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<今日の英語> 2009年11月

2009.12.01 (火)



11/1/09
I cringe when I see what people post.
人がネットに載せているものを見ると、身の縮む思いがします。

It’s just not something I’m used to.
ただそういうのに慣れていないんです。

11/3/09
My pet peeve is #17.
私がムカッとくるのは、17番です。

11/4/09
I’m dumbfounded.
あぜんとしています。

11/5/09
It is out of my price range.
予算オーバーです。

I’m not going to rummage around your room.
おまえの部屋を引っ掻き回して探すつもりはないよ。

11/6/09
Is this a good time of year?
今はいい時期ですか。

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夫のビデオ・チャットの相手

2009.12.01 (火)


土曜日は、子どもたち2人ともよそでプレイデートがあった。長男はこの寒いのに外に集合。

どちらも5時に迎えに行くつもりだったが、長男はいつ終わるかはっきりしないという。それで、終わったら家に電話するように言い残した。

私は家に戻り、テニスの ATP World Tour Finals をPCで見ていた。夫は自分の部屋でパソコンをしているようだった。夫が自室に鍵をかけるのはいつものこと。

でも、1年前はそんなことはなかった。躁うつ病の薬で神経過敏になっていることを理由に、9月頃からやたらと鍵をかけるようになったのだった。

          *

4時少し前に、長男から電話があった。まず夫が出て、そのあと私も自分の受話器を取ったので、三者通話になってしまった。

長男は、電話でも日本語で話す。私と長男の会話が理解できない夫は、すぐに受話器を置いたらしい。

次男の友だちダニーの家は、公園からほんの5分のところにある。今から次男のお迎えに向かうのは早すぎる。でも、まず長男を連れてきて、次男のためにまた出直すのも億劫だ。

幸い、長男の友だち数人は5時までそこに残るというので、もう少し時間をつぶしてもらうことにして、私はまたテニス観戦に戻った。

4時半になった。私は、もうすぐ子どもたちを迎えに行くと夫に告げようと思い、夫の部屋のドアの前に立った。すると、少し抑えた話し声が聞こえた。

          *

最近、G氏のスタートアップに協力している夫は、電話(スカイプ)での打ち合わせに付き合うことが多い。でも、今日の声はビジネスとは違う。夫は耳が遠いこともあって、電話口でかなり声が大きい。

今は声をひそめてはいるが、ドア越しに聞こえる程度の、それほど遠慮のない声の大きさだ。おそらく、夫は長男からの電話を受けて、私がすぐに迎えに行ったと思い込んだ。つまり、誰も家にはいないと誤解したようだ。

ヘッドフォンを使っているせいで、夫の受け答えしか聞こえない。

「きみの husband はどうしてノートブックではなくて、デスクトップを買ったのかね。きみへの嫌がらせか。」 

チャットの相手は女だった。

「きみがそんなことにお金を使いたくなかったのはわかるよ。」

「きみを殴ったときの、彼の頭の中がどうなっているかわかるかね。彼はきみを take care したいんだな。でも、それができない。だって、きみは仕事をしていて収入があるからね。そうなると、彼は自分を否定された気持ちになるんだ。」

夫はどこかの奥さんのDV相談をやっていた。いったい相手は誰なのか。

「そうだね。確かに、きみの英語にはアクセントがある。」 

相手はネイティブスピーカーではないらしい。アメリカ東部時間の土曜日夕方。外国語なまりの英語を話すアメリカ人は、いくらでもいる。

もしタイにいる女だったら、ちょうど12時間先だから、日曜日の午前4時か。ありえない時間ではない。タイのネット事情はどうなのだろう。

「しかし、よくそういう husband と一緒に住んでいられるね。」

相手の名前やどこに住んでいるのかを推測できるヒントはなかった。

          *

私が立ち聞きを始めたのは夕方4時半。でも、話の感じからして、きっとその前からチャットをしていたと思う。

私は10分間、ずっと聞き耳を立てていた。そして、夫には何も告げずに、ガレージから車を出し、まず長男を拾い、そのままダニーの家へ次男を迎えに行った。

家に戻ったのは5時15分。子どもたちは空腹を訴えた。体が冷えたらしい長男に、何か暖かいものを食べさせねばならない。

夫はまだ部屋から出てこない。でも、子どもたちがいるのに夫の部屋の外で立ち聞きするわけにはいかない。

テニスの試合が続いていたので、次男に私のラップトップをキッチンまで持ってくるよう頼んだ。そして、テニスを見ながら、シチューを温めた。

テニスが終わると、私は自分でパソコンを持って、ベッドルームに向かった。夫の部屋からはまだ話し声が聞こえる。

声をひそめようとしている気配があるが、ドアの近くに立てば聞こえる。話の内容からして、さっきと同じ女である。夫はおそらく2時間以上もチャットをしていたのだろう。

「とにかく眠ることだ。2日間も眠らないなんてダメだ。疲れてきたって? それはちょうどいい。眠りなさい。」

今度は医療相談か。

相手の女の声が聞こえないので、どこの外国のアクセントかもわからない。でも、夫はその女と今日初めてチャットを始めた様子ではない。相手のことに詳しすぎる。

この2ヶ月ほど、250ドル、300ドル、400ドルとお金を動かせと言ったのは、この女に送金するためだったのか。

         *

夫がチャットを終える気配がしたので、私はそっと自分の部屋に戻った。

すると、夫はまもなくやってきて、「テニスは終わったのか。」と聞いた。「とっくに終わったわ。」「誰が勝ったんだ?」「デル・ポトロ。」「シャラポワ?」「デル・ポトロ。年末のファイナルは男だけよ。」 

夫はテニスなんかにぜんぜん興味ないくせに、そんな質問をする。後ろめたいことをしていましたと白状しているようなものだ。久々にいらつく。

おそらくそれが私の顔に出ていたのだろう。夫は「どうかしたの?」と私に尋ねる。

「別に。」「どうかした?」「なんでもないってば。テニスの試合レポートを読んでるだけよ。」「ふーん。」

夫はやっと私を一人にしてくれた。

こういうとき、すぐその場で、「外国なまりがあって、稼ぎの悪いご主人に暴力をふるわれている不眠症の女とチャットしてたなんて、知らなかったわ。この次はいくら送金してあげるの?」とでもサラリと言うべきか、迷う。

 
<今日の英語>

Are you a morning person?
あなたは朝型ですか。


次男の懇談会の予約を取るためにミドルスクールに電話したら、すでに遅い時間が埋まっていたらしい。「もしあなたが朝に強ければ、朝一番の8時が空いています。」と予約係りが一言。



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ブルネット・ドール?

2009.12.01 (火)


夫はパソコンを離れるとき、たいていモニターを消す。ついていたとしても、デスクトップ画面しか出ていない。ドアに鍵をかけることといい、「見られては困ることをしています」とPRしているようなものだ。

私がチャットに気づいた日も、夫は全部のウィンドウを閉じてから部屋を出たはずだった。でも、メモか何か証拠がつかめるかもしれない。夫が階下で子どもたちと食事している隙に、夫の部屋に入ってみた。

やはりデスクトップ画面にしてあったが、右端に細長いウィンドウが開いていた。ヤフー・チャットらしかった。私はヤフーは使わないし、チャットもしないので、見慣れない。

数人の名前が見える。わかるのは、スタートアップの代表者であるG氏だけ。

いくつか並んでいたハンドルネームの真ん中あたりに、brunettedoll というのがあった。ブルネット・ドール。ブルネットの髪の人形? プロフィールらしき小さい写真は、露出狂の若い白人女性。

G氏の名前の横には、「スターバックスに行った」とメッセージが出ていた。これはヤフーチャットなのか、twitter なのか、よくわからない。

ブルネット・ドールの横にはメッセージがない。この女がチャットの相手だったのだろうか。白人だけれど、英語が母国語ではない可能性はある。でも、いかにも商売女みたいな雰囲気だ。ふつう、あんな写真をプロフィールに出すだろうか。

          *

夫は食べるのが早い。すぐ部屋に戻ってくるだろう。下手にスクリーンを触って見つかるのもいやなので、そのまま自分の部屋に戻った。

そして、グーグルで "brunettedoll" を検索してみた。Live Sex だの Online Dating だの Live Show Webcam だの、いくらでも出てくる。アダルト業界でよく使われる名前なんだろうか。まあ、ありきたりといえば、そんな感じもする。

夫はお金を払って、チャットの相手をしてもらっているのだろうか。私が立ち聞きした会話では、セクシャルなところはなかったけど。

チャットの相手は例のタイ女ではないのかもしれない。いや、タイ女が白人の女性の写真をプロフィールに貼り付けることだってできる。匿名のネットなら、なんだってありえる。

私は使わないが、夫のPCには Webcam が付けてあるし、ヘッドフォンも持っている。

今年の夏、私が日本に行くときに初めてスカイプを使い始めたのだが、夫は気乗りしないふうだった。ところが、G氏もスカイプを使うと知り、各国のコンサルタントとも連絡を取る必要が出てくるかもしれないということで、夫は自分のスカイプ・アカウントを作り、毎月いくらか払って世界中に電話できるオプションを選んだ。でも、スカイプを持っている相手なら、無料でスカイプ同士で話せるのだから、そんなものはいらないはず。

次々と疑問が出てくる。

夫のスカイプ・アカウントに入り込めば、誰と話していたかわかるかもしれない。でも、私がログインしたことがばれてしまう。ヤフーチャットの履歴を見る方法はないだろうか。どっちもパスワードは知らないが、見当はつく。

          *

しばらく前に、夫のクレジットカード明細をオンラインで見ていたら、 Video Chat Software $39.95 というチャージがあった。

てっきりG氏との仕事で使うと思って、夫には何も聞かなかったが、G氏とはスカイプで間に合うではないか。あれは、夫が個人的に使うためのものかもしれない。

そういうソフトウェアを検索したら、無料ソフトがいくらでもあった。有料ソフトを使わなくてはいけない理由があるのだ。もしかして、アダルトサイト専用のソフトか。そんなものがあるのだろうか。

追求するのもばからしくなってくる。

ネットで世の中が便利になった反面、アダルトサイトが蔓延して、こんなことが増えていくのだ。



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「抗うつ剤を止めましょうか。」

2009.12.02 (水)


主治医のところへ健診に行った。

本当は毎年1回やるべきなのだが、去年はさぼった。産婦人科医には毎年診てもらっているので、主治医のほうはたまに行かない年がある。それに、喉をやられたりして、どっちみち半年に1回くらいは主治医に会うのだ。

健診のたびに何か見つかるので、つい足が遠のく。

40を過ぎて、腎臓の先天性奇形が見つかったり(ごく軽度で治療方法もない。ただし、尿検査で引っかかりやすく、何度もやり直しするのが面倒)、関節炎になりやすい手だと告げられたりした。そんなことを教えてもらってどうする?

今回、処方箋の追加だけ頼もうと思ってクリニックに電話したら、「健診を受けないと、処方は出せません。」とナースに言われた。あきらめて、先週、絶食して事前検査に行ってきた。今日はその結果もわかる。

ドクターBが来る前に、ナースが血圧や体重を測ったり、聴力検査や EKG をやったりした。そして、前開きのガウンを渡されて、診察室で待った。

          *

私は、夫との間に起きたことをほとんど全部ドクターBに話してある。

彼女は内科医であって、精神科医でもカウンセラーでもない。でも、私が気管支炎で診察してもらったときに、私の精神状態が普通でないことに驚いて、いろいろ聞いてくれた。私はそれまで誰にも話さずにいたのだが、涙が止まらず、ドクターに延々と打ち明けたのだ。

そうして、抗うつ剤を処方してもらい、それからは私が病気でも健診でも彼女のところに行くたびに、「最近はどう? ご主人とは落ち着いてる?」と心配してくれる。

あるとき、「あなたは、あの若い男の子とその後どうなってるの?」と聞かれた。私はそんな話をしたことを覚えていなかったので、驚いた。でも、ドクターが知っているなら、きっと話したのだろう。「彼はここにはいません。」とだけ答えた。

ドクターBは決して私を責めない。

タイで現地の女に手を出し、私をののしった夫のことは、「困ったことをしてくれたものね。どうしてあなたを苦しめるのかしら。」と嘆いていたのに。私が壊れやすいと思って、下手なことは言えないのか。あるいは、自分で答えを見つけなさいということか。

それとも、「この夫婦は一体どうなってるんだろう。」とあきれているのかもしれない。

          *

診察室に入ってきたドクターBは、「まあ、久しぶりね。しばらく来なかったということは、ずっと調子がよかったのかしら?」と明るい。

そして、私のカルテを見ながら質問し、Good, good. と言いながら聴診器を当てた。過呼吸が長く続いたことを報告したが、「私はそっちの専門じゃなくて悪いけど。特に不安材料があったのかしら。」そんなことはなかったと私は答えた。

「あなたは貧血ね。ちょっと顔色が悪いと思ったわ。先週の血液検査でヘモグロビンが少ないと出ています。3ヶ月間、鉄剤を飲んでもらいますよ。ドラッグストアで Fergon を買ってください。」

肉を食べない私は、貧血になりやすい。このところ疲れやすいと思ったのは、鉄欠乏性貧血だったのか。閉経前の生理不順で出血も多かった。素直に従うことにする。

          *

「それから、もう抗うつ剤を止めましょうか? ずいぶん長いこと服用しているし、今のあなたは薬がなくても大丈夫でしょう。」

予想外の提案に私は慌てた。

止めるなんて無理です。できません。まだ必要です。

「そうなの?」 

「夫がパニック障害でもう何ヶ月も仕事を休んでます。毎週、精神科医とカウンセラーにかかっているし。ちょっと不安定な時なんですけど。」

「わかりました。じゃあ、もうしばらく続けましょう。でも、もし止める気になったら、少しずつ量を減らすんですよ。いきなりゼロにしないように。」

「それより、高血圧の薬を止めてもいいですか。」

「それも続けましょう。あなたの血圧はうまくコントロールされているし、副作用の少ない薬だから。」

結局、今までどおり、両方の処方箋をもらった。

これで抗うつ剤が手に入る。まるでドラッグ中毒患者である。


<今日の英語>

I took my boys out of school for a couple days.
息子たちには2日間学校を休ませました。


他のホリデーと同様に、感謝祭の直前は飛行機代が高くなる。安いチケットで早めに出かけた女性の一言。



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どこでどう間違ってこういう人生になったか

2009.12.03 (木)


ブログを書いていると、書くことで距離ができるからだろうか、自分のことなのに他人事をあげつらっているみたいな気分になる。でも、まぎれもなく、これは私のことなのだ。

一体どうしてこういう人生になったのかと、ときどき考える。

夫と結婚しなければ、あのまま東京で姉と2人一生独身で過ごしていただろう。私たちは8年間ずっとそのつもりでいた。

今のこのぬるま湯につかったような、お気楽な生活。

いやな人付き合いは皆無に等しく、家事は手抜きで、子どもはほったらかし。夫が躁うつ病で休職中なのに、私は仕事を探そうともしない(探した時期もあったが、たいした活動もせずにあっさりあきらめた)。

