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タブー

2009.06.01 (月)


月末なので、投資のポートフォリオを全て調べてみた。ダウ平均が8500まで戻ったのは知っていたが、自分(と夫)の口座にそれが反映されているのを見て、実感する。

早く9千ドル、いやできれば1万ドルまで回復してくれたらなあと思う。

この20年、余ったお金は全部貯蓄し(むしろ、貯蓄して余ったお金を使ったと言うべきか)、最大限投資してきた。夫は収入はよくてもお金には無関心だったし、彼と私の貯金は最初のタウンハウスのための頭金で消えたので、ほとんどゼロからの出発だった。

多少の変動はあったにせよ、よくここまで増えたもんだ、と我ながら感心していたら、あっという間に3分の1が消えた。

増えた、減ったと言っても、紙の上の数字に過ぎない。

貯金の好きな私は使うより貯めるほうが楽しい。夫もぜいたくとは無縁だし、コンピュータ以外は自分でシャツ1枚買わない。それでも、株価が上昇を続ければ、財布の紐がゆるくなった。外食やちょっとした買い物にも悩まない。どうせ買うならいいものをと、高価な家具を買ったりした。

私がおそらくパートで1年間働いてもらえるくらいのお金が、短期間に何もしないでも入ってくるも同然だった。配当金もあったし、増えるときはどんどん増えた。感覚がおかしくなるのだろう。

*     *     *

リーマンショック以後、株が下がり続けると、今度は何万ドルという単位で残高が減っていった。

1000ドルでも下がると、ガッカリする。株価が少し持ち直せば取り戻せるのに、あーあと思う。所詮は紙の上の話なのに、すごく損をした気持ちになる。

夫の年齢を考えたら、あまりリスキーな投資はできないのだが、私は夫より10歳下なので、つい自分を基準にしてしまう。コスト割れしているいくつかのファンドがトントンになったら、もっと保守的なものに替えようと思う。

でも、現金だけではインフレに食われてしまう。夫の家系は長寿だし、私はアメリカ在住というマイナス要因があっても、世界一長寿の日本人女性。お互いにあと30年以上生きてもおかしくない。

老人ホームに入るのだって、タダじゃない。先立つものはお金である。

*     *     *

セックスお金アメリカではどっちがよりタブー視されているだろうか。

フランスでは、セックスよりお金の話のほうがタブーなんだそうだ(記事はこちら)。でも、これは他人に自分のお金の話をするかどうかが焦点であって、夫婦間の問題ではない。

イギリス人の74%は、カップルの間で一番話すのが難しいのがお金の件だという。3分の1が、お金より、セックスや昔の恋人の話をしたほうがいいそうだ。(記事はこちら)。

アメリカではどうなのかわからないが、うちはお金についてはオープン。クレジットカードも投資や銀行口座もすべてジョイントアカウントだし、オンラインで全部見られる(もっとも、夫はほとんどアクセスしないが)。生命保険の話もよくする。

それに比べると、セックスはタブー中のタブー。気にしているからタブーであり、タブーだから余計に意識する。セックスという単語に敏感になり、でも気づかないふりをするのは疲れるものだ。

お金セックスこれが両方ともうまくいっていたら、世の中の言い争いも離婚もずいぶん減るんじゃないだろうか。


<今日の英語>

It doesn't make any difference at all.
どっちだってぜんぜん変わりはない。

スーザン・ボイルが優勝しなかったことを受けて、あるファンが「1位でも2位でもどうでもいいことだ。彼女の歌声がすばらしいことに変わりはない。」とコメント。
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 |  社会  |  コメント(3)

<今日の英語> 5月掲載分

2009.06.01 (月)


5/31/09
She is really down-to-earth.
彼女はほんとに堅実ないい子です。

5/30/09
What do you want me to do?
私に何をしてもらいたいの?/私にどうしろと言うの?

5/29/09
We are running out of time.
もう時間がありません。

5/28/09
We are all rooting for you.
みんなで応援してるよ。

5/27/09
I will be brief.
手短かにお話しします。

5/26/09
If it's not broken, don't fix it.
下手にかき回すな。/触らぬ神にたたりなし。

5/25/09
You made my day.
おかげでいい1日になったわ。



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ずっと躁うつ病だった?

2009.06.02 (火)



精神科医の診察が終わって、夫が携帯から電話してきた。

「ドクターGが言うには、ぼくは manic depressive なんだそうだ。もっと前に治療をするべきだったって。」

manic depression つまり、躁うつ病。別名 bipolar disorder 双極性障害

20年間の結婚生活に起こったことが次々と頭の中によみがえった。

何か始めると、食事もしないで何時間も熱中して、でもしばらく(1週間だったり、1ヶ月あるいはもっと長かったり)すると、さーっと興味を失うことがしばしばあった。あれは躁うつ病の症状だったわけ?

私はそれは彼の性格だと思っていた。

うなされるように原稿を書いて、もう少しで本が出版できるというところで興味がなくなって投げ出したり、子どものために精巧な電車の模型を作っては飽きてしまったり、IKEAの家具をやたらに買って(安くて助かった)、足らないものは父親をカリフォルニアのお店にわざわざ行かせて郵送してもらったり、そのくせまだ組み立ててないものが積んであったり、鉄道クラブの生涯会員になって毎週のように子どもを連れて電車を見に行ったのに、あっさり止めたり…。

そういえば、一時期 ebay にはまって、帰宅するなりオークションにかかりっきりだったことがあった。

まだオンラインゲームがないころ、Myst というゲームを自分のパソコンにインスト-ルして、何日もこもってやっていたこともあった。ほとんど寝ていなかったはずだ。3作くらいのシリーズがあって、終わったらそれで気が済んだようだ。

熱しやすく冷めやすいところがあるとは思っていた。でも、精神科医が病名を付けるほどひどいのだろうか。やりかけのプロジェクトを地下室にほったらかしの人やあきっぽい人なんて、世の中にいくらでもいるはずだ。

初対面でたった1時間、夫と話しただけで、躁うつ病だなんて決めていいのか。

夫は大学時代は授業そこのけで、できたばかりのコンピュータルームにこもっていたらしい。そして、大学院で初めてうつ(躁うつではない)と診断されて、セラピーを受けた。まだ当時は抗うつ剤が出回っていなかったので、投薬はなかった。

夫の父は、セラピーを信用してなかったらしい。自分の息子はヒッピーの名残りか何かに感化されたと思ったようだ。それに、夫の父は「人生とは良きものである。」という非常にポジティブな信条の人なので、息子がうつに罹ったというのも理解できなかったのだろう。

*     *     *

夫は、以前飲んでいたブランド品の抗うつ剤睡眠薬の処方箋をもらってきた。夫が夜眠れないと言ったからだろう。

ドクターGが本当に処方したい躁うつ病の薬は、甲状腺異常があると使えない。血液検査の結果待ちである。

ドクターGによると、ブランド品と同じ効果があるはずのジェネリックは、分子レベルで見るとブランド品の「片側」だけなので、同じ20mgでもジェネリックの効果は半分の10mg相当なのだそうだ。

夫は、保険会社に言われて、ブランド品からジェネリックに変えたのだが、何週間か経って一種の離脱症状が出たらしい。だから、夫が抗うつ剤が効かないと思ったのは、うそではなかったわけだ。

でも、「ジェネリックとブランド品の効能は同じ」というふれこみで売られている。なんだか腑に落ちない。

*     *     *

夫はカリフォルニアの父親に報告し、夫の家系に躁うつ病患者がいたかどうかと尋ねた。

夫の父の妹ヴェルマには6人の子供があったが、1人はある日、発電タワーに登って感電死した(これは私もずっと前に聞いた)。話が込み入ってきて、誰が誰の子で、どういう血縁かよくわからなかったが、少し離れた親戚には自殺した人やうつ病になった人がいるらしい。

夫が私に聞く。

「こんなのと結婚して、後悔してる?」

私の家系には躁うつ病はない。ないと思うが、田舎だから、もみ消された可能性もある。それにちょっと変わり者扱いされただけで、躁うつ病やうつ病とは診断されなかったこともありうる。

夫がやっと正しい診断がもらえたのは、よかったと思う。ほんとに正しければの話だけれど。

20年間一緒に生活してきて、子どもも生まれて、こんなことで今さら後悔してもしかたない。それなりに折り合いをつけてきた。夫の症状もいずれ薬でコントロールできるだろう。

「後悔はしてないけど、子どもに遺伝してたら心配だなと思って。」

「ぼくもそう思う。長男のほうがどうも気になるなあ。」

「えっ、私は次男のほうがそうなりそうな感じがするけど。」

実のところ、兄弟2人ともおっとりしていて、何かに熱中はするけど、寝食を忘れてというほどではない。たまには学校でなにかあったのか兄弟げんかをしたのか、機嫌が悪いこともあるが、いつまでも鬱々としない。ごくふつうのティーンエージャーに見える。

なんでこんなにポジティブなんだろう、とネガティブになりがちな私は不思議だった。特に長男はミドルスクールでいじめにあったので、心配していたのだが、カリフォルニアのグランパに似たのかとほっとしていた。

夫の病名を聞いてからは、切実にそうなってくれたらと思う。


<今日の英語>

It was a given.
それは当たり前のことだった。


親子代々、GMの工場で働いて来たアメリカ人がインタビューに答えて、「ぼくの父も祖父も、高校を出てGMで車を作って、定年まで勤めた。そして引退後は会社が年金も保険もくれた。それが当たり前で、みんな、当然そうなるものと思っていたんだ。」 そのGMが経営破綻で破産法申請。



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 |  医療  |  コメント(2)

さっきの話だけど、もし興味があれば。

2009.06.03 (水)


私が書類を印刷していたら、夫が部屋に入って来て、白いビニール袋をベッドに投げた。

さっき話したことだけど、もし興味があればと思って。」

ちらっと目をやると、ドラッグストアの袋だった。その店では処方薬を出すとき、その薬について詳細な説明が書いてあるパンフレットを入れてくれる。処方したお医者の名前や、リフィルがほしいときの番号なども印刷してあり、レシートの役目も果たす。

躁うつ病について私も勉強しなくちゃちゃなあ。まずパンフレットでも読もうか。

印刷が終わってからビニール袋を手に取ると、黒いつやつやした小箱が見えた。これはパンフレットじゃない。

INTENSE
Arousal Gel for Her
Intensifies female satisfaction

女性のための媚薬ジェル。よりにもよって、こんなときに? ゲンナリ。ため息が出た。さっき(earlier)話したことって、躁うつ病の件じゃないの?

ドラッグストアで処方薬ができるのを待っている間に、探したのだろう。そういえば、ファーマシー(薬局)カウンターの近くには、コンドームやジェルが並んでいたような気がする。私はこんなの使ったことがないから効果のほどは知らないが、これで私がその気になれば、ということか。

性生活のために小道具を使う人も珍しくないだろうし、私は持っていないが嫌悪感は特にない。でも、そこまで積極的になれないのだ。パッケージを開ける気もせず、ベッドの横にあるテーブルにしまった。

しばらくして、夫がまた来た。

わたし 「さっきのは引き出しにしまったわよ。」

「開けてみた?」

わたし 「まだ。」

夫 「あれは、きみのものだよ。ぼくには効かない。」

製品は女性用だけど、結局は自分がしたいからでしょ。でも、夫の気持ちを考えると、そう無碍にもできないので、黙る。

*     *     *

もう何年も前に、やっぱり夫とセックスしたくなくて悩んでいた白人女性をTV番組で見た。夫がロマンチックに盛り上げようと、ベッドルームのライトを変えたり、ロウソクをつけたり、バラの花びらを置いたり演出するのだが、ものすごくプレッシャーを感じてつらいと泣いていた。

ご主人はよかれと思って一生懸命やっているのに、奥さんがいやがるので、ほとほと困っていた。奥さんが疲れないように家事も手伝っていて、ほんとに優しそうな人だった。

彼女は夫がきらいだとか、けんかしていたのではない。でも、どうしてもその気になれなかった。セックスセラピストが出てきて、カウンセリングをしたが、肝心の内容が思い出せない。結局、どう解決されたのか、されないままだったのか。

若い奥さんの大粒の涙だけ覚えている。

私はこんなことで泣くには年を取りすぎているけれど、ジェルなんか差し出されて無視するわけにもいかない。うつ病の薬は性欲を抑えるはずなのに、どうなってるんだろう。

今週は珍しく用事があって、あちこち電話したり、出かけたりしている。「あの話」をしなくていいように、必要以上に忙しいふりをする。いつまでごまかせるかわからないけど。それにごまかして済む問題じゃないけれど。

夫は私がタイ女のことを許したか、もう何年も経っているのだから乗り越えたと思っているのかもしれない。まさか忘れたとは思っていないだろう。もっとも、それ以前からセックスについてはぎくしゃくしていたか。

夫と私はここ数年うまくやってきた。大きなけんかもしないし、穏やかな生活であった。でも、セックスに関しては問題を棚上げしてきただけなのだ。夫は本気で立ち向かうつもりらしい。

1日延ばしにしている自分が身勝手に思えてくる。でも、私にはまだ時間が必要なのだ。そうやって、時間稼ぎをしている私を夫はどう思っているのだろう。


<今日の英語>

What are your business hours?
営業時間はいつですか。


眼科医からメガネができたという電話があった。車で30分かかる。念のために閉店時間を聞いておく。How late are you open? (いつまで開いてますか)や What time do you close today? (今日は何時に閉まりますか)など、いろんな聞き方がある。



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 |  わたし  |  コメント(5)

4度目の正直

2009.06.04 (木)


このところ、お湯のタンクの調子が悪い。やっぱり完全には直っていない。

最初はお湯の洪水。サーモスタットを新品に取替え。270ドル。

2回目はお湯が出ない。バーナーの「必要でない」部品を外し、配線を変更。

3回目は洪水になったときと同じように、タンクの横のoverflow pipeから熱湯がぽたぽた。幸い、大きなバケツを置いていたので、洪水にはならなかった。修理人が来たとき、私は外出していたので、夫が対応した。

夫によると、その人は何が原因かわからないと言って、何もせずに帰ったらしい。「明日の朝8時にオフィスから電話が入ると思います。」と言い残した。

翌朝8時。もちろん電話はない。

期待していなかったので、腹も立たない。9時に私から電話。カスタマーサービスと話したが、彼女はコンピュータに入力されたデータを読むだけ。結局、前の日に何がなされたかわからない。「マネージャーを呼んできます。」と言われて、そのまま待つ。

マネージャー 「修理の履歴を見ると、ここんとこ同じトラブルが続いてますね。」

私 「パイプからまだお湯が漏れるので、直ってないと思います。」

マネージャー 「昨日は何をしたのかなあ。バルブを替えたようですが。でも直っていないんですね。昨日作業した人と確認してから、ご連絡します。」

夜になっても、もちろん電話はない。バケツにたまったお湯を捨てればいいので、子どもたちにシャワーに入るように言う。

長男 「おかあさーん、また水しか出ないよー。」

地下室に行って、ボイラーの温度計をチェック。OK。お湯のタンクの設定を見る。OFF? じゃあ、昨日の修理人がオフにしたまま帰ったってこと?

