相当する。

別の日に、バーで1本4ドルのビールを頼んだ。バーテンダーは栓を抜き、お金を受け取ると、1ドル札だけでおつりをくれた。著者は微妙なやり方にカチンと来た。細かいお札で返して、チップをたくさんもらおうという魂胆だと思えたから。

紙幣はおそらく10ドル札だと思われるが、まさか20ドル札? そうだとしたら、1ドル札が15枚も戻ってくるわけで、あまりにもわざとらしい。特に「小さいのしかなくて」という断りがない場合。

さらに、6人でレストランに出かけると、メニューに小さい文字で「6人以上のグループには20%のサービス料が加算されます」と書いてある。これでは、お客はちゃんとサービスの評価ができないとお店が決め付けているようなものだし、ウェイターだって、最初から20%のチップがもらえるとわかっていたら、いい加減なサービスになってしまうじゃないかと著者は憤る。

      *

著者はアメリカ人で、自分はケチだと自覚している。ウェイターの給料が最低賃金以下で、チップ収入に頼っていることも知っている。

それでも、お客が従業員の生活費を援助するという考えはおかしいと主張する。

たとえば、飛行機のパイロットが同じことをしたらどうなる?

着陸した後、昇降口でパイロットが手を差し出して待ちうけ、「フライトをお楽しみいただけましたか。今日の着陸はちょっと難しかったんです。おや、ありがとうございます。いや、そんなことしていただいては。」とチップを受け取るようになるのだろうか。

おもしろおかしく書いてはいるが、最低賃金が低すぎるのが問題だと締めくくった。

ちなみに、NY州政府のサイトによると、NY州の最低賃金は時給7ドル25セント。ただし、1時間当たり2ドル55セントのチップが見込めるウェイターやウェイトレスは、時給4ドル60セントでもよい。

だからレストランの経営者は法律で決められた最低額を支払うのだが、実際はもっと低い賃金で雇われているウェイターもいるらしい。

そもそも、お客のチップを見込んだ給料と言う考えは、私には理解できない。

       *

このコラムには、当然ながら賛否両論。

普段からチップ制度にうんざりしている人たちは、もっとひどい扱いをされたというエピソードを投稿する。あるいは、「食事をサービスするのがウェイターの仕事。当然ちゃんと働くべきで、いいサービスだったからとチップを期待するのはおかしい。学校の先生や工場で働く人やコンピュータの設計をする人が、いい仕事をしたってチップはもらえない。」 

ウェイターの経験者は、「あんたみたいなケチは外食するな!」と怒る。

生まれたときからチップに慣れているはずのアメリカ人でも、いろいろと苦労しているのだ。

女将さんへの心づけ以外、チップとは無縁な日本で生まれ育った私は、20年以上アメリカに住んでも、まだチップに対して複雑である。

渡米当初は夫に任せていたが、何事も私に輪をかけてめんどくさがりの夫は、「これもアメリカに慣れるためだから。」とかなんとか言って、すぐに私の仕事になった。

昔は、当然男性が支払うと思われたのか、請求書はほとんど夫の前に置かれたが、この頃は真ん中あたりに置かれることが多い。経済力のある女性も多いだろうし、うちだけでなく女性がサインしている家族をときどき見かける。

        *

夫はランチは15%、ディナーは20%。特別気に入ったサービスなら5%追加したりする。あるとき、若いウェイトレスと何かの話がはずんで、私が計算している横で30%!と言い張った。

私はランチは13%くらい、ディナーは18%くらい。この2%にこだわるのが私のケチなところだ。

何に対するサービスかにもよるが、20年前は10~15%が普通で、特に良ければ20%というのが私の得た情報だった(だから、夫はいつもあげ過ぎだと思っていた)。ところが、10年くらい経つと15~20%が普通になった。今は20%が当たり前みたいな感じがする。

私の見聞きする範囲だけでなく、このコラムへの投稿にも「20%のチップが当然のこととして考えられるなんて、うんざりだ。」というコメントがあった。

料金は100ドルなのに、チップ20ドルを加えると120ドルになる。何か特別な取り計らいがあったとか、こちらが迷惑をかけたとか、そういう理由があればまだしも、(私から見たら)別にごくフツーのサービスであることが多い。いや、むしろ、もう少しどうにかなりませんか?というサービスのほうが多いかもしれない。

ただ、こちらの生活が長いと、まあそんなもんでしょうと一種あきらめがつく。そして、サービスの質は下がり、チップは相対的に上がる。

     *

日本に帰って、レストランに行ったり、デリバリーを頼んだり、髪を切ったりすると、チップを払わないでいいからうれしい。それが料金に含まれているとしても、20%はかかっていないはずだ。

しかも、食べものはおいしい。気が利く。時間を守る。仕事が丁寧。ちょっと手違いがあると謝ってくれる。だいたい、そんな手違いはめったにない。

日本に住んでいたら当たり前だと思うだろうが、たまに帰るといちいち感激するのである。つい頭の中でチップを計算してしまい、「そうだ。チップは要らないんだった。」と思い出す。でも、こんなサービスならチップをあげたいとすら思う。

そして、アメリカに戻って、いざチップが期待される場面に出くわすと、アメリカに戻ってきたんだなと思う。

チップはこの国の習慣なので、気に入らなくても全く無視して過ごすことはできない。顰蹙を買うだけである。

     *

このコラムへのコメントで、アメリカ人でもチップをあげたくない人が多いこともわかったけれど、「明日からチップしない方針にしよう」と決意しても、実際はかなり難しい。非常識だと思われるし、もしかしたら身の危険があるかもしれない。

アメリカには計算の苦手な人が多いのに、どうしてこんな習慣が続いているのか、まったくもって不思議である。

最近は、計算できない人のために、レシートの一番下に15%と20%の金額が印刷してあるのも見かける。チップの欄にはどちらかを書いてもらいたい、つまり「最低でも15%はいただきたい。」と主張しているのかと思う。

そういうのを見ると、ますますチップがいやになる。あの程度でチップがもらえると思ってるの? あれは仕事の範疇じゃないの? やって当たり前のことじゃないの?

私は、心からチップをあげたくなるようなサービスにはめったに出くわさない。

むしろ、アメリカのチップはサービスの内容には関係ないのだと割り切らねばやっていけない。

日本を基準にしているせいか、もともとケチだからか。なんだか損をしているような気になる。100ドルが120ドルになるなら、最初から120ドルと料金表に書いてほしいと思うのだ。そして、チップを手渡しするときも、クレジットカードのレシート欄に書き込むときも、なんだか微妙な空気を感じる。

そのうち慣れるだろうと思って、21年暮らしてみた。チップの必要な場面や金額や渡し方は身に付いたが、心の底では「なんかおかしいぞ。」といまだにすっきりしない。きっと死ぬまでその感覚は抜けないと思う。


<今日の英語>

It rings so true.
まさにその通り。


著者と同じようにチップに辟易している人が寄せた一言。文字通りには、「真実のように思える。」 金属やガラスの質(あるいは本物か偽物か)を調べるのに、むかしは弾いた音で判断したことから。



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今度は1000ドル

2010.03.07 (日)


夫がやってきて言った。

「機嫌を悪くしないでほしいんだけど。」

「なあに? お金?」

「そう。」

「いくら?」

「1000ドル。」

「何に使うの?」

「今すぐ使うわけじゃない。」

「この間200ドル引き出したでしょ。」(夫は200ドル出すと言っていたが、実際は240ドルだった)

「あれとは別だ。」

「税金が戻ってからにしてくれない?」

「それじゃあ遅すぎる。」

今すぐ使わないと、ついさっき言ったばかりなのに。10秒でばれる嘘だ。

私は珍しく夕方まで出かける用事があった。夫は、ちょっと考えておいてくれと言い、出て行った。

      *

今朝早く、夫の部屋からひそひそした話し声が聞こえてきた。いつもと同じく、ヘッドフォンを使っているので相手の声は聞こえない。

「そりゃあわくわくするね。きみは当然だし、ぼくもそうだ。

じゃあ、『彼』がそれを持ち帰る前に、お金を渡さなくちゃいけないのか。Smuggle(密輸)というのは、そういうもんだと思うが。

いつまでにお金がいるんだね。アマゾンでアメリカ発行のクレジットカードを使って買ったらどうかね。請求は1ヵ月後だから。彼はそういうカードを持っているんじゃないか。ルーマニアの銀行が発行したカードは?

750ドルを Western Union で Wire Transfer すればいいか。彼はいつまでアメリカにいるのかな。どこの町?たぶんニューヨークシティだろう。4月? 今月か。」

わかりきっていたことだが、昨日の1000ドルはルーマニアに行くのだ

でも、私がムスッとしていたので、今回は750ドルだけでいいと言うつもりなのだろう。

いったい何を密輸するんだろう。そんな違法行為にかかわるのはごめんだ。アマゾンでも買えるもの。でも、ルーマニアにはない。コンピュータ?でも、そんなもの、アメリカから買わなくたって、ヨーロッパの先進国にあるだろうに。

「彼」というのは、ルーマニア娘の夫(ボーイフレンド)か? あの2人はDVで別居していたのではなかったのか。おそらく「彼」も自分の妻(ガールフレンド)がアメリカ人からお金をもらえることを知っている。何の取引だろう。

夫にいったい何のメリットがあるのか。チャットのお相手だけなら、1000ドル単位のお金は要らない。

わからないことだらけである。

       *

一番わからないのは夫だ

この間、神経衰弱でERに駆け込んだばかりで、まだ精神科医と心理学者に毎週会い、抗うつ剤を服用している。しかも、G氏の会社の資金繰りは順調ではないという。夫が今の会社へ戻るかどうかも見通しが立っていない。

出せるとは言え、1000ドルは大金である。こういうときに他人にあげる金額ではない。

ルーマニアへの資金提供は、躁うつとは何の関係もないと思う。私に隠し事をすることで、余計なストレスがたまるだけだ。

でも、夫は私に自分だけの銀行口座の番号を教えないし、250ドルや1000ドルのお金の行方も教えてくれない。誰にあげて、何に使われるのかも言わない。

しかも、実際に何かをしているのは隠せないのだから、私に不信感を抱かせるだけである。おそらく、週2回のカウンセリングでもこの件は話していないと思われる。

ERでの心理学者は、私たち2人の間に問題があると言った。でも、夫はその場でさえ、自分の財布を私から隠そうとした。

だから、私はカップル・カウンセリングには行かない。



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ほんの800ドルだけ

2010.03.08 (月)


ルーマニア娘との電話は早朝だった。夫は私には聞こえなかったと思ったのか、しばらくして私のところへ来て、

「Gはいつもは早いんだけど、今朝は起きてないみたいだ。たぶん午後電話があるから、今のうちにもう一度寝るよ。」

夫の顔は赤くなかったが、私の目をまともに見なかった。こそこそルーマニア娘と電話したあとで、わざわざ電話を話題に出すのはやましい証拠。

どうしてそうやってごまかそうとするんだろう。

     *

私は長男に、夫がまたお金をルーマニアに送ろうとしていると話した。

「1000ドルだって。しかも、この間240ドル、ATMから引き出したばっかりなのよ。やめてほしいと思わない?」

「ぼくのパソコン、パワーがなくて、新しいゲームができないんだよ。弟のだって、壊れたし。」

「でしょ? 私だって、ERの支払いとか、暖房のオイルとか、いろいろあるのよ。」

「うーん。でも、言いたくないけど、ダディはお金もらってるじゃない?