大金持ちでもないのに、これまでの貯金や退職金や年金でやっていけると楽観している。そして、無給ながらも、夫がG氏のスタートアップに協力しているので、今の会社に戻れなくても、なんとかなるだろうと高をくくっている。

もともと悲観的な性格だったのに、不思議だ。

抗うつ剤の飲み過ぎでセラトーニンが過剰に生成されて、錯乱状態になることがあるそうだが、それだろうか。

         *

1日中ぼんやり過ごしている私に、夫は文句を言わない。

でも、「そういういかにも迷惑そうに Yes? と返事するのはやめてくれ。」とこぼすことがたまにある。夫に話しかけられて迷惑だとは思わないが、なぜかうっとうしいのだ。私の愛想の悪さは隠せない。

夫のおかげで食べていけるのに、我ながら何様かと思う。

その代わり、私も夫には好き勝手にさせている。

使途不明金については目を光らせるけれど、夫がいつ起きようが、何を食べようが(私の好物や貴重な日本食に手を出さない限り)、どれだけゲームをやってテレビを見ようが、関与しない。念のために、夫の行動を監視しているだけである。

そうすると、先日のチャットのように、いわばパズルのパーツが手に入ったりする。でも、知らんぷりしてしばらく泳がせる。すぐに行動を起こすのは愚かだ。

なにも慌ててこの平穏を乱す必要はない。

          *

私は子どもの頃、「石橋を叩いて、絶対に壊れないとわかっても渡らない」と言われたくらいに慎重で、失敗しないようにきっちりやるのが常だった。でも、何かの拍子に周りが見えなくなると、いとも簡単に無謀で投げやりになったりもした。

矛盾するようだが、今もってそれが私の性格の根本にあると思う。

完璧主義か、完全放棄か。どちらかに振れるのである。

夫と結婚したときは無謀そのもので、私の二面性を知らなかった人たちを驚かせた。今は、おそらく消極的な完全放棄の時期なのだ。つまり、なるようになれ。あらゆることがどうでもよくなる。

「自称引きこもり」という人の話を読むと、私などよりはるかに多く出歩き、たくさんの人と付き合い、新しいことに挑戦し、きちんと生活していたりする。

私は最短距離にあるスーパーに出かけるのもいやなのに。

年のせいで億劫になったのではない。東京に住んでいた二十代前半でもそうだった。アパートと大学、アパートと会社の往復が基本だったので、東京に8年住みながら、まったく不案内である。

アメリカに20年住んでも、それは変わらなかった。行きたいところは、いつでも自分の家の自分の部屋なのだ。

こういうのも一種の agoraphobia (広場恐怖症)なのかな。私はぐうたらなだけだと思っていたけれど、確かに小さいときからそういう傾向があった。

私は社会生活ができないほどではないが、人ごみと行列と移動は大の苦手。だから、ディズニーランドなんか、お金をくれると言われたって行きたくない。

よく考えたら、今の生活はほぼ理想的ではないか。

           *

こういう協調性のない人間が、たまに近所のおしゃべり奥さんとスーパーで会ったりすると、最悪である。

「あっら~、元気? この頃、会わないわね~。」 はい、私は家から極力出ないようにしてますから。出かけても、買いたいものは売ってないですし。

「仕事してる?」 働く気はありません。第一、私がもらえそうな給料より、投資の配当金のほうがきっと多いでしょう。

「ホリデーはどうする予定?」 誰にも会いたくないし、どこにも行きたくありません。感謝祭やクリスマスのごってり料理より、天ぷらうどんのほうがおいしいと思います。

と言いたいところを、適当に白々しく返事して、顰蹙を買わないように努力している。


<今日の英語>

She had a sour look on her face.
彼女は不機嫌な顔をした。


ある年のクリスマスに、「リビングルームのペンキを塗り替えてあげるよ。」というカードを息子が年老いた母親に贈ったところ、それを読んだ彼女は苦々しい顔をした。息子が「どうしたの?」と聞いたら、「家の中ぜんぶのペンキを塗り替えてくれたらいいのに。」と答えたそうな。sour は酸っぱいの意。



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愛人ごっこ その74

2009.12.04 (金)


(前回その73の続き)

私とパヴェルは誰もいない家の中に入り、世間話みたいなどうでもいい話をした。彼が噂の種になりたくないのは明らかだったが、私に対しては以前と変わらない態度で接していた。

ここなら誰にも見られない。不愉快な話題を持ち出さなくても、せっかくの2人の時間を大切にすべきなのだ。

私がキッチンへ向かうと、彼もソファから立ち上がってやって来た。そして、後ろから私を抱きしめ、「ずっとこうしたかったんだ。」とささやいた。

私は振り返って、彼の胸に顔を埋めた。「私も。こうしてると一番安心できるわ。」

私たちはそのまま2階へ上がって、8ヶ月ぶりに愛し合った。

すでに私たちのやり方にはあるパターンができていたが、久しぶりにベッドを共にするのは新鮮で、何も特別なことをする必要はなかった。私は彼を迎え入れると、とても満たされた気持ちになり、彼の真剣な顔が恍惚に変わるのを見つめた。

パヴェルは本当にまたやってきたのだ。

・・・

ゆっくり余韻を味わう時間はなかったが、私たちはしばらくベッドの中で体を寄せていた。

「あなたにまた会えるとは思ってなかったわ。去年で終わりだと思ってたから。」

「ぼくもそうだよ。でも、いろいろ考えて、もう1年だけここに来ることにしたんだ。空港でのサプライズはほんとに慌てたけど。あのときはごめんね。」

言いにくい話をパヴェルから持ち出してきた。

「もういいのよ。ただ、あなたがこれまでにもずいぶんいろいろ言われたんだなとやっと気がついたわ。私って、年ばかり取ってて、中身はまるで世間知らずの小娘だったわね。」

「みんな暇だからね。でも、トーマスなんか絶対知ってるのに、何も言わないんだ。他の人はただおもしろがってるだけだよ。」

私のせいでパヴェルが嘲笑されるのはやりきれない。

「キャンプが始まったら、あなたにはそっけなくしなくちゃ。たとえ子どもたちのカウンセラーだとしてもね。」

「うん。人目があるときは、距離を置いたほうがいい。その代わり、誰もいないときは…。」

彼は私を抱きしめた。まだ特定のガールフレンドがいなかった彼は飢えていて、彼の欲望は私の自尊心をくすぐった。

・・・

子どもたちが学校から帰る前に、私たちはシャワーを済ませ、何食わぬ顔でリビングルームに戻った。今朝までの緊張感は消えていた。

「わーい、パヴェルだ! 今日は泊まっていく? 外に行こうよ。」

彼はよき友人の役に代わった。そして、夫が帰宅すると、一緒に食事をしながら、ドイツでの生活やコンピュータの話をした。

私は母そして妻の役をして、夫にパヴェルとの関係を気取られないように努めた。これからは特に注意しなくては。

私にはまだパヴェルが必要なのだ。

夫が同じ屋根の下にいたのに、忍び込んできたパヴェル。夫と子どもたちがヨット乗りに出かけた夜、一晩ここで私と過ごしたパヴェル。もうそういうリスキーなやり方はできない。

私は早々に寝室へ引き上げることにした。「おやすみなさい。」と誰にともなく言ったとき、パヴェルと目が合った。

気をつけないとね。「おやすみ。」

(次回その75に続く)



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 |  愛人

愛人ごっこ その75

2009.12.05 (土)


(前回その74の続き)

キャンプ・カウンセラーのオリエンテーションが始まるまで、パヴェルは毎日キッチンとプールで働いた。経験者として優遇すると約束されていたこともあり、できるだけお金を貯めるべく、長時間の労働を厭わなかった。

ドイツでは勉強をしながらアルバイトもやっていて大変だったが、ここでは仕事だけすればいい。パヴェルのボスは、彼の熱心な働き振りと気立てのよさで、ずいぶんこの若い外国人を頼りにしていたらしく、「ジャパニーズ・レディー」の話さえなければ、居心地のいい職場だった。

私はもうキッチンには気軽に顔を出さないようにしていた。

どうしても彼に会わねばならないときは握手すらせず、用事が済むとそそくさと立ち去るようにしていた。彼のためにも、疑惑を呼ぶようなそぶりは見せてはならないのだ。

・・・

パヴェルからはときどき電話があり、メールも前より自由に使えるらしかった。

「去年のカウンセラーが不満を訴えたから、今年は改善したみたいだね。宿舎のミーティングルームにあったテレビもやっとつくようになったし。でも、携帯の電波は届きにくいって、みんなが言ってるけど。」

彼はドイツで使っていた携帯を持ってきたが、アメリカでは使えなかったので、やはり私との連絡は簡単ではなかった。私は彼からの電話を心待ちにした。

「今年のカウンセラーの中に、かわいい女の子はいるの?」

「うーん。今年は今までで一番だめかな。」

「まあ、はっきり言うのね。」

「あなたにはね。そんなに好きじゃないのに付き合おうっていう気持ちにはなれない。それに、ぼくは女の子のためにここにいるんじゃないから、かえって仕事に集中できていいよ。」

私からすれば、どの女の子も若いというだけで魅力的なのだが、自分自身も若いパヴェルにはそれがわからない。

でも、他のカウンセラーと恋愛沙汰でトラブルを起こしたら元も子もないし、夏の終わりにはそれぞれの国へ帰るのだ。彼の言うとおり、やたらに手を出さないほうがいい。彼が毎年誰かと引っ付いたり別れたりするタイプだったら、それこそ私の気が休まらないだろう。

それに、セックスしたければ私がいる。

そう頻繁に会うことはできないが、私なら妊娠の心配もなく、場所やお金で困ることもない。しかも、将来のコミットメントは要らないのだ。なぜなら、私は夫との生活を捨てる気はなかったから。

なんとも都合のいい相手ではないか。

・・・

私は子どもたちをキャンプの2回目のセッションに登録した。パヴェルはもちろん最初のセッションからカウンセラーとして働いていたので、平日に逢引をすることはできなくなった。

セッション初日の朝、私は子どもたちを引き連れてキャンプ場にあつらえたテントに寄った。そこで登録を確認し、グループの番号を聞いて、パビリオンに向かった。

入り口の近くにパヴェルが見えた。彼は今年はうちの子たちの担当ではなかったので、私たちは離れたところから視線と微笑を交わしただけだった。

私は長男と次男をそれぞれのテーブルに連れて行き、カウンセラーたちに挨拶した。子どもたちは慣れているし、もう私が居残る理由はなかった。

ふと見渡すと、パヴェルが他の親と話をしたり、握手をしたりしていた。見つめてはいけないと思いつつ、つい目が向いてしまう。

彼から視線をそらすと、1年目にカヌー乗りに付き合ってくれたトーマスが見えた。私は歩いて行って、話しかけた。あいかわらず彼のハンガリーなまりの英語は聞き取れない。

トーマスと話をしながらも、私の目はパヴェルのほうを向く。これでは、「パヴェルと彼のジャパニーズ・レイディー」はまだ続いていますと表明しているようなものだ。

私は一度もパヴェルと言葉を交わさずに、パビリオンを後にした。

(次回その76に続く)



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愛人ごっこ その76

2009.12.06 (日)


(前回その75の続き)

セッション半ばの週末、パヴェルから電話があった。

「今夜、遊びに来る? せっかく毎日キャンプに行ってるのに、一度も話せなかったわね。」

「今日はこれからみんなで出かけるから、ちょっと時間がないんだ。ただ、あなたの声を聞こうと思って。ぼくはあなたが来るのを毎日ちゃんと見てたよ。トーマスとよく話してたね。」

「そうでもしないと、子どもを預けた後で居残る理由がないでしょ。でも、わたし、彼の英語がよくわからないの。子どもたちはそんなにひどい訛りじゃないって言うけど、私にはさっぱりだわ。まあ、彼も同じかもね。私たち、お互いに言いっぱなしで、会話になってないのよ。それに、トーマスと話していても、私はついあなたを探してしまうもの。」

「残念だけど、キャンプの間は近づかないほうがいいと思う。ぼくは、あなた以外のことでからかわれているんだって、知ってた?」

パヴェルはどうも素朴なところがあるから、みんなに可愛がられるし、ちょっかいを出されるのだ。

「私以外のことって、何?」

「ぼくのグループの子のお母さん。毎朝すごい格好で現れるんだよ。夏だし、キャンプ場だから、カジュアルな格好の人が多いんだけど、その人は胸が見えそうな下着みたいな服なんだ。あれじゃあほとんど裸だって、みんな言ってる。それで、名簿にサインするときなんかもぼくにくっ付いたりして、せまるんだ。

みんなおもしろがって、あの奥さん、パヴェルに気があるんじゃないかって、パヴェルは年上にもてるなあって。ぼくは全然その気がないのに。」

「そんな人がいるの? 見てみたいわ。」

朝のパビリオンは混雑しているし、私は気が付かなかった。私より遅めに来る人かもしれない。

・・・

2週目が始まり、私は子どもたちをいつもより遅く送り届けた。そして、パヴェルのいるテーブルのほうを向き、子どもたちのバックパックの中身を確認するふりをしながら時間をつぶした。

しばらくして、白人の中年女性が現れた。

一目見てすぐ彼女だとわかる。胸元が大きく開いて、スパゲッティ・ストラップが肩からずり落ちそうになっている。あの異様に大きい乳房は本物だろうか。ショートパンツも腿の付け根が見えるくらいに短い。そんなに太ってはいないけれど、だらりとして下品な感じがする。アイシャドウも場違いに濃い。

彼女はしなをつくってパヴェルに近づき、胸が見えるくらいかがみこんでサインをした。他のカウンセラーがニヤニヤして見ている中で、パヴェルはまじめな顔で相手をしていた。彼女は、「じゃあ、また後でねえ。」とお尻を振りながら出て行った。

なあに、あの女? あんたのせいでパヴェルが迷惑してるじゃないの。私は話しかけることも遠慮しているのに、ずうずうしいったら。あの子をたぶらかそうだなんて、やめてちょうだい。

私はいらつき、嫌悪感でいっぱいになった。

そして、次の瞬間にどきっとした。私も去年まであんな風に見られていたのだろうか。子どものカウンセラーに手を出した欲求不満の中年女? 年下の若い男に夢中になって? 人目もはばからず寄り添って?