温度設定をLow と Medium の間まで上げる。お湯がたまるまで時間がかかったが、無事にシャワーにも入れたし、パイプからお湯も出ていない。じゃあ、直ってるんだろうか。

*     *     *

翌朝いったん起きた夫が「昨日の夜11時にみたら、バケツからお湯があふれてたよ。だから、元栓は止めたから。」

やっぱり直ってない。またボイラーの会社に電話。これで4回目である。午前中に修理人を派遣するという。その間に、万が一タンクの買い替えが必要な場合に備えて、ウェブでリサーチ。

1時間ほどして、先日の無口なおじさんが来た。この前の職人肌の仕事ぶりを思い出し、この人ならわかるかも、と期待が高まる。

おじさんは懐中電灯であちこち照らして、昨日の人が何をしたか私に聞いたが、「何もしなかったそうです。マネージャーと昨日話しましたけど、結局何をしたのか、どこが悪いのか、わかりません。」と言うしかなかった。

おじさんは、「Relief Valve の金属部分が腐食してました。部品を持ってきます。1時間くらいで戻ります。」と言って出て行った。

どうしてこの間はわからなかったんだろうと思ったが、追求しなかった。パイプからお湯が漏れるときのチェックリストなんかはないんだろうか。そもそも、昨日のおじさんは何しに来たんだろうか。

職人肌のおじさんは約束通り1時間で戻ってきて、テキパキと部品を付け替えて帰った。

作業レポートは、カーボンコピーなので、字が薄い。それに、作業する人は概してひどい筆跡で読めない。今日のも読みにくいが、Relief Valve を替えたのと、修理代は無料(年間契約でカバーされる)ということだけはわかった。

*     *     *

今のところはお湯も出るし、どこからも漏れていない。4度目の正直で、なんとかこれで持ち直してくれるといいのだけれど。サーモスタット270ドルの元は取りたい。

これだけ何回も故障すると、カスタマーサービスのお姉さんや修理のおじさんと顔なじみ(声なじみ?)になる。

それも困ったものだが、もう怒るとかいらつくというレベルではなくなっているので、不便なのに冷静でいられる。アメリカに来たばかりの頃は、いちいちカッカしていたのが嘘のようだ。

この家に住んで15年。新築のわりには、最初からあちこち手抜きが目立つ家だった。いろんなものが寿命なのかもしれない。

子どもが家を出たら、こんなに大きい家はいらないけれど、もう少し手を入れないと、売るときに売れないと思う。どこまで今の家にお金をかけるべきか。いつどこをどれくらい直すか、金額が大きいだけに難しい。

悩んでいるうちに、時間はどんどん過ぎて行く。


<今日の英語>

Let’s cut to the chase
単刀直入に言いましょう。


フレンチオープンで誰がフェデラーの前に立ちはだかるかという解説をしていたスポーツキャスターが、「遠回しな言い方をやめて、ずばり要点を言います。」と具体的な名前を挙げた。Paul-Henri Mathieu, Tomas Berdych, or Gael Monfils. 全員姿を消して、フェデラーはセミファイナルへ。



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ユートピア・ノルウェイ?

2009.06.05 (金)


世界的な不況にも関わらず、2008年度のノルウェイの経済3パーセントの成長率で、政府予算の余剰金は11パーセント、しかも借金はゼロ、というNYタイムズの記事を読んだ(ちょっと古いその記事はこちら)。

それに比べ、アメリカの財政赤字はGDPの13パーセントに当たる$11trillion、負債総額はアメリカ経済規模の65パーセントだそうだ。もう感覚的に捉えられない数字である。ほとんど破産しているんじゃなかろうか。

ノルウェイは小さめの国だし、北海油田があるからいいのよと思ったが(実際、ノルウェイは世界第3位の石油輸出国)、それだけではない。倹約国家なのだ。石油で儲けたお金を無駄使いしないで、手堅く投資したらしい。同じく北海油田があるのにサブプライムの打撃を受けた英国とは、そのへんが違う。

ノルウェイ人は、たくさん与えられたら、それだけ責任が伴うものだという感覚を持っているそうな。

多くの人がセカンドハウスを持ち、非常に充実した福祉がある。一方で、いつかこの夢は終わるという悲観的な見方も紹介されていた。たとえば、一度も働いたことのない32歳の青年が1ヶ月1500ドルを政府から受け取り、それで生活するだけでなく、ドラッグを買う余裕もある、とインタビューに答えている。

まあ、何もかも完璧というわけにはいかないだろう。

*     *     *

読者の反響は大きく、200件以上のコメントが寄せられた。

国の大きさも背景も違うアメリカとノルウェイを比べるのは無駄だというものから、石油がなくなって老人人口が増えたらどうするのか、首都オスロ以外は違うぞとか、ノルウェイではビール1缶が6ドル、ガソリンは1ガロン10ドルもする、こんなに生活費が高いのはユートピアじゃないとか。

北欧では税金が高いというコメントに対して、カリフォルニア在住者が「連邦税28%、州税11%、不動産税6%。これで45パーセント払ってる。」 決して低くない。それなのに、無料の大学どころか、医療や老後の保障すらない。

ある人は、アメリカは税金のおかげで第3国を攻撃できるスバラシイ軍隊を持てるのよね、と皮肉っていた。

気になった私は世界の税率を調べてみた。なんだかどこも似たり寄ったりに見える。アラブ首長国連邦だけがすっきり0パーセントと太っ腹。法人税や所得税、消費税もない。これは別世界である。

私は高い税金を払っても、元が取れるならいいと思っている。

2007年度の統計で、65歳以下のアメリカ人人口の18パーセントにあたる4600万人が無保険だった(65歳以上には、Medicareという老人医療制度がある)。その後の不景気で、無保険者はさらに増えているはず。しかも、保険があっても、カバーされない治療は自腹だし、自己負担額は年々大きくなるばかり。

ノルウェイで医療や高等教育が無料(というか、税金でまかなっている)なのは本当にうらやましい。ソ連なきあと、唯一のスーパーパワーと称するこの国で、健康保険のない人がこんなにいるのが現実なのだ。

*     *     *

アメリカでは、ノルウェイみたいに6週間の有給休暇なんてありえない。夫は長く勤めて有給がたまったけれど、そんなに長い休みは取れなかった。2週間だって難しい。

日本のように国が定めた祝日も少ない。いわゆるFederal Holidays 連邦祝日はたった9日だけ。あとは州によって、追加であったりなかったりする。

姉と電話で話していて、「明日会社でしょ。もう寝たら。」というと、「明日は、xxの日でお休み。」ということがしょっちゅうある。忙しい姉は、それでも休日出勤があるらしいが、それにしても、いつのまにこんなに日本は祝日を増やしたのか。海の日って何? じゃあ、山の日とか湖の日とかもあるの?

渡米する前の私のイメージは、日本人は働きバチ、アメリカ人は長い休みを取って、残業もしないというものだったが、どうも日本人のほうが休んでいるような気がする。それに、アメリカ人でも長時間労働はそんなに珍しくない。食べるために、仕事を2つかけもちでやっている人もいるくらいだ。

夫も早朝会議に出たり、プロジェクトによっては連日真夜中に帰宅したことがあった。そうしないと、競争に勝ち残れないのだと思った。

不況の今は工場を一時閉鎖したり、残業禁止にしたりして、どこも休みが多くなったらしい。でも、それで給料が下がってしまっては生活が苦しくなるだけだ。

*     *     *

高等教育の授業料は、家が一軒買えるくらいかかる。高収入を見込んで、借金までして大学院に行ったのに、この不景気で就職できず、莫大な借金を抱えて途方にくれている人がニュースに出る。

現在の4年制私立大学の平均年間授業料は25,143ドル。4年間で10万ドル。うちは2人だから、20万ドルか。公立の4年制大学なら 6,585ドルだが、私立・公立とも1年前にくらべて6パーセント値上がりしている。

もちろん、奨学金制度も低利子ローンもあるけれど、個人の負担は大きい。それでも、アメリカの大学進学率は64パーセント。予想より高かった。国別比較データはこちら

なんでも競争、なんでもお金のアメリカに、ふと嫌気が差すときがある。

ノルウェイ ― 私にはじゅうぶんユートピアの条件を満たしているように思える。


<今日の英語>

Just curious.
ちょっと気になっただけ。


夫がぼーっとした顔で起きてきたので、「睡眠薬の効き目はどう?」と聞いたら、「そんなに興味があるの?」と逆に聞き返された。いや、特別に興味はないんだけど、単なる好奇心からちょっと聞いてみただけ。



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躁うつ病の投薬開始

2009.06.06 (土)



【コメントしてくださる皆さまへ: 
お知らせに書いたとおり、しばらくお返事できませんが、ご了承ください。】


血液検査にパスした夫は、 炭酸リチウム lithium carbonate を飲み始めた。

気分安定薬
として有効らしい。気分の振幅を小さくするので、理論的には極端な舞い上がりも落ち込みもなくなるはずである。しかし、まったく効果の出ない患者もいるという。

大きなボトルにぎっしり詰まった白い錠剤。120粒で6ドル(保険無しだと37ドル)。どんなに高い薬だろうと心配していたので、拍子抜けした。ごく単純な化学物質(金属塩)だから、コストが安いのだろうか。とにかく、これが脳みそに届けばいいのだ。

ウィキを見たら、いろんな副作用が挙げられていた。さらに、「明白な必要性が示されない限り長期連用は推奨されない。」とある。物事はそう簡単に運ばないらしい。

それから、なんだか不気味な一文が載っていた。


清涼飲料水の「7 Up」は当初「飲めと書いてあるリチウム塩入りのレモンライム飲料」という名前で売られており、1950年に成分を変更するまでクエン酸リチウムが添加されていた。


どこでも誰でも買えるソフトドリンクに、こんな成分が入っていた?

7 Up のリンクをたどると、


7 Up の名前の由来については、詳らかではない。"Up"は新発売された1920年代から成分が変更される1950年代まで、精神昂揚作用のあるクエン酸リチウムが添加されていたためであるが、(以下略)


では、30年間、消費者は精神安定剤入りのソーダを知らないで飲んでいたのか。

うちにはソーダを置いていない。来客があるときだけ用意する。ふだんは、セルツァー(砂糖も塩も入っていない炭酸水)か普通の水。オレンジジュース、アップルサイダー、麦茶と紅茶である。

私がきらいなので買わないのだが、子どもたちは学校や友だちの家で飲むだろうし、夫も会社の自動販売機やカフェテリアで買ったり、映画館で飲んだりしていた。

だから、ソーダはだめって言ったでしょ。コカコーラなんて、中に何が入ってるかわかったもんじゃない。今度から、水だけ。

*     *     *

リチウムは効果が出るまで数日から数週間かかる場合もあるというデータも見つけた。子どもたちと私が日本に行くまでに、落ち着くといいけれど。

これでパニック・アタックが解消されたら、夫は仕事にもどらなくてはならない。8ヶ月も療養していて、すんなり復帰できるだろうか。ストレスの多い職場だし、大勢が解雇されたあとでどういう状況なのかわからない。

今日のニュースで、アメリカの失業率は9.4パーセントと出ていた。それでも、失業保険の申請ペースは下がったとある。5月は34万人で、見込みよりかなり少なかったらしい。

でも、失業者の21パーセントが15週以上も仕事が見つかっていないのだ。最悪の状態を脱したと仮定しても、経済が回復するまでにはまだ長い時間がかかる。

私も派遣会社に登録して、求人広告を見てはいるが、この田舎には履歴書を送る先すらなく、あぶく銭と知りながら、持ち直したファンドの運用を考える。


<今日の英語>

Can I get you anything?
何か買ってこようか。


処方薬を貰いにいった夫から携帯電話がかかった。「いまスーパーにいるんだけど、ついでに何か買っていこうか。」 いろいろあるけれど、なるべくわかりやすい、間違えようのない品物だけにした。めったに買出しに行かない夫は、ブラウニーやデニッシュも買ってきた。そんなの頼んでないけど?



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アメリカ人の社交辞令

2009.06.07 (日)


日本は建前の社会だと言われるけれど、アメリカにもなかなかどうして本音と建前はしっかりある。

私は政治やビジネスの世界には疎いので、ふだんの人付き合いからそう思うだけなのだけれど、人間関係を円滑にするためには、どこの国でも本音と建前を使い分けているのではなかろうか。

アメリカの場合、その使い分けがうまいと思う。

フェア(公正、公平)
であることが重要な国なので、相手がすごいと思ったら、本音では憎らしくてもあっさり褒める。むしろそのほうが自分の懐の深さを示すことができる。でも、自分もすごい(正しい)という点もしっかりアピールし、味方につけようとする。

日米の政治家を比べると、アメリカのほうが何枚も上手に見えるというか、日本の政治家がお粗末過ぎるのか。

*     *     *

子どもたちがまだ小さいとき、スクールバスが停まる所まで(と言っても歩いて2分)毎朝付き添った。近所のお母さんたち6~7人は全員白人(オーペアやヒスパニックのベビーシッターがたまにいた)。たった10分程度なのに、バスが来るまで一緒にいるのはずいぶん気疲れした。

しかも、一人を除き、みんながこれでもかというほどしゃべりまくった。何年か経って、よそのお母さんたちと知り合うようになり、うちの近所は特別に押しの強いおしゃべりが揃っていることがわかった。PTAや学校、地域のことにもしょっちゅう口を挟む人たちである。

疲れた私は夫に「たまには代わってよ。」と頼んだが、夫は「女ばっかりなんて、話すことないよ。特にこのへんの奥さん連中にはかなわん。」と逃げた。

最初のころ、私はもっぱら聞き役に徹していたが、挨拶だけはしなくてはならない。それに黙りこくっているわけにはいかない。

Hi. How are you? と聞かれて、教科書みたいに I’m fine, thank you, and you? と答えたが、それでは芸がないなと思い、バカ正直に「今日は風邪気味で気分がよくないの。」とか「昨日はあちこちかけずり回って、くたくたよ。」などと言ってみたりした。

ところが、よそのお母さんたちのやり取りを聞いていると、決まって Good! とか I'm doing great!としか答えないのに気がついた。

まあ、みんな元気でトラブルがないんだなあと思ったが、そうではなかった。それに続いて、みんなが話すことはそれこそ、自分あるいは家族の病気、家のトラブル、親戚や学校とのいざこざ、…。そのうち、もーやってらんないわよ~、ほんっとに頭に来るわ!などと叫ぶ。

あら、じゃあ全然グッドでもグレイトでもないんじゃないの。さっきのにこやかな態度はどこへ?

そんなことが続いて、How are you? というのは文字通りに「あなたの状態や如何に?」と問われているのでなく、それゆえにどんなに不調であろうと、とりあえずグッドなりグレイトなりファインなりのよい返事をするという暗黙の了解になっているのだと思った。話はその後だ。

出会い頭というか、表向きはあくまでもポジティブに。それはそれで、単純でわかりやすい。

*     *     *

子供がもう少し大きくなって仲良しができると、アメリカ人のお母さんが、Let's get together. I'll call you. いっしょに遊びましょう。電話しますね。と言う。

ところが、これこそが社交辞令なのだ。

よっぽどご近所か子供同士がすごく親しい以外は、そこから発展しない。付き合うのも出かけるのもきらいな私は、それでかまわないのだが、むしろもし電話があったらどうしよう、何と言って断ろうなどと心配した。それはほとんどの場合、杞憂だった。

そのうち子どもはもっと大きくなって、自分で友だちを見つけてくる。そして本人あるいはお母さんが電話して、プレイデートをセットアップする。そうすると、本当にいっしょに遊び、また電話をして誘い合うことになる。

英語で I'll call you. と言われると、いかにも約束のように聞こえるが、期待しないことにした。相手が本気かどうかは、具体的な日時や場所が出てくるかどうかで判断する。「じゃあ、明日の午後1時、わたしのうちでどう?」という段階までは、「じゃあね。」くらいに考える。

私はおもてなしが苦手なので、細かいことを気にしないようなアメリカ人でも来てほしくない。気にしないようで、案外見ているものだ。そして、近所の奥さん同士で噂話をする。

でも、どんなにつまらなくても、I had a great time! と満面の微笑みと共に言ってくれるのは保証付き。それがマナーだから。

ついでに、「今度はうちにもぜひ。」なんて言われるかもしれない。でも、その後連絡がなくても気にしない。ただの言い回しなんだから、気にしないのが一番である。


<今日の英語>

It's not a fluke.
まぐれじゃない。


フレンチオープンで4年連続優勝したナダルを4回戦で破ったスウェーデンの Robin Soderling. まぐれでない証拠に、その後も勝ち進み、決勝でフェデラーと戦う。



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面識もない人にお金をあげたいって

2009.06.08 (月)


「きみはこういう話はきらいだろうけど。」と夫が切り出した。

私がきらいな話題はたくさんある。

夫 「ぼくが参加してるオンラインゲームを知ってるね。そこの大人グループがあって、ある人がお金を集めて、あるメンバーに贈り物をすることになったんだ。」

わたし 「そのゲーム、子どもたちもやってるやつでしょ。どうして相手が本当に大人かどうかなんて、わかるわけ?」

夫 「子どもたちは子どものエリアしかやってない。それにぼくはもうこのグループとは半年間いっしょにプレイしてるから。」

わたし 「(うさんくさい話…)なにを買ってあげるの? どこの人?」

夫「何を買うかはまだ決まってないけど、彼らはミズーリにいる。」

わたし 「いくら?」

夫 「150ドル。Money Order 郵便為替で送ることになってる。」

なんで一度も会ったことがない人に150ドルもあげなくちゃいけないの? どうしてこの人はこんな話に引っかかるんだろうか。それとも、ゲーム友だちというのは嘘で、ほんとはもっと違うことをしているのだろうか。それとも、躁うつ病の症状?