「そこが問題なのよ。私は稼いでないから。つまり、1000ドルはダディのお金だから、私が使っちゃだめとは言えないでしょ。でも、1000ドルっておかしくない?」

長男は夫が好きなので(しかも、つい先週ゲームを買ってもらったばかり)、私にけなされる夫に同情する。でも、1000ドルを他人にあげるのは反対。

それでいて、専業主婦である私の弱い立場もわかっているのだ(しかし、もし将来自分の奥さんが専業主婦だったら、絶対にそんなことをほのめかしてはいけないと釘を刺す)。

こんなことを子どもと話すなんて、子どもが生まれたときは予想だにしなかった。

     *

午後、夫がまたやってきた。

「朝の件だけど。今回はほんの800ドルだけでいいよ。」

「800ドルは、『だけ』っていう金額じゃないでしょ。大金でしょ。」

「友だちに買ってあげたいものがある。」

「たとえば?」

デジタル・カメラ。」

なんでそんな高級品を選ばなくちゃいけないのか。夫はカメラに詳しい知人の意見に従ったという、わけのわからない言い訳をした。

まだルーマニアへ送るとは言わない。あくまで「友だち」なのだ。

前の話と総合すると、ルーマニア娘の夫(マリウス?)がニューヨークに来ている。アメリカでカメラを買うために? 夫は、マリウスがアメリカにいる間にお金を電子送金するつもりでいる。

マリウスはもしアメリカにいるなら、どうして夫と直接交渉しないのだろうか。なぜ、ルーマニアに残っていると思われる妻から連絡させるのか。

カメラなんて、ドイツでもフランスでも売っているだろうに。カメラというのは、たぶん嘘なんだろう。だいたいルーマニアからニューヨークまでの旅費を出せる人が、デジタルカメラを買えないわけがない。自分で買える範囲のカメラにすればいいのだ。

彼らが夫にたかっているのか。夫が好きで施しているのか。

      *

戻ってくる税金は、子どもの大学資金口座に入れたいこと、ローンの元本の追加支払いをしたいことなどを夫に説明した。夫は、これで最後だから、と前にも聞いたせりふを言う。

今日は日曜日だから、他の銀行から送金のリクエストを出しても、水曜日にならないと入金されない。1日に引き出せる最高額はたぶん500ドル。

夫はそんなことも知らないので、明日ATMで引き出すつもりでいる。カウンセリングの後に銀行に寄るのだろうが、自分のやっていることをカウンセラーに話すのが先じゃないの。

夫がどういう理由でルーマニアに送金しているのかを洗いざらい話してくれたら、こんな風には考えないと思う。しょせんは夫のお金だし、ふだんお小遣いもないのだから。

もちろん、会ったこともない他人にお金をあげるのはいやだけれど、嘘やごまかしはもっといやなのだ。

1000ドルがすぐ融通できるくらいの資産があるのも問題か。それでも、1000ドルは私にとってはとても大きい。25セント引きのクーポンを片手に買い物に出かけるのがばからしくなる。

ルーマニア人に恵んであげて、どういうメリットがあるにせよ、はいそうですかと出せる金額では絶対にない。夫だって、今の状況を考えたら、100ドルでも慎重になるべきなのに。

夫の金銭感覚は狂っている。自分や子どものために使うならまだしも、行ったこともない東欧に住んでいるオンラインで会っただけの人にあっさり1000ドルを渡すなんて(これまでもちょくちょくあげていたとしたら、総額はもっと大きい)。

それが躁うつ病の症状なのかどうかは、わからない。




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日本食レストランでのチップ騒動

2010.03.09 (火)


NYタイムズのチップ論争に寄せられた投稿の中で、別件へのリンクが貼られていた。

ノース・カロライナ州の日本レストラン Kanpai で、ある常連女性客がチップが少ないという理由で食事を断られた。お店の中に入っても、シェフは作らないし、ウェイターも料理を運ばないというのだから、事実上の入店拒否である。

もちろん彼女は黙っていない。お店のボイコット運動の署名を集める一方、弁護士を雇って名誉毀損と差別でレストランを訴えると言う。

最初は、アメリカでよくあるクレーマーかと思ったが、どうもそうではない。

ビデオクリップを見ても、身なりのきちんとした落ち着いた女性である。ただし、気は強そう。彼女は、サービスがよくない時でもいつもチップを置いていた(left a good tip)と主張する。Good だったら、決して少なくない額である。

ところが、2008年のある日、その店で食事をしたところ、18パーセントのチップを要求されたらしい。

そこのメニューには「6人以上のグループには15%のサービス料がかかります。」と記してあったが、彼女の連れは2人だけだった。そこで、彼女は文句を言ったが、結局言われたとおりに払ってレストランを出た。

1ヵ月後、(やめときゃいいのに)また同じレストランに行くと、テーブルに案内される前に「18%のチップを払わなければ、食事はお出しできません。」と言われ、今回の騒ぎになった。

       *

「カンパイ」のマネージャーは、13年前にレストランを開店してから、こんなトラブルはなかったので驚いたと言う。また、お客に知らせずに18パーセントのチップを上乗せしたことはないと説明している。

これまでに300人がボイコット運動に署名した。ただし、テレビで話題になったために、ボイコットを目指したはずが、皮肉にもお店はにぎわっているのだそうだ。

そして、お店のサポーターも署名運動を始めたという。

ノース・カロライナの法律では、人権が侵害されない限り、レストランは支払いの条件を決めることができ、またそれに従わない人にはサービスしなくてもよいとなっているそうだ。

訴訟を起こさなくても、他のレストランに行けばいいのにと思うが、彼女は自分がチープな人間であると烙印を押されて、侮辱を受けたと憤っているのかもしれない。こうなっては、簡単に引き下がれない。

彼女はいったい何パーセントのチップを置いたのだろう。インタビューでは、「XXパーセント置きました」とは言わなかった。Good tip ではわからない。

20パーセント置くお客を拒否することは、ありえない。15パーセントでも Good だと私は思う。ランチなら、13%でも私の許容範囲(一般的にはケチと呼ばれるかもしれない)。

レストランは彼女がサインしたレシートを保存しているだろうか。彼女は面倒なお客だったのか。チップは単なる口実で、彼女を追い払おうとしたのか。

こんなことを法廷で争うのだから、弁護士が儲かるわけだ。

このコラムにも500件のコメントが寄せられている。地方ニュースだけあって、地元の盛り上がりが感じられる。お客、ウェイター/ウェイトレスはもちろん、「レストラン経営の大変さがわかってるのか。」というオーナーの投稿もあった。

たぶんアメリカのチップ論争はどこでも同じ。そして、この慣習はそう簡単には変わりそうにない。

       *

ところで、アメリカでのなんちゃってジャパニーズ・レストランには、この手の名前が多い。Kabuki とか Waraji とか Haiku とか、日本国内なら付けない名前である。

そして、たいてい Hibachi と呼ばれる、手品風実演付き鉄板焼きのコーナーがある。このビデオクリップにも出てくるが、私はお店でそれを見ると、気恥ずかしくなるのである。

火鉢とはぜんぜん関係ない、ヘンテコな見世物。

「日本の台所では、あんな風に包丁を振り回したり、食材をお手玉(?)にしたり、炎がメラメラ燃え上がったりするのだな。」などと信じるアメリカ人はいないだろうが、一抹の不安はある。これだけ情報社会になっても、偏見と無知はなくならないから。

また、ジャパニーズ・レストランと言いつつ、このオーナーは日本人には見えないが、それも珍しくない。私はシェフの人種はどうでもいい。でも、料理は「まあ日本の食事だな。」と思うくらいには作ってほしい。

うちのような田舎では、Authentic Japanese Cuisine (本場の日本料理)と名うっていても、お椀にボソボソのご飯が高く山盛りになって出てきたり、天つゆのお皿に味噌汁が入っていたりすることもあった。

一瞬、呆然とするが、「このご飯の盛り方は、ホトケ様にお供えするときの形です。」とか「ご飯はご飯茶碗に、お味噌汁はお椀によそってください。」とか主張しても無駄なので、黙々と食べる。

そして、15%以上のチップを払い、「やっぱり自分で作って食べればよかった。」とレストランに来たことを後悔するのである。


<今日の英語>

It's up to the individual.
それは個人が決めることです。


街頭インタビューで、どれくらいのチップが妥当かと聞かれた人の答え。



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もう一人のルーマニア娘

2010.03.10 (水)


2ヶ月前、夫が私のPCで何かを印刷したとき、Cora's informationというgmailの履歴が残っていた。でも、ログアウトしてあったので、中身は読めなかった。

昨日、夫がカウンセリングに出かけたので、夫が隠している銀行口座の情報を探そうと思い立った。夫の部屋は乱雑で、書類がたくさんあり、引き出しの前にも物が積んであったりして、発見できなかった。

その代わり、PCの上にあった折りたたんだ紙の山から、先日のプリントアウトらしきものが見つかった。

あのメールの件名どおりに、Cora's information と書いてある。

Cora というのはニックネームらしい。英語式ならラストネームにあたるところに、Corina とある。調べたら、ルーマニアはハンガリーと同じく、日本のように苗字・名前の順番で表記することがわかった。

つまり Corina (Cora) はファーストネームだ。女性の名前らしい。検索したら、そういう名前の体操選手やダンサーが見つかった。

彼女のフルネームとルーマニアの住所、電話番号、CNP番号(アメリカの Social Security Number  に相当する個人番号らしい)、パスポート番号が印刷してあった。私はそれを自分のPCにタイプして、ファイルを保存し、紙を夫の部屋に戻しておいた。

        *

これで私が突き止めたルーマニア人は3名になった。

夫と電話で話しているステファニー。夫がオンライン・ゲームで出会い、子どもたちもチャットしたことがあるというマリウス(ステファニーの夫?)。そして、このコリナという女性。

夫はコリナに送金しているのだろうか。パスポート番号があるところを見ると、アメリカに来ているのはマリウスでなくて、コリナかもしれない。

3人組で何か企んでいるのだろうか。

        *

今朝3時半ごろ、猫に起こされてドアを開けてやると、夫の部屋から話し声がした。

G氏も早朝から電話があるが、話の内容から明らかにルーマニア人である。

「こういうソフトウェアを作っていると言って、パテントが取れるかどうか、聞いてみたらどうだ。」

相手が話すほうが長いくらいで、夫は写真やカメラという単語を挟みながら、一言二言話すだけであった。

写真で思い出した。

昼間、夫の部屋を調べたときに、小さい段ボール箱があり、フタを開けると、Digital Photography のソフトウェアが入っていた。オンラインで買ったらしい。まだきれいな箱に収まっていた。

私は眠い頭で考えてみた。

夫は、オンラインゲームを通してまずマリウスと知り合った。その後、マリウスの妻ステフに紹介された。彼女もゲームをやるのかもしれない。そのつながりで、夫は3人目のルーマニア人コリナと知り合った。彼らは、デジタル写真に関連したソフトウェアを開発し、それで特許を取ろうとしている。夫は、どういう条件かわからないが、資金援助を申し出た。ヨーロッパで高級カメラを買うのは高すぎる。コリナがニューヨークに何らかの用事で来るときに、アメリカでカメラを買ことになった。夫はコリナの滞米中に1000ドルを渡すと約束した。

点と点を線で結ぶには、情報が足らない。私の想像は全くの的外れかもしれない。

     *

会ったこともない人たちの本当か嘘かわからないビジネスに投資するのはもちろん反対だが(それが本当であると仮定して)、タイ女に送金し、関係を持ったのに比べたらマシである。

私に隠れてやろうとしたって、私がお金の管理をしている以上、隠しおおせるはずがない。どうして素直に打ち明けないのか。あるいは、もっと上手な作り話ができないのか。

夫婦だから何でも共有しなくてはいけないとは思わない。私だって夫に言わないことはいくらでもある。

ERの心理学者が、夫婦の間の信頼がどうのこうのと話していたが、「こういう状況でどうやって信用できるんですか。」と聞いてみたい。



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カタカナ英語の嫌いな次男

2010.03.11 (木)


朝の忙しいとき、オレンジジュースをコップに注ぐくらいは自分でやりなさいよと思い、

「ジュースはセルフでお願いします。」

と半ばふざけてウェイトレス風に言ったら、次男が

自分で。」

と間髪を入れずに私を訂正した。

      *

私は子どもたちには日本語だけで話しかける。そして、極力カタカナ英語を混ぜないようにしている。

子どもたちも私に日本語で話すが、語彙不足でどうしても横文字の割合が大きくなる。それで、私はあまりくどくならない程度に、「ドライバーってバスの運転手ね。」などと直しながら聞く。