私はあの女みたいに露出した服は着なかったし、けばけばしい化粧もしなかった。でも、私がいつまでも彼にまとわりついていたのは事実だ。

私がどれだけ彼に惹かれていたか、ちょっと観察眼のある人ならすぐ気が付いただろう。肉体関係ができてからは、いくらよそよそしいふりをしていても、親密さは完全には消せなかったに違いない。

パヴェルに迷惑がかからなければ、私は人にどう思われてもかまわないと思っていた。彼にのぼせ上がっていたときは、周りなんか見えなかった。私もあんな風に見えたのだろうか。

(次回その77に続く)



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愛人ごっこ その77

2009.12.07 (月)


(前回その76の続き)

子どもたちの参加したセッションも残すところ数日となり、私は毎朝彼らを送り届けると、パヴェルを見ないようにして寂しく家に帰った。

ある日のお迎えのとき、なぜかパビリオンの中にはあまり人がおらず、私とパヴェルは見つめ合うような形で立っていた。私たちの間には距離があったが、どちらからともなく微笑がもれた。

彼はすばやく私にウィンクを送った。私を慰めようとしているのがわかった。

一瞬、あの露出狂の白人女性のことが頭をよぎる。でも、私はあんな人とは違う。

そして、とうとう最終日まで私は人前でパヴェルと言葉を交わさなかった。

・・・

子どもたちのキャンプが終わると、私は夫と子どもたちといっしょにカリフォルニアへ行くことになっていた。本当はNYに残りたかったのだが、しばらく会っていなかった義父にぜひ遊びに来るよう言われて、断れなかった。

義父母は、私と夫がゲストルームで寝て、子どもたちはスタディのソファベッドを使うと考えていたらしかった。でも、夫がタイ女とシンガポールで落ち合う画策をして以来、私は夫と同じベッドで寝ていなかったので、ここにきて急にそんなことはできない相談だった。

幸い、子どもたちはまだ小さく、長男は夫と寝たがり、次男は私と寝ると言って、あまり疑われずに済んだ。

もともと愛情表現の極端に少ない私たち夫婦は、あんな修羅場のあとで冷え切ってセックスレスになっても、表向きは以前と変わらなかった。だから、義父母も気がつかなかったと思う。もし疑問に思ったとしても、私たち夫婦の問題に口を挟む人たちではない。

私はカリフォルニアにいても、パヴェルのことを考えた。

この旅行が終わってNYに戻れば、サマーキャンプも最後のセッションを残すだけとなる。そうすれば、パヴェルはキッチンとプールでの仕事に戻るので、もう少し時間の融通が利くようになるだろう。あと何回いっしょに過ごせるだろうか。

彼は私への恩を忘れないといつも言っていた。でも、彼の人生はこれから。彼をしばり付けるつもりはない。3年間もこんなに親密な関係が続いただけで満足すべきなのだ。

・・・

夏も終わりに近づき、パヴェルはキャンプ・カウンセラーの仕事から解放されて、報酬を手にした。

ただし、優遇するという約束は守られなかった。彼はかなり憤慨して、同じく3年目であるトーマスと共にディレクターに掛け合ったが、はぐらかされていた。私は州の労働管轄局にでも訴えたらどうかと提案したが、あと数週間は施設内のキッチンやプールで働くつもりの彼らは弱い立場にあり、騒がずにしばらく待ってみるということだった。

「なんだか騙されたみたいでいやね。でも、カウンセラーを派遣する団体がそう言ったのなら、無視することもできないでしょう。早く解決するといいわね。あなた、子どもたちの学校が始まる前に、家へ遊びに来る?」

「あさってから5日くらいはちょっとだめなんだ。キャンプに来ていたアシュリーっていう女の子の家に行くから。アシュリーのお父さんのミスターSが家に来てくれってオファーしてくれたんだ。」

「どういうこと? ベビーシッターをするわけ? キッチンのほうはどうするの。」

「家族で旅行に行くんだって。留守の間、猫3匹と魚の世話をするだけでいいんだって。ぼくがアメリカの家を独り占めにできるってことだよ。わくわくするなあ。」

「じゃあ、ハウスシッターをするのね。大丈夫?ちゃんとお金をもらえるの?」

「お金の話は出なかった。ぼくもお金をもらえるとは思ってないよ。猫の世話なんて簡単だし、無料で家を貸してもらうようなもんだから。5日間だけは、宿舎じゃなくてその家から自転車でキッチンに通うよ。」

・・・

私は不愉快になった。

その人たちはおそらくレイバーデーの前後に旅行に行くのだ。猫を預けるのも、ペットシッターを雇うのもいやで、人のいいパヴェルにハウスシッターをさせるつもりなのだ。しかも、タダ働きで。

キャンプで知り合っただけのパヴェルによく家を開放できるものだ。でも、パヴェルは信用できると思ったのだろう。そう思わせる何かが彼にはある。

でも、S氏の家は宿舎ほどキャンプに近くない。毎日自転車で往復なんて大変すぎる。もし留守中にS氏の家でトラブルが起きたら、パヴェルに責任をかぶせるつもりじゃないだろうか。カウンセラーの報酬みたいに、後で話が違うなんてことにならないだろうか。

私は心配になってきた。

それ以上に、パヴェルがそんなに楽しそうなのが気に入らなかった。宿舎以外に泊まりたいなら、私の家にくればいいのに。自転車なんかに乗らなくたって、私が送り迎えしてあげるのに。

でも、もう約束をしてしまったのだし、私に引き止める権利はない。それに、パヴェルは明らかに私よりミスターSの誘いを喜んでいた。

(次回その78に続く)



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盗み聞きと告げ口

2009.12.08 (火)


夫のチャットは、木曜日の午後2時から延々と5時間以上も続いていた。

その後も、ほぼ毎日たいてい午後にコソコソやっている。G氏ともよく話しているけれど、そっちは朝が多いし、30秒も聞けばどっちが相手かすぐわかる。

ドア越しには、やはり夫の声しか聞こえない。でも、最初に聞こえたときほど抑えた感じはしない。ヘッドフォンのせいで、自分の声がどれだけ大きいかわからなくなっているのかもしれない。

断片的な情報しか集められないが、だんだん相手の女が見えてきた。

        *

彼女は16歳で高校を中退。いつか学校に戻るつもりでいる。彼女の夫は、半年間スペインに行くことになった。彼女たちは7年間一緒に住んでいるらしい。暴力をふるっていた男は彼女を捨てたのだろうか。出稼ぎか何かで、半年したら戻ってくるのか。

(G氏は各国のエンジニアやコンサルタントを雇っているので、この女ももしかしたら仕事を通して知り合ったのかと思ったが、そうではなさそうだ。高校中退の子ができる仕事ではない。)

カレッジの話もしているが、彼女が勉強したいのはコスメトロジー。ネイルサロンかヘアサロンで働きたいのか。では、大学というより職業学校ではないか。

「学校に戻るにはどうするんだね。アメリカでは GED という、高卒と同じ資格がもらえる制度があるけれど。」

つまり、この女はアメリカにはいない。そして、相当若い。

「学校に戻ったら、費用は政府が出してくれるのか?」

どこの国だろう。都市の名前とか通貨とか、彼女の居場所を特定できる言葉は聞こえてこない。

          *

「どっちにしろ、もう少し規律正しい生活をしないとね。今は、起きたいときに起きて、寝たいときに寝ているわけだろう。」

それでどうやって収入を得ているのだろう。チャットでお金をもらっているのか。

「前に、他のモデルはどうしてもっと上にランクされているか聞いていたね。彼女たちは、ハウスワークをしてるんだ。」

じゃあ、この彼女もモデル? それとも、チャット相手のことをモデルと呼ぶのか。ハウスワークって? よくわからない。なにかのファンタジー?チャット相手の人気ランクがあるのだろうか。

「うちはサテライトじゃなくて、ケーブルだからね。」

しばらく映画の話が続く。セックス・トークでなくて、こんな趣味の話の相手をするサービスがあるのか。もっとも彼女がどんな格好で映っているのかは、わからないが。

「きみのところは、ここより7時間進んでいるはずだ。」

ニューヨークと時差が7時間あるところ。中欧か東欧?

夜7時過ぎ(彼女にとっては朝の2時)になって、夫は彼女に「これから寝るのか。もう寝たほうがいい。寝なさい。」と言いつつ、延々と話し続けている。

いったい誰としゃべっているのか。どこでこの女を探したのか。この女はどこまで真実を語っているのだろうか。彼女は夫に何を期待しているのか。これが「ブルネットのお人形さん」なのだろうか。

          *

セックスレスなのだから、チャットくらいしてもいいではないかと夫は思っているのかもしれない。確かにセックスを強要されるよりよっぽどマシ。でも、こそこそチャットされるのもうっとうしいのだ。

私が次男のテニスレッスンから戻ったとき、夫はわざわざ下りてきて、「今日のロールキャベツは素晴らしくおいしかったよ。テニスはどうだった?」と聞いた。「まったくGとの電話は長いよ。また難しいことを頼まれてしまった。」

ええ、そうでしょうよ。でも、G氏がいつから若い女になったのかしらねぇ。

見え透いた嘘をつく夫は、自分がどれだけマヌケに見えるかわかっていない。

夫はこのチャットについて、精神科医とカウンセラーに正直に話しているのだろうか

たとえば、私が彼らに電話で教えたらどうなる?

ドクターE、うちの夫は毎日どこか外国の若い人妻とチャットをしています。

躁うつ病は薬でコントロールされているようですが、彼がチャットに費やす時間は異常です。夕食にも来ないでチャットを離れないときがあるんです。私は知らん顔していますけど。

夫は、私に隠れて絶対に何かやっています。この3ヶ月で1000ドルは送金しているはずですが、相手はどこの誰かわかりません。この女性ではないかもしれません。私は夫の側のチャットをたまに盗み聞きするだけですから。何時間もドアに張り付いてるわけじゃありません。もちろん、夫は私が知っているなんて、夢にも思っていないでしょうね。

ところで、私たちがもう何年もセックスレスなのは、夫から聞いていらっしゃいますか。


医者やカウンセラーには守秘義務があるから、私には何も明かさないと思う。それを承知の上で、告げ口したくなる。

夫がカウンセリング・セッションで洗いざらい打ち明けているなんて、私はこれっぽちも信じていない。


<今日の英語>

The clock is ticking.
刻一刻と時間が過ぎていきます。


郊外の老齢人口が急速に増えているのを受けて、シニアセンターの充実を図っている町の担当者の一言。「あと2年足らずで、ベビーブーマーが大量に引退し始めます。2030年には、老人が7200万人に達するでしょう。2000年の2倍です。シニア対策に早く取り掛からないと、時間はどんどん過ぎていくばかりです。」 直訳は、時計がチクタクいっている。



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実害がなければ

2009.12.09 (水)


夫は休職中だが、給料の半分はずっと支給されている。健康保険も以前と同じように使える。

夫が職場復帰したときにポジションがない場合は、退職せざるをえない。でも、大企業で長く勤めただけあって、それなりに退職金がもらえる。G氏のスタートアップが順調に行けば、夫もいずれ正式に社員として招かれる可能性が高い。

うちの生活は、やはり夫の稼ぎで成り立っているのである。

夫には毎月の小遣いというものがない。

もちろんクレジットカードで好きに買い物はできる。でも、私がクレジットカードの明細を見て、支払いをする担当なので、夫は100ドル以上のものを買うときは事前に了解を取る。別にそうしてくれと頼んだことはないが、ケチな私を怒らせないように、夫が先手を打つのである。

現金も私が管理している。

ふだんの支払いはほとんどクレジッドカードなので、現金を使うことは稀だが、たとえば夫が子どもたちを映画に連れて行くときなどに100ドル渡す。あるいは夫が少し現金をくれというときにやはり100ドル渡す。

1ドル100円としても1万円。そんなものか。

夫が買うのは本。たまにコンピュータ関連の備品。でもたいした額ではないので、私はあまりうるさく言わない。

今年になって、クレジットカードの明細にヨーロッパの支払い代行会社への支払いが現れるようになった。30ドルあるいは50ドル単位だが、連日支払いが発生したりして、おそらく1000ドルは超えている。10万円も、私に言えない怪しげなことに支払っているのだ。

そんなお金があれば貯金または投資したいと思っている私は、夫が稼いだお金なのに、ムッとする。

        *

チャットが有料だとしても、ギャンブルで6ヵ月分の給料をすったという破滅的なレベルではない。一般的にはお小遣いの範疇かもしれない。

夫がチャットをしたからといって、別に実害はないのである。この場合の実害とは、今の平穏な暮らしを脅かすという意味だ。

夕食が冷めても、それは夫が食べるのだし、だいたい昔から食事よりテレビやコンピュータ優先だった。今さら驚くことはない。

チャットのおかげで夫の精神が均衡状態を保っているとしたら、見過ごすべきか。見境なく送金したり、出張にかこつけて会ったりするなら話は違うが、まだそんな深刻な状況ではない。

セックスの代用としてのチャットなのだろうか。

仕事でパニック・アタックを起こしてから、以前の同僚とも疎遠になり、もともと交友関係がほとんどなかった夫は、若い女とのチャットで気を紛らわしているのだろうか。

        *

出会い系サイトが巨大産業として蔓延っている事実からして、こんなことをしている男は(女も?)他にいくらでもいそうだ。うちの夫は、その中の一人に過ぎない。

かわいそうに、若い奥さんを苦しめている男もいるんだろう。

20年前に結婚したとき、こんな日が来ることは夢想だにしていなかった。でも、それほど驚くことでもないような気もする。そして、実害がなければ別にいいではないかと考える。

この程度で、浮気しただの別居するだの離婚だのと騒ぐような段階は、私はとうに過ぎてしまった。

不快感を除けば、呆れているだけなのだ。

そして、タイガー・ウッズの泥沼スキャンダル報道を聞いて、「まったく、どいつもこいつもバッカじゃないの?」と思う。


<今日の英語>

Nothing could be further from the truth.
まるで見当違いです。


第二次世界大戦で行方不明だった父親の遺体がようやく見つかり、公式なセレモニーに出席したある病院関係者。フルタイム勤務ではなかったため、忌引が適用されず、その日は無給となった。労働組合に訴えられた病院のスポークスマンが「彼には忌引手当てを与えるつもりです。私たちはどの従業員に対しても思いやりを持って接しています。病院が従業員をないがしろにしているなんて、見当はずれもいいところですよ。」 

直訳: 真実からもっと遠いことは何もない。



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ルーマニア娘

2009.12.09 (水)


夫は早めの夕食もそこそこに、自室へ駆け上がって行った。

「いまGをつかまえないと、明日の朝まで連絡が付かないから。しばらく電話にかかりっきりになるよ。」

どうしていちいち言い訳をするのだろうか。男は嘘が下手だと思う。隠し事があるときに限って、饒舌になるのだ。

私が台所を片付けて2階に上がってみると、夫の部屋からヒソヒソと声がする。

「コンシェルジュに頼んでみたのか。」

彼女は夫ではない男に会いに行くと言っていたから、ホテルにでも泊まっているのだろうか。そこからなぜか英語の発音の話になった。

「英語とルーマニア語の発音について、ちょっと調べてみたんだがね。」

夫は確かに Romanian と言った。時差もニューヨークより7時間先でピッタリだ。なるほど、ルーマニアの女の子か。

おそらく時間を示し合わせて、スカイプ・チャットをしているに違いない。それにしても、こちらの夜7時はルーマニアの午前2時。まともな生活をしている娘ではなさそうだ。

        *

そのあと2回ほど夫の部屋のドアまで行ったが、夫はロシア風の英語の発音をまねしてみたり、彼女に英文を読ませて発音の間違いを指摘したりしていた。だんだん声が大きくなる。そして、気が付いたのか、また急に声を落としたりする。