わたし 「この不景気に、よくみんな150ドルなんて出せるわねえ。」

夫 「うーん、それはそうなんだけど、みんなで決めたから。いいかな、150ドル。」

いいも悪いも、うちにあるお金は私が投資で儲けた利益以外は、すべて夫が稼いだもの。

わたし 「あなたがあげたいなら、そうしたら?月曜日にATMで引き出してくるから。」

夫 「今日、ピザをもらいにいくとき、自分で出してくるよ。新しいATMを試さないと、きみたちが日本に居る間に困るから。」

わたし 「1か月分の現金は用意しておくわよ。それに、ほとんどクレジットカードで生活できるでしょ。今日出したって、郵便局は開いてないからマネーオーダーは作れないし。」

夫 「まあ練習がてら行ってくるよ。許可してくれてありがとう。」

私がノーと言ったら、どうするつもりだったんだろう。簡単にあきらめたとは思わない。私がお金の管理をしているけれど、150ドルくらいどこからでも動かせる。

そして、夫は150ドルのはずが200ドル引き出してきた。余分の50ドルは私にくれた。

わたし 「マネーオーダーを郵送するということは、そのゲームプレーヤーの本名と住所がわかってるのね。(まさかあなたの名前と住所も明かしてないでしょうね?!)

夫 「まあ、そういうことになるね。」

*     *     *

夫は教養もあるし、頭も悪くない。それなのに、どうしてこんな話にのるんだろう。

どう考えても、詐欺としか思えない。150ドルという中途半端な金額もあやしい。まあ1500ドルや15,000ドルでなくてよかったけれど。

何人がこの計画に加わっているんだろう。4人としても600ドル。赤の他人に上げる金額じゃない。お金を賭けてゲームして負けたんだろうか。

それともゲームは単なる口実で、ほんとは別の取引があるのか。相手が男か女かどうかもわからない。ほんとにミズーリなんていう証拠もない。夫は自分で郵便局に行くと言う。

私はもともと疑い深い性格だから、オンラインで読むことは半分しか信用していない。夫は無防備すぎる。電話でのアンケートなんかにもペラペラしゃべる。私はどんな調査だっていっさいお断り。すぐ電話を切る。

本当は夫にATMの使い方を覚えてほしくないけれど、クレジットカードでキャッシュ・アドバンスを使われたら、もっと大変なことになる。

クレジットカードにもあいかわらずヨーロッパの不審なチャージがあり、夫に確認すると全部自分が使ったものだと言う。

私がたびたび聞くので、夫も自覚しているし、私が不審に思っていることも知っているはず。一つ一つの金額は50ドルや100ドルでも、合わせたらとっくに1000ドルを超えている。そんなお金があったら、貯金すべきじゃないの?

これが躁うつ病のせいなのかどうか、わからない。

冷静に考えれば、こんなおかしな話はない。夫が郵便局に出かける前に、もう一度説得してみようか。


<今日の英語>

If it sounds too good to be true, it probably is.
話がうますぎると思ったら、たぶんその通り(ありえない話)である。


NYタイムズのビジネス欄で、在宅ワークについてのアドバイスがあった。経験不要、簡単に儲かりますなんていううまい話はない。登録料だの秘密マニュアルだのにお金を払ってはいけない。特に不景気のときは、そういう詐欺に引っかかりやすいので注意。



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歯の矯正 次男の番

2009.06.09 (火)


2006年に始まった長男の矯正がようやく終わりつつあるところで、今度は次男を矯正歯科に連れて行くことになった。

長男は上の前歯に少しだけ隙間があり、永久歯が生え揃う前から矯正しなくてはならないことはわかっていた。その隙間以外はそれほど歯並びが悪くなかったので、日本だったら矯正の対象にはならなかったかもしれない。

きれいな歯並びを重要視するアメリカでは、歯の矯正は一種の投資であり、この不景気でもお金を惜しまない。優先順位が高いのである。少し前のNYタイムズにも関連記事があった。経済でも医学でもなく、ファッションのページ。矯正はしょせん審美学上の問題ということか。

アメリカでも前歯が抜けていたり、タバコのしみが付いていたり、ガタガタだったりする人もいる。でも、きれいな歯はステータス・シンボルだから、普通は気にすると思う。

私も子供たちにはまっすぐできれいな歯を持たせたい。一生の財産になる。

たまにイギリス人などをTVで見ると、歯並びの悪さにぎょっとする。一般人ならわかるが、TVに出るような人でもそうなのだ。価値観の違いなのか、アメリカ人が白いまっすぐな歯に固執しすぎているのか。

子どもが生まれる前に、日系の会社でアシスタントをしたことがあった。日本からの出張者がときどき来たのだが、中に一人たいへんな乱杭歯の男性がいた。有能そうで礼儀正しく、話していて気持ちのいい人であったが、彼が発言するたびにどうしても目が口元に行ってしまって困った。

私も日本にいる間は人の歯並びなど気にならなかったが、アメリカに暮らしているうちにアメリカ人のきれいな歯基準になってしまったらしい。

最近は日本でも矯正する人が増えたと聞く。駐在の奥さんたちも、アメリカにいる間に歯を治す人がいるようだ。

*     *     *

うちの歯科保険を調べてみたら、最初の器具装着その他は25%、その後のメンテナンスや調整は50%がカバーされるとあった。最大2500ドルまで。子どもの場合は23歳までという年齢制限がある。

これは大きい。夫が会社に籍を置いている間にやっておかねば。

長男の記録を見ると、総請求金額は4630ドルだった。一括払いしたので、6%割引してくれた(割引なしでは4925ドル)。2006年1月から2008年9月までの2年9ヶ月間で、保険会社が2125ドルを支払った。

先月、新しいリテイナーの型を取った。それも保険でカバーされると言われたが、そろそろ限度額に近づいてきた。これで最後だといいけれど。

矯正中は、何度も調整に通わなくてはならない。期間は3週間だったり、2ヶ月や半年だったり、いろいろだが、うちから車で片道30分。私がほとんど付き添った。主婦なので時間の融通は利くが、それでも「また歯医者か~。」とときどきいやになった。

でも、おかげで長男の歯はきれいに並んでいる。年2回のクリーニングでも虫歯なし。

*     *     *

次男も何年か前にごく初期の虫歯が2本あった以外は、虫歯とは縁がない。ただし、次男はいまだに指しゃぶりをするし、爪を噛む。そのせいか、下の前歯数本がまっすぐではない。矯正が始まったら、癖も直るだろうか。

一般歯科のドクターGはPerfect teeth がほしいなら、ちょうど今が矯正する時期ですね。上の歯も傾いているのがあります。」と言った。私は次男の上の歯並びはいいと思っていたが、見る人が見ればそうではないらしい。

最初の予約は7月15日。初回コンサルテーションは無料で、そのあと契約書にサインして治療が始まる。

本来なら、9月の新学期までに慣れるように夏休みが始まってすぐ braces 歯列矯正用器具をつけるらしいが、日本滞在中に何かあったら困るので、日本から帰ってから始めたいとナースに伝えた。

投資と考えなければ、こんな大金と時間をかけて矯正なんかやっていられない。

長男によくよく言い聞かせる。

「あんたの歯には5000ドルかかってんの。頬づえなんかしたら、せっかくの歯並びが悪くなるから絶対にしちゃだめよ。それに真剣にフロスをして、リテイナーを忘れずにはめること。いい? 5000ドルよ!5000ドル!」


<今日の英語>

You deserve it.
あなたは優勝するにふさわしい。


フェデラーの全仏優勝記者会見で、記者が一言。あなたはその資格が十分にあります。あなたの実力であり、当然の結果です。このフレーズは悪いことにも使われる。その際は、自業自得、当然の報いという意味になる。



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もう送金してしまった

2009.06.10 (水)


血液検査に行って来た夫が、「薬のせいか、ボンヤリして郵便局を通り過ぎるところだったよ。」と言う。

郵便局? じゃあ、もう150ドルを送ってしまったの? クリニックと郵便局は正反対の方角にある。家のことは何もしない夫が、こんなに素早く動くにはそれなりの理由があるはず。

「ブログに150ドルのことを書いたら、詐欺じゃないかってコメントされたわよ。」と言ったが、フンという態度で聞こえないふり。

「どうやってその人の名前と住所がわかったの?」

MySpaceプライベート・チャットしたんだ。」

「何人がその贈り物計画に参加してるのよ?」

「何人だったかな。思い出せないな。」

そう言って、部屋を出て行った。

私はマイスペースもチャットもやらない。でも、150ドルもお金を出す企画に何人が参加しているのか思い出せないなんて、ありえない。

夫はを付いている。


*     *     *

郵便局でマネーオーダーを作ると、レシートをくれる。そこに相手の名前や住所が書いてあった気がする。財布に入れたままか、どこかに隠したか。名前だけでもわかれば、検索できるかもしれない。

チャンスは、夫がシャワーに入っているときしかない。出かけるときは財布を持って行くから。

夫婦の間に隠し事があってはいけないとは思わない。私は夫がゲームに何時間費やそうと、誰と電話しようと好きにさせている。でも、お金がからむときは別。今日は150ドルで済んでも、この次があるかもしれない。そうやってお金を巻き上げられたら危ない。

夫の性格からして、のめりこむ可能性はある。

だからゲームはいやなのだ。仮想世界のはずが、実際にプレイしているのは生身の人間だから、こうやってへんなことが起きる。

夫を直接問い詰めることも考えた。あの150ドルは、本当は何のために使ったの? でも、今日の様子では夫は白状しない。むしろ警戒する。

だから、自分で情報収集するしかないと思う。

またタイ女のときみたいだったら、どうすべきか。最初のタイ女のときは、「ビジネス・カンファレンスで知り合って、タイの田舎の校長を紹介されて、その学校にコンピュータを入れる計画があり、その資金集めに協力する」という名目で5000ドルを送金した。もちろん真っ赤なうそで、タイ女はただの売春婦だった。長続きしなかったようだが、夫からお金を巻き上げるなんて朝飯前だっただろう。

そんなことがあってから、私はお金の動きが最初のヒントだと思うようになった。もしマネーオーダーを受け取った人の名前がわかって、それが女であっても、本当にゲーム仲間かどうかまではわからない。お金の用途も調べられない。

でも、会ったこともないゲーム仲間の贈り物というありえない話は置いておいて、マネーオーダーの受取人という「現実に存在する人間」を突き止めないことには始まらない。


<今日の英語>

I have to figure something out.
どうにかしなくちゃ。


NYタイムズで紹介されていた、中西部からNYにやってきた若い女性。仕事が見つからない上に、持病がある。今は古本屋のレジやベビーシッターで食いつないでいる。自宅から大学に通っていたので、これ以上親に迷惑はかけられないんです。自分でなんとか解決しないと。



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なかなかチャンスが来ない

2009.06.11 (木)


躁うつ病治療薬の副作用か、夫はぼんやりしている。今日は午後セラピーに行く予定だったが、キャンセルしてしまった。

出かけないとなると、たぶんシャワーも入らない。昨日届いた本を読みながら、寝転がっている。夫のズボンを持ち出す口実もないし、夫がお茶を入れたり食べたりしている隙に慌ててやれることじゃない。

夫の部屋にはバトラーというスタンド式ハンガーがあり、そこにズボンやシャツがかけてある。

ときどき頼まれて、ズボンを階下に持って行ったことがあるが、ポケットにはいろんなものが入っていて、下手に持ち上げるとポケットからざーっと出てしまう。バラバラの小銭、クリップ、頭痛薬、レシート、鍵、USBメモリー、…もちろん財布もある。

しかも夫は左利きなので、私ならこっち側に入れると思うところに入れない。それで、何かを探すときはいつも時間がかかるのだ。

もしかしてパソコンの横にでも置いたかもしれない。それくらいなら、さっと見渡せるが、夫は眠りが浅い。ちょっとした物音ですぐ目を覚ます。睡眠薬の効き目もよくわからない。

ここはあせらずにじっとチャンスを待つことにする。

*     *     *

先日読んだ、セックスを取引の材料にする話をふと思い出した。

夫にとって(たぶん男にとって)セックスとは性交を意味するんじゃないかと思う。ほかの女性は知らないが、私にはあんなこと気持ちよくない。早く終わってほしいと思う。あとの処理もうっとうしい。

子どもが生まれる前からセックスレス気味だったのに、二人目を生んですぐに卵管結紮をした。もともと子育てに自信がなく、最初の子を産むまでに5年も迷った私である。でも、長男を生んだら、やっぱり兄弟がほしいと思い(そうしたら、子供同士で遊んで、いくらか私を解放してくれるだろう)、次男を生んだ。

それ以上は私の気力も体力も持たないと思い、さっさと手術をしたのだ。夫にパイプカットしてもらおうとは考えなかった。だから、それからは避妊する必要は全然なくなった。

皮肉なことに、肝心のセックスをしないのだから、なんのために手術をしたのかわからない。

「150ドルの真相を教えてくれたら、セックスしてもいいわよ。」と言ったら、夫はどう反応するだろう。

真相でなく、別の作り話をするだけかもしれない。マネーオーダーのレシートはどこかに捨ててきたと弁解するかもしれない。それでは、取引は成立しない。夫が得をするだけで、私はますます穏やかではなくなる。

あるいは、バカにするなと怒るかもしれない。どっちみち、あまり賢い方法とは思えない。

明日は午前中に血液検査、午後に精神科医の予約がある。そのどちらかが最初のチャンス。


<今日の英語>

They have overextended themselves.
彼らはお金に関して無理をしすぎました。


大学を出たけれど、アルバイトしか見つからない女の子。「両親は、私のために返済能力を超える債務を負ってしまいました。これ以上、頼るわけにいきません。」 overextend は問題が生じるほどに使い過ぎる、拡張し過ぎる。overextend oneself は支払い能力以上の債務を負うという意味になる。



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一寸先は闇

2009.06.12 (金)


近くの町で交通事故があった。小学1年生の女の子とお母さんが車を降りて歩き出したところに、酔払い運転のSUVが突っ込み、2人とも亡くなった。

女の子はうちの学校区に通っていたので、教育長から一斉メールが来た。母娘とも面識はないが、1年生と言えばまだ7歳か。お母さんも30代半ば。胸が痛んだ。

学校からのメールには、家族のプライバシーを尊重してくださいとあったが、ローカル新聞に写真も名前も出ていた。お父さんと5歳の男の子が残されたと書いてある。お母さんは地元の人で、ルター派教会のメンバーであり、両親ともPTAや子どものスポーツに熱心だったそうだ。

事故発生の場所は、私もたまに通る道だった。T字路にごく小さいショッピングセンターがあり、女の子はその一角にあるダンス教室に通っていた。そういえば、レオタードやチュチュを着た少女たちをよく見かけた。

私に娘がいたらクラッシック・バレエを習わせたいと思っていたし、髪を結い上げて背筋を伸ばして歩く少女たちがなんとも愛らしく、息子たちに「見て見て!かわいいわねえ。」と繰り返しては、うんざりさせたものだ。

SUVは母娘をなぎ倒してそのまま建物に突っ込んだ。そこは駐車場も狭く、路肩もなく、信号のすぐ隣に店舗があるようなところだ。このあたりでは、一番古い地域なのだろう。今の交通量をさばける道ではない。

*     *     *

ふだん事件とは無縁の小さな町なので、これがトップニュースだった。学校はカウンセラーを召集して、クラスメートの死にショックを受けている小学生の対応に追われている。

2週間ほど前には、ハイスクールにお子さんがいたお父さんがやはり交通事故で亡くなった。3年前には、うちから2つ角の先で、高校生がスピードの出しすぎでカーブを曲がりきれず、木に激突して即死したのだった。

アメリカは、ローカルの道路でも日本に比べると自動車の速度が速いと思う。日本より道路の幅が広いせいだろうか。私は日本で運転したことがないので、よくわからない。歩いている人は少ないのだが、ダンス教室の母娘のように、駐車場でひき殺されることだってあるのだ。