現地校で7時間以上も英語環境で過ごし、帰宅して急に日本語に切り替えるのは大変である。

でも、徐々に日本語に戻していかないと、これまでの努力が水の泡になってしまう。今だって、なんとか瀬戸際で持ちこたえているようなものだ。

次男の日本語には英語訛りがあり、言葉を探しながら話す。それなのに、私が日本語に英語を混ぜるのを嫌う。そして、自分のことを棚に上げて、いちいち指摘してくれる。

ところが、彼らは日本語のニュースを聞かないし、読まない。だから、どのくらい英語が日本語を侵食しているかを知らない。

セルフは確かに英語だけれど、セルフサービスは昔から使われているし、確かお店にもセルフの表示はあった。ウェブで見る限り、わりと広く使われていると思う。でも、なぜか次男の耳には違和感があったらしい。

それとも、単に親の間違いを正したがる年頃というだけの話か。

       *

補習校で会った日本人のお母さんたちも、カタカナ英語が多かった。

ピックアップ、ドロップオフ、ホームワーク、アフタースクール・アクティビティ、フィールドトリップ、コンファレンス、レポートカード。

学校関係の言葉は、現地校での言い回しに染まりやすい。

私はピックアップはお迎えでいいが、ドロップオフに相当する日本語には困った。両方なら「送り迎え」でいいけれど、朝送っていくときだけはピッタリ合う言葉が思いつかない。「送り」だけだと座りが悪い。行き帰りの「行き」もちょっと違う。

だから、「朝、教室に連れて行くとき」とか「朝、入り口で降ろしたら」とか、まどろっこしい言い方になってしまった。

また、お迎えのことを、ピックと言う人が多くて、私はその省略した言い方が非常に気になった。pick は決める・選ぶ・選んで摘み取る。pick up は持ち上げる・拾い上げる(ただし、両方とも多義に渡るので注意)。

お迎えの意味で子どもをピックするというのが、なぜか私にはとても奇妙に聞こえた。

駐在家庭のほうが、そのへんは気にしていない印象を受けた。いずれ帰国すれば、すぐに日本語が優勢になるとわかっているからだろうか。

もちろん永住者でカタカタだらけの人もいた。「スクールが一番インポータントだから。」とか「これフィニッシュしてから、そっちオープンして。」とか、当人はおそらく意識していなかったと思う。

英語圏に生活しているのだから、そのほうがむしろ自然なのかもしれないが、私は頑固なので、とことん逆う。

     *

あるとき、私と長男の会話を聞いていた人に、「台所なんて、私だって使わない言葉を長男君は知っているんですね。」と言われたことがある。たぶん日本でもキッチンが主流なのだろうと思う。

英語の言い方ではわからないかと思い、帰国した折に、乳母車、よだれかけと呼んで笑われたりする。日本で子育てをした経験がないので、今風の言い方を知らないせいである。

ストローラーやビブで通じるかと思えば、乳母車はベビーカー、よだれかけはスタイと呼ぶらしい。

後者はスウェーデンの商品名だそうな。英語でスタイ(sty) はものもらい(目の病気)あるいは豚小屋を意味するので、それと赤ちゃん用品がつながらなかったのは当然である。

エアポートを飛行場、パーキングを駐車場、フィギュアを人形なんていうのも、浦島さんの日本語なのだろう。

じゃあ、それはカタカナにすることにして、「デジカメ」は digital camera  の略だとわかるが、これも慣れない。パソコンだって personal computer が元なのだから同じようなものだが、年季が違う。

それにしても、最初の2音だけ拾って省略し、なおかつ意味がつかめるという日本語の仕組みは、実によくできている。

     *

帰宅した次男に「デジカメって何か知ってる?」と聞いてみた。

「デジタル・カメラ。」

「知ってるの。聞いて、変な感じしない?」

「しない。わかってるから。でも、ぼくは自分からデジカメとは言わないよ。digital camera って言う。」

だから、それは英語でしょ、と思ったが、平行線になりそうで止めた。


<今日の英語>

You have to do what you have to do.
やるしかない。


レイオフされてから低賃金のパートの仕事しか見つからなかった人がインタビューに答えて。直訳は、やらなくちゃいけないことは、やらなくちゃいけない。よく聞くフレーズ。日本語の「しかたない」ほど悲観的な感じは受けない。You've got to do what you've got to do. とも言う。



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愛人ごっこ その91

2010.03.12 (金)


(前回その90の続き)

◆ エピローグ 8

パヴェルの誕生日はクリスマス直前なので、毎年ホリデーの挨拶を兼ねてe-Cardを送っていた。彼がお返しを気にするため、ここしばらくプレゼントは何もあげていない。

今年もメールだけにするつもりが、彼が自室のビデオを撮って送ってくれたので、私も同じことをしてみようと思いついた。

パヴェルは、サマーキャンプで世話をしたうちの子どもたちがどれくらい大きくなったかをいつも知りたがった。それで、2人を窓の前に立たせて、身長がわかるようにしてみた。

子どもたちは、「何を言ったらいいかわからないよ。」と突っ立っている。

騒ぎを聞きつけた夫がやって来て、「ハッピー・バースデーでいいんだよ。」「もう言ったよ。」「じゃあ、メリー・クリスマスも言いなさい。」と口を出した。

「それも言った。もう一回言うよ。ハッピー・バースデー、パヴェル! どうしてぼくと弟がここに立っているかっていうとね、お母さんがそうしろって。パヴェルがビデオを送ってくれたから、ぼくたちも同じようにメッセージを送りなさいって。
でも、お母さんはビデオに映りたくないんだって。ずるいよね。」 

次の日、長男が私のシチューを食べながら、「これ、すごくおいしいよ。パヴェルも食べてみるべきだよ。そういえば、弟が何してるか、知ってる? ずっとゲームしてるんだよ。一日中! しかも、ぼくのパソコンなんだよ。」 などとパヴェルに愚痴をこぼす日常の風景も映した。

子どもたちは、年の離れた兄のように彼を慕っていた。

そして、私は編集ができないので、そのまま2件のビデオを送った。

     *

パヴェルからは長いメールが来た。

「ビデオありがとう。なつかしいなあ。子どもたちが大きくなってて、びっくりしたよ! もう長いこと会ってないんだから、当たり前だね。

せっかくのホリデーシーズンだけど、ぼくは離婚してしまって、あんまりいい時期じゃないな。バースデーも今年はすごく静かで、ぼくは大学寮の部屋で勉強してる。

でも、ベラルーシに家族はいるし、ドイツでもいい仲間がいるから、それなりに楽しくやってるよ。

クリスマスの間は仕事しようと思ってる。いいお金になるんだ。友達が大晦日のパーティに誘ってくれたけど、ぼく以外はカップルだから、それより年末から1週間くらいベラルーシに帰るよ。あっちで出会いがあるといいな。」

彼が divorce (離婚)とメールに書いたのは、初めてだった。すべての手続きが終わったらしい。

私はそれについては何も尋ねなかった。しょせんは書類上のことだし、アンナとの短い結婚生活はとっくに破綻していたのだ。

アンナの名前すら口にしない彼は相当傷ついていたはずだが、自棄になってはおらず、でも新しいガールフレンドはまだいないようだった。

(次回その92に続く)



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 |  愛人

愛人ごっこ その92

2010.03.14 (日)


(前回その91の続き)

◆ エピローグ 9

パヴェルの卒論はすでに完成し、あとは最終試験を待つだけとなった。

まず、1月に5時間ずつの筆記試験が3つあり、3月に1時間の口頭試問が1つ。それに合格すれば、晴れて学位を取得できる。

私は邪魔しないようにしばらく連絡を取らなかったが、オリンピックでベラルーシのアイスホッケー・チームが試合をしていたので、短いメールを書いた。すると、すぐに返信が来た。

「ぼくもいま見てるよ。勉強が一段落したところでね。ベラルーシはラッキーだったけど、最後はスイスがラッキーだったな。もし勝てば、次はベラルーシ対アメリカだったから残念。

もうすぐちょっとしたニュースがあるから、待ってて。」

夫がERに行くほど神経衰弱に陥ったことは、彼には言わなかった。大事な試験の前に話すべきことではなかった。

       *

それから1週間ほどして、今度は長いメールが来た。

「昨日で最後の試験が終わって(合格!)、ぼくは大学を卒業しました。あなたに真っ先にお知らせします。

自分でも信じれらない。6年半かかった。でも、やったよ。

今日のランチは、大学のカフェテリアで、初めてここに来た日と同じテーブルで食べた。あのときはアメリカから着いたばかりで、とにかくお腹がすいてて、ものすごくたくさん食べたなあ。テーブルの周りには大荷物で、この先どうなるか、ちゃんと勉強についていけるか、生活できるか、ちょっと怖くてね。

でも、今日は、この6年半は悪くなかったな、いや、かなりよかったぞ、それどころか素晴らしかったじゃないか!と思った。もちろん大変な時期もあったけど。

ぼくを信じてチャンスをくれたあなたに、改めてお礼を言います。

あのときあなたに会わなければ、ぼくはドイツでもトップクラスの大学に入ることはできなかった。あなたは何もしていないといつも言うけれど、ぼくが人生の岐路にさしかかっていたときにあなたが助けてくれたのは事実です。」

       *

そうして、彼は試験にかまけてさぼっていた部屋の掃除をして、見たかった映画を見て、ジョギングに行って、ビデオ製作をして、と開放感に満ち溢れた様子でこまごまとした計画を書き綴った。

私はすぐにお祝いのメールを送った。

「おめでとう! あなたのことをとても誇りに思っています。あなたは、私が投資した物件の中で過去最高の収益率を達成してくれました。卒業式はいつですか。」

彼はもう学生ではない。まだ幼さが残っていた21歳の青年は、すっかり大人になった。

その間、私たちの関係は物理的にも精神的にも近くなったり遠くなったりしたが、本質的な親密さはずっと変わっていない。

6年半前、彼にお金を貸したとき、利子はいらない、勉強して学位を取ることが恩返しであることを伝えた。そして、無事に卒業したら、ぜひ晴れ姿を見に行きたいという話をした。

彼はそれを覚えているだろうか。




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 |  愛人

暴風雨で停電

2010.03.15 (月)


早朝、猫に起こされたら停電だった。

ラジオのデジタル時計が消えている。コンセントで常に充電している懐中電灯の小さい赤い光が見えない。

ふだんでも電線の周りに枝が覆いかぶさっているような田舎である。前の晩から暴風雨でそういう予感はあったが、先日の大雪でも大丈夫だったので、高をくくって何の準備もしていなかった。

うちはすべて電気なので、停電するとお手上げである

暖房は灯油だけれど、電気がなくては動かない。水のタンクは井戸水を汲み上げない。トイレも流せない(厳密に言うと、流せるけれど、次回のための水がタンクに溜まらない状態。そのために水を入れたガロンサイズの容器が置いてあるので、タンクのふたを開けて手動で水を入れる。ただし、何度もできない)。

水道のパイプに残っている水をシンクに溜める。少しだけ手を洗うのに使い、あとは除菌スプレーや外出用のウェットタオルで拭く。

飲料水は地下室にいくらかある。無糖の炭酸水もある。幸い、冷蔵庫の中身は少ない。クラッカーやシリアルはある。食器が洗えないので、プラスティックのコップやお皿を出す。

懐中電灯を片手に、地下室へ下り、猫のトイレを掃除した。停電の影響がないのは猫だけである。


       *


ちょうど午前2時に夏時間に切り替わったばかりなので、掛け時計の針を1時間進めた。

昔はこんなに早い時期ではなかったが、最近は早く始まり、遅く終わる。節電という名目のわりに、朝起きても薄暗いので電気をつけねばならない。

正式な呼び名は Summer time でなく、Daylight Saving Time (日光節約時間だから、節約するのは電気ではなく、日照時間か)。大雨で雪は溶けたが、さすがにサマータイムという雰囲気ではない。

パソコンはバッテリーで動くけれど、ネットワークにつながらない。

携帯用ラジオ(手でハンドルを回すと充電もできるタイプ)を出した。音が出ない。1分間ハンドルを回すと30分は使えるはずなのに。暗くて切り替えスイッチがよく見えない。それに、どうも軽い。 