次男は耳がいいから、隣の部屋にいればきっと筒抜けだ。子どもたちは、父親がほとんどいつもドアに鍵をかけているのをどう思っているのだろう。

夫はすでに1時間以上もルーマニア娘と話している。

せっかく私が知らん顔をしていてあげるのに、電話が終わればまた見え透いた嘘を言うに違いない。あるいは、ぜんぜん関係のない経済ニュースを脈絡もなく持ち出す。

その娘も、よく初老の男のくどい話に何時間も付き合うものだ。やっぱりあのお金は彼女に送金されたのだろうか。

          *

相手の国籍はわかったけれど、どういう関係なのかはいまだに想像の域を出ない。うさんくさいことだけは確かである。

そういえば、次男の友だちのお母さんはルーマニア人だったっけ。白々しく話題にしてみたらおもしろそうじゃないの。

「ダニーのお母さんって、変わったアクセントなのよ。ルーマニアからいらしたんですって。ルーマニアの女性って特徴のある顔立ちじゃない? ナディア・コマネチみたいな。共産国でなくなっても、学費なんかタダなのかしらね。でも、sex trafficking のターゲットになる若い娘も多いみたいで、悲惨よね。」



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今年最初の Snow Day

2009.12.10 (木)


朝6時過ぎに電話が鳴った。Caller ID には学校区の名前が出ていた。コンピュータによる一斉連絡である。

グッド・モーニング!こちらはB学校区です。雪のため、本日は休校です。

うちの現地校には電話連絡網はない。昔はローカル・ラジオを聞くか、学校へ電話しないと確認できなかった。今はウェブサイトもあるし、便利になったものだ。

天気予報で昨夜から今朝にかけて積雪があると言っていたが、なぜかたいしたことはないだろうと思っていた。でも、一夜明けたら、4~5インチ(約10~12センチ)も積もっていた。

12月になったばかりだというのに、さっそく Snow Day である

それほど雪が深い地域ではないが、学校のカレンダーは4日間の休校日を見込んでいる。積雪はたいしたことがなくても、道路が凍結してスクールバスが坂道を登れないなんて日もあるのだ。

降雪が多くても、朝早く降り止んで除雪車が出れば、通学できる日もある。そうすると、学校は1時間あるいは2時間遅れの始業となり、スノウ・デーは適用されない。

見込みより休校が少なければ、使わなかったスノウ・デーは春先の特別休日になる(なんで勉強させないのか?)。逆に、見込みより多ければ、春休みなどから足らない分だけ返上して登校日となる。

これまでの休校データから4日という数字を割り出したのだろう。子どもが学校に上がったときは、たった4日で大丈夫だろうかと思ったが、これが毎年まことにうまくいくのである。

        *

ブリザードの予報ならともかく、この程度なら翌日はどうなるかはっきりしない。だから、子どもたちも私もとりあえず学校があるという前提で寝る。

学校からの電話で休校とわかると、私は子どもたちを起こさないし、休校であることも教えない。たいてい7時30分ごろになって「遅刻だー!」と飛び出してくるのを待つ。

13歳と15歳なのに、まともに朝起きたためしはないのである。自分から起きようという努力がまったく感じられない。どこかで子育てを間違ったと思うのは、こういうときだ。

「ぼくの目覚まし時計、壊れてるんだもん。」
「じゃあ、携帯か子機のアラームをセットすればいいじゃない。」

「昨日は空手で(テニスで、勉強で、ジムで…)疲れてたの。」
「じゃあ、へんなTVドラマなんか見てないで、早く寝ればよかったじゃない。」

「ぼくは5時に起きたんだよ。でも、また寝ちゃったんだってば。」
「そんなの起きたことにならないわよ。」

言い訳ばかりである。

農場で育ったグランパは、登校前に姉と2人で鶏小屋で卵を集め、牛や豚に餌をやったというのに。しかも、スクールバスはなかったから、学校まで歩いたし、電卓なんか使わずに算数をやり、ついには物理の博士号を取ったのだ。

そういう年代から見ると、今の子どもたちはどうなのだろう。

物質的な豊かさはあるけれど、世代を追うごとに何かが欠落していくような気がするのはなぜか。このぐうたらな私から見てもそうなのだ。

いくら仮想世界のゲームで勝ったって、次男はたとえば鼻血がちょっと出るとパニックで泣いて大騒ぎする。あれだけ機関銃で敵を殺しておいて、あきれる。

        *

Snow Day は突然振ってわいたお休み。宿題は昨日のうちにやってある。いつもの通り、私は家事をさぼり、夫は電話中。

結局、全員がそれぞれのパソコンで無為な時間を過ごすことになる。うちだけではない証拠に、次男の仲良しグループは全員朝からネット上で集合しているのだ。

「パソコンがないときは、ボードゲームをしたり、本を読んだり、お話をしたりしたのよねえ。世の中便利になったけど、昔の人のほうが濃い時間を過ごしていた気がするんだけど、どう思う?

ゲームとDVDに没頭している子どもたちは返事をしない。そして、私はブログを書く。


<今日の英語>

He must do a complete about-face.
彼は180度の転換をしなくてはなりません。


連日テレビでジョークの種にされているタイガー・ウッズ。マーケティングの専門家は、「イメージを救済したいならば、従来の無敵で完璧なキャラクターを捨てることだ。180度の転換をするしかない。」とアドバイス。About-face は軍隊などで顔を180度反対の方向へ変えろという命令(つまり、回れ右)。



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午前4時半の攻防

2009.12.11 (金)


私は朝型なので、朝起きるのは苦ではない。その分、夜寝るのも早い。だいたい夕食の片づけが終わったら、時間にかかわらず、寝る態勢に入る。

うちには猫が2匹いるが、どちらも私の部屋で寝る。夜だけでなく、昼寝にもきちんと付き合う。妹猫は私のベッドと猫ベッドの半々だが、兄猫はたいてい私といっしょに寝る。

前の猫(夫が結婚前から飼っていた)も私と寝ることが多く、重いし暑いしで、私はたびたび寝不足になった。それで、こんど猫を飼うときは、猫ベッドで寝るようにしつけようと決心した。

確かに子猫のときは、兄妹いっしょに猫ベッドで重なって寝てくれた。

よしよしと思っていたが、大きくなるにつれて2匹の間に距離ができ始めた。1歳ごろには、もう絶対にくっつかなくなった。たまたま近くにいると、なめあったり匂いをかいだりするが、まるで通行人同士みたいな態度である。

一人で遊んだり外を眺めたりできる妹猫はともかく、兄猫はやたら私にかまってもらいたがる。無視すると、カーペットを引っかいたり、カタログの山を崩したり、本棚のガラスドアをバンバン叩いたりする。

しかも、横目で私を見ながら。

悪いことをしているという自覚はあるようだが、そうすれば私の気を引けるということも、あの小さな脳みそがちゃんと知っている
。かくして、私は本を読みながら、片手でヒモを揺らしたりするのである。

前の猫みたいに1匹では寂しかろうと2匹いっしょにもらったのに、いっしょに遊ばないなんて、まったく当てが外れた。

        *

前の猫が朝ごはんの催促でうるさかったので、今度はそれも最初からしつけようと思っていた。いくら朝型でも毎朝4時台に起こされてはたまらない。

猫が騒いでも完全無視、私が起きる時間イコール朝食の時間だと植えつけようとした。

子猫のときはそれでうまくいった。

小さい猫が走り回っても、それほどうるさくなかったし、辛抱強く待ってくれた。空腹より好奇心だったのか。ちょっと興味のあるものがあれば、それで気が紛れたのかもしれない。まだ知恵がついてなかったらしく、部屋のものを引っかいて音を立てることもなかった。

ほら、猫だってトレーニングできるじゃないの。いい子たちじゃない?」と私は思うように動いてくれない人間の子どもたちに自慢した。

しかし、それは錯覚であった。

いつ頃からか定かではないが、私は毎朝、兄猫とむなしい戦いをしている。妹はいい子なので、よっぽどお腹がすいていない限りはじっと待っている(愚かな兄に悪役をさせているのか?)。

4時過ぎ、がさがさと紙を蹴散らす音がする。最初はかすかなのだが、私が起きないと見るや、猫も大胆になって、バッサバッサやり始める。私は朦朧とした頭で、「あそこには何が置いてあったっけ。」と考え、無駄と知りつつ、「コラッ!」と一喝する。

兄猫は反応があったので、しばらくおとなしくなる。でも、私が起きないのを見て、今度は本棚のガラスドアをドラムスにする。立ち上がって両手でたたくらしく、なんだかリズムがあって、それもしゃくにさわるのだ。「これはバックグラウンド・ミュージック。」と思い込もうとするが、だんだんイライラして、音のするほうへ枕を投げる。

兄猫はまたしばらく静かにするが、私が起きないので、もう一度紙類に戻る。カタログでも本でも手当たりしだいになる。「無視、無視。」とがんばってみるが、あの不快な音は耐えられない。

結局、起きて階下へ行き、ドライフードをあげるはめになる。

悪しき前例を作るのが一番だめなのだが、猫はしっかり学習してしまった。そして、兄猫は連戦連勝。私が勝つことはめったにない。よっぽど疲れているときくらいか。

          *

まあ猫だってお腹がすけばしょうがないわよと思いつつ、またベッドにもぐりこむ。もう一度眠ろうと思っていると、兄猫が戻ってくる。そして、またバッサバッサ、ドンドンを始める。

ご飯あげたでしょっ!」と叫んでみるが、猫は止めない。私の上に飛び乗ったりもする。つかまえておとなしくさせても、ひらりと逃げて、また音を立て始める。

あんたの勝ちよ。起きりゃいいんでしょ。」と捨て台詞を吐いて、しかたなく起きる。いくら早起きでも4時半は早すぎる。その分、昼寝をすればいいのだが、こういう起き方は気分が悪い。

前夜の缶詰を遅くしたり、量を増やしたり、ドライフードを出しておいたり、寝る前に運動させたり、いろいろ試みたが、だめだった。

一度だけ地下室に閉じ込めたこともあるが、猫トイレが置いてあるので、妹猫もいっしょに閉じ込めねばならず、(妹が)かわいそうでやめた。

どうも兄猫は、空腹を満たすことだけが目的ではないようだ。餌係が目を開けて活動するまで起こし続けなくてはならないとインプットされているらしい子どもが餌をやっても、夫が起きていても関係ない。

別に動き回らなくても、ベッドでパソコンを開いてニュースを読むだけでもいいのだ。そうすると、兄猫はとたんに興味をなくし、階下に行ったり、部屋の隅っこで毛づくろいしたりする。

ちょっとちょっと、今までの騒ぎはいったい何よ?

          *

どうにも腹が立つ日は、気持ちよく寝そべっている兄猫の昼寝を邪魔する。「起きて、起きて。」と揺さぶり、目の前でひもを動かす。猫は迷惑そうな顔をしてうっすら目を開ける。

ほーら、いやでしょ。あんたが毎朝わたしにやってるのは、これと同じことなのよ。お互いにいやなことは止めましょう。」と口説いてみるが、猫にわかるはずもない。でも、無駄だと思いつつも、たまにはそうやって鬱憤を晴らしたくなるのだ。

そして、もう二度とオス猫は飼わないぞと決心する。


<今日の英語>

It's really hard to walk away from it.
それに背を向けることは本当に難しい。


ステロイドの常用は腎臓によくないとわかっていても、ボディビルディングを止められない男性の一言。「こんなことは40歳くらいまでしかできないと思うと、今やれるだけやっておきたい。だから、トレーニングやコンテストから離れるのはつらい。」



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愛人ごっこ その78

2009.12.12 (土)


(前回その77の続き)

5日間のハウスシッターを引き受けたパヴェルは、その間うちに来ることができなかった。

子どもたちはがっかりしたが、彼はアメリカの大きい家を独り占めできる機会を満喫しているのだろう。それほど大きな家ではないと言っていたが、S氏は投資コンサルタントで自宅にオフィスを持っており、奥さんもどこかで働いているらしかった。

ある日、大雨の予報があった。私は、S氏の家からキャンプ施設まで送り迎えをすることをパヴェルに申し出た。自転車では危なすぎるし、ちゃちな雨具しか持っていない彼はずぶぬれになってしまう。

「何時に行けばいいの?」

「朝は6時。夕方のシフトは早めに終わらせてもらうから、やっぱり6時かな。あなたに迷惑をかけるつもりじゃなかったけど、明日だけ送ってくれると助かるよ。」

「迷惑じゃないわよ。気にしないで。事故でも起きたらそれこそ大変だもの。」

そういうことを考えないで気安く彼を利用したS氏はなんて無責任な、と私は内心あきれた。

・・・

前にパヴェルからだいたいの場所を聞いていたが、改めて地図で見てみた。

裏通りから細い坂道があって、そこを降りていくと、数軒の家がぽつんと建っていた。うちのような新興住宅地ではなく、かなり昔からあるような所だった。坂道は舗装もしておらず、車がすれ違えないくらい細く、雨の中の運転は緊張した。

私が朝早く行くと、パヴェルは玄関で待っていた。

「おはよう。お迎えありがとう。すごい雨だね。」

「あの坂道、怖いわね。今日は自転車じゃとても無理よ。」

他人の家に泊まったパヴェルを迎えに行くのは、ちょっと不思議な感覚だった。彼は、地下室のゲストルームで寝ているのだと言った。

「ジョンがね、ミスターSのことだけど、自分の家だと思ってくれって。あなたの家より小さいけど、居心地はわりといいんだよ。」

彼をキッチンに送り届け、後でお迎えに来ることを約束した。それまでには雨は止むと思われたが、自転車はS氏の家にあったし、徒歩では遠すぎる。そして、私は彼と会える。

夕方になって私が出かけようとすると、子どもたちもいっしょに行くと騒いだ。

「パヴェルはここには来ないの。私がキッチンまで迎えに行って、そのまま今泊まっているお家に連れて行くんだから。」

「わかってる。でも、パヴェルに会いたいもん。それに、そこの猫が見たいよ。」

しかたなく子どもたちを連れて行った。もう雨は止んでいた。

いつもの駐車場に停めてしばらくすると、パヴェルがやって来た。

「わーい、パヴェルだ!」

「あれ、みんな来たの?」

「うん。ぼく、パヴェルの家が見たい。猫も。」

・・・

S氏の家に付くと、白黒のぶち猫が1匹玄関にいた。

「ロッキー! 遅くなってごめん。あれだけは朝外に出して、夜家に入れてあげることになってるんだ。他の2匹は出て行かない。」

私は家の中に入るのに気が引けたが、子どもたちがパヴェルに付いて行ったので、私もあとを追った。

外観より中のほうがきれいだった。片付いたキッチンには大きな冷蔵庫があって、留守中の注意事項をびっしり書いた紙が2枚張ってあった。

まあ、タダでハウスシッターをさせておいて、奥さんの注文の多いこと。自分の家と思ってというご主人と、ずいぶん違うじゃないの。

猫の餌はこれを何カップ、魚にはこれ、友だちを連れてきたりパーティをしたりしないこと、冷蔵庫にあるものは食べていいがあれとこれは補充すること、郵便物はこうする、ゴミはこうする、これとあれには触らない、この部屋には入らない…。