彼女たちは、昨日が人生最後の日だとは夢にも思わなかっただろう。いつものようにダンスを習いに行くだけだったのだ。そのときお父さんは息子の野球チームのコーチをしていた。悲報を聞いてかけつけたが、間に合わなかった。

お葬式は日曜日。お母さんが娘さんを抱っこする形で棺に納められるという。

*     *     *

うちは、夫が躁うつ病で休職中でも、生死に関わるわけじゃない。仮に明日レイオフされても、退職金とこれまでの貯金でどうにかやっていけると思う。子どもたちも飛びぬけて優秀ではないけれど、毎日ちゃんと学校に通い、仲がよく、健康だ。私は仕事が見つからないけれど、食べるのに困っていないし、のんびり気ままに生活している。

暴力もなく、お互いに「ありがとう」をよく言い、たまに夫が怒ったり見え透いた嘘を付いたり、子どもたちが兄弟ゲンカをしたり、私の機嫌が悪かったりする以外は、なんとも穏やかな毎日。

これが突然終わる日が来るかもしれない。交通事故が身近に起きて、ハタと気が付く。

私の母がよく言っていた。「命あってのことだでやあ。」

幼かった長男が勉強に身が入らないのを私が嘆くと、「長男くんはそういう子ですから、それでいいのです。元気なのが一番。息をしていてくれたらいいのです。」と母が書き送ってきたのを思い出した。


<今日の英語>

Better safe than sorry.
用心するに越したことはない。/転ばぬ先の杖


50人の豚インフル感染が確認された香港で、小学校と幼稚園が14日間休校になったのを受けて、ロンドン大学教授がBBCのインタビューに答えていた。危険を冒して後悔するより、まず安全第一にしたほうがいいでしょう。折りしも、WHOが警戒レベルを Phase 6 Pandemic 世界的大流行に引き上げたところ。



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レシートの行方

2009.06.12 (金)


夫がシャワーに入っている間に、バトラーに掛かっているズボンを探ってみた。

ボタンの付いたおしりのポケットに財布の手ごたえがあり、ボタンを外そうとしたが硬くてうまくいかない。あせっているからか、中身がざーっと出ないように片手でズボンを持ち上げているからか。

ようやく財布を取り出して、いったんズボンをバトラーに戻す。

財布の中には紙幣とATMのレシート、それにクレジットカードやドライバーズライセンスが入っているだけ。マネーオーダーについての書類は見つからない。財布を元のポケットに戻して、ボタンをかけた。

残るは左右の深いポケット。またズボンを持ち上げて、一つずつ探る。鍵や小銭が手に当たる。紙片を出してみたが、ピザ屋やサンドイッチショップのレシート、ガソリンスタンドのレシート、処方箋しかない。

マネーオーダーの受取人の名前や住所を書いたものは一つもなかった。絶対に郵便局にメモを持っていったはずである。いったいどこにあるのか。

夫のシャワーは早いので、これ以上うろうろしていられない。パソコンの周辺を見回したが、それらしきものは見つからなかった。

*     *     *

薬が強すぎるのか、夫はふらついて運転ができないと言う。クリニックには私が運転していくことになった。今日はもうチャンスがない。

精神科医は、これまで朝晩2錠ずつ計4錠飲んでいたリチウムを半分に減らすよう指示した。夫がまた自分で運転できるようになったら、彼の外出中にじっくり部屋を捜索できる。

待てよ、もしかして夫の車に隠したとか?

夫のは一昨年買ったセダンだけれど、V6エンジンがパワフルすぎて私には乗りこなせない。だから、余程のことがないかぎり、私は夫の車を運転しない。しかも全員で出かけるときは、たいてい私の車である。

夫の車はまさに彼だけの個室。

車のドアの開け閉めは、ガレージからかなり響く。やはり夫がシャワーに入っているときがいちばん安全で確実と思われる。


<今日の英語>

We are all in this together.
私たちはみんな同じ境遇にいます。


WHO事務局長マーガレット・チャンが「2009年インフルエンザ・パンデミックの始まりです。」と宣言したのに続いて発した一言。皆がこれに関わっているのですから、一丸となって取り組みましょう、という呼びかけでもある。この先、インフルエンザがどんな風に広がるか収束するかわからないけれど、全世界が運命共同体であることは確か。



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大腸内視鏡検査に備えて

2009.06.13 (土)


来週、初めて大腸内視鏡検査 colonoscopy を受ける。

処置前の準備や当日の段取りについて、ドクターSから話を聞いてきた。

初対面のドクターSは名前と顔つきからして中東系の女性だったが、アメリカ風の英語を話した。気さくなおばさんといった感じで、私の質問にも丁寧に答えてくれた。

私は父が65歳で大腸がんになったため、ここ数年、主治医と産婦人科医の両方から検査を受けろとせっつかれていたのだが、延ばし延ばしにしていた。ガイドラインの50歳になってからでいいやと思っていたけれど、夫の健康保険がいつ切れるかわからないので、今のうちにやっておこうと考え直した。

検査そのものは、麻酔があるのでぜんぜん心配していない。それよりこわいのは準備のほうだ。

2000年3月に当時NBCの Today Show アンカーだった Katie Couricコロノスコピーの実体験レポートをしたのだが、検査前に彼女が飲んだ大量の白っぽい液体を見て、恐怖に陥った。好き嫌いの多い私は、ちょっと変わった飲み物も苦手。それを何リットルも一気に飲まなくてはいけないのか。

夫を42歳の若さで大腸がんで亡くしたケイティは、視聴者を啓蒙するためにTV中継までしたのだが、私には逆効果だった。もっとも、番組のあとでコロノスコピー受診率は20%も上がったらしい。

50歳を過ぎている夫が、去年やはり初めてのコロノスコピーをした。ところが、白い液体ではなくて、薬局で下剤を買い、それを水に溶かして飲んだだけだった。検査の前々日あたりから食べてはいけないものなど食事制限があったくらいで、医学が進歩したのかなと思った。

もちろん下剤と空腹は大変らしいけれど、あの液体に比べたら我慢できる。というのも、私は日本で会社勤めをしていたころ、胃の検査でバリウムを飲まされ、検査担当の人に向かって吐き出したことがあるのだ。それ以来、ああいう飲み物は一切ダメになった。

ところが、ドクターSのクリニックでは Trilyte トライライトという一番副作用がなくて一番効果的だが一番まずい下剤を使うというではないか。

先にナースから受け取ったプリントを読むと、コロノスコピーの一週間前からの注意事項が3ページにわたっている。Trilyte のところを読んで、やっぱりやめときゃよかった…と心が重く沈む。

*     *     *

大腸がん検査の痛みは医者の技術と経験によるところが多いという。

私 「これまで何回くらいコロノスコピーを施術なさいましたか。」

ドクターS 「二千回くらいですね。」

私 「みんな、Trilyte を規定通り全部飲んできたんでしょうか。」

ドクターS 「とんでもない!飲めない人もいます。検査を始めれば、すぐわかりますよ。」

私 「前夜に4クォート (3.7リットル)、当日朝に2クォートとありますが、もし飲めなかったらどうすればいいですか。」

ドクターS 「前夜は最低限2クォートです。だから、4クォート飲めなくてもまあ大丈夫。でも、当日朝は絶対に2クォートです。それは妥協できません。」

ドクターは、レモンをかじると飲みやすいとアドバイスしてくれた。

話のついでに、いろいろ質問した。

「日本人は西洋人にくらべて腸が長いと聞いたことがありますが、本当ですか。」

ドクターSは初耳だと言った。もし本当ならコロノスコピーの時間も長くなるかなと思ったのだが、そんなことはないのか。

実際の検査は火曜日の朝11時30分から。10時30分までに病院に着かなくてはならない。全身麻酔なので、夫に送り迎えをしてもらわねば。それまでに運転できるようになってもらわないと困る。付き添い無しでタクシーに乗るのは不可だとプリントに書いてあった。

*     *     *

家に帰って、Trilyte について検索しまくる。

みんな苦労しているようだ。ジンジャーエールを飲めとか、レモン味のキャンディをなめるといいとか、フレーバーを売ってるからそれを混ぜろとか、ストローを使えとか、たくさんの書き込みがあった。

味もそうだが、大量の水分を飲み下すのも苦痛らしい。中には下剤が効かない人もいた。検査前に指示通りできなくて、コロノスコピーが完了せず、また最初から飲み直しというかわいそうな人も少なくなかった。

ここは1回で終わらせるように、なんとかやるしかない。

今年、アメリカで大腸および結腸がんになる人は15万人、そして5万人の死亡が予測されている。50歳以上は全員大腸がんのスクリーニング(コロノスコピーではない)が推奨されている。

でも、40歳から49歳のコロノスコピーで大腸がんが発見されるのは非常に稀、つまりあまり意味がないという New England Journal of Medicine の記事もあった。早まったか。

ドクターSによると、もしポリープがあれば次回は3年後、なければ5年後にもう一度コロノスコピーを受けることになるそうだ。それまでに、もう少し人道的な方法を誰か開発してくれないだろうか。

絶食は月曜日から。固形物は何も食べてはいけない。液体も午後6時まで。

たった1日、2日のこととはいえ、食いしん坊の私にはつらい。でも、日本に帰る前に痩せなくてはいけない。これで一挙にダイエット!と思えばいいのだ。

姉にそう言ったら、「絶食のあとって、反動がこわいのよね。」


<今日の英語>

Think what is at stake.
何がかかっているかを考えなさい。


ラジオで、アメリカの食品産業についての討論があった。いろんな食べ物が大企業によってコントロールされている。ニワトリから胸肉がたくさんとれるように改良されたり、バイオエンジニアリングで食の安全性がおびやかされている。目先の利益や便利さでなく、本当に問題になっていることは何なのか、考えてみてください。

at stake は賭けられている、危機に瀕しているという意味。たとえば、
My honor is at stake. 私の名誉がかかっている。



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伯父の死

2009.06.13 (土)


朝早く、横浜の姉から電話があった。

「橋向のおじさんがね、3日前に急に具合が悪くなって入院してたんだけど、さっき亡くなったんだって。」

母の姉、あさこおばさんの夫である。突然のことで言葉が出ない。

アメリカに来てから、こういう電話を受けたのは何度目かなとぼんやり考えた。

父、祖母、あけみちゃんとこの叔母さん(父の妹)、祖父の姉、長い付き合いの会計士さん。それほど親しくない人については、日本に帰ったときに初めて知ることも多い。

もちろん、子どもが生まれただの結婚しただの大学に受かっただの、吉報もあるが、なぜかそういうのはあまり記憶に残っていない。

死亡通知でなくても、入院していたり、老人ホームに入っていたりして、えっ、そうだったの?と驚くことがよくあった。母は海外に住む私に連絡してもしかたないと思っているのかもしれない。

実際、私にできることは何もない。渡米してから葬式のために帰国したことは一度もない。誰も私が帰ってくるとは思っていない。

「それで、電報を送ってほしいのよ。住所なんかは後でメールするから。」

「わかった。私もどこから送れるか、調べとくわ。おじさん、いくつだったの?」

「82か3じゃない? もうどこの家でも昔みたいに自宅で葬儀なんかできないから、町民会館だったところが葬儀場になってて、そこで全部やってくれるんだって。おばさんもうちも何もしなくてもいいのよ。

*     *     *

3年前に会ったときは肝炎も小康状態で元気そうだった。輸血の際に感染したと聞いて、アメリカなら訴訟もんだわと私は思ったが、はっきりした証拠がなかったのか、弁護士をたてて争うのがいやだったのか、おじさんもおばさんも病院を訴えなかった。

ずっと通院していたけれど、ずいぶんよくなって、おばさんと2人で出かけたり、運転できない母をあちこち連れて行ってくれたりしたと聞く。声を荒げたことのない、いつもにこにこと穏やかな人だった。

とても律儀で、私と子どもたちが帰る前にわざわざ顔を見に来てくれた。それが最後になった。

komattaちゃんもぼくたち(うちの息子たち)も元気でおやりんよ。ぼくたちはいい顔しとるなあ!またおいでんよ。今度はいつアメリカから来るだかね。」

おじさん、あと1ヶ月で帰るとこだったのよ。


<今日の英語>

It takes the wind out of you if you’re not independent.
自立していないと、決意がにぶるものです。


ブルックリンのアーティストが経済的に親に頼っている現状を嘆いて。アーティストとしてやっていこうという自信がなくなりますよ。take the wind out of one's sails は、風をいっぱいに受けている帆船の帆から風をどかしてしまうと船は動かないことから、勢いがなくなってやる気をくじくの意。



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ドラッグストアにて

2009.06.14 (日)


ドクターSが処方箋をメールしてくれたドラッグストアに向かう。今日の薬剤師は初めて見るおばさん。

名前を告げると、奥からうちの猫より大きいプラスチックのボトルを2本持ってきた。私の顔から血の気がすーっと引いて行く気がした。やっぱり、NBCでケイティが飲んだのと同じやつか。

おばさんは「あなたの保険は1本ずつしか承認しないから、2回レジを打ちますね。」と言い、説明を続ける。またしても、保険会社のおかしなルール。

「このラインまで水道の水を入れてください。いったん水を入れたら48時間しかもちません。パウダーをよく溶かしてね。」

私 「パウダーは白ですけど、水を入れたら、やっぱり白い水になるんですか。」

おばさん 「透明です。それから、フレーバーのパッケージが付いてるから、よければ使ってみて。でも、全部使わなくていいの。なんだかしらないけど、全部入れちゃった人もいるのよね。」

小袋が数個ボトルの上に貼り付けてある。cherry  の文字が見える。さくらんぼ味? 私はさくらんぼも好きじゃない。全部入れると味が強すぎるときは、パッケージの半分でもいいっていうことかな。

(家に帰って、よくみたら、cherry, lemon lime, orange, citrus berry, pineapple の5種類。好きなのを選べばいいのだなとわかった。もしかして全部入れちゃった人というのは、この5種類をいっぺんに混ぜたということか。さすが、アメリカ人…。)

*     *     *

他にお客がいないのをいいことに、おばさんにいろいろ聞く。

私 「コロノスコピー、やったことありますか。」

おばさん「ありますよ。ぜんぜん痛くなかったわ。全身麻酔じゃなかったから、意識はあったの。」

私 「このトライライト飲みました?」

おばさん 「ううん、私は他のだった。でも、それで脱水症状起こして、もともと高血圧なのに血圧が急上昇、脈拍もあがって、そっちが大変だったわ。」

ドクターSの言ってた副作用か。私も高血圧だから、やっぱりトライライトで正解かも、と自分を納得させようとする。

私 「私のお医者さんは、トライライトのほうが安全だって言ってましたけど、ものすごい味らしいですね。飲めるかしら。どうしよう。」

おばさん 「どの薬でも大量に水を飲むのは大変よね。私もそうだった。これは冷蔵庫に入れて冷やしてもいいのよ。がんばって。Good luck!

グッドラックはこういうときのきまり文句だけど、おばさんは本当に応援してくれてる気がした。

スーパーで、レモン味のキャンディと本物のレモンとジンジャーエールを買い、これで準備完了。

*     *     *

家に戻ると、夫と子どもたちが「うわっ、そのでっかいの何?!」と叫び、私をイラつかせる。猫たちも寄ってきた。やっぱり猫よりボトルの方が大きい。

ドクターSは2クォート、4クォートという話をしていたけど、ボトルにはリットル単位の横線が入っているではないか。いつもならそんなもんだと流せる私だが、不安でいっぱいの今日は八つ当たりする。

「どうして、薬くらいちゃんと単位を揃えないのよ!」

しかも、1クォートは946ミリリットル。このボトルの横線に従えば、2リットル=2.11クォート、4リットル=4.22クォートで、最低限の4クォート飲むとしても、0.22クォートつまり208ミリリットル多い。

こういう飲み物でコップ1杯の差は大きい。でも、ドクターSはクォート単位で話をした。つまり、このボトルの線で水を入れても、コップ1杯は残してもいいということではないだろうか、と自分に都合よく解釈する。

このパウダーを錠剤にして、水をたくさん飲ませるというのは?
患者の味覚を一時的に失わせる薬と併用するのは?
患者を気絶させてその間に一気に流し込むとか?