ふたを開けてみると、3つあるはずの AA (日本では単三型)乾電池が1つも入っていない。次男が Nintendo DS に使ったに違いない。予備の乾電池も見つからない。ついでに、5本はある懐中電灯も使えるのがほとんどない。

子どもたちが小さい頃、よく懐中電灯を持って探検ごっこをしていたので、いざというときに電池が切れていることがしょっちゅうあった。まだそんなことをしていたのか。

子どもたちが起きてきた。

さっそく携帯ラジオを使えるようにしろと命じる。長男がどこかから乾電池を探してきて、やっと電波をとらえた。ふだんはどうということのないラジオ放送が、停電のときは「文明社会との唯一のつながり」となる。

携帯で電力会社にかけてみると、この周辺一帯が停電で、「復旧の見込みは翌日の午後5時です」とコンピュータの音声。


        *


夫が起きてきた。パソコンが使えないものだから、機嫌が悪い。

明るくなってきたので、私は本を読む。こういう日に限って、曇り空。ブラインドを全部開ける。

先日入手したばかりの「沈まぬ太陽」。

一昨日、林真理子の「白蓮れんれん」を読んで失望したので、山崎豊子に期待する。

【私は日本にいたとき、林真理子は雑誌にたまたま載っていたエッセイくらいしか読まなかった。つまらんと思った。小説を手にして、あまりの下手さに途中で止めた。

1年位前、短編集を読んで、あら少し上手になったじゃないのと思い、「白蓮」は柴田錬三郎賞受賞作とあったので、いくらか期待していた。白蓮については他でいろいろ読んだことがあり、門外不出の書簡700通がこの作品のために提供されたと知って、更に期待が高まった。


林真理子はやっぱり林真理子であった。

題材に負けている。白蓮だけではなく、他の登場人物の掘り下げも足らず、感情移入できない。なにより、プロの作家にしては文章が下手すぎる。まともな編集者なら指摘するであろう、稚拙な描写や粗雑な表現がそのままになっている。

白蓮の魅力が全然伝わってこないのはどういうわけか。これで文学賞とは驚く。どんな賞を取ろうが、おもしろくない作品はおもしろくない。受賞したからどうということはないが、それにしても安易すぎる。


たしか瀬戸内寂聴が解説を書いていた。私は彼女の作品にも興味がなく、1作か2作読んだくらいか。もちろん寂聴は林真理子を絶賛していた。当分、両者の作品を手にすることはなさそうである。】

子どもたちはパソコンもWiiもできないので、二人でワイワイ話していて、夫にうるさいと叱られる。そして、普段は何もしないのに、夫は子どもたちにアレを持って来いだの、コレを手伝えだの、聞いているだけでもうっとうしい。

ふだんはパソコンがお守りをしてくれていたんだなあと思う。

夫がまた電力会社に電話してくれと言う。「明日じゃなくて、今日の5時じゃないのか。」と言い張る。私が聞き取れなかったと思っているのだなとカチンとくる。

今度はスピーカーフォンにして、夫にも聞かせた。あきらめた夫は本を読み始めたが、子どもたちの声がうるさい。夫が自分の部屋に行けと怒る。

かくして、全員自室にこもって本を読む。


        *


もう何ヶ月も、もしかして1年近く外食していない。夫は機嫌が悪いが、精神的には落ち着いている。食べ盛りの子どもたちはパンやシリアルではお腹がすきそうだ。夫がルーマニアにお金をあげるくらいなら、その分、私たちがおいしいものを食べたい。

久しぶりにレストランへ出かけた。トイレで手を洗う。水が使えるありがたさ。

夫は投薬のために飲んではいけない赤ワインを飲む。私が指摘すると、「問題なのは白ワインだ。」と言い張る(家に帰って、冷蔵庫に貼ってあるリストを見たら、ちゃんと Red Wine と書いてあった)。

夫は本屋に寄りたいと言う。引越しの予定は立ち消えたが、これ以上本を増やしてどうする? 私は子どもたちに日本語で「あんまりたくさん買わせないように見ててよ。」と頼む。ほっておくと、夫は一度に20冊でも買ってくるのだ。

食事と本で気が紛れた夫は、家に近づくにつれて、パソコンが気になるのか、もう一度電力会社に聞けとしつこい。私は運転していたので、次男が携帯から電話した。

「復旧の見込みは、火曜日の夜10時です。」

さらに1日以上延期になり、夫は「信じられない!ありえない!」とののしる。本を読めばいいじゃない、そのために本を買ったんでしょ、と思うが、何も言わないでおく。


        *


結局、日曜日の夜6時ごろに復旧した。

一時的なものかもしれないので、慌ててトイレの水を流し、シンクに水を溜め、お湯を沸かし、ボイラーがちゃんと動いているか見に行った。

パソコンを立ち上げて、ネットにつなぎ、ローカル新聞のサイトで被害状況を読む。1週間停電の見込みという町もあったので、うちはラッキーだった。

スイッチを入れればライトが付き、水もお湯も出て、部屋も暖かくなる(密閉度はいいので、それほど冷えていなかった)。そして、夫はいつものようにパソコンに向かい、静かになる。

でも、そういう文明の利器がありがたいと思うのは最初の5分くらいで、すぐまたそれが当たり前の生活に戻るのだ。


<今日の英語>

She can easily pass for younger than her 50 years.
(実年齢の)50歳より若いと言っても簡単に通る。


オバマ大統領の社交担当秘書官だった Rogers 女史を評したジャーナリストの一言。



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アメリカ国勢調査 予告編

2010.03.18 (木)



先週、United States Census Bureau (国勢調査局)から封書が届いていた。

てっきり調査用紙かと思ったら、「1週間後に用紙が届くので、記入して速やかに返送してください。」という予告だった。

これだけあちこちのマスコミでPRしているのに、紙も印刷代も切手ももったいない。でも、知らない人はぜんぜん知らないのかもしれない。

日本ならたいていの人がきちんと返事をすると思うが、アメリカではまず国勢調査そのものに反対する人(プライバシーの侵害だそうだ)もいるので、やっかいである。

10年前の国勢調査では、用紙に記入して返送した世帯は、たったの67パーセントだったとラジオで聞いた。それでは調査にならないので、あとはセンサス調査員が返信のない家を一軒一軒訪ねたわけだ。

この手紙の本文は英語だが、「記入方法についてはウェブサイトを見てください」という追記が、5ヶ国語で書いてある。

スペイン語
中国語
韓国語
ベトナム語
ロシア語


移民の国だから当然とはいえ、こういうところは手抜きがない。

「英語がわかりません」という理由で記入してもらえないのでは元も子もないし、病院での通訳サービスと同じく、住民の権利でもあるのかもしれない。

不法移民も数えることになっているが、当局に通報されるのを恐れて返信しない人もいると思う。通報しませんと書いてあっても、政府を信用するかどうか。

      *

そういえば、何週間か前に、国勢調査員と名乗る白人女性がうちに来た。IDを見せながら、家の番地を確認していった。

不況で、初めて調査員の仕事に応募した人もいると思うが、どんな人が住んでいるかわからないのに、いきなり呼び鈴を鳴らさねばならないのだ。住人のほうだって警戒する。

日本の国勢調査はどうだったかなと思って、ウィキを調べたら、調査員が用紙を配布・回収するらしい。世帯の人数や性別を住人から直接聞き取る点は見直しが要求されているという。アメリカ人より個人情報保護に熱心(だと私は思っている)日本人が、赤の他人である調査員に答えるのは抵抗があるだろう。

アメリカには住民票がない。

納税、公立学校への入退学、車の登録、不動産売買などから、ある程度のデータは集められるはずだが、日本のように常にいつ誰がどこに住んでいるということは把握していないらしい。

もちろん戸籍制度もない。これだけ離婚・再婚が多く、ステップファミリーが珍しくもないアメリカ。いちいち申請されたら戸籍係も大変だろう、などとおかしなことを考えた。

       *

中国はどうやってやるんだろう。数を数えるのはもちろん大仕事だが、少数民族の住む辺境地などを全部訪問していたら、統計が出揃う前に次の調査年が来てしまうんじゃなかろうか。

ウィキによると、中国では、「性別、年齢、民族、教育程度、業種、職業、移転移動、社会保障、婚姻と出産、死亡、住宅など、主に人口と世帯の基本な状況を調査する。」

今さら調べなくても、中国当局はすべてとっくに把握していると思うが。

オーストラリアでは、「出身国、結婚の有無や収入、持ち家比率、自宅の広さやローン支払いの有無、宗教、使用言語なども調査を行っている」そうだ。

なんだかお国柄が出ている。細かく調べる割におおらかな感じがする。

私がそんなことを聞かれたら、「そこまで答える義務はない」と拒否したくなる。でも、結婚したかどうかはマリッジ・ライセンスで調べがつくし、収入はゼロなので隠すこともない。政治も宗教も関係ないのだ。

「無収入・無宗教・無所属の合法移民」なんていうカテゴリーがあれば、私にピッタリである。


<今日の英語>

It works like a charm.
不思議なほどうまくいきます。


IT関連のジャーナリストが、よく起きるトラブルの簡単な解決法を説明したときの一言。この charm は魔力、おまじない、お守りの意味。It works like magic. とも言う。



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アメリカ国勢調査 本編

2010.03.19 (金)



国勢調査の用紙が届いた。10年前にも見たはずなのに、全く記憶がない。

例によって夫は開封すらしない。

封筒の表に YOUR RESPONSE IS REQUIRED BY LAW (法律により回答が義務付けられています)と太字で書いてあるのに、こういういい加減なアメリカ人は、教育レベルに関係なく、いくらでもいるのだ。

人数によって州選出下院議員の数や政府予算の分配が決まるという誘い文句も、どれくらい効き目があるのだろうか。

回答は統計の目的だけに使用します。情報は厳守します。プライバシーを守ります。…ということがしつこいほど書いてあり、別紙でも説明している。

予告の手紙に、「記入方法についてはウェブサイトを見てください」と5ヶ国語で書いてあったが、調査用紙はすべて英語。

       *

2010年4月1日に、この家には何人が住んでいますか

単純なようで、世帯によってはこの数字を正確に出すのが難しいと思われる。

家から離れて大学または軍の施設に住んでいる人は数えない。
老人ホーム、留置所、刑務所、拘留施設に住んでいる人は数えない。
ほかに定住先のない人は数える。

こうして数えた後で、再確認の質問があった。該当するものにXを付ける。

新生児あるいは養子
親戚 (成人した子ども、いとこ、義理家族)
親戚以外 (ルームメート、住み込みのベビーシッター)
一時的に住んでいる人たち
ほかにはいない

次は、家について

ローンがあって所有している。
ローンなしで所有している。
借りている。
家賃なしで住んでいる。

あなたの電話番号。回答がわからないときに、電話するかもしれません。

私は素直に書いた。すぐに調べがつくのだから、無駄な抵抗はしない。

     *

この家を所有または賃貸している人から記入せよ、とある。

うちは夫と私の共同名義だけれど、まず夫から。

ラストネーム、ファーストネーム、ミドルイニシャル
性別
年齢、誕生日

ヒスパニック、ラティーノまたはスパニッシュ?

夫は No だが、Yes と答えると次の4つから選ばねばならない。

Mexican, Mexican Am., Chicano
Puerto rican
Cuban
その他(例、Argentinean, Colombian, Dominican, Nicaraguan, Salvadoran, Spaniard, etc.)