ハウスシッターなんて雇ったことがない私は驚いたが、あとでもめないためには当然なのかもしれない。もしロッキーが家を出たまま帰ってこなかったらどうするんだろう。

家の中に居る猫は臆病で、一瞬姿を見せただけですぐに逃げてしまった。でもロッキーは人懐こく、撫ぜていた子どもたちは外猫特有の筋肉質の体に歓声を上げた。私は、ここはよその家なんだから何にも触らないようにとうるさく言いつけたが、パヴェルはそんなに心配しなくて大丈夫だよと笑って、楽しげに私たちを地下室へ案内した。

内装された地下は明るく、パヴェルの言うとおり、S氏のオフィスやテレビルーム、ゲストルームがあり、居心地のよさそうなところだった。

うちなんかよりよっぽど素敵だ。それに、S氏と奥さんはうちみたいな仮面夫婦ではないようだ。

パヴェルは私と寝ていながら、夫の前では礼儀正しく振舞っているが、気詰まりになることもあるにちがいない。この5日間は、アメリカに住むというファンタジーを罪悪感なしで味わっていたのだろう。

ここは、真っ当な夫婦が住んでいる幸運な家なのだ。

(次回その79に続く)



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愛人ごっこ その79

2009.12.13 (日)


(前回その78の続き)

レイバー・デーが終わり、学校が始まって、また私は一人になった。

でも、なぜかパヴェルを呼ぶのにためらう日が続いた。S氏だけでなく、キッチンやプールのスタッフとも親しくなった彼は、バーベキュー・パーティやらアウトドア・スポーツやらの誘いを受けるようになっていた。私はそんなことは提供できない。ここに来てもつまらないのではないかと思った。

子どもと遊んでやり、夫の長いおしゃべりや映画に付き合ってやり、私との関係を悟られないように振舞う。その代わり、誰もいない昼間に来れば私とセックスできる。そんなことが唯一のメリットなのか。

S氏が旅行から戻ってしばらくしてから、パヴェルは「ちょっと話をしよう。」とS氏に招かれた。私はハウスシッターの件で変な言いがかりをつけられるのではないかと心配したのだが、感謝の意を表すためにカクテルが用意してあっただけだった。結局5日間の仕事で1ドルももらえなかった。

東欧出身の人のいい彼をアメリカ人夫婦が利用したのだ、と私は苦々しく思った。でも、彼はいい取引だと満足していたので、私は黙っていた。

彼はお金を貯めるのが第一の目的だったけれど、もう二度とないだろうアメリカ長期滞在を目いっぱい楽しもうとしていた。実際、3度目ともなると、それなりに知己が増えて、私よりも交際範囲が広かったかもしれない。なんといっても、彼はまだ若くて独り身で自由だったし、新しい経験に貪欲だった。

・・・

もう数週間でドイツに戻るというある日、パヴェルから電話があった。私たちはしばらく会っていなかった。

「明日、あなたのところに行ってもいい?」

「いいわよ。何時?」

彼は午後の早い時間、つまり家には私しかいない時間を指定してきた。もう何回こうやって彼を迎えに行っただろう。

次の日、いつもの駐車場に車を乗り入れた私は、彼に会えてうれしい反面、どこか醒めていた。

惨めでもない、悲しいのでも悔しいのでもない。ただ何か小さなわだかまりがあった。私はもともと自分に自信がなかったところへ強度の欝を患い、その後の夫の仕打ちにもカウンセリングと投薬で持ち直したはずだったが、再び不安定になりつつあるのに気付いていた。

パヴェルは車窓を軽くノックすると、助手席に座った。もう後ろの席に隠れるような真似はしなかった。

「お迎えありがとう。久しぶりだね。」

「あなた忙しそうで、呼ぶのにちょっと気が引けたわ。」

「そんな風に考えないで。ぼくはいつでもあなたに会いたいんだから。」

それは本心だろうと私は思った。私が勝手に引け目を感じているだけで、彼は以前と同じなのだ。

静まり返った家に入った私たちは、もはやすっかり慣れた手順でベッドルームのある2階へ上がって行った。

(次回その80に続く)



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愛人ごっこ その80

2009.12.14 (月)


(前回その79の続き)

私たちはほとんど何もしゃべらずに抱き合った。

パヴェルの手のせっかちな動きや呼吸で、彼が急いているのが伝わってきた。久しぶりなのだから、若い彼には我慢できないのだとわかっていたが、それでも、私が彼を受け入れられる状態になるまで待たせることにした。

あれは、夫がタイの女におぼれる前だったか、私が彼に疑惑を持ち始めた頃だったか。

私たち夫婦の間がかなり険悪な状態だったとき、夫が無理に私に押し入ったことがあった。ノーと拒否することもできたのに、情緒不安定だった私は言い争う気力もなく、早く終わらせたいとだけ考えていたのだ。

ちょうと翌週に産婦人科の定期健診があったのだが、私を診察した女医は「あなた、これは痛いでしょう。裂けていますよ。」と問い詰めるように私を見た。レイプではないかと疑っているようだった。

確かに痛みはあったけれど、我慢できないほどでもなく、医者に指摘されるまでそんなにひどいとは思わなかった。

私は、夫婦間でもレイプがありうるという知識は持っていたが、私は夫が待ちきれなかっただけだと説明した。

女医は、「2週間は何も入れてはいけません。裂傷は自然に治ると思いますが、これからはご主人にはあなたがオーケーするまでさせないように。もし痛みが取れなかったら、またいらっしゃい。」と同情に満ちた目を向けた。

・・・

そんなことがあってから、私は少し神経質になった。もっとも、夫とはまもなくセックスレスになったので、そういう心配もなくなったのだが。

私とパヴェルはそれほどセックスの相性がいいとも言えなかった。でも、私は彼の体に惹かれていたし、彼はこんなに年上の私を相手にしていながら、途中でだめになったことは一度もなく、いつも最後まで進んだ。

性交は彼のためにあり、キスや愛撫や囁きは私のためにあった。

彼は激しく動き、久しぶりのセックスに満足したようだったが、心の中にいろいろ抱えていた私は楽しめなかった。

せめて余韻を味わおうと、体を重ねたまま、彼にしばらく動かないように言った。そして、彼の滑らかな体に絡みつき、顔を押し当てて、これまでの肌恋しさを埋めようとした。

・・・

「なんだか寂しそうだね。何かあったの?」

「何も。ただ、あなたがもうすぐいなくなるなと思って。3年も来てくれたのに、とんでもないわがままを言ってるわね。」

「ぼくも残念だけど、来年は無理だなあ。でも、またいつか来るよ。それとも、あなたがドイツに遊びに来る? 子どもたちもご主人もいっしょに。そしたら、ぼくがどこにでも行きたいところに案内するよ。」

「もし行くなら、私は一人で行きたいわ。あなたを独り占めできるように。でも、あなたに恋人がいたら、そんなことできないわね。」

それから、また私たちは彼にはどういう女の子がいいか、あれこれ空想した。

その娘が私とパヴェルの本当の関係を知ったら、さぞかし驚くだろう。もちろん私たちの秘密は明かさないけれど、勘のいい娘なら気がつくかもしれない。

「あなたも、私みたいなおかしな女と関わりになってしまったわね。私だけじゃなくて、夫も変だし、孤立してるし、この家は普通じゃないでしょ。外から見ただけじゃわからないけど、めちゃくちゃだわ。ここがもっと普通のまともなアメリカ人の家ならよかったのに。」

「そんなことを考えてたの? うーん、確かにぼくとあなたがこんなに親密な時間を過ごせるのは不思議だし、普通じゃないだろうね。しかも、ぼくはご主人にも会っているし、彼とも友だちだと思ってるし。でも、ぼくはあなたのところが好きだよ。それに、誰に強制されたわけでもなくて、ぼくが選んだことだから、あなたがよその人たちと比べて気にすることはないんだ。」

彼は私にもう一度キスをすると、ベッドから下りてシャワールームへ向かった。

そうして、子どもたちや夫が帰るまでに、私とパヴェルは「よき友人」の役に戻るのだ。

(次回その81に続く)



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black ice の恐怖

2009.12.15 (火)


次男は今日もプレイデートのお誘いがあり、午後1時にダニーの家に集合することになっていた。

先週の雪は芝生の上に積もっていたが、道路では昨日までにすっかり溶けていた。夜間気温は低かったけれど、まだ12月の初め。それほど厳しくない。

今朝も猫に早く起こされた私は、11時ごろから昼寝をしていた。12時半になって次男に起こされ、慌てて支度を始めた。キッチンから裏庭に面したデッキを見ると、雨がしとしと降っていた。

こういう日は出かけたくないのよねえ。

「ジョーもニックも来るんだよ。お母さん、出かけたくないのはいつもじゃない。」

「6時なんて真っ暗で運転できないわよ。うちは5時にお迎えだから、ダニーのお母さんにそう言ってよ。」

私は目が悪いので、夜の運転が苦手である。ただでさえ運転が下手で方向音痴なのに、暗いとなると、視力よりは勘で運転しなくてはならない。次男もそれは知っているので、5時で合意した。

        *

「雪じゃなくて雨ということは、それほど気温が低くないってことよね。雪だったら絶対出ないわよ。」

助手席に座った次男は、勝手にCDを替えている。うちから通りに出るまでには、坂道を下って行かねばならない。しかも、途中で大きくカーブしている。

まっすぐで平らなところでは何事もなく、私はいつものスピードで運転した。左に曲がって坂道を下りていく。雨は弱かったが、ワイパーを動かしてもフロントガラスがきれいにならない。洗車に行かなくちゃなあと考えていると、とつぜん車がクネクネし始めた。

本能的にブレーキを踏んで、ハンドルをスピンと逆方向に回してしまう。たぶん一番やってはいけないことだと思う。

車はあっちこっちに向きながら何十メートルも進む。ブレーキががくんがくんする。雪のない道路でしかも雨が降っていることに惑わされたが、道路はツルツルに凍っていたらしい。薄くて透明な、これが black ice である。

そのカーブは、引っ越した最初の冬に2回も360度スピンして、あわや岩に激突するかと思いきや、よその家の庭に乗り入れたところだった。

今回は左右に45度くらいずつ何度かジグザグになっただけだが、それでも車をコントロールできない恐怖感は同じ。心臓が口から飛び出しそうになる。おしゃべりな次男も無口になった。

「ひゃあ、危なかった。車の出入りが少ないからかなあ。」と、まだ道路の全面凍結に気が付かなかった鈍い私。ところどころ氷のパッチができていただけだと思っていた。

なんとか坂道の一番下まで行き、裏通り(といっても田舎なので、狭い2車線のカントリーロード。朝夕以外、交通量はとても少ない)へ出ようと、ストップサインで一旦停止。左折しようと左右を確認すると、ここも坂道で、左側から下りてくる車がハザードランプをつけて、のろのろ進んでくる。

なんだろう、故障車かなと思いつつ、左折した。そして、私はやっと気が付いた。通りも凍っているのだ。どうりで住宅地の中では誰ともすれ違わなかったわけだ。こんな日に運転する馬鹿はいない。さっきの車もほとんど歩くくらいのスピードで坂を下りてきたはずだ。

私はパニック状態になって、次男に引き返すことを宣言した。

幸い、ほんの少し先にUターンできる脇道があった。そして、さっきの車と同じくハザードランプをつけて、一番低いギアでのろのろと今来たばかりの坂道を下りて、右折し、同じく凍っていた坂道を上る。あまり遅いと上れないが、スピードを出すのも怖い。

ほんの3分くらいなのにクタクタになった。心臓はばくばく。冷や汗ものである。

          *

ここには15年も住んでいるのに、毎年同じようなことをやってしまう。冬の初めに、必ず1回はスピンの洗礼を受けるのだ。そして、春が来るところっと忘れる。ぜんぜん学習しない。

この地域で生まれ育った人ならともかく、大人になって移住した私は、ぱっと雪氷モードに切り替えられないらしい。

私が怖いのは、雪ではなくて氷である。スピンとスキッドは本当に心臓によくない。車が私の意図しない方向へ動く恐ろしさと無力感。

ローカルニュースのサイトを見たら、この辺一帯に警報が発令されていた。あちこちで動けなくなった車があり、しかも、私が通る予定だった通りでは死亡事故まで起きていたのだ。ようやく砂を撒くトラックがやってきた。

「ダニーに、道路がアイススケート・リンクみたいだから出かけられないって電話しなさい。」

「電話? 電話じゃなくて、steam で話すよ。」

そうだった。次男はほとんど電話なんか使わない。インスタント・メッセージの世代なのだった。

「ジョーもニックも来なかったって。」

そう言って、オンラインで集まってゲームとチャットをしている彼ら。顔合わせでも同じことやるんでしょ。じゃあ、最初から出かけなくてもよかったじゃないの? あー、やだやだ。


<今日の英語>

The roads were a mess.
道路はめちゃくちゃな有り様でした。


パトロールに出た巡査部長の一言。



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おかゆダイエット、刑務所ダイエット?

2009.12.16 (水)


朝日新聞に、「肥満受刑者『おかゆ減量』強制は人権侵害 弁護士会勧告」という記事が出ていた。

ふだんノホホンと暮らしていて人権問題に縁のない私は、50歳の男性服役者が70キロから55キロまで減量したと読んで、単純にうらやましいと思った。

もちろんおかゆだけが減量の理由ではないだろうが、こんな話を聞けば、おかゆダイエットは効果あり!とやる気になるではないか。

でも、1年4ヶ月も毎日おかゆは厳しいな。たまには普通に炊いた白米を食べたい。そういう選択のないところが人権侵害のベースになるのか。

犯罪者にも人権はあってしかるべきだが、減量できて、おそらく高血圧も解消できて、私だったらありがたいと感謝こそすれ、弁護士会に申し立てする気はない。シャバに戻ったとき、前より健康体で痩せてるなんて嬉しい。

刑務所は規則正しい生活らしいので、勝手に甘いものを食べることもなく、適度な肉体労働もあって、究極の健康生活という気がする。そういえば、インサイダー取引で逮捕されたマーサ・スチュワートもすっきりやせて出所した。

そうは言っても、「痩せたいので、しばらく刑務所に置いてください。」と頼むわけにもいかない。意志の弱い人たちのための刑務所ダイエットなんてないだろうか。

まず、私のだらけた生活を刑務所モードに切り替える必要がある。30分刻みのスケジュールを立て、それに従う。誰かが見張ってないとだめだな。たとえば、私の生活を監視するロボットもつけてもらう。

刑務所におやつの時間はないかもしれないが、うちの刑務所では特別に許可してもらおう。その分、労働時間を増やしてカロリー消費に努める。

       *

アメリカ人は、感謝祭から新年までの数週間で7~10ポンド(3~4.5キロ)太るとよく言われる。いわゆる holiday weight gain である。もっとも、最近の調査では1~2ポンド(0.45~0.9キロ)程度らしい。

ただし、この増量分は、1年経っても減らない場合が多いという。つまり、毎年1~2ポンドずつ確実に増えていく計算になる。これは恐い。

ホリデー特有のこってり料理にバターと砂糖たっぷりのお菓子。それを大量に食べる。しかも冬だから、動かない。そうして1月1日には「今年こそ痩せるぞ。」と誓う。その繰り返し。

もっとも、私は新年の誓いを立てるなんて無駄なことはしない。どうせ三日坊主になることがわかっているし、人間変わるときには誓いの有無に関係なく変わると思っているから。

困ったことに、体重に関しては、周りのアメリカ人が私よりかなり早いスピードで太っていくので、あら、それほど心配しなくてもいいんじゃない?と錯覚してしまう。そして、日本人に会ったり、日本に帰ったりすると、慌てるのだ。

        *

おかゆダイエットはかなり前からあったらしく、検索したらたくさん出てきた。

1人前の普通のごはんが約250kcalなのに対して、おかゆなら約150kcalだという(それぞれ200、100と表示してあるものもあった)。単純に摂取カロリーは抑えられるが、うちは毎食ごはんではない。夫や子どもたちがパスタやパンを食べているかたわらで、私だけおかゆ? カレーライスだったらどうする?