切羽詰ってきた私は、研究者がとっくに試したであろう対策をあれこれ想像してみる。そして、頭の隅っこで、「ドタキャンもありえるな。」と考える。


<今日の英語>

You just get more bang for your buck.
そのほうがずっとお得です。


一戸建てよりも、元は赤の他人であった人たちと集団で生活するグループホームを選んだ人たちがNYタイムズに出ていた。孤独じゃないし、子どもたちは同年齢の子といつでも遊べる、老人といっしょに暮らして学ぶことも多いという。なによりも、大勢で住むことで経済的に楽になるらしい。費用に見合う価値があるということだ。buckはスラングでお金のこと。10 dollars の代わりに 10 bucks とくだけて言ったりする。



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アメリカでの老後

2009.06.15 (月)



スーパーで洋ナシを3つ買い、さて袋に入れようと、ビニール袋がかかっているスタンドを探した。

すると、ほっそりした白人のおばあさんが袋を1枚はずそうとしているのが見えた。せかしたら悪いと思って、必要もないのにそのへんの野菜を選ぶふりをして待った。

ビニール袋は束になっていて、真ん中あたりをつまんでピッと引っ張れば簡単に外れるのだが、おばあさんはなかなかできない。皮膚がカサカサなだけなのか、手がうまく動かないのか。

ちらっと見た私とおばあさんの目があった。おばあさんが困ったような顔でニコッとしたので、「私が取りましょうか。」と声をかけて、1枚袋を取り、入れやすいように袋の口を開けて渡した。

「ありがとう。これ、やりにくくて困るわ。」とささやくように話すおばあさん。

「そうですよね。」と言ってよく見ると、小柄な私よりもさらに背が低くて、アメリカの大きなショッピングカートがすごく大きく見えた。あれでは広いスーパーの中を押して回るのは大変だろうなあと思いつつ、自分の買い物を続けた。


*     *     *


レジでまた会った。私の前に並んでいたおばあさんのカートには、ほんの10点くらいしか品物が入っていなかった。深くて大きいカートから商品を取り出すために手をいっぱいに伸ばしている。そのままつんのめってカートの中に落ちそうだ。

手伝おうかと思ったが、私の側からは届かない。レジの人も手伝おうとしない。おばあさんが頼めば、だれか来てくれるのかもしれないが、おばあさんは黙々と一人でやっている。いつもそうやっているんだろう。私が下手に手を出さないほうがいいかもしれない。

私が支払いを終えて外に出ると、ゆっくり歩いているおばあさんが見えた。カートを押すというよりもカートに引っ張ってもらっているみたいで、ハラハラする。

一昔前のアメリカ車のバックドアを開き、スーパーの袋を入れる。トランクを開け閉めする体力がないのだろうか。

彼女がゆっくり運転席に座ったところまで見届けて、私は自分の車に戻った。

スーパーを出るところの信号で、またおばあさんのすぐ後ろになった。

信号が変わって、おばあさんはゆっくり発進する。おばあさんのペースは遅い。田舎だし、交通量が少ない時間帯だからいいけれど、歩いている様子を見てしまった私は心配になる。それでも、歩きに比べたら、ずっとしっかりした運転ぶりだった。

次の信号で私は左折したが、おばあさんの車はそのまままっすぐ行った。そういえば、少し先に、老人向けの集合住宅があった。自分で動ける人は自由に外出するのだろう。


*     *     *


NYCのように地下鉄やバスが発達している町ならともかく、車の運転ができるかできないかで生活が大きく違ってくる。

年老いた親から車の鍵をいつ取り上げるか。どうやったら自尊心を傷つけずにできるか。そのあとの外出はどうするか。ときどき新聞などで話題に出る。車は自立の象徴であって、現実問題として車がないと自宅にこもりきりになってしまう。近所の店までちょっと歩いて、というわけにいかないのだ。

たまに、白人のおばあさんと黒人またはヒスパニックの中年女性がいっしょに買い物しているのを見かける。近所の人同士か、お嫁さんかと思っていたが、付き添いの仕事であることがわかった。もちろん、友だちとか義理家族という場合もあるが。

ローカルの求人にも、コンパニオン募集というのが定期的に載る。訪問看護士でも家政婦でもなく、コンパニオン。これは日本でいう接客コンパニオンや催し物にいる案内嬢ではない。

例えば、「90歳の父と月曜日から金曜日までの昼間いっしょに過ごしてくださる方。簡単な料理と掃除。入浴やトイレの介助は不要です。」とか「週3回、87歳の女性がきちんと薬を飲み、食事をするかどうか、見てくださる方。お医者さまへの付き添い。運転免許を持っている方希望。」

寝たきりとか病気ではないけれど、老齢のために一人にはしておけないというケースである。ナースやホーム・ヘルス・エイドといった資格は問わない。

見知らぬ他人にお金を払って家族の代わりをしてもらう。家族が遠く離れた州にいる場合(アメリカには多い。うちも西海岸と東海岸ですぐ飛んでいけないし、しょっちゅう行けない)、他にどういう方法があるだろうか。老人ホームは高いし、行きたがらない老人もいる。

今日見たおばあさんは、自分で運転し、カートを押せる限りは一人で買い物に来るだろうと思う。それはおばあさんの支えにもなっているかもしれない。


*     *     *


30年後の自分をふと考える。

夫は私より10歳年上。あるときから私だけが運転手になる可能性が高い。たぶん介護役も。そして、まず確実に未亡人になる。お金がいつまで続くか。子どもたちには頼りたくない。朝から脂っこいソーセージを出される老人ホームはいやだ。でも、日本人社会とほとんど関わらずに生きて、最後に日系老人ホームというのもなんだか勝手だな。

アメリカに長く住んで英語で生活してきたのに、年を取って日本語しかわからなくなった人の話を聞いたことがある。赤ちゃん返りのついでに、母国語に戻ってしまうのだろうか。

私は夫に先立たれても日本に帰るつもりはない。お墓もお葬式もいらない。遺灰は、うちの裏庭の隅っこ、前に飼っていた猫を埋めたあたりにまいてもらって、そうして土に還りたい。

【関連記事】
アメリカの老人ホームのメニュー 2009.10.10
理想の老人ホーム 2010.11.09



<今日の英語>

You can beat that.
あの車より先に行けるよ。


左折しようと信号で待っていたら、直進する乗用車が何台か通り過ぎた後に大きなトラックがゆっくり向かってきた。かなり距離がある。夫が、いま発進すれば間に合うぞ、とせっついた。このbeatは、打ち負かす、先んじるの意。



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コロノスコピー前日の朝

2009.06.16 (火)


コロノスコピーの前日は、朝食・昼食・夕食一切なし。固形物は不可。口にしていいものは水、お茶、プレーンアイスクリーム、プレーンヨーグルト、クリアスープ、Jell-Oなど。

午後6時にトライライト(大腸内視鏡検査のために腸を空っぽにする薬)を開始、15分おきに8オンスずつ飲めと書いてある。

またしても違う単位が出てきた。

1クウォートは32オンスだから、1クウォート飲むためには、8オンスずつ4回として、15分x4で60分かかる計算か。

最低限の2クウォートを飲み終えるまでに2時間(午後8時終了)。規定の4クウォートなら4時間(午後10時終了)か。もう4クウォートはやる前からあきらめている。

途中で飲めなかったら、30分待ってもいいとドクターSは言っていた。でも、そうすると飲み終わる時間が遅くなるばかり。

しかも、翌朝はコロノスコピー開始2時間前までにさらに2クウォート(絶対。交渉の余地なし)飲まなくてはいけないのだ。11時半の予約だが、10時半に病院に着くように指示があったので、10時に家を出ることにする。

スムーズに15分おきに8オンス飲めたとしても、2時間かかる。まず無理として、1時間余分に見て、朝7時には飲み始めないと間に合わない。いや、6時の方がいいか。

絶食はあんがい平気である。トライライトのことを考えると、食欲もわかない。気を紛らわすために、上巻だけ読んでわざわざ取って置いた「亡国のイージス」下巻を読むことにする。

夫と子どもたちには、空腹とまずい薬で私の機嫌は最悪と考えるように、と昨夜から伝えてある。くれぐれも怒らせないように。

それなのに。

*     *     *

朝7時15分、次男行ってきまーすと元気に出かけて、30秒もしないで戻ってきた。どうしたの、忘れ物?

「どろどろの道で靴が脱げちゃった。靴下、ドロドロ」と片足で立っている。

見ると、あれほどちゃんと靴を履けと日ごろから言っているのに、スニーカーのかかとを踏んでいる。

「どーしてこんなことやってんのよ!」とどなりつつ、新しい靴下を投げつける。慌てて履き替えて、走っていく次男。

長男はと見ると、メールをチェックするといってまだパソコンに張り付いている。ハイスクールのバスはミドルスクールのバスより10分遅いけれど、そんなことしてる余裕あるの?

しばらくして長男行ってきまーすと出て、やれやれと思ったら、長男もドアをどんどんたたく。あーあ、バスに乗り遅れたか。

「ぼく、着替えるの忘れてた!これパジャマだった!」

長男は古いTシャツとスエットパンツのほうが普通のパジャマより好きで、ときどきそれパジャマなの、服なの?と混乱する。でも、パジャマ用シャツは決まっている。

「いつ、気が付いたのよ??」

「そこまで歩いていて、下を見たら、ピンクのシャツだった。」

長男のボケ加減にはほんとにあきれる。ミドルスクールのとき、バックパックを玄関に置いて、トランペットだけ持ってバスストップまで歩き、バスに乗り、学校に着いてからのんきに電話してきた。「あ、おかあさん? ぼくね、バックパック家においてきちゃったから、そう、持って来て~。」

今日は本当にバスに乗り遅れそうだ。ハイスクールの登校時は、車通学の子も多くて混雑する。なるべく行きたくない。慌てて着替えた長男を乗せて、バスストップに急行すると、まだ他の子たちがたむろしていた。やれやれバスには間に合った。

「もー、自分がどれだけパーか考えてみなさいよ!」

「考えてるよ!」

「明日から、朝はパソコンなしよ。今日の晩ごはん、お母さん作らないから、自分でやるのよ!」

脱力して家に戻ると、キッチンの床にがさっきあげたばかりのキャットフードを吐いていた。

どうしてよりにもよって、この日にやらなくちゃいけないの? トライライトに立ち向かうエネルギーが急速に消滅していく。

コロノスコピー前日の夜に続く)


<今日の英語>

It was no picnic.
簡単じゃなかった。


NYタイムズのエチケットコラムで、握手したくないときの言い訳に苦労した話が出ていた。差し出された手を握らないというのは楽じゃないよ。



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コロノスコピー前日の夜

2009.06.16 (火)


コロノスコピー前日の朝の続き)

午後6時。トライライトの白い粉末が入った容器に4リットルの線まで水を入れる。粉が沈殿したので、シャカシャカ振る。振りすぎたのか、泡が立ち始めたので、ぞっとして止めた。

アメリカの計量カップで8オンスまで注ぐ。ドラッグストアのおばさんが言ったとおり、透明だ。

まずこのまま飲んでから、フレーバーを使うかどうか決めようと思っていたら、容器のラベルに「ここをはがせ」と書いてあるのに気づいた。成分の説明かなと思ったら、フレーバーを使うときの注意だった。水を入れるフレーバーとトライライトを混ぜろとある。時すでに遅し。

しかたない。フレーバーなし、プレーンで飲むしかない。

計量カップから普通のグラスに移して、ストローで一気に飲んでみた。想像していたよりひどくないが、塩辛いのと苦いのがまじって、いわくいいがたい味である。飲むほどに、くさったような匂いが鼻につく。

鼻をつまんで、まず最初の8オンス終了。レモン味の飴を口に入れて、タイマーを15分にセット。

「亡国のイージス」に戻る。これなら2クウォート飲めるかも、と多少楽観的な気分になる。

いつどれだけ飲んだか忘れないように、紙に時間と量を記録することにした。

15分はたちまちやってくる。また次の8オンス。飴。15分。もう8オンス。飴。15分。8オンス。飴。胃がタプタプしてきた。これで最初の1クウォート終了。

容器のラベルにあったとおり、飲み始めて1時間で効果があった。トイレ通いが始まる。私はこれまで下剤を使ったことが一度もないので、これも初体験。

あと1時間、8オンスを4回飲めば、最低ラインの2クウォートをクリアできる。

*     *     *

実は、今日に備えて私なりに作戦を立てていた。週末はふだんの半分しか食べなかった。緊張しているからか、タイミングよくお腹の調子もよくない。今日は朝、紅茶を1杯飲んだっきり。そうして、喉がカラカラの状態にしておけば、まずい飲み物でも多少は受け付けやすいかと思ったのだ。そして、作戦はある程度はうまく運んだ。

しかし、これは水責めの拷問に近い。

それにしても、と私は考えた。

私は5フィート1インチ(155センチ)。たとえば6フィート(183センチ)で体重が200ポンド(90kg)もあるような人がコロノスコピーを受けるとして、同じ量のトライライトを飲むのだろうか。どの人種でも腸の長さは違わないかもしれないけど、体格による差はありそうな気がする。

だとしたら、私みたいに小柄な人間には少な目の処方箋をくれるべきではなかろうか。体格に関わらず、一律に2クウォート、4クウォートなんて大雑把すぎる。

午後9時過ぎ。やっと2クウォート終了。後半はもうキャンディーの威力がなくなり、一口ごとにレモンの薄切りをしばらく口の中に入れた。15分間隔ではだめで、20分30分と延ばした。最後は、ジンジャーエールと交互に飲んだ。その間、トイレに通うこと十数回。

ドクターに最低必要な量を聞いておいてよかった。これを4リットル飲める人は尊敬に値する。

明日の朝、もう一度同じように2クウォート飲めば終わるのだが、果たして1クウォートも飲めるだろうか。今夜、結局3時間かかったのだから、明日はもっとかかりそうな気がする。見るだけで体が拒否反応を示しそうだ。

頭が痛くて気持ちが悪くて胃がタプタプ、なんだか寒気がするのを意識のずっと向こうに追いやって、寝ることにする。

アラームを朝6時にセットし、第1ラウンド終了。

コロノスコピー本番その1に続く)


<今日の英語>

I’m a little under the weather.
ちょっと体の具合がよくないんです。


NYタイムズのエチケットコラム、握手を拒みたいときの言い訳として、これはどうか。



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コロノスコピー本番 その1

2009.06.17 (水)


目覚まし時計は不要だった。5時にトイレに行きたくて目が覚めた。昨夜も11時半までトイレ通い。もう体の中は空っぽだし、寝不足と疲労で朦朧としている。

朝6時。本番当日のトライライト開始。5種類のフレーバーから lemon lime を選んで、2つ目の容器に入れてシャカシャカ振る。昨日より泡立つけれど、フレーバー付きなら多少は飲みやすいかもしれないという期待を抱く。

まずい。最悪。レモン風味なのだが、洗剤みたいな味がする(私は洗剤など飲んだことはないが、シャボン玉を吹こうとして誤って吸い込んだことはある)。ジンジャーエールと交互に、8オンスを必死に飲み下す。これを作った人は飲んだことがあるのか?