あなたの人種。複数回答可。

夫は White。両親も祖父母も白人だったので、簡単。

あなたはときどき他の場所に住んだり滞在したりしますか。

夫は No だが、Yes の場合は

大学寮、軍、セカンドハウス、子どもの親権のため、刑務所、老人ホーム、その他の理由。ときどきセカンドハウスはわかるが、ときどき刑務所? いずれも最初の質問への回答と照合するためと思われる。

      *

あとは私と子どもたちだが、違うのは人種だけ。私は Japanese にX。子どもたちは、White と Japanese の両方にX

こんなふうに羅列されている。

White
Black, African Am., or Negro (差別用語と思ったが、統計学上はOKなのか
American Indian or Alaska Native (種族を書く)
Asian Indian  □Japanese  □Native Hawaiian
Chinese  □Korean  □ Guamanian or Chamorro
Filipino  □Vietnamese  □Samoan
Other Asian (人種を書く。Hmong, Laotian, Thai, Pakistani, Cambodian など)
Other Pacific Islander (人種を書く。Fijian, Tongan など)

日本人のカテゴリーがあってよかった。日本人より多そうな中国人や韓国人が後に出ているのはなぜだろう。

うちの子供たちは2種類だけだが、これは該当するものにいくつでも印をつけていい。どこまでさかのぼるべきか。

私と子どもたちは、夫との関係も回答するようになっている。

夫または妻
実の息子または娘
養子または養女
継息子または継娘
兄弟または姉妹
父または母

義理の親
義理の息子または娘
その他の親戚
下宿人または間借り人
ハウスメイトまたはルームメイト
未婚のパートナー
その他の非血縁者

あらゆるケースを想定して作ったと思しきカテゴリーのどれにも該当しない「その他」はいったいどういう人たちなのか。つくづく、うちは平凡だなあと思う。

       *

詳しい回答欄は6人分あり、追加6人分は名前・性別・年齢・誕生日・回答者1との縁戚関係の有無だけ書けるようになっている。つまり全部で12人まで記入できる。

諸外国のように、収入や使用言語(子どもに日本語を教えてきた私としては、これは調査してほしい)、教育程度、宗教、家の大きさという質問はなかった。

返信用の封筒もあるので(切手不用)、あとは用紙を入れて投函するだけ。ほんの5分でできる。

コンピュータで読み取るのだろうが、アメリカ人の中には非常に字の下手な人たちがいる。教育を受けた国によって、数字の書き方が少し違うし、スペースが足らないくらい長い名前の人もいる。

にXでチェックマークを入れるにしても、勝手なやり方で印を付けて出す人も珍しくない国民性。読まないのか、読んでもわからないのか、いい加減なだけなのか。「青または黒のペンで」とあっても、鉛筆だの赤だの使う人が必ずいる。コンピュータも大変だ。

それでも3世帯に1世帯は返信しないのだから、戻ってくるだけマシか。

        *

それにしても、10年前にも絶対に私が記入したはずなのに、本当に覚えていない。それほど形式が変わったとも思えない。

私は調査局の苦労よりも自分の記憶力を心配すべきなのだった。ブログにこれだけ詳しく書いたのに、10年後にきれいさっぱり忘れている可能性大である。


<今日の英語>

Our heartfelt condolences go out to the family.
ご家族に心からのお悔やみを申し上げます。


一人暮らしだった高齢の女性が死後半年も経ってから発見された。親戚との関係を絶ち、行政のサポートすら拒んでいたという。お向かいに住んでいた人が、インタビューに答えて一言。



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止まらない送金

2010.03.19 (金)


ほんの2週間前に1000ドル動かしてほしいと言ったばかりの夫が、またお金の話をした。

前回は「ほんの800ドルだけ」に要求を下げたものの、デジタルカメラの購入というあやしげな理由を持ち出した。夫は私の不満、怒り、疑いを充分に承知している。それでいて、やめようとしない。

「きみの機嫌が悪くなると思うけど。」と切り出した。じゃあ、やめれば?と無視する私。

「600ドル、都合してもらえないかな。」

私には夫の考えていることがわからない。本当に人助けかビジネスの支援をしたいなら、なぜ正直に話さないのだろうか。諸手を上げて賛成しないまでも、今のような不快感はなくなる。

私は、夫が隠しているという事実だけ知っているのだ。それでは私は夫を信用できない。夫が私にうしろめたいことをしているとしか思えない。

     *

またしてもボイラーの故障で、修理を呼んだばかりだった。地下室へ案内したとたん、排気用のモーターを見て、「悪いことは言わない。早急に煙突を取りつけたほうがいい。」 いくらかかるのか見当もつかない。

それに、私のミニバンをオイルチェンジに持って行ったら、左側のスライディング・ドアのモーターが正常に作動しておらず、300ドルで取り替えねばならなかった。

夏には子どもたちのキャンプもあるし、次男のパソコンはいまだに届いていない(2回届いたが、いずれも不良品で返品した)。大学資金に老後資金。いくらでも貯金したい。

だいたい、夫は病気療養中で給料は半額しかもらっていないのだ。夫の症状だって、一見落ち着いているものの、いつまた神経衰弱に陥るかわからない。今の会社に戻るのか、退職してG氏のスタートアップに参加するのか、何もかも先行き不透明である。

そんなときに、会ったこともない外国人に貢ぐなど、正気の沙汰ではない。

     *

私は冷静に、でも、ネチネチと、夫に訴えた。

夫は私の言うことはすべて承知していて、私の言うことももっともだと思っているのだ。それでも、送金したいという。

「600ドルじゃなくて、500ドルだったらどうかね。」

問題は、うちに中途半端にお金があることだ。もちろん、老後のためにはいくらでも貯めたいけれど、夫のこれまでの稼ぎと私の投資、つつましい暮らし(それでも日本語教育や里帰りには大金を使った)で、500ドルくらいはすぐに都合できてしまう。

「ルーマニア人はいつまで私たちを搾取するつもりなの? 『これが最後』というセリフは何度も聞いたけど、ぜんぜん終わらないじゃない。」

夫は言い返せない。

「子どもたちだって、そんなお金があったらパソコンを買ってくれって怒ってるわよ。」

「どうして、彼らが知っているんだ。」

「私が話したからよ。」

私の味方は子どもたちしかいない。夫がいくら隠したつもりでも、ティーンエージャーの彼らは私たちの会話から相当の情報を得ている。

私が大学資金の件を持ち出しても、夫はルーマニア人へお金をあげたいのだ。

株価が回復してきたとはいえ、一人当たり25万ドルを用意したいと言っていたのは夫だ。私はそこまで貯めなくてもいいと思っている。授業料は払っても、生活費の一部くらい自分たちで稼いでもらいたい。だいたい、年間5万ドルもかかる私立に行ってくれなくてもいい。

     *

なんとかルーマニアへのお金の流れをつかむ方法はないだろうか。

夫のメールを盗み読めばいいのだが、タイ女のときに懲りたのか、さすがにパスワードは変えてあるし、パソコンから離れるときはログアウトしている。

私が持っているのは、ルーマニア女性二人の名前と住所。一人は電話番号もわかっている。彼らに手紙(エアメール)を書いてみようか。「何もかも知っています。」とカマをかけたら、どうなるか。

夫の精神状態と、私の夫に対する不信感を秤にかけてみて、考える。




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「沈まぬ太陽」

2010.03.20 (土)


後味の悪い小説であった。

単行本にして5冊。途中かなり冗長に感じた。でも、なかなか日本語の小説が手に入らない暮らしなので、あっさり切り捨てられない。

山崎豊子は、「二つの祖国」と「女系家族」しか呼んだことはないが、これは先の2冊より劣る。もっとも、どの本ももう一度読み返したいとまでは思わない。でも、「沈まぬ太陽」は映画化もされ(まだ見ていない)、いくらか期待していたので、その分がっかりした。

読み終えたときの爽快感や達成感がない。

汚職にまみれた政治家(野放し)や経営陣(警察に事情聴取に呼ばれたところまで書いてある)が出ているとはいえ、だらりとした終わり方だった。ドロドロした小説でも、もっといい読後感が持てる本はある。

     *

ジャンボ機の墜落事故という衝撃的なエピソードが、労働組合での活動により左遷された主人公の人生と絡まって、ドラマチックになるはずがかえって焦点がぼけてしまっている。

僻地に10年も左遷されていたところが一番読み甲斐があった。その後帰国してから、墜落事故が起きるまでの空白が気になる。

日航がモデルであることは自明なので、会社名もJALならぬNAL(国民航空)とされている。それくらいならまだしも、当時の政治家や他企業の名前のもじりが稚拙で想像力に欠ける。フィクションにノンフィクションを混ぜる弊害としても、もう少しどうにかならないのか。

主人公が善人すぎる。

フィクションというには実在のモデルにかなり忠実な部分もあるらしく(かといって、その人は実際には遺族係ではなかったとどこかで読んだ)、そういう無理がひずみを生んでいる。

できすぎた人間はおもしろくない。青くさいというべきか、類型的というべきか。悪人たちも一面的で奥行きがない。

「二つの祖国」の主人公に似ているなと思った。使命感や正義感がおしつけがましく感じられる。

さすがに文章は林真理子の比ではない(「白蓮れんれん」の感想はこちら)。

ただし、会話部分が堅くて不自然。それに、マンガみたいな描写がたびたび出てくる。先行きが読めてしまう展開。それでも、最近流行のかる~い小説よりはずいぶんマシだ。

それから、こんなに敬語を使う日本人はもういないんじゃないかと思い、こういう場面ではこう言えばいいのかとその点は勉強になった。ただし、上司の発言を受けて、部下が「と、申されますと?」と尋ねる箇所があった。「と、おっしゃいますと?」にしてほしい。お殿様の時代は申されるで正しかったらしいが、現在では誤用とされているし、だいたい私はこの言い方がきらいなのだ。

     *

一読者にここまでけなされて、文章書きも大変な商売である。

私もこうるさいことを言うから、いい小説にめぐり合えないのかもしれない。

「大地の子」はまだ読んだことがない。そちらの方が評価は高いらしいが、「沈まぬ太陽」のすぐあとに読む気はしない。いつか手に入ったら、くらいでいい。

口直しに、クイネルの「ブルー・リング」を読むことにする。



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まだ戻ってこない州の税金

2010.03.22 (月)


2009年度の確定申告は、2月23日に e-file した。

連邦政府からは3月5日に入金があった。つまり10日で処理が終わっている。夫の収入減と税金の払い過ぎにより、15000ドル以上の返金である。夫が散財しないよう、すでに他の銀行や投資会社へ移した。

ニューヨーク州政府からはまだ何の音沙汰もない。こちらも5000ドル以上戻ってくることになっている。

でも、私がファイルする前から、「今年は払い戻しに時間がかかるかもしれない。」と州政府は説明していた。特に申告が遅いほど返金も遅くなると聞いて、早めに済ませたのだが、すでに1ヶ月近く経っている。

もともと取り過ぎていた税金であって、住人のお金である。それが返せないほど財政が逼迫しているのか。

ニューヨーク州は、2010年度に90億ドルの赤字が見込まれている。私に返金するとさらに赤字幅が拡大するわけで、返し渋っているなと思っていた。

       *

調べてみたら、ニューヨーク州の財政年度は4月1日で終わる。キャッシュ・フローが悪化しないように、年度内に州民へ返金する金額に上限を設けていた。

まさに自転車操業である。

ロイターによると、米財務省が発表した2月の財政収支は2209億ドルの赤字で、赤字幅は過去最大となった。赤字は17カ月連続。

ここまで来ると、スケールが大きすぎてピンと来ない。

財政赤字を抱えている州は全米50州のうち39州。赤字が一般会計に占める割合が最も高いのがネバダ州で38%、アリゾナ州が28%、ニューヨーク州が24%、カリフォルニア州が22%(これは1年前のデータ)。

私は政治にも経済にも疎い。ニュースサイトを眺め読みするだけ。

最初は、そういうのは夫の両親が住んでいるカリフォルニア州の問題だと思っていたくらいである。ニューヨークは、知事周辺のスキャンダルや州議会でのドタバタ騒ぎのほうが大きく扱われていた。

      *

学校から帰ってきた子どもたちに、「中西部のどこかの町は、半分の学校を閉鎖するってニュースで言ってたわよ。お金がないんだって。うちの学校区でそんなことになったら、困るわねえ。」と話した。

すると、ミドルスクールに通う次男が、

「ぼくたちの学校もお金がないよ。外国語はスペイン語だけになるんだって。これまでフランス語やイタリア語を習っていた子は、来年からスペイン語を覚えなくちゃいけないって。ぼく、スペイン語でよかったあ。」

長年設けていた3ヶ国語のうち2ヶ国語をバッサリ打ち切りにするらしい。もともと大多数の子がスペイン語を選択していた。他の外国語は1クラスかせいぜい2クラスとはいえ、まあ思い切ったことをする。