これはなかなか厳しい。

この場合のおかゆとは、米だけだろうか。えびとか卵とか入れてもいいのだろうか。どの程度の薄さなら効果があるのか。あんまり栄養たっぷりのおかゆではダイエットにならないかもしれない。

刑務所では、おかずは普通に食べさせたらしい。そりゃそうだろう。肥満の服役者にだけ特別メニューなんて、税金の無駄遣いもいいとこだ。

でも、これから年を取るたびに減量がむずかしくなるはず。おかゆダイエット、ちょっとだけやる気になってきた。

        *

偏食なのに食いしん坊の私は、これまで○○ダイエットと名の付くものは何もやったことがない。いろいろ不自由なアメリカ生活。せめて自分の好きなものくらい自由気ままに食べたいではないか

別にどこに行くのでもなし、誰に会うのでもなし、おいしいものを我慢する意義なんかぜーんぜんないじゃないの、とダイエット前から怠け心が頭をもたげる。

やっぱり、刑務所?


<今日の英語>

That's all it took.
必要なのは、それだけでした。


アニマルシェルターからの里親募集記事より。「この2匹は兄弟でもないのに、とても仲良し。別のところから持ち込まれたのですが、獣医に連れて行って、そのあと同じケージへ。気が合う2匹には、それだけしてやればよかったのです。引き離すのはかわいそうなので、いっしょに引き取ってくださる方を希望します。」



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急に途絶えたビデオ・チャット

2009.12.16 (水)


この数日、夫の部屋からルーマニア娘とのやり取りが聞こえない。珍しくドアを開けてパソコンをしていることも何度かあった。

いらつくから立ち聞きをやめようと思っていた矢先だったので、拍子抜けしてしまう。

もしかして、彼女を殴っていたご主人に見つかったのだろうか。それとも、単に契約が終わったのだろうか。一時的に連絡が取れないだけで、そのうち再開するのだろうか。

いったいあれはどういうサービスだったのか、よくわからない。

夫は一昨日から「気分がよくない。」と暗い顔でうろついている。「眠れなかったから、睡眠薬を飲んでもう一回寝る。」とわざわざ私に言いに来る。道路が凍っているし(もうそんなことはない)、出かける気になれないと言い訳して、カウンセリングを1回キャンセルした。

やっぱりルーマニア娘と話さないから元気がないのか。

         *

こういう夫を見ると、あんなビデオチャットで気が晴れるなら、どうぞ存分にやってくださいと私は思うのだ。

できれば、私が寝ているときか、あるいはヘッドフォンなんて小ざかしいまねはやめて、堂々とスピーカフォンでやってほしい。片側だけの会話を聞かされるのは、イライラの元だから。

大金を貢ぐのでなければ、毎月のチャット代くらい必要経費とみなしてあげよう。コスト・ベネフィットで考えても、お得じゃないだろうか。

20年の結婚生活でいろいろ経験した私としては、こんな程度で浮気だと騒ぐのはもったいないと思う。若い娘とのおしゃべりで夫の機嫌がよく、仕事に取り組む意欲が湧くなら、悪いことではないような気がしてくる。

寛容だとか忍耐強いとか、そういう話ではない。

落ち込む、眠れないとぼそぼそ言われるより、ずっといい。そこからエスカレートしないという保証はないが、ウダウダと不調を訴えられるのはうっとうしいのだ。

私の気分を害さない条件としては、小娘との電話のあとで、「仕事の電話をしていた。」という見え透いた嘘をつかないこと。

        *

私は調子が悪くても、わざわざ夫に告げたりしない。

終日ベッドに寝転んで黙って本でも読み、食事はふだん以上に手抜きか、「作りたくない」宣言をして台所にも行かない。ひたすら寝て、体力を温存し、自然治癒を目指す。先日の過呼吸以来飲んでいないが、トランキライザーがある。最悪の場合は、それを飲めばいい。

夫に話してもしょうがないと思う。何の解決にもならない。

話したくないのに、あれこれ説明しなくてはならないのは苦痛だ。「鬱なのか?」と聞かれて、「抗うつ剤を飲んでいますから、そうじゃないと思いますが、何にもやる気がありません。」と答えるのも馬鹿らしい。見ればわかるでしょ。

夫は私に同情してもらいたいのか。これまでにも、「きみはぼくの調子がどうだか、聞いてくれないね。ぼくに関心がないんだ。」とこぼされたことがある。

いや、私はモノにもヒトにも、元々そんなに関心が持てないだけなんだけど。もういいかげんに、私がそういう人間なのだと悟ってもいい頃じゃないの? 

アメリカ人の奥さんなら、そう思っていても「まあ、ダーリン!かわいそうに!アーユー OK、ハニー?」なんて白々しくやるのだろうか。そういうのがほしければ、そういうのと結婚してもらわないと困る。

        *

どうもうちの男たちはみな同情を引きたがるところがある。

長男も昨日は学校から帰ってきて、「なんか頭がぼーっとする。疲れた。」とつぶやき、わざとらしく私のベッドルームの入り口にうつぶせに倒れた。下手な芝居である。猫だって騙されない。

シャワーでも入って寝たら?という私に、予防接種のせいだと言い張る息子。そういうこともあるかもねえ、じゃあシャワーでも入って寝たら?と冷たい私。

ほかにどうしろと言うのだ。

その長男が今日は夫の顔を見て、「どうしてダディは寂しいの?」と私に聞いた。

ちょっと変な日本語だけど、つまり He looks sad 寂しそうに見えるということね。さあ、どうしてかしらねえ。あなたが慰めてあげたらどう。


<今日の英語>

There’s definitely a slight learning curve.
確かに習い覚えるのはちょっと大変です。


シニアセンターでパソコンを習い始めた老婦人の一言。learning curve は習熟曲線のこと。とても難しいときは、steep learning curve という。本来は、急勾配の習熟曲線つまり短期間で高い学習効果がある(覚えやすい)という意味だが、正反対の意味で使われることが多い。



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不要なものを減らす7ヵ条

2009.12.17 (木)


日経ビジネスに、また整理術の記事が載っていた。整理整頓できなくて困っている人がたくさんいるのか、他でもよくこういう記事に出くわす。

今回は、不要なものを減らすための7ヵ条

  • もらわない
  • 買わない
  • ストックしない
  • 捨てる
  • 代用する
  • 借りる
  • なしで済ます

私はふだん人と交流しないので、もらうことも少ない。でも、「無料サンプルをどうぞ。」とか、「登録するだけでxx進呈!」とかあると、つい目を引かれる。

ただし、この世の中、タダほど高いものはないと思っているので、めったに相手にしない。そのときはタダかもしれないが、自分の個人情報と交換しているのだ。あとになって、カタログがきたり、ジャンクメールが来たりする。そうでなくても、モノが増えるだけで負担になる。

もう使わないから、あるいは、たくさんあるから、と言う理由でものをくれたがる人がいる(例:夫の継母)。でも、本当に必要なものでないことが多い。

ともかく、家の中にモノを持ち込んではいけない。モノがあれば、必然的に管理の仕事が増える。そのうちモノに管理されるようになる(例:夫)。

アメリカのスーパーでは、缶詰10個で10ドルとか、スパゲティ6箱で4ドルとか、大量に買えばお買い得というセールがある。

よっぽど使い切ることがわかっていないかぎり、私はまとめ買いはしない。

収納スペースはあるが、結局引き出しの奥深くとか、棚の届かないところ、見えないところに置いてしまう。そうなると面倒で使いそびれるか、買ったことを忘れる。あんまりお得だという気がしない。

トイレットペーパーやペーパータオルもしょっちゅうセールになるので、別に買いだめの必要もない。そもそも4人家族ではそんなに使わないのだ(ただし、夫のせいで、うちのペーパータオルの消費量は尋常ではない)。

以前はジャムの空き瓶やチャイニーズのテイクアウトのプラスチック容器、お菓子の缶などを取っておいたが、このごろはなるべくさっさと捨てることにしている(ガラス瓶と缶はリサイクル)。取っておかなくてもすぐたまるし、結局たいした使い道はないことがわかったから。

         *

しかし、こんな私でも捨てるのが難しいときがある。

リサイクルか寄付できればまだいい。使えそうなものを捨てるのは、もったいないと思ってしまう。裏が白い紙やきれいな紙箱など、つい取っておく。

だから、ヨレてきたコットンの靴下が破れたりするとうれしい。私は裁縫もできないので、そうなると拭き掃除にでも使って、ゴミ箱へ捨てられる。

それですぐには買い換えない。まだ残っている靴下だけで生活する。出かけない私は、本当は3足もあれば足りるんじゃないかと思う。

捨てられない元凶は夫

壊れたものでも使い道がないものでも着られない服でも古い雑誌でも、何でも取っておく。おかげで地下室は夫の持ち物で満杯である。そういう人には、こんな7ヵ条は通用しない(詳しくは、過去記事「モノが捨てられない夫」にて)。

日経ビジネスのリンクから、「All About シンプルライフ」へ行ってみた。モノを減らす方法のページを読んだ。

ハウツーの宝庫だったが、私がだめなのはそういうのを読んだだけでやり終えた気になるところである。へえー、ほおーと感心しつつ、実際はなかなか体も手足も動かない。

           *

7ヵ条の最後に挙げられた「なしで済ます」。これが一番いいと思う。

実際、なくても困らないことが多いんじゃないだろうか。もし困ったら、やらない。やらなければやらないで、どうってことはない(これは単なるグータラ?)。

ずっと前に、確か岸惠子だったか、取材旅行中のアフリカでは水が貴重だったので、毎日コップ1杯の水で洗顔と歯ブラシをして、トイレも屋外で、スコップとトイレットペーパーをほんの少し持って処理したというエッセイを読んだ。

なければないで、人間どうにかなるものらしい(もっとも、蛇口をひねればお湯が出るという快適な生活を捨てる気は、私にはない)。

モノにしばられて、整理術をいくつも読み、やってみようと思って、あふれるモノと格闘しては挫折し、どうして片付かないんだろうと苦悩する。

ぜいたくな悩みである。


<今日の英語>

It's hit or miss.
成り行き任せです。


従軍中に性的なトラウマを経験した女性兵士への対応ができていない。退役軍人病院でも、男性医師にレイプの話をしなくてはならなかったり、まともに聞いてもらえなかったりしている。元陸軍大尉の女性が「どういう治療が受けられるかは、行き当たりばったりです。運を天に任せるしかないのが現状です。」とコメントしている。



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愛人ごっこ その81

2009.12.18 (金)


※ これまでの話(その1~80)をカテゴリから番号を選んで読む。

(前回その80の続き)

パヴェルはその後も何度かやってきて、私とベッドを共にした。

私たちの間に最初の頃のような熱情はなく、お互いにすっかりなじんだ体となっていた。そして、彼だけが満足して終わるのが常だった。

私は、抗うつ剤のせいか、私の心の中のわだかまりのせいか、オーガズムに達するどころか、いつも置いてきぼりにされたような、見捨てられたような気持ちになった。でも、それを言い出せなかった。

今までは、彼が喜べば私も満足していたのに。私はいつから自分を騙していたのだろうか。

一方で、彼と抱き合うたびに「これが最後かもしれない」とも思った。パヴェルがドイツへ行ってしまったら、私はまた以前の単調な生活に戻り、彼は何事もなかったかのように学生生活を送るのだろう。そして、どこかの女の子と出会って、2人の生活を築くのだ。

それは最初からわかっていたことだった。

夏だけとはいえ、3年もの間、私の寂しさや肌恋しさを埋めてくれた彼はもう充分に役目を果たした。これ以上、何をさせようと言うのか。

私は今の生活を捨てる気はないし、彼もそんなことは望んでいない。そういう関係。

・・・

あれは9月の終わりだったか、10月の初めだったか。

私はパヴェルの電話を受けて、午後早く彼を迎えに行った。その日は彼が泊まっていくことになっていた。

「朝晩は寒いくらいだね。自転車で宿舎からキッチンに行くと、よくわかるよ。」

「そうね、もう秋だから。あなたが渡り鳥みたいに、南の島じゃなくてドイツに帰る時期ってことね。」

「あと10日かな。今年は早かったよ。」

「忙しかったんじゃない。そういえば、3年目だから優遇してくれるっていう話はどうなったの?」

「無視されてる。トーマスといっしょに何度か掛け合ったんだけど、もうあきらめたよ。もらえるだけもらって帰る。でも、がっかりだなあ。ひどいよ。」

つまり、彼らは足元を見られたのか。契約書にどう書いてあったのかわからないが、夏だけ滞在する東欧出身の若者を言いくるめるくらい簡単なのだろう。もともとキャンプカ・ウンセラーとして来るのは今年が最後だとわかっていたが、来年つまり4年目はありえないことがはっきりした。

・・・

家に入ると、彼はリビングルームでパソコンを始めた。大学のサイトで調べることがあるという。すぐにベッドに行くつもりではないらしい。

私は椅子に座って、しばらく彼を眺めていた。そして、唐突に切り出した。

「パヴェル。もうあなたとセックスするのはやめようと思うの。」

彼は驚いて私のほうを向いた。

「どうして? 何かあったの? ぼくが何かした?」

「別に何もないのよ。ただ、もう、そうしたほうがいいような気がするの。」

「そう? ぼくはあなたが好きだし、あなたと愛し合うのも好きなんだけど。」

「私もあなたが好き。でも、メイクラブは止めたくなったのよ。ただなんとなく。」

私は彼に理由を言わなかった。私が満足できないと知って、彼が自信を失くすのはいやだった。それに、本当の理由は体のことだけではなく、他にもいろいろあったのだ。でも、それは私自身にもわからない、説明できないことだった。