こんなこともあろうかと、昨日のプレーンなトワイライトを取って置いた。残りの56オンスはプレーン味に決定。

それにしても、8オンスずつ試せるフレーバー・パッケージはないのだろうか。いったんフレーバーを4リットル容器に入れたら、それで終わりなんて。ギャンブルと同じではないか。もうちょっと融通の利いた方法があるはず。他のフレーバーがどんな味かわからずじまいだが、全く期待できない。

洗剤風味のあとでは、プレーンの方が格段に飲める。15分おきに一気に飲む。もうやけくそである。

8時半に水責め終了。開放感と達成感でいっぱいになる。

終わってみれば、前日より当日のほうがずっと平気だった(洗剤風味を除く)。最後の2杯は、15分タイマーより先にスタンバイしていた。人間の適応性はたいしたもんだ。こんなことにも慣れるのである。エベレスト山頂が見えたら、もう一気に登ってしまいたいのはこんな感じかなと思う。

体重を計ったら3キロ減っていた。でも、痩せた!というよりはやつれただけ。

*     *     *

10時00分(亡国のイージスに感化されたか)、夫の車で病院に向かう。夫が中まで一緒に付いて行くというのを断り、私だけ降りて、夫にはそのまま帰宅させる。

10時30分、 Ambulatory Surgery 外来手術の受付。どこでもそうかもしれないが、この病院の受付や患者登録は初老の女性が多い。登録が混んでいるから、待合室で待つように言われる。なんだか寒い。その間にも何回かトイレに行く。

20分ほどして、名前を呼ばれる。

おばさん 「保険のカードと運転免許証を見せてください。」

私 「保険のカードしか持ってきませんでした。」

おばさん 「写真つきのIDは他に持ってませんか。」

私 「何も言われなかったので持ってきませんでした。」

免許のない人はどうするんだろうか。パスポートを持参するのか。本人確認のためだろうけれど、他人の代理でコロノスコピーを受ける人がどこにいる? 夫に送り迎えしてもらうので、財布も置いてきた。IDが必要なら、最初から言ってくださいと思う。

いろんな書類にサインする。費用は私の責任です、検査結果は主治医と産婦人科医に報告しますとか、患者のプライバシーに関するなんとかかんとか。細かい英文を読む気力もなく、サインする。

Durable Power of Attorney 永続的委任状と Health Care Proxy 医療措置代理人指定はあるか、誰が持っているかと聞かれる。

1年前に夫と遺言を作成したとき、ついでに作っておいた。もし麻酔やコロノスコピーで事故があり、私が自分の意志を伝えられないときには夫に決定権がある。さらに、植物人間になったら延命処置はしないようにとお互い決めて、それも文書にしてある。弁護士、夫の弟、主治医にそれぞれ原本が渡してある。

すっかり忘れていた。

ここにも、通訳を派遣しますというサインが立てかけてある。でも、私のデータでは lang: ENG 言語は英語とされているので、通訳の「つ」の字も出ない。

*     *     *

順番が来るまで、待合室で時間をつぶす。広くて椅子がたくさん置いてあるのに、10人も座っていない。それにしても寒い。病院ってこんなに寒かったっけ。日本の病院は暑いイメージがあったけれど。手術室に近いからか。それとも、絶食で体温が下がっているからか。

やっと名前を呼ばれる。手術エリアの方へ付いて行くと、カーテンで仕切ったベッドが3台あった。すでにコロノスコピーを終えたらしき人がとろーんとした目で横になっている。私は一番奥。めずらしいので、ついあたりをじろじろ見てしまう。なかなか立派な設備である。

この病院は改築されて、このウイングは新築。広々としている。ナースはみんな水色の上下。あちこちから電子音が聞こえる。星条旗をモチーフにしたキャップをかぶったお医者さんが通る。もう少し中立的なデザインはないでしょうか。

私の担当ナースは小柄でおとなしそうなミセスL。いろいろ質問されて、また数枚の書類にサイン。予期しなかった質問がいくつかあった。

他の医者、看護士、医学部の学生、看護学生が見学してもいいですか。
手術中の写真を撮ってもいいですか。

医学の進歩に貢献できるなら、どうぞなんなりと。

業者が同席してもいいですか。

医療機器や製薬会社の人? ちょっと迷う。ミセスLがまずありえませんと言うので、OKする。

麻酔医が麻酔薬を使うことに同意しますか。

同意どころか、ぜひお願いします。麻酔ほしいです。

輸血が必要な場合、輸血していいですか。

しなかったら死ぬんでしょ。してください。きれいな血液でお願いします。

もうここまできたら、まな板の上の鯉ですと言おうとして、英語で何ていうのかなと鈍い頭で考える。 あとで調べたら、be doomed とか be left to one's fate という訳だったが、lie at the mercy of 、at one's disposal のほうが近い気がする。

ミセスL 「あなたの宗教は?」

わたし 「えーと…」

ミセスL 「特に信仰がなければ、そのように記録します。」

即答しない人はたいてい信仰がないという経験からそう言ったのだろうか。私は何の宗教も信じていない。特に組織化された宗教はだめだ。かといって、森羅万象に魂が宿るとか八百万の神々とかいう概念にもピンとこない。

わたし 「無宗教でお願いします。」

宗教がどうしてコロノスコピーに関係あるのか。聞けばよかった。

もし万が一失敗して瀕死の状態になったら、神父、牧師、僧侶、ラバイ、その他呼んでくれるんだろうか。無神論者の団体もあるみたいだけど、そしたらどうするんだろう。

*     *     *

書類が片付いて、短めのガウンに着替えるように言われる。開いているほうが後ろ。ブラはつけていてもいいわよと言われるが取る。それじゃあリラックスできないし、下半身に何もつけないのにブラだけなんてなんだか変。

日本だと穴空きパンツなるものを支給されるらしいが、そんなものはなかった。だいたいこれだけ体格にばらつきがある国なので、パンツのサイズを揃えたり、ちょうどいいサイズを渡すのも大仕事だ。

あいかわらずゾクゾクするので、ミセスLに「この部屋寒くないですか。」と聞くと、「そうなのよ。毛布あげましょうか。」と言って、大きいスチールのドアを開けて、1枚持ってきてくれた。ほっかほかで暖かい。そういえば、この病院で次男を生んだときも寒気がして、あったかい毛布でくるんでくれた。

ダイヤモンドか暖かい毛布か選べと言われたら、毛布だなあとベッドの上で考えながら、うとうとする。

次回その2に続く)


<今日の英語>

I hear you.
あなたの言いたいことはわかります。


隣のベッドにいたおばさんがトライライトを大量に飲むのが、どれだけ大変か、ナースにこぼしていた。ナースはそんなこと何百回も聞いただろうに、「そうよね、わかるわー。」と相槌を打っていた。「それをしなくちゃ検査ができないでしょう!」なんてしかりつけることはしない。コロノスコピーの患者はすでに絶食と下剤で相当まいっているのである。



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コロノスコピー本番 その2

2009.06.18 (木)


前回その1からの続き)

暖かい毛布が冷めたころ、ミセスLがやってきて、点滴静脈注射(IV)を始めると言う。

あっと思って、左腕を見ると血管が全然見えない。右腕のほうがまだしもうっすら見えるが、大丈夫かなと不安になる。いつものことだが、血液検査でもうまく針がささらなくて困るのだ。

ミセスLも私の腕を見て、探してみるわと左腕上部をゴムで縛ってみたが、すぐあきらめた。右はどうですかと私が聞くと、反対側に来て同じ事をする。今度は針を刺してみたが、だめらしい。皮膚の下で針を動かされて痛い。

ごめんなさいね。これじゃあだめだわ。麻酔の先生にやってもらいましょう。彼のほうがうんと上手だから。」

ミセスLがあんまり済まなそうなので、「あなたのせいじゃないですから、気にしないで。いつもこうですから。」となぐさめた。

血の付いたIVの先っぽを毛布の上に置いたまま、ミセスLはどこかに消えたが、戻ってきて、「コロノスコピーが予定より遅れてます。もう少しここで待っていてください。」

またうとうとする。ハーイと言う声でふと目を開けると、私の顔のすぐ前に医者がいた。私好みのいい男。三十代半ばといったところか。

あなたの麻酔医ドクターAです、気分はどうですか、と手を差し伸べられる。横になったまま、ドクターAの手を握るとあったかい。話しているあいだずっと手を離さないドクター。まあ、こんなハンサムな先生が麻酔をしてくださるなんて、とぼんやりした頭で先生の顔を見つめる。

「血管が出なくて、まだIVできてないんですけど。」と言うと、「大丈夫。手術室でやりますから、心配しないで。」 んまあ、まで私好み。

コロノスコピーに来た甲斐があるってもんじゃないの。

*     *     *

どれくらい時間が経ったか、手術に立ち会うナースがやってきて、キャスターのストッパーを外し、手術室(といってもほんの10メートル先)までベッドを押して行く。

小さい部屋にTVモニターみたいなのが天井からぶら下がっていて、コロノスコピーに使うらしいチューブや血圧計や心肺モニターが目に入る。コロノスコピーそのものは20~30分程度で終わるとのことだった。

先週コロノスコピーの事前説明で会ったドクターSが、私のほうを向いてハーイと手を振る。私も手を振り返す。

ドクターS, ドクターA、ナースは無言テキパキ仕事を進める。有能そうだ。やっぱり病気を治すならアメリカだなと、根拠もなく考える。

右腕に血圧を測るための収縮布が巻かれる。胸のところに、ホックの片割れみたいなものが3つ貼り付けられる。鼻の穴に酸素吸入チューブが入る。指先にクリップがはまる。

ドクターAがIVのための針を手に左腕の血管を探し始めるが、すぐに上腕部のゴムを外した。「使えそうなのが見つかったけれど、敏感なところだからやめましょう。」そして、手の甲に針を刺した。チクッとしますよ。Three, two, one. いつも猫に噛みつかれたり引っかかれたりしているので、平気。それにトライライトの苦痛に比べたら、なんでもない。

部屋が暗くなる。こんな暗くていいいのかな。そのほうがモニターが良く見えるのかな。

ナースが左側を下にして横を向けと言う。その通りにするが、まだ麻酔が効いてないのに始めるの?と不安になって、「あの、私まだ目がパッチリ覚めてますけど。」と言ってみる。

ナースは笑って、大丈夫、まだ何もしませんよ。でも起きているうちに体位を変えてもらうことになってます。ドクターがOKと言えば、すぐ眠れますから。麻酔医のドクターAも、「あなたの意識がちゃんとあることはわかってますよ。まだ麻酔を始めてませんから。

あら、じゃあIVの中に麻酔を入れたんじゃないのね、とばかな質問をした私は反省する。あっちはプロなんだから任せておけばいいのに、疑い深い患者で申し訳ない。

ドクターAが注射器を片手に、私の左手を取る。まあ、きれいな目。首にダビデの星をかたどった金のネックレスが見えた。ドクターAはユダヤ人か。

ドクターSはアラブ系。ナースはイタリア系か。まあ、こんないろんな人たちが私のために働いてくれてるのね、と感動する。メディカルスクールに行って、レジデントもやって、大変だっただろうなあ。ナースだって、こんなにいろんな薬や機械、医学用語を勉強しなくちゃいけないし。

世の中で一番えらいのは人の命を預かる人たちだという考えを新たにする。

注射器には麻酔薬の白い液体が入っている。血管を通って、じわーっと広がっていく感覚がある。ドクターAは注射器の半分だけ使って取り外した。やっぱり麻酔だけは体格によって使用量があるのだ。どうして最初から半分だけ入れないんだろうか。もったいない。いつ眠くなるのかな。

*     *     *

気が付いたら、カーテンで仕切ったところに戻っていた。なんだかふわふわした気分。痛くもなんともないが、目を開けていられない。まだ麻酔から完全に覚めてなくて気持ちいい。

看護婦が来て、お迎えの人は誰か、いつ来るのかと聞く。夫です。自宅で待ってます。と言うと、じゃあ電話しましょうと言って消えた。

いま何時かな。まだ帰りたくないなあ。いつまでもここでふわふわ寝ていたい。

ハンサムなドクターAが様子を見に来たが、私は丸まって毛布をかぶって寝ていた。メガネが壊れるからと上を向かされる。起きる努力をしろということか。麻酔医は当然どれくらい麻酔が効くかわかっている。私が単に気持ちよくてうとうとしているナマケモノなのもわかっているのだ。

前に麻酔を受けたときは、目覚めたときには吐き気と頭痛で悲惨だった。あれは長い手術だったので、ちがう麻酔かもしれないが、そっちの技術も進歩しているんだろう。

日本では麻酔なしのコロノスコピーもあるという。根性で乗り切れというのか。私にはできない。麻酔の危険はゼロではないけれど、全身麻酔さまさまである。手術の記憶はまったくない。

ベッドの中でうとうとしていると、が現れた。もー早すぎるじゃないの。どう気分は? 服を替えなくていいの? 起きなくちゃだめだよ。うっとうしいわね。

ドクターSが来て、「ポリープなし、癌なし。コロノスコピーうまく行きましたよ。次回は5年後ですね。」と言う。

ほら、何もなかったでしょ。肉を食べないんだから。5年後に健康保険があったらね、と思う。それまでに下準備がもう少し楽になってるといいなあ。

わたし 「準備はあれでよかったでしょうか。ちゃんとできてましたか。」

ドクターS 「ベリーナイスでした。」 合格。

カーテンを閉めて夫を追い出し、着替えをする。ナースが来て、また何かにサインしろという。退院についての書類。ぼーっとした頭でサインして、夫と共に部屋を出た。

いつもの方向音痴がさらにひどくて、どっちが出口かわからない。受付の待合室まで戻ってやっと感覚を取り戻す。

今日は私が夕食を作らないとわかっている夫は、ケンタッキーフライドチキンに寄りたいと言う。ドライブスルーでなくて、中で注文すると言って出て行った。例のレシートを捜索するチャンス。鈍い頭であちこちひっくり返す。グラブコンパートメントには鍵が掛かっていて開かない。どこにも郵便局のレシートはない。

夫が大きな袋を提げて戻ってきた。ものすごいチキンの匂い。暖かいので、匂いを我慢して家まで抱っこすることにした。

*     *     *

薄情な猫たちは出迎えなし。いつもと違うスケジュールなので、困惑している様子。特に兄猫は昨日今日と私に付き合って、2階のベッドルーム、1階のキッチン、両方のトイレの往復にずっとくっついていたので、疲れてるかもしれない。

私も疲れているが、卵入りのおかゆを作ることにする。夫にアメリカ人はこういうとき何を食べるの、と尋ねる。(例によって、チキンスープかな。)

夫 「さあ~、知らないなあ。カッテージチーズじゃないかな。」

わたし 「チーズ? ほとんど丸2日の絶食のあとでいきなりチーズなの?」

夫 「カッテージチーズだよ。チーズじゃない。」

名前からしてチーズでしょ。それに乳製品なのは確かでしょ。吸収しやすいのかもしれないけど、私はいきなりチーズは無理だ。

45時間ぶりの食事。おかゆがおいしい。食べられる幸せ。あったかいお茶も入れる。

夫か息子たちに、私好みのおかゆの作り方を教えておかねば。

退院の書類には、12時間運転禁止、今日は静養することと書いてある。いつも以上に堂々と昼寝できる。パジャマに着替えて、ベッドにもぐりこむと、兄猫が来て、わたしにピッタリ貼り付く。これも暖かい。


<今日の英語>

Let’s take him at his word.
彼の言葉を額面通りに受け取りましょう。


NYタイムズの相談コラムより。ラスベガスで結婚する友だちが、自分が全部費用を持つからぜひ出席してくれと懇願された失業中の人。ホテルや飛行機代で〆て$1400かかった。ところが、友だちは$500の小切手を送ってきて、「ゴチャゴチャ言わないでくれよ。」 全部払うって言ったんだから、払ってもらいましょう。
Just take my word for it.ならば、私の言うことを信じなさい。



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ブログ運営はレストラン経営より難しい?