これで少なくとも2~3人の先生を解雇できるわけだ。でも、すでに3年間それぞれの外国語を勉強していた子の親は怒っているだろう。

次男は学校の予算削減について、他にもいろいろ知っていた。先生が話したのだそうだ。

子どもから親に情報を流して、サポートしてもらおうと思っているのだろうか。そういえば、予算投票の頃になると、先生が授業中に子どもたちに学校予算の話をしていた。予算が通らないと、スポーツの時間がなくなるよと吹き込む。

そんなことより授業をやってくれと思った。だいたい予算に反対するのは、学齢期の子どもがいない年金生活者(でも学校税は払わなくてはならない)が多いのに。

ハイスクールではJAVAのコースが取り止めになると長男は言う。

子どもたちに聞いたあとで、学校のサイトを見た。外国語以外にも、特殊教育や体育関連、補佐の先生などを減らし、プログラムもいくつか取り止めるようだ。それでも、School Tax は3パーセント上がる。

それよりも、管理職の減給や教師の給料据え置き、くだらないイベントの廃止はしないのか。無能な校長を首にするのもいい。

隣町の学校区では、1月ごろすでに予算オーバーとなってしまい、学年末(6月)まで購入禁止令が出た。いったいどうして年度途中で買えなくなるのかわからないが、あるものでどうにかやるしかない。

日ごろ、子どもも学校職員も先生も物を大事にしない傾向があるので、そういう意識を変えさせるのは悪くない。

     *

私のTax Returnはコンピュータで処理して、電子ファイルをした。すでにニューヨークの主税局で受理されたのはわかっている。あちらもコンピュータなのだから、本来は1ヶ月もかからないはずである。それを保留しているのだ。

赤字だからしょうがないと思いつつ、同じく赤字の連邦政府はあっさり返金して大丈夫なのかと心配になる。

ところで、ニューヨークのタバコ税は全米で一番高い。最近では、ソーダ税(コカコーラなどのソフトドリンクに対する課税)も検討されている。税収入が目的だが、州政府は肥満防止効果も主張している。

私はタバコは吸わないし、ソーダも飲まないから、影響はない。

しかし、そのうち誰かがチョコレート税なんて言い出すかもしれない。デモに出かける体力はないが、署名運動なら参加しようと思う。


<今日の英語>

We're making the most of what we've got.
あるものを最大限に利用しています。


先日の暴風雨でホテル住まいを余儀なくされた人。子どもたちがホテルのインドア・プールで楽しく泳いでいるのを見ながら、インタビューに答えた一言。



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Pet Peeps

2010.03.23 (火)



子どもたちが小さい頃、ナーサリースクールやキンダーガーテンでよくパーティがあった。そのたびに、親が差し入れをしたり、手伝ったりした。

今と同じく社交が嫌いな私は、できるかぎりモノで参加するほうを選んだ。

教室でのグループ学習の補佐や、図書館での書架の整理や貸出と違って、パーティは非常に苦手だった。もっとも、そういうことが大好きなアメリカ人のお母さん(たいていお母さん)がどのクラスにもいたので、そういう人に任せておけばよかった。

イベントが近づくと、先生からメモが届く。物品の寄付や当日の手伝いなど、参加できるものに印を付けて送り返す。あるいは、学年の始めにボランティアについてアンケートを配る先生もいる。

        *

長男がキンダーガーテンのとき、イースターのパーティのお知らせが来た。私は、食べものを寄付しますと返事をした。

しばらくして、長男は先生からのメモを持ち帰った。

Pet Peeps を2ダースお願いします。ご協力ありがとう!

と書いてあった。

長男に聞いてみたが、知らないと言う。まだ6歳だったはずである。インターネットも今ほど普及していなかった。

帰宅した夫に聞いてみた。

「イースターのお菓子だ。ひよこの形をしている。スーパーで売ってるからすぐわかるよ。それを2箱買ってくればいいんだ。」

その時点で、私はアメリカに10年住んでいた。それなのに、Pet Peeps がなんだかわからない。おそらく毎年イースターの頃に売っていたのだろうが、いかんせん興味がないので、じっくり見なかったのだろう。

アメリカ生活に慣れて、たいていのことはわかった気になっていたが、子どもや学校に関係した分野ではまだまだ新参者だった。

だいたいイースターといえば卵である。お菓子業界がそれに便乗して、卵やうさぎをかたどったチョコレートを売る。うさぎのぬいぐるみなんかも並んでいる。キリストの復活とうさぎをこじつける商魂。

Pet Peeps はどれくらい大きいんだろう、あんまり高くないといいけど、ちがうのを買ってしまったらどうしよう、と心配した。

        *

次の日、スーパーに行ってみた。季節もののコーナーには、イースター関連の品物が溢れていた。Pet Peeps はすぐに見つかった。これか!

なるほど小さいひよこが並んでいる。マシュマロでできているらしい。

しかし、この色はいったいなんだろう。ひよこなら黄色だろうと思ったが、ピンク、オレンジ、青、緑、紫のひよこが1ダース入りの箱に並んでいた。パステルカラーとはいえ、なぜ食べものにこんなに色を付けるのか。

材料は、ゼラチン、コーンシロップ、砂糖、着色料に保存料?

先生は色の指定はしなかったので、黄色だけ買った。私が食べるのではないが、子どもたちが青や紫のマシュマロ(これだって、普通は白ではないか)を口にするのを想像すると、せめて黄色にしたかった。着色料には変わりないかもしれない。単なる気休めである。

スーパーの袋に入れて、長男に持たせた。

私はパーティには行かなかった。

       *

それ以来、イースターと聞くと、すぐに Pet Peeps を連想するようになった。アメリカ人なら誰でも知っているあのキャンディを私が知らなかったことを思い出す。あの小さいひよこは、私が外国から来たという証拠品だった。

Pet Peeps を買ったのは、先にも後にもあのときだけである。いまだに食べる勇気はない。


<今日の英語>

Something is spoiling in the fridge.
冷蔵庫で何か腐っている。


やたら鼻の利く夫の一言。1時間前に私が野菜を捨てたのだが、それより先に冷蔵庫を開けて気がついたらしい。私にそう言うだけで、絶対に臭いの元を探さないのはなぜ?



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催促のハガキ

2010.03.24 (水)


国勢調査予告の手紙と本番の記入用紙に続いて、今度は催促のハガキが届いた。アメリカ政府も必死である。

10年前にもこんなハガキが来たかどうか、やはり全く記憶がない。

「2~3日前に受け取られたはずですから、速やかに返信してください。国勢調査局のスタッフは毎日朝8時から夜9時まで、週7日対応しております。お問い合わせはこちらの電話番号へ。」

必要な事業だとはいえ、膨大な資金と人間を使っている。でも、出さない人はこんなハガキが来てもやっぱり出さないだろうと思われる。

返信しない家を一軒ずつ回る調査員の時給はいくらか調べてみた。

NY州のど真ん中にあるIthacaでは、12ドル25セントで一番安い。マンハッタンやブロンクス、ブルックリンなどは18ドル75セントで一番高い(ちなみに、カンサス州には10ドルの町もある)。

金額だけ見ると悪くないが、どんな人が住んでいるかわからない家のドアベルを鳴らすのである。

うっかり忘れたとか、単なるめんどくさがりならまだしも、ぜんぜん回答する気のない人たちかもしれない。反政府主義とか、英語が通じないとか、武装しているとか。そういう人たちを説得するのか。おそらく地元の人間なのだろうが、なんだか割の合わない、危険な仕事である。もっとも、失業していたらそんなわがままは言っていられない。

       *

2000年の返信率は67%だったらしいと夫に話したら、「3人に2人か。すごくいいじゃないか。」と感心したように言った。

私はあきれた。

いや、私が真面目すぎるのだろうか。私にとって「すごくいい」のは90%。67%は「かなり困る」というレベルである。まだ個人情報に関する危機意識がそれほど強くなかった10年前でその程度なのだから、今回の回答率はもっと低いのではないだろうか。

でも、国勢調査に記入するくらいの情報は、不法移民を除き、複数の機関でとっくに把握しているはずである。

私だったら、移民局、社会保障庁、クレジットカード会社、銀行、保険会社、家屋の登記、DMV(運転免許証や車の登録を行う部署)などですぐに調べがつく。夫や子どもは、出生証明書や学校の記録もある。

実害がなければ、私自身の個人情報はそれほど隠すことはないと思っている(ブログは別)。

隠したところで、たとえばCIAなら私に関する情報を瞬時に集められるはずだ。

まあ、集めても、役に立たない。

可もなく不可もない、法を順守する、どこにでもいそうな外国生まれの専業主婦が一人見つかるだけである。




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ある教師の死

2010.03.25 (木)


次男が学校から帰ってきて言った。

「ミセスG、覚えてる?」

彼女はちょっと風変わりなベテラン教師。うちの子どもたちは二人とも7年生のときに担当してもらった。

昨日、死んだんだって! Heart attack で。」

「心臓麻痺? ほんと? なんで知ってるの?」

「朝、ジョーから聞いた。ジョーは今年もミセスGのクラスだから。それで、アナウンスメントもあった。」

彼女は大柄だったが、まあ普通の中年太りであって、肥満体ではない。持病があったのだろうか。

オープンハウスや個人面談で何度か会ったことがある。彼女は話がうまかった。親に受けようと下手なジョークを飛ばすわけでもないのに、楽しく、彼女の熱意が伝わってきた。よく考えられた課題、わかりやすい説明。こういう先生なら私も習いたいと思わせた。

長男は出来が悪いのに、非常に目をかけてくれた。私が日本語で話していることを知ると、「それは素晴らしい。ぜひ続けてください。」と励ましてもくれた。

帰宅した長男は、心臓ではなく、喘息のクスリでアレルギー反応が出て、stroke (脳卒中)だと言う。噂に尾ひれ背びれがついてきたか。

しばらくして、学校から一斉メールが届いた。

死因は書いていない。子どもたちのためにカウンセラーを待機させていますとあった。うちの学校区では昨年末にも学校職員だった女性が交通事故で亡くなっているが、現役教師の死は初めてだった。

地元の新聞サイトにも短い記事が載った。

一人暮らしだった彼女は自分で救急車を呼んだらしい。死因はわからない。まだ60歳で、6月に退職する予定だったという。

        *

誰がいつ死ぬかなんて、わからないものだ。

夫が明日死んだらどうする? 

私は泣くだろうか。

前に飼っていたネコが死んだとき、それは悲しく、3日ほど皆でメソメソしていた。老衰でもうだめなのがかなり長い間わかっていたのに。前もって準備ができる死と突然死はちがうかもしれない。

私はたいていのことは自分でできる。保険会社や銀行や政府機関との交渉は大丈夫だろう。遺言も2年前に弁護士に作ってもらった。

夫のパソコンはどうすればいいのか。

使いそうなパスワードを試すか。夫のアカウントがある会社に死亡証明書でも送れば、パスワードを教えてくれるのか。ルーマニア人たちにいったい何があったのか確かめねば。夫がほかに隠していた銀行口座があるかもしれない。そういうのはどうやって調べたらいいのだろう。

地下室にある夫の膨大な持ち物は、人を雇って処分しよう。本は図書館に寄付すればいいか。あるいはどこかで売るか。

それより、お葬式はどうやればいい? 