愛人としてではなく、友人として別れたほうがあとで苦しくないだろうという気はした。

パヴェルはしばらく黙っていた。自分に非があったのかと考えているようだった。あるいは、潮時と思っているのかもしれなかった。

「オーケー。あなたがそうしたいなら。」

「ありがとう。これからも来てくれるでしょ。」

「もちろん。」

彼の顔には隠し切れない不満の色が浮かんでいた。セックスができないからだけではない。私が理由をはっきり言わないからだ。これまで秘密を共有してきた2人だったのに。

・・・

私は自分の身勝手さを自覚していた。彼が怒ったり、私を責めたりしなくて、ほっとしたが、それと同時に、もう彼と肌を合わせることがないのだと思うと、急に寂しくなった。

彼はまったく予期していなかっただろう。こう一方的に決められて、彼が私に愛想を尽かしても当然だ。

どうせあと数日で離れてしまう。そうしたら、もう二度と会わないかもしれない。

本当にこれでよかったのだろうか。

(次回その82に続く)



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愛人ごっこ その82

2009.12.19 (土)


(前回その81の続き)

その日の午後、私たちはこれまでと同じように振舞い、話をしたり、お茶を飲んだりして過ごした。

ベッドに行かないことだけが違っていた。

彼は私の言うことをそのまま受け入れてくれたようだった。もしかして、彼も私の気持ちの変化に薄々気が付いていたのかもしれない。

パヴェルは、学校から帰った子どもたちと外で遊んでやり、私はキッチンからその様子を眺めていた。夫が帰宅すると、みんな家の中に入ってきた。そうして、夕食を食べ、テレビを見たり、ボードゲームをしたりした。

和やかな、まるで普通の家みたいな風景だった。

この家の中で、私とパヴェルは何度抱き合ったことか。

そのあと、私たちは、2人の関係について面と向かって話し合うことはなかった。私はまだいくらか迷っていたが、改めて彼と話をする気になれなかったし、私の一方的な通告を受け入れてくれた彼の気持ちを尊重するのが礼儀にかなっていると思った。

・・・

パヴェルの出発する日が近づいてきた。今回はキッチンのスタッフが空港まで送ってくれるという。彼はその前にもう一度だけうちに泊まりに来た。

その頃には私も覚悟ができていて、彼といろいろ話をする余裕が生まれていた。

「これでしばらくは会えないわね。あなた、よく私のわがままにいろいろ付き合ってくれたわ。」

「わがままじゃないと思うよ。わがままだとしてもいいんだ。ぼくはあなたが好きだから。」

「ありがとう。でも、そのうちにもっと好きな人が現れるのよ。」

私は彼に本当の恋人ができてほしいような、でもやっぱりもう少し一人でいてほしいような気持ちだった。親密な関係が終わっても、私はパヴェルに強く惹かれていた。

「どうかな。とにかく早く卒業して、仕事を見つけて一人立ちしないとね。ベラルーシに帰りたいけど、ドイツのほうがいい仕事があるから。」

「ダミアンのアパートにずっと間借りできるの?」

「うん。大丈夫だよ。もしだめになったら、大学の寮に戻るから。」

「何か力になれることがあったら、いつでも連絡してね。」

もう金銭的な援助しかできないと思ったが、彼はそれを潔しとしない。私たちのつながりも次第に先細りするだろう。

・・・

セックスをしなくなってからも、私たちは前と同じように抱き合った。でも、裸にはならなかったし、唇へのキスはしなくなった。もう親しい友人の振りをしなくても、そのままでよくなったのだ。

それでも、時おり視線がからむと、私の心は揺れた。彼も何か言いたげだった。

(次回その83に続く)



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愛人ごっこ その83

2009.12.19 (土)


(前回その82の続き)

子どもたちには、パヴェルが来るのは今晩が最後だと話しておいた。

彼らはいつもの通り彼にまとわりついたが、「最後」の意味を理解するには幼すぎた。おかげで湿っぽくならなくて済んだのだ。

夫は「そういつまでもキャンプカウンセラーをしていられないね。とにかく単位を取って卒業するのが先決だ。」とパヴェルに話し、「働きながらでは大変だろうけど、応援しているよ。きみが来ない夏は、子供たちもうちの奥さんも寂しがるだろうけど。」と、私とパヴェルの関係を知ってか知らずか、言い添えた。

他人と距離を置きたがる私がパヴェルとここまで親しくなったのは、非常に特異なことだった。

夫はそれを承知していたと思う。そして、ある意味では夫にとって喜ばしいことだったかもしれない。最悪のうつ状態のときはとてもそんなわけにいかなかったのだから、ずいぶん回復したものだ。もっとも、若い外国人学生が私の相手だったのは予想外だっただろう。

そして、単なる友だちに留まらず、深い関係になったのだが、夫はもちろん知らない。

仮に私たちの仲を疑ったとしても、証拠はなかった。第一、先によその女に入れあげた夫に、私を責める資格はないのだ。

・・・

翌朝、子どもたちは学校へ、夫は会社へ出かけ、私はパヴェルと2人きりで家に残された。

「そろそろ出かけたほうがいいかしら。今日もキッチンで仕事するんでしょ。」

「うん。明日まで働こうと思ってる。明後日の飛行機だから。」

「ほんとに寂しくなるわ。」

「メールするよ。電話も。ドイツに来たら、ぼくが案内できるし、ダミアンのアパートは広いから泊めてくれるよ、きっと。」

「あなたの部屋?」

「ぼくはかまわないけど。あなたならいつでも。」

「あなたのガールフレンドが嫌がるわよ。」

私がパヴェルに近づいて「ありがとう。」と言うと、彼は「ぼくのほうこそ、ありがとう。」と私を抱きしめた。私たちは唇を重ね、最後のキスを交わした。単なる友人ではなく、恋人でもなく、愛人としてのキスだった。

(次回その84に続く)



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 |  愛人

引きこもりの味方

2009.12.20 (日)


先日の雪がまだ芝生の上に残っているのに、今日はさらに7~8インチ (18~20cm) も雪が積もるという予報である。

週末だから学校はない。習い事もない。

冷蔵庫にはバターもミルクも卵も肉もある。じゃがいももたまねぎもある。シリアルもパスタもある。パンがなくなれば、小麦粉もイーストもあるから、自分で焼けばいい。飢え死にすることはない。停電さえ起きなければ、快適な室内。

出不精で引きこもり主婦の私は、大雪警報も吹雪注意報もあんまり関係ないのだ。むしろ「堂々と引きこもりできるなあ。」と思う。

家の中は暖かいのに、雪が降るとなぜか家の中でも動けなくなるのは不思議である。

こういう日は、本を読むかDVDを見るかネット・サーフィンに限る。「雪が降ってるんだから、しょうがないじゃない。」という屁理屈にもならない理由でとことん怠ける。

アメリカ北東部に20年も住めば、多少の雪には驚かない。

でも、根本的に雪国体質ではない私は、雪イコール活動停止になってしまうのだ。普段からたいしたことはしていないのに、白いものが空から降ってくると、「あー、止め止め!」というのが最初の反応。

ことに今日みたいな大雪の場合は、雪が止むまでは雪かきもしない。除雪車が来てくれるが、ガレージのすぐ外や玄関周りは手でやらねばならない。

もっとも、最近は子どもたちにやらせて、私は現場監督として時おり窓から覗いては指示を出すだけ。子どもを産んでおいてよかったと思うときである。

       *

しかし、こんな日に子どもたちはまたしても友だちと会う約束をしている。

次男は、先週のブラック・アイスで行けなかったダニーのところへ再度集まるという。長男は、教会の地下を借りて誰かのバースデー・パーティ。それとは別に、James Cameron の新作映画 Avatar を見に行くという。

あのー、誰が連れて行くわけ? 私は大雪警報の日になんか出かけないわよ。

子どもたちはあれだけパソコンをしながら、天気予報をチェックしない。男の子特有なのか、「集合時間と何をして遊ぶか」しか考えていない。それも、前の日の夜遅くにやっとチャットで決める始末。しかも連絡不徹底で、10時か1時かはっきりしなかったり、お迎えの時間はそこで会ってから決まったりする。

まったく段取りが悪過ぎる。女の子だったら、そういうところは抜かりないんじゃないかと思う。

長男にいたっては、何時の映画を見に行くかすら決まっていない。

「誰が送っていくのよ。」

「お母さん。」

お母さんって、このお母さん?」と自分を指差す私。

「そう。だと思う。」

「なんで私が? 他のお母さんはどうしたのよ。自慢じゃないけど、私は一番引きこもり度が高いお母さんなのよ。それに運転だって一番下手じゃないの。勝手に決めないでよ。」

           *

しかし、大雪警報は私の味方。お昼前から降り始めそうな予報になってきた。そうでなくても、お迎えに出て立ち往生する可能性大である。

んまあ、残念ねえ。また来週があるじゃないの、と(来週だって出かける気はないのに)一応なぐさめてやる。

これが東京なら長靴でも履いて自分で歩いていくところだけど、ここでそんなことしたら行き倒れか凍死。あきらめるしかない。

落ち葉が舞う頃からウツウツとし始め、いつまでも溶けない雪にウンザリし、息を吸うと鼻の中に霜柱ができそうな真冬に辟易するが、こういうメリットもあるのだった。


<今日の英語>

Take it slow and you’ll be fine.
落ち着いてゆっくりやれば大丈夫ですよ。


初めてソーイングに挑戦するという女性に、布地売り場の老婦人がかけた励ましの一言。



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引きこもり予定変更

2009.12.20 (日)


私が出かけないと聞いた長男は、目を赤くしていた。

友だちが多く、しょっちゅう呼ばれる次男と違い、長男はフレッシュマン(高1)までは特定の一人としか行き来がなかった。孤立していたわけではないが、なぜか校外での付き合いは限られていた。それが、今年度になって急に交際範囲が広がり始め、私はほっとした。

だから、週末に誘われるということ自体、長男にとっては次男の何倍も意味があるのだ

今日行くはずだったのは、学校のアニメおたくクラブで知り合ったという子のバースデー・パーティ。

長男はごくたまにクラブに顔を出すだけだが、そのつながりで誘われたらしい。その子のガールフレンドが仕切っているという。何も知らずに教会のミーティングルームにやってくる彼をみんなでサプライズで迎えるという趣向である。

外は雲が垂れ込めているが、まだ雪は降っていない。本格的に降り始めるのは夕方からですと天気予報官。

シャワーから出た長男に言った。

「じゃあ、こういうのはどう? 私が送って行って、そのまま教会で待つのは?それで雪が降り始めたら、すぐ帰る。」

長男の顔がパッと輝く。「教会って待つところあるの?」 うちの子供たちは教会に行ったことがない。

「そりゃ、座るところくらいあるでしょ。本でも読んでるわ。」

          *

クリスマス前最後の週末とあって、大雪警報が出ているのに交通量は多い。ラジオでは、あと3時間は何も降らないだろうという。だったら家にいったん帰ろう。

11時45分に教会の駐車場に到着。誰もいない。

「地下室ってどこ? お母さん、知らない?」

「知らないわよ。そのへんもちゃんと確認しておきなさいよ。中に入って聞いてきたら?」

「えー、どうやって。ぼく知らないもん。」

「いいのよ、とにかく入れば。神様は迷える子羊を追い返したりしないはずだから。」

なんのことやらわからないらしい長男はためらっていたが、ちょうど車が2台入ってきて、数人が降りたところだった。

「あっ、あれだ。」 

教会の横にドアがあって、そこが半地下になっていた。いすやテーブルがおいてあり、女の子たちが食べ物やプレゼントを運んでいた。終了予定は5時。

「じゃあお迎えは3時半と思って。でも、雪が降ったらもっと早いからね。」

うれしそうな長男に釘を刺して、その場を後にした。

         *

家に戻ってから、レーダーと窓の外を見比べる。昼寝もできない。

午後3時。まだ降らない。もう少し時間をあげるか。パーティの費用は払わなくていいのかな。急なことで、プレゼントも現金だったし。

午後4時。外は薄暗いが、まだ雪は降らない。でも片道15分はかかるから、暗くなる前に戻りたい。

結局4時半に教会へ。ドアの外で携帯で話していた女の子が、長男を呼びに行ってくれた。

中をのぞくと、大人が2人片づけをしていた(あとから聞いたら、サプライズパーティを計画したガールフレンドの両親だった。見張り役?)。音楽が聞こえ、15人くらいの高校生が奥に集まっていた。わりと女の子が多い。どの子もまあ普通の格好で安心する。

長男はバースデーボーイらしい子とこぶしを合わせてから出てきた。

何食べた?」 私はいつもよそで出されたものについて質問する。

「スパゲッティとチキンと、チップスとか。おいしかったー。そうだ、大きいケーキもあった。」 

アメリカの甘すぎるシートケーキ、原色のクリームでハッピーバースデーなどと書いてあるのを思い出し、ウッとなった。長男は楽しかったともなんとも言わないが、満足そうな顔をしていた。

せっかく引きこもるつもりだった土曜日だけど、ま、いいか。でも、明日の映画はなし。次男のプレイデートもなし。明日こそどこにも行かないわよ。


<今日の英語>

You must be out of your mind.
気でも狂ったに違いない。


ボートを漕いで単独で大西洋を渡るという女性に対して、ボートをデザインした人が一言。「そんな無謀な計画を立てるなんて。どうかしている。」



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夫が日本語の質問をするとき

2009.12.21 (月)


夕食のとき、夫が日本語の単語の意味を知りたいと言い出した。料理に関係ある言葉だという。

夫は自分の発音がひどいのを自覚している。これまでにも、夫の発する日本語がさっぱりわからないことがよくあった。夫は長男に向かって「手伝え。」と言う。

ジャクー。」と夫。

首をかしげる長男と私。

「なに、ジャクーって。料理に関係あるなら、強弱のじゃくかな。強い弱いの弱いほう。」

私が英語で聞くと、夫はそういう単語じゃないと言う。

J-A-K-U っていうスペリングだけど。どうやって発音するんだ?」

そりゃ、ジャクでしょ。でも、ピンとこない。

「ソテーとかグリルとか、そういう意味の言葉だ。」

「もしかして、やく? 焼く? Y-A-K-U?」

「そうそう。JとYを混乱してたか。それ英語で言うと、どういう意味?」

顔を見合わせる長男と私。

「焼くっていうのは、一般的に火を使って熱を通すっていうことよね。焼くの漢字の左側は『火』でしょ。フライパンで焼く。パンを焼く。魚を焼く。オーブンで焼く。だから、ローストでもベイクでもグリルでも『焼く』になりうるんじゃない。」

長男が私の日本語を夫に翻訳する。よしよし、ちゃんと英語で説明できてるじゃないの。でも、夫はなんだか不満そうだ。

       *

こんな風に、夫はときどき唐突に日本語の質問をする。しかし、私の説明に納得することはまずない。

だいたい日本語の基礎知識がゼロなのだから、どこかで聞きかじった単語を1つだけ取り出してこられても困るのだ。それに、私は外国人に日本語を教える勉強もしていない。ただ母国語として使えるだけ。

「じゃあ聞くけど、日本語で boil や simmer に相当する言葉は何だ?」

「ボイルは煮る。ぐつぐつ煮る。シマーは、弱火でことこと煮るかな。ぼこぼこ沸騰するんじゃなくて、表面が少し泡立つ感じ。シマーにぴったり合う1つだけの言葉はないと思うんだけど。」と長男に日本語で話す私。