2009.06.18 (木)


先週のNYタイムズに、どうしてブログはレストランよりも失敗する率が高いのかという記事が出ていた。

ところで、新規オープンするレストランの90%は1年以内に閉店するとよく言われるが、実際はそれほど高くないらしい。

オハイオ州立大学の Parsa 教授の研究によると、1年目でだめになるのは26%、2年目で19%、3年目で14%。それでも3年以内に10軒のうち6軒が閉店してしまうのだから、厳しいビジネスであることに変わりはない。

ブログのほうはどうか。

サーチエンジンをやっている Technorati の2008年度調査によると、1億3300万あるブログのうち、過去120日間にアップデートされていたのは、たった740万だったという。つまりブログの95%は事実上放棄されているわけだ。

ブログを始めて4ヶ月足らずの私には、聞き捨てならない話である。

NYタイムズは、ブログが挫折する要因として次のことを挙げている。

  • 大勢の人が自分のブログを読んでくれて、たくさんコメントしてくれるだろうと期待して始めるが、現実はそうではなくて失望し、裏切られた気持ちになる。
  • 仕事、家事、宿題、育児などで忙しく、ブログをやっているヒマがなくなる。
  • Twitter, Facebook などに移ったため、ブログに興味がなくなる。
  • もう一度プライバシーを取り戻したくてブログを閉鎖した。
  • お金儲けができると思ったのに全然稼げなくて止めた。
  • 自分の意見や物事について書くことに疲れた。

*     *     *

日本のブログの事情はどうなのかよくわからない。日本のブログ人口はアメリカより多いと聞いたことがある。でも、言語の制約があるから、広く読んでもらいたければ英語で書けという話も耳にした。

アメリカ人のブログは、日本人のブログよりも実名・本人の写真入りが多い気がする。日本人でもビジネスをやっている人なら、アイデンティティを公開したほうが名前と顔を売るメリットがありそうだ。もともとマスコミや芸能界の人間ならプライバシーなんか問題外である。

総務省の発表によると、ブログの登録者数は2006年3月末で868万人に達している。この記事の要点は以下の通り。

  • 3人に1人は複数のブログを開設
  • 「2~3日に1回以上更新」が半数
  • 45%はアフィリエイトを利用
  • アフィリエイト利用者の3分の2は過去6カ月の収入が「500円未満」

私が参加している人気ブログランキングの登録数は48万人、にほんブログ村ランキングは31万人。

ものすごい数だが、やはり開店休業のブログもたくさんあるのだろう。人の興味も環境も変わるものだし、それはそれで自然な流れだと思う。

ブログが失敗成功かの基準だって、人それぞれ。利益をあげなくてはいけないレストランとは違う。もっとも、収入目的で始めたブログならレストランと同じか。

私はもしかしてみんながブログに飽きてきたころに始めたのかなと思う。

でも、SNS やチャットはやらないし、掲示板にもめったに書き込みしない、携帯でテキストメッセージを送ったことすらない私には、ブログは自分の小さな城のように思える。それにしては殺風景な城であるが。

そして、ランキングはお城を見に来た人がなにか気に入ってくれたらしいというバロメーター。

Mixi というのは話にしか聞いたことがないけれど、誘われないと入会できないとか、誰がいつ見たか追跡できるとか、お互いにコメントしなくちゃいけないとか、なんだかややこしい。せっかく仮想世界にいるのに現実のしがらみでぐるぐる巻きにされそうな印象を受けた。

あと何年かしたらブログそのものが変貌するかもしれないが、私は書くことが好きなので、こうやって自由に書ける場があり、暇つぶしに読んでくれる人(これはいまだに信じがたいことである)がいればそれでいい。


<今日の英語>

What is she after this time around?
今度は何を追い求めているのか。


実名ブログで賞をもらった彼女だが、自分の心情を露土しすぎて見知らぬ人からメールが届くわ、友人に誤解されるわで、不安を掻き立てられて閉鎖。でも、別のブログを始めることにした。やっぱり本を出版したい、儲けたいのだそうだ。What are you after? は、下心は何なの?という意味。



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日本人妻を持つ外国人夫の悩み

2009.06.19 (金)


とある掲示板に、日本人女性と結婚している外国人男性はどんな悩みを抱えているかというトピックがあった。

私自身思い当たるふしがいくつもあり、国籍や年齢がちがっても案外共通項があるのだなと思った。

20年間そういう暮らしをしてきた夫に聞かせたら、とても喜んだ。同志を見つけた!というところか。息子たちを連れてきて、もう一回説明してくれと言う。

めんどくさいので、私が子どもたちにいくつか日本語で読み上げて、それを通訳させた。みんな笑っている。

ということは、子どもたちも日本とアメリカの文化の違いがわかっているのだろう。生まれてからずっと日本人の母親とアメリカ人の父親に接してきたのだから、慣れているはずである。

いや、むしろ判断力や思考力がついてきたから、異文化間の葛藤を客観的に見られるようになった、ということかもしれない。少しは成長したのかな。それはそれでうれしいけれど、あんなにゲラゲラ笑わなくてもいいじゃない?

*     *     *

うちの夫が悩んでいるのは、たぶんこんなところ。

<愛情>

妻に触ろうとすると、避けられる。
I love you を言ってくれない。
キスやハグをしてくれない。
セックスしてくれない。
電話すると、そっけない対応をされる。

<食べ物>

アメリカのお菓子を「甘すぎる」「まずい」と言って毛嫌いする。
日本のお菓子は隠してある。
日本の食べ物は貴重だからと言って、分けてくれない。
米、塩、ラーメンは絶対にアメリカのスーパーでは買わない。
日本レストランに行っても、なかなかおいしいと言わない。
日本レストランの料理は本物ではないと言う。

<言葉>

日本の歴史や文化について質問すると、「わからない」と言われる。
日本語について質問すると、「英語では説明できない」と言われる。
機嫌が悪いと、日本語で短い返事をされる。
子どもたちと妻が日本語で話していると、のけ者にされた気がする。

<生活>

エアコンの温度設定が低い、TVの音量が大きいといつも言われる。
一時帰国に連れて行ってくれない。
「アメリカのお店には買いたいものがない」とこぼす。
家の中のルールが多すぎる。
来客があるときは、病的なまでに掃除をし、もてなしに苦悩する。
日本人と会うときは、事前に「言ってはいけないこと。してはいけないこと。」の講義をされる。

<子育て>

ゲームやテレビを制限しすぎる。
「子どもたちを日本の高校や大学に行かせたら」と提案すると、彼らの日本語能力についてぜんぜん理解していない!と糾弾される。
子どもを叱ると「そんなに怒らないで」と言うくせに、自分はもっとヒステリックに子どもをどやしつけている。補習校を辞めてから、それがピタリと止まったのも不思議だ。

*     *     *

アメリカ人女性と結婚していれば、こんなことで悩まなくて済んだのに。

結婚当初はもっといろんなことでそりが合わなかったに違いない。私のほうはアメリカ生活に慣れるのに一生懸命で、夫が私との生活をどう思っているかなんて全然考える余裕はなかった。

夫は後悔しているかなあと今頃になって思う。

20年もいっしょに暮らしていると、相手の反応が予想できて、無駄な言い争いはしなくなる。それは日本人同士で結婚しても同じかもしれない。

私はアメリカ人としか結婚したことがないので、日本人夫との生活が想像できない。でも、こんな風に好き勝手に大ざっぱにやっていたら、1週間で追い出されるのが関の山だ。


<今日の英語>

For better or worse, people are really picking sides now.
良かれ悪しかれ、いまや皆どっちの側に付くのかを本気で決めているところだ。


6月22日に始まるウィンブルドンで、ナダルとフェデラーのどっちを応援するか。他にも勝てそうな選手がいるけれど、この2人は特別。Pick a side. どっちの側に付くか決めなさい。



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 |  アメリカ人  |  コメント(10)

リージェンツ試験

2009.06.20 (土)


今日はニューヨーク州の Integrated Algebra Regents Exam 代数学リージェンツ試験の日。

ニューヨーク州教育省の管轄で、The Board of Regents of the University of the State of New York ニューヨーク州大学区理事会が問題を作成し、運営する統一テストである。簡単に、Regents Exam リージェンツ・イグザムと呼ばれる。

これにパスしないと、ニューヨーク州では高校を卒業できない。数学だけでなく、他の科目もある。

6年生の次男は数学だけ2年飛び級しているため、ミドルスクールに在籍しているにもかかわらず、ハイスクール・フレッシュマン(8年生=高校1年生)である長男と同じテストを同じ時間に受ける。

私はアメリカの学校に通ったことがないので、いまだにわからないことが多い。ナーサリースクール(保育園)、キンダーガーテン(幼稚園)のころから、なにごとにつけ、まず長男で経験して、それで「なるほど、そういうことか~。」とやっと合点がいく始末。

はアメリカ育ちでアメリカの教育を受けたけれど、なぜか役に立たない。この40年間で社会も教育現場も変わってしまったし、学校区によっても違うからとかなんとか言って、ほとんど外国人である私に任せっぱなしだ。懇談会や教室での手伝い、先生とのメールのやり取りもぜんぶ私がやってきた。

専業主婦で時間はあるから別に構わないが、なにか大事なことを見落としていたらどうしようと時々不安になる。

*     *     *

州のテストは学校ごとの結果が公表されるので、それが学校の評価、ひいては学校区内の住宅価格につながるらしい。子どもにいい教育を受けさせたいからいい学校区を選び、そこに家を買うということがよくある。

リージェンツだけでなく、統一テストに関しては学校をあげてのサポート体制で臨む。

生徒のテスト結果は先生自身の評価につながるし、校長や教育委員会からのプレッシャーもあるだろう。当然のように、テストの準備を授業や宿題に組み込む。

特に次男の学年はリージェンツを受ける子が少ないためか、今月は数学の担任から2回もメールがあった。


子どもたちはしっかり勉強したので、自信を持っています。私も彼らが試験で健闘してくれることを信じています。

試験に必要なものは以下の通りです。グラフ電卓、No.2の鉛筆2本と消しゴム、青か黒のボールペン、今年度の自分の数学ポートフォリオ。

試験は12:15 pm に始まり、3:15 pm に終了します。最初の2時間は必ず教室にいなくてはいけませんが、それ以降は自分の判断で退席してもかまいません。リージェンツを受ける子の昼食は、特別に11:00 am から11:30 am まで。それから102教室に集まって、最後の復習をします。

試験の2日前、私は3:30 pm まで学校にいますので、補習が必要なお子さんは残ってください。

この1年間、ご自宅での励ましとサポートをありがとうございました。皆さんの息子さん・娘さんをお教えできたのは、私にとっても最大の喜びでした。


長男はさすがにハイスクールだけあって、こんなメールは来ない。でも、数学教師作成の宿題カレンダーを持ち帰った。それによると、リージェンツ練習問題、模擬テストなど、5月末から6月にかけてはリージェンツのための授業であることが伺えた。

*     *     *

テスト前日の昨日夜7時。夫が「次男は、テキストブックを学校のロッカーに置いてきたんだそうだ。まったく信じられないやつだ。まあ長男が同じ本を持ってるから、交代で勉強するように言っておいたけど。」とあきれている。

私は、もしかしたらカストディアンにドアを開けてもらえるかもしれない、今からでも取りに行こうかと思い、次男を呼んだ。

次男 「ぼく、いらないの。」

わたし 「いらないって、明日テストでしょ。」

次男 「もう学校、閉まってるよ。それに、ぼく、もういっぱい勉強やった。」

わたし 「どうしてもっと早く言わないのよ。しょうがないから、長男くんの借りてやりなさいよ。」

次男 「おかあさん! ぼく1ヶ月ずっと何やってたと思う? 毎日毎日リージェンツの練習だよ! もう飽きたよ。それにぼくもう Integrated Algebra わかってるもん。」

そこまで言われて、私は黙った。

そういえば、4年か6年のときもNY州のテストがときどきあり、その直前の2週間くらいの授業はそのための予備校みたいな感じだった。

わたし 「じゃあ、いいわよ、やらなくたって。その代わり、テストが終わって、あーもう少し勉強すればよかったー、なんて言わないでよ。」

*     *     *

ここまで至れり尽くせりで、できないほうがおかしいと思うが、合格ラインに達しない子もいるらしい。

やはり学力のばらつきが大きいのかもしれない。高校中退も日本より多いし、先生は大変である。アメリカの高校卒業率は平均70%だが、最低のネバダ州(47%)から最高のニュージャージー州(82%)までその差は大きい。

成績が悪くて単位がもらえない子は、夏休みにサマースクールという特別補習授業を受けなくてはならないそうだ。

「いい? 今年の夏は日本に行くのよ。ぜったい合格するのよ。」と2人にはっぱをかけると、声をそろえて「は~い。できま~す。」 あいかわらず、根拠もないのに自信満々ねえ。

朝、子どもたちが出かける前に、その日のおやつは何がいいかをときどき相談するのだが、今日は「祝!代数リージェンツ試験終了のアイスボックス・クッキー」で意見が一致した。


<今日の英語>

We can't let this happen again.
こんなことを二度と起こしてはならない。


ガイトナー財務長官が公聴会で、今回のような経済危機を再び起こさないように、早く経済改革を推し進めなくてはいけないと主張。両党やビジネス界の思惑やらで、遅れることを懸念している。小市民としては、早いとこ立て直してくださいと思う。



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レシピ: アイスボックス・クッキー

2009.06.21 (日)



=== 簡単レシピ その 8 ===
アイスボックス・クッキー

  1. 室温でやわらかくしておいた無塩バター1本(1/4 ポンド=113g)をボールに入れ、ハンドミキサーで攪拌する。
  2. グラニュー糖100ccを加えて、さらに攪拌する。
  3. 卵1個とバニラエッセンス少々を加えて、さらに攪拌する。
  4. アーモンドパウダー50ccを入れ、小麦粉300ccをふるいながら入れて、しゃもじで混ぜる。
  5. 広げたサランラップの上に置いて、棒状に成形し、冷凍庫で30分冷やす。
  6. 厚さ5ミリに切って、天板に並べ、350°F(175℃)のオーブンで18分焼く。

  • バターは数時間カウンターの上に出しておくと、ちょうど軟らかくなる。電子レンジや湯せんで溶かしてはいけない。
  • 攪拌時間はそれぞれ1~2分。均一になればよい。
  • 成形するとき、サランラップの空き箱に入れるとやりやすい。
  • 冷凍庫にしまうときは、空気に触れないようサランラップできっちり包む。
  • 市松模様にしたいときは、ドウの半分をサランラップに落として、棒状にし、残り半分にココアパウダー大さじ2を入れてしゃもじでまぜ、これも棒状にする。冷凍庫で30分冷やしたら、たて半分に切って、牛乳を表面に塗って交互になるようにくっつける。また冷凍庫で30分冷やしてから焼く。

*     *     *

計量カップで計るので正確ではないが、多少小麦粉が多かったり、砂糖が少なかったりしても、味に大差はない。バターさえ出してあれば、思い立ったらすぐできるところが気に入っている。

元は日本のレシピでバター1本プラス大さじ3くらいだったが、バター1本分に換算し、適当に端数を切り上げて、覚えやすい分量にした。ケーキと違って、クッキーはおおらかにできる。

いつもは半分だけすぐ焼き、残りは冷凍庫に入れておく。食べたいときにその都度切って焼けばいいのだが、たいてい翌日あたりに「もっとクッキー!」という声があがって、結局全部焼いてしまう。

うちは、クッキー・ドウの長期保存方法に悩むことはない甘いもの一家である。


<今日の英語>

You have no reason to be here.
ここにいる理由なんか全然ないじゃないか。


自分のゲームが終わった次男が、長男がやっているPCの後ろでいつまでも見ている。見ているだけならまだしも、あれこれ口を出す。長男が、Go away! あっち行け!と命じるのも時間の問題か。



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アメリカで男の子を育てるということ

2009.06.22 (月)



長男の通うハイスクールの年度末予定を確認しようと、学校のウェブサイトを見たが、なかなかほしい情報が見つからない。

もしかしたらガイダンスのページにあるかもしれないと思って、クリックすると「18歳以上の男性へ重要なお知らせ」という文字が目に飛び込んで来た。


あなたには Selective Service System (選抜徴兵システム)に登録する法的義務があることを忘れないでください。この登録はアメリカに住んでいるほとんどすべての男性に適用されます。移民のステータスには無関係です。登録しなければ、将来の奨学金授与、仕事に向けてのトレーニングや就職、そして移民の場合は市民権取得の資格がないと見なされるリスクがあります。

17歳と3ヶ月になったら、SSSのウェブサイトまたは郵便局で登録できます。


アメリカはイラクやアフガニスタンで戦争しているにもかからわず、まだ徴兵制はない。すべて志願者による軍隊である。

アメリカに20年も生活しながら、SSS の存在はぜんぜん知らなかった。私は志願兵だけで足りなくなった時点で徴兵者名簿を作り、徴兵制度が復活するのかと思っていたのだ。

夫に聞いてみたら、「えっ、知らなかったの。」

きっと常識的すぎて、夫もわざわざ私に説明する必要があるとは思わなかったのだろう。

夫も大学に入ったときに登録したそうだ。そして番号の通知があり、もしかしたら抽選でベトナム戦争に送られたかもしれなかったが、それは免れた。


*     *     *


SSS について調べてみたら、1940年にルーズベルト大統領が始めたものだった。徴兵制度はベトナム戦争の和平協定成立と共に1973年に廃止。1980年に選抜徴兵法が制定されて、登録制度が復活。その後の冷戦時代、ソ連のアフガニスタン侵攻、ソ連邦崩壊を経て、現在まで続いている。

世界の徴兵制度をウィキペディアで調べてみた。

徴兵制を施行している国家として、ドイツ、スウェーデン、デンマーク、オーストリア、フィンランド、ノルウェー、スイス、ロシア、韓国、北朝鮮、イスラエル、トルコ、中華民国(台湾)、エジプト、シンガポール、ポーランド、カンボジア、ベトナム、タイ、マレーシア、中国、アルジェリア、キューバ、ギリシャが挙げられている。