子どものころはメソジスト派の教会に通ったと聞くが、私と結婚以来、教会には縁がない。葬儀屋に頼めばいいのだろうか。夫の弟に手伝ってもらうしかない。

夫の父は、あの年で飛行機に乗れるかどうか。

子どもたちもショックを受けるだろう。男親というだけでなく、子どもたちは私よりも夫が必要だ。これから大学進学があるのに、私にはさっぱりわからない。あちこちの大学を見学に行くのも、運転が下手で方向音痴の私にできるだろうか。

そうだ、子どもたちはまだ運転もできない。ネクタイの結び方も知らない。次男が昨日、初めて髭剃りのセットを夫に買ってもらったばかりだ。

         *

私は、夫が死んでも日本に帰るつもりはない。

日本の食べものと本はほしいが、もう日本には住めないと思う。アメリカの気楽な生活に慣れてしまった。年金や収入の問題もある。

やっぱりアメリカの市民権を早く取るべきだろうか

グリーンカードだけで、この21年間なんの支障もなくやってきた。

大金持ちではないので、非市民が遺産相続するときの課税については大丈夫だと思うが、この先どうなるかわからない。選挙権がないことやグリーンカードの更新(10年に1回)の手間はまあどうでもいい。相続税だけが心配なのだ。

夫の生命保険をもっと増やそうか。私が一人になったら、頼りになるのはお金。

夫は最近10キロ減量したが、万年運動不足だし、夫の家系は心臓が弱そうだ。躁うつ病の長期投薬が体にどういう影響を与えるかもわからない。

子どもが大学を卒業して、ひとり立ちしていれば、私も気楽に過ごせる。

夫にはそれまで生きてもらわないと困るな。あと10年か。


<今日の英語>

She was one of a kind.
彼女のような人は他にいなかった。


個性的だったミセスGの死に際して寄せられた一言。



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サフィン復活

2010.03.26 (金)



昨年11月に引退したサフィンがまたテニスをしている。リオで開催されているシニアサーキットの試合である。

30歳以上であることが条件のリーグで、サフィンは30歳。普通のプロレベルでは年長者だったのに、今度は最年少。

「こんなに早く戻るなんてジョークだね。」と自分で答えていた。それでいて、1回戦で負けた。

試合前の記者会見でもサフィンが一番の注目であった。どうしてこれまで南アメリカの試合に一度も参加しなかったのかと聞かれて、「お金にならないから。」と答えた。

あいかわらず、率直に話す。でも、嫌味に聞こえないのはファンの贔屓目か。一部ではたたかれたようだが、サフィンだからしょうがない、それでこそサフィンと許されるところもある。

休養がよかったのか、前より若く見える。心配されたビール腹(ウォッカ腹?)にもなっていない。

現役プロのストレスから解放され、リラックスして楽しそうだ。ファン心理としては、もちろん勝ってほしいが負けてもいい。試合や記者会見で姿が見られるだけでいいのだ。

5月にはアトランティック・シティーでエキシビション試合もあるそうな。

     *

夫はスポーツには全く関心がない。だから、こういう話題は共有できない。

私が30歳のハンサムなプレーヤーに熱を上げてるのを知っても、おもしろくないだろうが。

結婚以来ずっとそうなので、別にどうということはない。

よく考えたら、私たちに共通する趣味はない

たまに夫の持っている本を私が読み、おもしろいと思うことはある。でも、私はテレビを見ないし(夫はテレビをつけっぱなし)、最近は映画も見ない。映画館に出かけるのがいやで、映画館の椅子に2時間も座っているのも苦痛。近くにうるさい観客がいたら拷問である。

もし夫がテニス(あるいは他のスポーツでもいい)が好きだったら、いっしょにプレイできたかなとときどき考える。

夫が外出好きなら、私ももっとあちこちに出かけたかもしれない。でも、夫も私も出かけるのがきらいなので(夫はそれでも若い頃は国内外によく出かけた。インドで放浪したこともある)、こうやって家の中で静かに過ごしている。

出不精な私としては、それはそれで楽ちんなのだ。

出かけたがりの夫に引っ張り出されるのが悩みという話を聞いては、お気の毒にと同情しつつ、そうやって世界が広がるのよと思ったりする。

      *

次男のテニスクラブで、毎週、テニスウェアに身を包んだ年配の人たちが男女取り混ぜ10人以上も集まる。子どもたちのレッスンが終わってコートが空くまで、ロビーのソファでおしゃべりしたり、誰かの誕生日だと言って、テーブルにケーキを並べたりしている。

その中にどれくらい夫婦がいるのかわからない。見ていると、だいたい一人ずつ現れる。若い人は40代半ば、年取った人は60を過ぎているかもしれない。

私は次男のレッスン終了とともに帰るので、彼らの練習や試合風景はほんの少ししか見たことがない。

いかにも若い頃にテニスをやりましたという感じのフォーム。おばあさんと呼ばれる年齢でもテニススカートをはいている。立派なテニスバッグをしょっている。

かなりレベルの高そうなグループで、いつもだいたいのメンバーが揃うと、ある女性がその日のダブルス組み合わせを発表する。いちいち皆が合いの手を入れる。

真剣に試合をするのだろうが、それと同じくらい社交を楽しんでいるように見える。

テニス愛好家というのが共通点で、職業や暮らしぶりはさまざまであることが伺える。ほぼ全員が白人だが、アクセントのある人もいる。リゾートに行ったとか、何かを買ったとか、それとなく自慢話も聞こえる。仲がよさそうで、いろいろ含むところがありそうだ。

      *

3年くらい前に、私はテニスのプライベート・レッスンを受けた。

コーチが、「あなたくらいのレベルで試合をするグループを紹介しましょうか。」と言ってくれたが、私は断った。自分がどれくらい下手かわかっていたし、そういう付き合いはめんどくさそうで、怖気づいてもいた。

もし夫がいなくなったら、そして子どもが家を出たら、そういう集まりもいいかもしれないとこの頃は思う。

ふだん、近所づきあいも最低限で、日本人ともほとんど行き気がない生活である。アメリカ人であれ日本人であれ、年を取ってから友だちを作るのは難しい。特に友だちを作ろうと思って行動すると、うまくいかない。

単にテニスを楽しむだけの付き合いでいいのだ。そこで気の合う人と出会えば、儲けもの。

夫は私の行動を束縛しないし、私が何かやりたいと言えば、ほとんど必ず「ぜひやりなさい。」と賛成する。だから、別に夫が死ぬまで待たなくてもいいのだが、手抜き専業主婦としては遠慮がある。

しかし、夫の家系は心臓に問題がありそうなのに、長生きする人は長生きするのだ。夫が死ぬまで待っていたら、それこそ私の時間がなくなるかもしれない。

体が衰えてもできることはあるが、たとえばブッククラブというのは私は好きではない。

私は本はただ楽しみで読む(おもしろくないときは、せめてけなすのを楽しむ)。あまり考えないで読む。みんなで本の内容を議論したり、自分の感想を発表したりするのは性に合わない。だいたい興味のない本を「今月の本」などと指定されて読まされるのはいやだ。

私は子どものときから協調性がなかった。これは年を重ねても一向に変わらない。むしろ悪化している。

私より夫のほうが他人に気遣うタイプなので、私のように自分勝手な人間でなく、もっと社交的で機嫌のいい女と結婚していたら、と夫も内心思っているかもしれない。

お互いさまである。

【関連記事】
サフィン最後の試合 2009.11.12
「何かが足らない」全豪オープン 2010.01.23



<今日の英語>

The data is black and white.
データは明白です。


NY郊外でのプリウス事故について、警察の記者会見より。運転手の操作ミスであることは、ブラックボックスのデータで白黒がはっきりした。



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さっぱりわからない健康保険改革法案

2010.03.28 (日)


先週、健康保険の改革法案が下院を通過した。

私は国民皆保険がほしいと思っていたので、一安心したのだが、実はどういう中身なのかよくわからない。法案は2300ページで、全部読む気はないし、読んでもおそらく理解できない。

保険会社が既往症を理由に加入を拒否できないことや、保険を持たない人には罰金が課せられることはわかった。貧しい人には政府が補助金を出すらしいこともわかった。それ以外の具体的な話は、情報が多すぎてぜんぜん消化できない。

そこで、簡単に説明してあるサイトを探してみた。

NYタイムズでは、「こういう人の場合の保険はこうなる」というページを見つけた。6ヶ月以内、2010年から2013年にかけて、2014年以降、それぞれどうなるのか説明してある。

しかし、どれもうちにピッタリ合うケースはない。

今の状態で一番近いのは、「働いていて保険もある55歳の夫婦」。でも、共働きという設定。高額所得者の例だろうが、それにしても、50万ドルの収入をサンプルにすべきなのか。

もし夫がG氏のスタートアップに参加したら、「働いているが保険のない33歳の若夫婦」が近い。でも、この夫婦には子どもがおらず、二人とも健康であるという設定。だいいち若すぎる。

シングルマザーや独身のケースはあるが、なぜか専業主婦のケースはない。うちの近所では、専業主婦はそれほど珍しくないのに、politically correct でないからだろうか。

       *

クリスチャン・サイエンス・モニターにも、「健康保険改革法案の初歩」と題して詳しく説明したページがあった。

わかったような、わからないような、ともかくこういう大きな改革は一筋縄ではいかないことだけはわかる。

結局、私の場合はどうなるんですか?」と手っ取り早く誰かに聞いて教えてもらいたい。

財政赤字を抱えて、いったいどこからお金を捻出するのだろうか。増税で追いつくのか。それに、データベースを作るもの大仕事。日本の年金みたいに、データが消えましたなんてことになったら目も当てられない。現存の高齢者医療公的プログラムMedicare はどうなる? 歯科医療や処方薬は?

ロイターでは日本語で骨子がまとめてあった。母国語で読めるありがたさ。だいぶわかったような気になった。

        *

精神科医から戻った夫は、「ドクターGは、ぼくは重症だから、COBRAを申請したほうがいいと言っていた。」などと今さら話している。

重症だろうがそうでなかろうが、当分はそうせざるを得ないではないか。

会社向けの割引プランが退職後も使えるとはいえ、これまで半分以上会社が負担してくれたのを全額負担しなくてはならない。今は年間2200ドル。それが、たぶん6000ドル以上になる。安くはないが、個人で同じ適用条件の保険を買おうと思えば、比べものにならない。

今年の2月末までに失業した場合は、本人35%、(元)勤め先65%で同じ保険が15ヶ月のあいだ引き続き適用されることになっていたので、私はいっそのこと夫が2月末までにレイオフされたほうがいいのではないかとすら思った。しかし、その期限も、修正案によって今年の12月末まで延長された。

COBRAや、ニューヨーク州が独自にやっている子供向けの保険制度CHIP (Children's Health Insurance Program)との兼ね合いはどうなるのかわからない。

法案が通ったからと言って、来月あるいは来年からいっせいに国民皆保険になるのではない。

フロリダやバージニアなどの州司法長官は「国民に保険の加入を強いるのは個人の自由を侵害する恐れがある」として、連邦政府を相手取り、違憲訴訟を提起した。

この国には、どうしてそういう発想をする人がいるのか。それこそ税金の無駄遣い。やめてもらいたい。

もちろん、中絶費用を政府が出すかどうかの議論はいつものこと。

アメリカが社会主義国家になってしまう!」と声高に叫ぶ人もいて、まったく彼らの思考回路は理解できない。

       *

もし夫が退職した場合、うちの健康保険がどうなるか、そのときになってみないとわからないと思う。

そんなおっとりしたことでは、大病にかかったら困るのだが、民主党と共和党、下院と上院、保険会社に製薬会社、税金に財政赤字、…話が込み入りすぎている。私は怠け者なので、考えるのがめんどくさくなってきた。

日本の国民健康保険は、こんなに複雑とは思えない。市役所で手続きして、毎月の保険料を払うだけではないか。病院や役所の人たちには、わずらわしいペーパーワークがあるのだろうが。

アメリカが諸外国並みにすべての国民に健康保険が適用されるようになるには、相当な時間がかかりそうだ。

       *

そうこうしているうちに、今度は「住宅ローンの支払いが遅れている人や家の価値がローンより低くなった人を救済する」というプログラムが公表された。

NYタイムズではその記事に800以上のコメントが寄せられた。その多くは、「自分はちゃんと支払っているのに何の援助ももらえない。自分で責任を持って払えるくらいの家を買った。家を買うのはあきらめて、賃貸で我慢してきた。」という人たちの怒りのコメントである。

「じゃあ、来月からローン返済をやめたら、政府が救済してくれるんですかね。」という皮肉った投稿もあった。

そりゃそうだろう。身の程知らずのローンを申し込んだ人の肩代わりをするために税金を払っているんじゃないぞと私も思う。

そういえば、アメリカの年金について、現役労働者から入ってくるお金よりも退職者に支払うお金のほうが大きくなったというニュースもあった。

死ぬまでアメリカに暮らすつもりではいるが、あんまり長生きするのも考えものである。

【追記1】 3/30/2010 NYタイムズの Health セクションに Q&Aページがある。

【追記2】 4/2/2010 Wikipedia に詳細な説明が載っていると教えていただきました。サイトはこちら。立法経緯、各条項の内容、公共政策への影響、政治的影響、訴訟、関連サイトのリンクなど。


<今日の英語>

You reap what you sow.
自分でまいた種だろう。(自業自得)


住宅ローンの救済についての記事への投稿。「これは、自分の収入以上の暮らしをさせてくれなければ、トラブルを起こすぞというゆすりだ。愚かな悪行に褒美をあげるのは、長期的にみて社会のためにならない。子どもだったら、間違いをしても直す方法がある。大人にはそういう特権はない。自分で巻いた種は自分で刈り取るものだ。」



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生産性を上げる言葉

2010.03.29 (月)


One thing at a time.
Most important thing first.
Start now.