「お母さん、『ぐつぐつ』とか『ことこと』は onomatopoeia だよ。」

「擬音語だってことはわかってるわよ。でも、それが一番近いんだから、しょうがないじゃない。」 

長男が言った英単語を耳にして盛り返した夫は、「boil はたくさんの水で cook すること。simmer は少しの水で cook することだ。」

なんでそんなことを講義されなくちゃいけないのよ、とムカッときた私。

「あら、そうじゃないでしょ。火力が問題でしょ。水の量で決まらないわよ。ちょっとダディに説明しなさいよ。」と長男へ命じる。

長男が通訳に立っているならば、夫が相手でも私はとことん日本語で話す。これもいい勉強、というのは口実で、そのほうが楽だから。それに、夫に対して 私も母国語で議論できるという貴重なチャンス

        *

私と夫の間に立って、顔をあっちこっちに向け、英語と日本語で話していた長男は、どっと疲れたらしい。

私がダディを連れて日本に行かない理由がわかったでしょ。大変なのよ。ずーっとこの人の通訳なんだから。」

早食いの次男は、こんな論争の前にさっさと席を立って、リビングルームのパソコンで友だちとチャットをしていた。キッチンに背を向けたまま、夫の質問に答える気は全然ないらしい。ときおりクスクス笑っていた。

「こらー、おまえは今の会話を日本語も英語も全部わかっていて、知らん顔してたなー?」と夫。

二番目の子は要領がいい。

       *

子どもたちの手前、夫が日本語に興味を持ってくれるのはいいのだが、結局こんな風に終わってしまう。

20年もいっしょに暮らしていて、いまだに日常会話もできない夫
。もちろん、おはようございますやありがとうくらいは知っているが、それでは会話にならない。

あとは、私が毎日言うので覚えたらしい「おかえり。」「はやく、はやく。」「へんじして。」「いますぐ。」(これらを聞かされるのはちょっと恥ずかしい。ほんとに私はいつも子どもをせっついているのだろうか。)

こういうレベルの人に料理用語の違いを説明するなんて、無謀である。しかも、本人はインスタント・ラーメンも作らないのだ。


<今日の英語>

We can't assume anything.
予断は禁物だ。


タイガー・ウッズを全社的なイメージパーソンに採用していたコンサルティング会社のAccenture。今回のスキャンダルで、やっきになってウッズのイメージを消し始めた。「企業や政府は、タイガーのお墨付きがあるからという理由で Accenture を雇ったのではないと思いたいが、これだけ多くの賢い人々が(モラルの低い企業や政治家連中に)騙されている社会だから、なんとも言えない。」とNYタイムズの Frank Rich が皮肉った。



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急な出費1400ドル

2009.12.22 (火)


地下室にある furnace(加熱炉または暖房炉と訳すらしいが、私の感覚ではボイラーが近いので、そう呼ぶことにする)の調子がここ2週間ほどおかしかった。

手前の部品からオイルが漏れている。前にも同じことがあったが、こんなに漏れたことはない。サーモスタットが働くときに、ビィーンと聞きなれない音が2階まで響く。地下室はもちろん、家の中でなんとなく灯油の匂いがする。

ボイラーが止まれば、暖房なし、お湯なしになる。この寒さの中では死活問題である

しかも、もうすぐクリスマス。緊急サービスなどを頼めば割高料金だし、第一すぐに来てくれるかどうかもわからない。

夫は例によって何もしないので、私がいつものサービス会社に電話する。

この会社とは、灯油の配達(といっても、タンクローリーみたいな大型車でやってきて、巨大なホースで直接地下室の巨大オイルタンクに注入するので、日本の灯油配達とはずいぶん違う)と、毎年1回の点検サービス、トラブルが起きたときの修理サービスも契約している。

          *

電話したら、今日中に向かわせますというありがたい返事である。

そして、午後3時、約束通りに修理のおじさんがやってきた。家に一歩入ったとたん、「このオイルの匂いは何ですか。」とおじさん。

「そんなに匂いますか。ここんところ、ずっとこんな感じで慣れてしまったみたいです。オイルのデリバリーのせいかと思ってました。」

おじさんは、そうじゃないよという顔で地下室へ。私は、油が漏れていることと、変な音がすることを説明したのだが、なんだか重大な故障の予感

おじさんはボイラーのスイッチを切ったり、パネルを開けたりして、30秒もしないうちに、

「排気用のファンとモーターが壊れてます。本来は、これがだめだったら、ボイラーが完全に停止すべきなんですが、暖房もお湯も出てたんですか。危ないですよ。外に排気されずに、そのまま家の中に残ってたんですから。」

それでオイルの匂いが強かったのか。あわや「二酸化炭素中毒で一家死亡」とローカルニュースに出るところだったかもしれない。

「これはメンテナンス契約でカバーされてないですから、修理は高いですよ。」

「でも、直さないと命に関わりますし、壊れたら凍えてしまうし。おいくらですか。」

おじさんはドライブウェイに停めてある車へ行き、見積もりを出してきた。

1400ドルです。部品と修理代込みで。」

高い!でも他に選択の余地はない。おじさんは必要な部品を取りに、会社へ戻った。暗くなる前に仕事を終わらせたいと言う。

         *

夫の部屋に行って、報告すると、「直してもらうしかないな。1400ドル払えるだろう。」

そりゃ払えますよ。そのためにお金を貯めてるんだから。「どこかよその女にあげると思えば、ボイラーの修理代に使うほうがマシよ。」と心の中で呟く。

それはともかく、これだから一軒家は困る。ほんとに急な大きい出費があるのだ

おじさんはなかなか戻ってこない。もう外は薄暗くなってるのにと思っていたら、おじさんが玄関から入ってきて、「終わりました。」 私は地下室で作業すると思っていたが、家の外でやっていたらしい。

「とりあえず、排気処理だけできるようにしました。あと必要な部品が2つ、いや3つか、ありますが、それは明日ということで。」

おじさんは作業の報告書を渡して、サインすべきところを指差した。まず$813。

「ここに住んで15年ですけど、ボイラーの寿命なんですか。」

「15年じゃそうかもしれませんね。よく持ったほうだと思います。」

15年も経てば、いろんなものが壊れてくるのか。おじさんは、ボイラーの機種や煙突についていくつかアドバイスをくれた。無知な私は、おじさんの言うことを信じるしかない。

      *

翌日、今度は別の人がやってきた。そして、地下室の中で長いことガタガタやって、作業報告書を差し出した。こっちは$641。前日との合わせて、ほぼ見積もり通り。しかも、サービス契約をしていたので、200ドルくらいは割安になっているとのこと。

ここはしっかりした会社だから、私も素直にサインする。請求書は会社から別途郵送されてくるので、1月に払うことになるだろう。

この次は何が壊れるか、戦々恐々である。そして、こどもたちに「学校でボイラーの仕組みとか習わない?」と聞く。

グランパならきっとどこが悪いか自分で調べて、部品も調達したかもしれない。修理まではできなくても、機械に強いし、なにしろ物理学者である。探究心が旺盛なのだ。そして、Do it yourself.

それに比べて、息子であるうちの夫、そして孫であるうちの子どもたちは、仮想世界の住人なのだった。私がばらばらにして皿洗い機に入れた小型のチーズおろし器さえ組み立てられない有り様。夫は地下室に一度も見に来ないし、修理のおじさんと話すらしない。

しかたがないので、何も知らない外国人の私が対応するのだが、「たちの悪い業者なら、うちはいいカモになってるなあ。」と思う。


<今日の英語>

You’re a dying breed.
あなたは、絶滅しかけの部類に入っています。


新聞の配達サービスに不満を持つ購読者が、クリスマスのチップはどうしたらいいかという相談に、「新聞の購読者数が激減しているときに、あなたはまだ配達してもらっているんですね。絶滅の危機にある種族ですよ。」と回答者がコメント。肝心のチップについては、例年より少なくして、「来年はもっと信頼のおける配達を期待しています」と書いたカードを付けなさいとアドバイス。あるいは、仕返しの意味で3月まで渡さないのもいいでしょう。



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ルーマニア娘に500ドル?

2009.12.22 (火)


夫がまたしても馬鹿なことを言い出した。

「怒らないでほしいんだけど、500ドル都合してくれないかな。」

「そんなお金ないわよ。ボイラーの修理で1400ドルかかったのよ。それに、この間から250ドルだの300ドルだの、毎月1回はペイパルへ動かしてるでしょ。」

私は自分が無収入なのに(無収入だから?)、支出には厳しい。

友だちにあげたいんだ。クリスマスだから。

「だったら、グランパやグランマにまずあげるべきじゃない? うちはギフトもカードも送らないんだから。私はそれでいいけど、あなたは本当はお父さんたちにどうにかすべきじゃないの。友だちって誰?」

ルーマニアの夫婦。ゲームで知り合ったんだ。子どもたちも会ったことがある。」

会ったって、仮想世界でしょうが。

「名前はなんていうの。」

「彼女はステファニー。彼はマリウス。ラストネームは発音できない。」

この間からビデオチャットしてた相手か。でも、旦那は半年間スペインじゃなかった? じゃあ奥さんにあげるわけ?

     *

「そんな会ったこともない人たちにどうして大金をあげなくちゃいけないの? 500ドルって大金だと思う。」

「彼らはちょっとしたビジネスを始めるつもりなんだ。それを応援したいから。」

応援の対象が間違ってるんじゃない? それに、ルーマニアでビジネス? こんな景気の悪いときに何を始めようって言うの。

とにかく500ドルは無謀だ。それを国際マネーオーダーで送るという。冗談じゃない。

「私はまだしもタイで会った女にあげるほうが納得が行きます。実際に会っているんだから。」

夫は私が何年かぶりにタイの話を持ち出して、気まずそうである。一時期は、タイとかバンコクという言葉さえ口にできなかった私だが、時間と共に乗り越えたらしい。

「それに、今は去年の半分しか収入がないでしょ。G氏のスタートアップだってまだ確実じゃないし。そんなお金があるなら、キッチンを直したり、ペンキを塗ったりするほうが先じゃないの。」

       *

夫はドアを閉めて、G氏との間でどういう話になっているかを説明し始めた。まだ資本は全部揃っていないが、1月2日にはオフィス(ヴァーチャルではなくて、本物の家具があるスペース)を開く。G氏は投資家がすぐに動けないならば、自分の資産を投じるつもりである。そして、夫に給料を払う用意がある。

「でも、なにもかも不確定でしょ。それで500ドルをあっさり赤の他人にくれてやるほど、うちに余裕があると思わないけど。」

夫はこれが最後だから頼むと言う。前にもそう言ってたけど?と聞くと、これがほんとに最後だという。

「これはあなたのお金よね。私は1セントも稼いでいないんだから。私があれこれ言う権利はないと思うけど、子どもの大学資金とか生活資金とか考えると、無責任なことは言えません。500ドルは多すぎます。せめて400ドル、できれば300ドルにしたらどうですか。」

夫はじゃあ400ドルにするという。

400ドルで何のビジネスができるのよ。彼女の懐に入るだけじゃないの。かっこつけてるだけ? それとも、これを払えばビデオチャットが再開できるっていうこと?

半年前に、オンラインで知り合ったゲーム友達が一人当たり150ドル出し合って、ミズーリの男にバースデー・プレゼントをあげたという話は、実はこのルーマニア娘だったのかもしれない。

これが夫の躁うつ病の症状なのか。そうは思えない。まったく理解できない。こういう人間につける薬はないのかもしれない。




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カマをかける

2009.12.22 (火)


500ドルから400ドルに下げさせたが、私の気は収まらない。

会ったこともない個人(しかも、やっぱり女)にお金をあげるのが気に入らない。ビジネスの援助だと見え透いた嘘をつくのが気に入らない。若い(これも前と同じ)、おそらくそれほど裕福でない娘に気前のいいところを見せたいのか。見返りがあるのか。

夫は「子どもたちも会ったことがある。」と言っていた。2人にそれとなく聞いてみるか。

「ねえ、なにかゲームしててルーマニアの人に会ったことある? ダディがあんたたちも知ってるって言うんだけど。」

「ルーマニア? ああ、マリウスじゃない? 見たことあるよ。」

「マリウスって男でしょ。女の人は? マリウスの奥さんは?」

「知らない。マリウスしか見たことない。ビデオチャットで見たよ。」

「どんな人? 若い人?」

「そうだね。若いかな。若いよ。」

なんか頼りにならない長男。でも、こういうときは長男のほうが真面目に相手をしてくれる。次男はそういう話をしたがらない。

「ダディがその人たちに500ドルあげるって言うのよ。どう思う? ボイラーの修理で1400ドルかかったでしょう。それに500ドルあれば、私だってキッチン直したいのよ。日本に行く切符買いたいわよ。500ドルよ。そんなオンラインで会っただけの人によ。それに、奥さんのほうだけじゃないの、ほんとにダディがあげたいのは。だめだって言って、400ドルにさせたんだけど。怪しいと思わない?」

こうなると私は止まらない。15歳と13歳の息子たちを前にまくしたてた。

「500ドル?! ぼくにパソコン買って!」と、このあいだ自分のデスクトップが壊れた次男。

「500ドル? 400ドル? たくさんだね。なんで?」と、すぐに夫を責めたくないらしい長男。

そんなこと私に聞かないでよ。

ともかく、子どもたちがそのルーマニア人を見たことがあることはわかった。ただし、旦那のほうだけ。奥さんもゲームをするのだろうか。でも、子どもたちの前には姿を見せなかったらしい。

       *

長男の空手教室のあとで、またこの話になった。私たちはあらゆることを話す。

「ぼくはあげてもいいと思うのと、あげちゃだめだと思うのと、両方。あげてもいいのは、オンラインで話したことがあるし、顔を見たことがあるから。あげちゃだめなのは、オンラインで会っただけで、ほんとはどんな人か知らないから。」

何よ、それ? 反対なの、賛成なの? 子ども相手にいらつく私。

長男は私が怒っているのをわかっているけど、ダディの悪口を言いたくないらしい。でも、この送金が理不尽だとわかってもいる。そりゃそうだろう。常識で考えたらありえない。チャリティ団体に寄付するのとは違う。

株価が上がれば500ドルくらいすぐ回復できる。配当金だってある。でも、500ドルをそんな風にポンと他人にあげる気は私にはさらさらない。

夫は、精神科医との予約の後で銀行に寄って現金を引き出し、そのあと郵便局に行くという。ずいぶんマメに動くじゃない。精神科医は知ってるの? ほんとに告げ口したくなってきた。

      *

夫は半年前についた嘘を忘れていた。私がカマをかけて、「インターナショナル・マネーオーダー、前にもやったじゃない。200ドルか250ドルで。郵便局に行ったじゃない。」と夫に言うと、「うーん、そうだったな。でも、これが最後だから。頼むよ。」

あのときはミシガンのゲーム仲間数人でしょ。しかも150ドルだった。今度はルーマニアの夫婦。結局、どっちもルーマニアへあげたお金だったってことよ。

自分の作り話くらい、覚えておいたら? 

(もっとも、私もブログに書いたおかげで、過去記事を読んで詳細を思い出した。だから、これも記録しておく。)




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