一度に一つずつ、
一番大切なことから、
今始めなさい。

       *

しばらく前に、「たった11単語で生産性を上げる」という誘い文句につられて、あるサイトを開いたら、こんな言葉が書いてあった。

それ以来、Outlook のカレンダーにちょくちょく入れたり、iGoogle に貼ったりしている。

目に入るたびに、なるほど、確かにその通り、これならできそうだと思う。でも、実際に動くかどうかは、そのときの気分次第なので、私の場合はたいした効果がない。そういえば、NowDoThis というサイトを試したこともあったが、長続きしなかった。

時間がたっぷりある人間は生産性を上げる動機がないのだから、当たり前か。むしろ、時間があるので、「別に今やらなくてもいい。いつでもできる。」とすぐズルイことを考える。それで1日終わってみると、何もできていない。

それでも、たまには努力してみる。

まず、いま一番大切なことを一つだけ選ぶ

すぐ目に入るものとして、たとえば猫。そうだ、しばらく爪を切っていない、これは重要だと思う。しかし、最近は爪切りを見るだけで、妹猫は逃げる。とりあえず、兄猫だけでよしとする。こっちは案外素直に切らせてくれる。

こうして、一番大切なことが一つ片づく。

       *

他には、ガラス拭きとか、洗濯とか、請求書の支払いとか、こまごました終わりのない家事なのだが、いずれも今すぐどうこうという話ではない。

それで、次に一番重要なことは何かなと考える。私は優柔不断なので、長いこと迷うだけで、いっこうに結論が出ない。

一つだけ(猫の爪切り。しかも一匹だけ)は確実に終わらせたんだからいいかと自分を甘やかす。そうだ、読みかけの本を読むのも大切だ、とかなんとかこじつけて、寝そべって本を読むという、実に怠惰な生活をしている。

その次にこの11単語が目に止まるまで、生産性はゼロに近い。

印刷して、家のあちこちに貼ろうかとも思ったが、どこにでも書いてあると逆効果かもしれないので(これも言い訳)、やめた。

         *

外で働き、ボランティアもやり、子育てや家事を手抜きせず、いつも何かにチャレンジしているような人がいる(らしい。私はそういう人と付き合いがないので、実物を見たことがない。いや、一人だけ、日本人の知り合いでそれに近い女性がいる。私とは対極にある彼女は、有能なだけでなく、性格もいい。年に2回会うかどうかという関係なのもいい)。

そういう話を聞くと感心するが、なぜか自分が情けなくなったり惨めになったりはしない。まあ、自分はこんなもんだろうと思うのだ。

それでも、心のどこかでなんとかせねばと焦っているのか、もしかしたらまだなんとかなるかもと希望が捨てきれないのか、この3行フレーズは残してある。

そうして、ブログなんか書いて一仕事した気分になるのだから、世話はない。


<今日の英語>

Go easy on the butter.
バターは控えめにしろ。


トーストにたくさんバターをつける長男を見て、夫が一言。



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市長の日本人妻

2010.03.30 (火)



ニューヨーク・シティの北に、Westchester 郡という全米でもトップクラスの裕福な地域がある。その郡庁所在地は White Plains 市。

マンハッタンへの通勤圏でもあり、日本人が駐在・永住ともに大勢住んでいるらしい。

1ヶ月ほど前、その市長 Adam Bradley が奥さんに対するDV嫌疑で逮捕された。

私はふだんから政治家はどいつもこいつも胡散臭いと思っているし、NY では政治家のスキャンダルが日常茶飯事みたいなもので驚かなかった。あーあ、またかと思っただけだった。

ところが、その奥さんの名前が Fumiko と出ていて、おやと思った。

日系アメリカ人でなく、日本で生まれ育った人らしい。大都会ではないけれど、ニューヨーク郊外の大きな市である。市長の奥さんが日本人だとは知らなかった。アメリカで政治家と結婚している日本人は、かなり珍しいのではなかろうか。

私はこのニュースを興味を持って読んだ。

       *

NYタイムズではごく短い記事1件で終わったが、市長の地元マスコミは大きく取り上げ、連日詳しく報道していた。

48歳の市長は元州議会議員で、2009年に市長に当選したばかり。選挙法が専門の弁護士でもある。

奥さんは以前は日本人学校で働いていて、1998年に共通の友人を通してBradley氏と知り合い、2003年に結婚。夫の選挙運動や公式イベントなどによく顔を出していたという。市長夫妻には娘が2人いる。

結婚当時、すでに夫は議員だったので、彼女は政治家の妻となることは覚悟していたはずである。結婚式の記事には、「妻は政治に関わるのが好きだし、これからも自分の政治キャリアに深く関わることになるだろう。」という夫のコメントが載っていた。

当時の奥さんの写真は、色白で長い黒髪、赤い口紅が目立つ、きれいな人だ。

この人なら市長の奥さんの役がこなせそうだなと思わせる。結婚式には、母親と兄弟が日本からも出席していた。日本の家族も認めた結婚だったのだろう。

最近の報道で見る彼女は、やつれた感じはするが、きれいな肌だし、きちんとした身なりをしている。おそらくアメリカ人の目にはかなり若く映る。

日本人が多いというその町で、市長夫人である彼女は日本人社会で有名だったのだろうか。日本人学校の先生(記事には educator 教育者と書いてあり、勤務形態はわからない)ならば、知り合いもかなりもいたはずである。子どもができてからは、日本人とプレイデートもしただろう。

彼女は長年にわたって、不幸な結婚生活に耐えていたらしい。近所に気心の知れたアメリカ人が住んでいて、その家に逃げ込んだり、DV被害の状況を打ち明けていたと報道された。

そういうことを話せる日本人の友達はいなかったようだ。

私はそんなに日本人の多い町に住んだことはないが、(特に悪い噂)は日本人コミュニティですぐ広がる。噂の種になるのがいやだったのか、同胞に同情されるのはプライドが許さなかったのか。

彼女は、あえて日本人には相談しない選択をした気がする。

       *

アメリカ人の隣人に支えられていたが、ある日、夫に押さえつけられ、ドアに力いっぱい手を挟まれたのがきっかけで警察に通報したらしい。

それを受けて市長は自ら出頭した。まだ辞職はしていない。

彼女が警察に提出した調書も公表された。それには、2人の出会いから始まって、結婚した直後から夫が短気な振舞いをするようになり、何月何日にどのような暴力を振るわれ、どんな暴言を吐かれたかがこと細かく書いてある。彼女の出したメールを隣人が保存していること、隣人も過去にDV被害者だったので証拠を残すようにアドバイスされたこと、隣人がとても力になってくれたことも記してあった。

弁護士である夫、元裁判官だという姑、市長の権力に群がる人々、警察やマスコミへの圧力。

これは手強いぞと思っていたら、奥さんは1週間もしないうちに告訴を取り下げると言い出した。

彼女の弁護士は、「彼女は夫が危害を加えるとは思っていないし、order of protection(保護命令)も要らない。彼女は刑罰でなくカウンセリングを望んでいる。」と話し、彼女が警察と話をしたときに英語がわからなかった可能性もあるとほのめかした。

しかし、検察はこのまま法廷に持ち込むつもりでいる。彼女が今さらどう言おうと、証人として出廷しなくてはならない。

市長はさすがに厚顔無恥な政治家だけあって、「私は無実だ。」とインタビューに答えていた。あんた、奥さんの手をつぶそうとしたじゃないの?

一方で、奥さんが夫と隣人に出した複数のメール(英文)が流出している。

暴力は市長になってからひどくなったというが、階段から突き落とされたり、熱いお茶を投げつけられたり、あざが残るくらいつかまれたり。暴言も数知れず。
ただし、証拠はないのだ。しかも、「日本人の奥さんは精神的に不安定だった」などと弁護士が決め付ける恐れもある。

多少は文法の間違いがあるものの、奥さんはかなりちゃんとした英語を書く。彼女の弁護士が「英語がわからなかった」と取って付けたように言うのはいかにも怪しい。

       *

彼女の子どもたちはまだ学齢期。これだけ私生活が暴露されても、学校や習い事には連れて行かねばならない。日本人学校や補習校に通っているのかどうか、わからない。どこに行っても好奇と同情の目で、いたたまれないだろう。

でも、そうなるとわかっていても通報しなくてはならなかった。それほど彼女は追い詰められていたということだと思う。

悲惨だが、彼女はまだいい。

理解のある、頼れる隣人があり、一時的にでも逃げる場所があった。言葉もできる。夫が公人であるために、今や女性団体が注目しているし、一文無しで追い出されることはなさそうだ。ただし、このまま丸め込まれて、前と同じ生活に戻る可能性もある。

夫となる人が浮気していたことを知りながら結婚してしまった、と調書に書いてあった。子どもが生まれても、1ヶ月250ドルしかもらえず、クレジットカードもなく、日本の母親から送金してもらう生活。夫の母親にもどなられる。夫は仕事のストレスを妻へのDVで発散する。わざと娘たちの前で貶められる。

「もう疲れた。耐えられない。」
「夫から離れたい。どうしたらいいかわからない。」
「今日は何を言われるか、明日はなんと言って怒鳴られるか、いつも怖い。」

こんなことが延々と書いてある。

Yuko という女性の名前がメールに出てくる。ベビーシッターだと思われる。夫は妻の前でその女性にも言い寄るのだ。ただし、Yuko さんは夫妻の両方の弁護士に対して、DVは見ていないと答えているらしい。夫婦の間は他人にはわからないとはいえ、彼女にも圧力がかかったか。それとも、裁判沙汰に巻き込まれたくないだけかもしれない。

         *

ネットでDV被害者の相談を読むと、アメリカにいる日本人女性でそういう目に合っている人がいったいどれくらいいるのかと思う。日本国内でもよその家の中はわからないが、孤立しがちなアメリカ生活ではもっとわからない。

それに比べたら、私のトラブルなど、ほんとに些細なことに感じられる。

その手の相談には「離婚しなさい。」というアドバイスがつきものだ。ホワイトプレーンズの件でも、「殺される前に逃げろ!」とアメリカ人がいくつも書き込みをしていた。

でも、Fumiko さんは、警察に通報したあとでも、夫に同伴して市のイベントに出席していたようだ。「市のためにやりました。」という彼女のコメントをどこかで読んだ。あんなメールや調書が公表されたあとで、今さら取り繕ってもしょうがないじゃないかと思う。

彼女はもうあきらめたのだろうか

「子どもにとってはいい父親です。」と言っていたので、子どものためにそう決めたのかもしれない。

そうなれば、元の生活に戻るだけ。彼女の夫のDVはもっと巧妙になる可能性がある。

これまで助けてくれた隣人に愛想をつかされるかもしれない。そうしたら、本当に逃げ場がなくなってしまう。またDVに耐えつつ、仮面夫婦を演じるのか。もし次の選挙で落選したら(市長が政治から手を引くのかどうかは不明)、彼女はどんな目に合うか知れないのに。

でも、まだ小さい子どもを2人抱えて、彼女の選択肢は限られている。

私は個人的に手助けをするつもりはない。センセーショナルなゴシップを他人事として読んだだけだ。

ただ、この事件の行方がとても気になる。

【関連記事】
DVの信憑性 2010.11.19




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