そのうち、女子も徴兵の対象としているのは、イスラエルとマレーシア。

徴兵制を施行していない国家としては、ニュージーランド、アイスランド、インド、日本、アメリカ合衆国、イギリス、カナダ、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガル、オランダ、ベルギー、サウジアラビア、ヨルダン、パキスタン、バングラデシュ、アイルランド、オーストラリア、赤道ギニア、アルゼンチン、コスタリカ、チェコ、スロバキア、ハンガリー、ニカラグア、ルーマニア。

なさそうな国であったり、また絶対ありそうな国でなかったりするものだ。

軍隊を保有していない国家として、アイスランド、コスタリカ、日本とある。自衛隊の装備はアメリカに次いで世界第2位。自衛隊は軍隊そのものだと思うけど。

*     *     *


SSSへの登録を怠った場合は、25万ドルの罰金最長5年の禁固刑である。またハイスクールのサイトに書いてあったとおり、奨学金も受けられないし、連邦政府または州政府に就職できない可能性がある。州によっては、運転免許をもらえないこともある。

この登録は、18歳から25歳までのアメリカ市民と永住権保持者、不法滞在者が対象である。学生ビザや外交官ビザなどで一時的に住んでいる場合は免除される。病院、精神病院、刑務所にいる場合は、登録しなくてよい。

でも、身体障害者は、ある程度自由に動けて外出できる場合は登録する。フルタイムでない予備兵や州兵も要登録。

良心的兵役拒否者も要登録。もし徴兵が復活して実際に徴用されたときに、そこで初めて免除申請の機会を与えられる。

二重国籍者にも免除なし。うちは子どもたちが日米両方のパスポートを持っているが、登録しなくてはいけないし、日本に逃げることもできない。アメリカ国籍を放棄しない限り。

わたし 「ベトナム戦争のときに、カナダに移住した人たちがいたじゃない? あれは良心的兵役拒否が認められなかったから?」

夫 「ぼくも大学のときに調べてみたけど、良心的兵役拒否の審査に通るのは難しいよ。信仰上の理由というのが一番かな。クエーカー教徒とか。」

わたし 「うちはクエーカー教徒じゃないし、クリスチャンですらないわね。でも、ブッシュみたいに親のコネで安全なところに配置されるのはありじゃないの?」

夫 「そりゃ大ありだよ。大学の知り合いにもいたけど、上院議員とか動かしてうまいことやるんだ。」

うちはそんなコネはない。かといって息子2人分50万ドルの罰金は払えないし、牢屋に放りこまれても困る。アメリカ市民の義務を全うするより他にないではないか。

なんたって、キンダーガーテンのときから毎朝、胸に手を当てて、アメリカ国家に忠誠を誓ってきたんだから。


*     *     *


PBSのニュース番組 Newshour の終わりに、アフガニスタンまたはイラクで新たに戦死した人たちの顔写真と年齢出身地などプロファイルを流す。音声は一切なしで、沈黙の数分間となる。19歳とか21歳とか、ほんの子どもみたいな写真が、上官の家庭持ちらしき中年男性たちと共に次々と現れる。

若すぎる。だから戦争はいやなのよ。死んでから勲章なんかもらったってしょうがないじゃない。この子たちのお母さん、20年間育てた結果がこれ?

SSSのことを知ってから、戦争のニュースがひどく身近に感じられる。テロリストだって、自分を生んだ母親や自分の妻が産んだ子どもがいるだろうに。命を粗末にしすぎる。貧困や民族対立、過激派の洗脳で、戦うことが自分の使命だと信じ込んでいるのかもしれないが、殺人行為でしかないことがどうしてわからないんだろう。

子どもたちに戦争はだめと言い続けるのが、母親の仕事の一つだと思えてくる。

ふと見ると、息子たちはPCで戦争ゲームをしている。「なんで人殺しをやってるのよ。」と聞くと、「人間じゃないよ。宇宙人だよ。」と言う。宇宙人だって、人間と同じ格好をしている。それに、いつも破壊してるだけ。もっと建設的なゲームはないのか。

ゲームに夢中で私の言うことなんか聞いていないだろう息子たちに向かって思う。

宇宙人だからって、殺すことないじゃない。あんたたち、下手すると戦場に送られるかもしれないのよ。そしたら、それはゲームじゃないよ。爆弾も本物だし、相手も生身の人間。スコアを競って、レベルがクリアできたら、リセットなんてわけにいかないんだから。

アメリカで男の子を育てるというのはこういうことか。

Draft (徴兵)の文字がやたら目に入る。徴兵制度は当分復活しないと聞く。うちの息子たちが戦争に行くことは、おそらくないのだろう。選択の余地がなく、志願して軍隊に行く子もいる中で、うちの息子たちはまだ恵まれている。

好戦的な男たちをおとなしくさせる薬を誰か作ってくれないかな。

そして、側近の女が毎日少しずつ食事に混ぜたらどう? 天使みたいにすごく友好的になってしまって、武器アレルギーで銃や爆弾に触るのもいやになって、世界平和実現。これには全世界の女が一致団結しないとだめかな。好戦的な女もいるから、彼女たちにも一服盛ることにしよう。


<今日の英語>

He is old school.
彼は昔かたぎです。


7ヶ月間、タリバンの捕虜になっていたNYタイムズ記者Rohde氏が脱走に成功。これまで報道管制が敷かれていたことがわかった。彼の兄によると、1995年にボスニアでも当局に捕まったことがあるが、解放されてボストンに戻ったら、空港でカメラマンやジャーナリストに迎えられてたじろいだという。彼は自分がニュースのネタになるのでなく、ストーリーテラーでいたいのです。やたら自分を売り込み脚光を浴びたがるジャーナリストが増えている中で、古風ではある。



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アメリカから見たカタカナ英語

2009.06.23 (火)


私は毎朝NYタイムズと朝日新聞をネットで読む。カタカナ英語が出てくると、つい頭の中で英語のスペリングを考えてしまう。

「ユビキタス」を初めて目にしたとき、新種の植物の名前かな、確かユキノシタというのがあったな、それともに関係する新語かなと思ったが、意味が通じない。読み進めるうちに、ubiquitous (普遍的な・どこにでもある)だとわかったときは、思わずうなってしまった。ユビキタスと来たか!

ふだん、ユークィタスに近い発音をしていたので、ピンとこなかった。それに、日本語にもある概念だから英語を使うとは思わなかった。ユビキタスに近い発音をする人もいるらしいが、yubikitasu とは全く違うはずだ。

どうしたって英語の発音をカタカナで正確に書くことは不可能である。

私が日本を離れている間に、日本語風のものも英単語をそのままカタカナにしたものも含め、英語が日本人の生活にますます浸透したらしい。オバマの就任演説全文(原語)へのリンクが朝日のトップページに出ていたりするのだから、英語のできる人が増えたんだなと思う。

コンプライアンス(遵守、応諾)
カーボンオフセット(二酸化炭素相殺)
ワーキンググループ(作業部会)

こんなのが今日の見出しに普通に出ている。英語のパワーを見せつけられるような気がする。正確には、アメリカ経済と文化の影響力によるアメリカ英語のパワーか。

私はそれほど言語感覚がよくない。だから、カタカナ英語をさっと英単語に結び付けることができない。

実は、クリスマスツリーのツリー tree とわかったのは、渡米して6年目に初めてナマの木を買いに行ったときである。そのときツリーはトゥリー tree なのだとわかった。

もちろん tree の日本語訳は木であることは中学のときから知っていたが、カタカナのツリー=英語のtree だと自分の中ではっきりつかめたのはこのときだ。まるで、ヘレン・ケラーがサリバン先生に井戸水を手にかけられて、water を理解したときのようだった(いや、そこまで劇的な出来事ではないか)。

*     *     *

姉がよく日本から電話してくるが、時々わからない単語がある。たいていカタカナ英語である。「いま何て言った?」 姉が言い直してもわからない。「もっとゆっくり言って。」それでもだめなら、「どういう意味が日本語で説明してよ。」 わかってみれば、なんのことはない。

10年前でさえ、老人を昼間だけ預かる行政サービスをデイサービスと呼んでいた(アメリカでは、adult day care や senior service)。

80過ぎの祖母の口から「今日は、デイサービスの日だで、楽しみだやあ。」というセリフが出てきて、たまげた。おばあちゃん、いつの間にそんな言葉覚えたの? デイもサービスも英語よ! ところで、デイサービスって何をするの?

3年前に、乳がんの手術を受けた70過ぎの伯母と話したとき、「セカンドオピニオンをもらわにゃと思っただけど、もうはっきりしとったで、やめただよ。」と言われた。伯母は昔から勉強家である。さすが伯母さんだわと感心したが、これも一般に使われていることが後でわかった。

*     *     *

先月、ひさしぶりに行った日本食品店の前で日経新聞の購読キャンペーンをしていて、1部タダでくれた。オンラインでは読めるけれど、の日経なんて何年ぶりだろう。株式チャート以外は隅から隅まで読んで、まだ捨てずに取ってあるのだ。

日経には女性向け雑誌の広告も出ている。なんだか知らない雑誌が多い。

そこに「モードなデニム」「モードな1万円」「モードな着こなし」と書いてある。

何だろう。モードといえば、プリン・ア・ラ・モード。流儀、状態、方法か。トップモードは和製英語だけど(標準的な英語なら High style か)、最新流行ということか。じゃあ、「モードな服」は流行の服ということかな。

それにしても、ピンと来ない。「モードな1万円」は、1万円で買える流行の服? 「モードな」で検索したら、4620万ヒット。とっくに定着している言葉らしい。今まで目にしなかったのが不思議なくらいだが、私は日本の雑誌は購読していないし、ウェブでも読まないので、当然か。

具体的にどんな服なのか、なんだか気になって調べてみたがよくわからない。これは来月日本に帰ったときに実地調査するしかない。

余談だが、日経に出ていた銀行の名前にも驚いた。私が覚えているのはせいぜいさくら銀行までである。

りそなやみずほ、UFJ は知っていたが(でも元はどの銀行なのかさっぱりわからないし、どうしてりそななんて舌をかみそうな名前にしたのかも知らない)、セブン銀行、イオン銀行、じぶん銀行など初耳である。トマト銀行というのは覚えがある。

NYには Apple Bank があるが、それはNYCが Big Apple と呼ばれているから名づけたと思われる。日本にはりんご銀行はなさそうである。青森県の地銀の名前としてどうだろうか。


<今日の英語>

Is it hot in here? Or is it me?
ここ暑くない? それとも私が熱いの?

歯科衛生士の一言。私は暑くない。むしろ涼しい。彼女も私も半袖。上から照らしているライトかマスクのせいかなと思ったけれど、彼女の目の周りのしわを見て、hot flash だとひらめいた。閉経の症状の一つ、ほてりである。周囲の人も暑いと思っているかを知りたいときによく使う言い方。



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愛人ごっこ その1

2009.06.24 (水)



は、思いつめたような顔をしてまっすぐこちらへ歩いてきた

若い人ね。それに、もう2週間はキャンプにいるのに、なんて白い。こういうのをアラバスターの肌と言うのかな。

・・・

このサマーキャンプには長男が2年前に参加したことがあり、初日の手続きや毎日のプログラムなどについても私はよく知っていた。1年前の夏は日本に帰ったために、アメリカのキャンプには行かせなかった。

今年は次男も参加できる年齢になり、夏休みの間ずっと子どもたちと一緒にいることなど耐えられない私は、4月早々に2人分を申し込んでおいた。

泊まりキャンプではないので、毎日朝9時に送り届け、午後4時に迎えに行く。それでも、7時間預かってくれるのである。子どもの相手にうんざりしていた私には、その時間が必要だった

費用は安くない。でも、子守だけでなく、私ができないような魚釣りとかアーチェリー、カヌー、クラフトなど毎日いろんなことをやらせてくれる。暖かいランチも出してくれる。室内プールもある。

町が主催するキャンプはもっと安いが、カウンセラーは地元の高校生。一度、長男を入れたら、お迎えのときにワーワー泣いていたのに、カウンセラーは「あのう、長男くん泣いてるんですけど。なんでか知らないけど。」とボソッと言っただけ。プログラムはあってないようなもの。ランチもジャンクフードだった。

そんなことがあって、高くても内容のよいこちらのキャンプにしたのだ。

ここはNPOが経営していて、夏だけでなく年間を通して活動しているちょっと変わったキャンプである。

サマーキャンプの売り込みの1つは、海外からのカウンセラーが大勢いることだ。おそらくアメリカを見てみたい大学生に、住む所と食べるものがあってキャンプの最後にはお金ももらえる仕事として人気があるのだろう。

アメリカの白人と補習校の日本人としか交流のないうちの息子たちに、もっと違う人たちと会わせたいと私は常々思っていた。

それに、私は外国語が好き。大学では、ドイツ語とフランス語をかじった。そのあとも、簡単なフレーズをいろんな国の言葉で覚えるのが趣味みたいなものだった。子どもたちもよその国に興味を持つかもしれない。

・・・

初めて長男だけ参加したとき、カウンセラーの一人はアレクセイだった。

すらりとして背が高く、冷たい美貌の持ち主で、めったに笑わないロシア人。白人を見慣れている私でも、アレクセイを初めて見たときはぼーっとした。顔の造作が整っているのである。俳優でもこんなにきれいな人はいないんじゃないかと思った。

実際、カウンセラーの女の子たちは彼の周りをうろついて、中には身体をぴったりくっつけていた子もいた。でも、アレクセイはにこりともしない。

アメリカ人のお母さんたちも、アレクセイを見る。薄暗いロッジの中で彼のところだけ目立つのだ。つい視線がそっちへ行ってしまう。

その頃、私は、夫が出張のたびにタイ女と会い、メールや電話のやり取りをしていたことを調べ上げ、夫と毎日のように口論し、げっそりやつれていた。

夫は子どもの送り迎えをする気などない。毎朝どうにか起きて、サングラスで泣き顔を隠し、長男を連れて行った。長男の行くところにはどこだって自分も行きたい次男も引き連れて。

美しいアレクセイにも、おはよう、ありがとう、くらいしか話す気力はなかった。

・・・

ある日の夕方、迎えに行ったら、長男がいなかった。別のカウンセラーに聞くと、長男はトイレに落ちてしまって、いまアレクセイが世話をしている、もうすぐ来ると思う、とのことだった。

着替え持ってくればよかったなあと、滅入っているところへさらに落ち込んで待っていると、長男を背負ったアレクセイが歩いてくるのが見えた。

「トイレに落ちたんですって?ごめんなさいね、世話をかけて。」

いえ。そんなことありません。」

「汚いでしょう。歩かせてくださればよかったのに。」

「長男君がもう歩けないって泣くものですから。ぼくは平気ですよ。」

「ほんとにありがとう。うちの子、ぼんやりしていて困るわ。明日もよろしくお願いします。」

アレクセイにさようならを言ってから、長男に言い聞かせる。

もっと気をつけなくちゃだめじゃない。いったいどうやって落ちたのよ。アレクセイがきれいにしてくれたの? いい人ねえ。すごく静かだから冷たい人だと思ったけど、私なんかトイレに落ちた子をおんぶできないわよ。

アレクセイ、ぜんぜん笑わないけど、いい人なのね。ロシア人って優しいね

・・・

その後はアクシデントもなく、2週間のプログラムは終わったが、私と夫の間の問題はそのままだった

夫は開き直り、私は途方にくれて、1日中グズグズ泣いていた。夫がここまで冷酷に私を扱えることにショックを受けていた。

もちろん、セラピストと私の主治医以外には誰にも話さず、友人知人や近所の人たちはもちろん、夫と私の家族もまさかこんなことになっているとは誰も想像できなかったと思う。

他の人と会うときは、ごく自然にふるまっていたから。しかも、結婚当初から夫とはベタベタしないし、手すらつながない私だったので、特に冷えた関係には見えなかったはずである。

そうこうするうちに、なんとなく落ち着いて、夫もタイ女とは手を切ったと言い、セラピストに通いながらも私はもう泣くこともなく、表向きは元の生活に戻りつつあった。

ところが、私は夫のメールを読んでいたので、久しぶりのシンガポール出張で夫がまたタイ女と落ち合う計画を立てていたことを知った。でも、今度は黙っていた。

夫の本当の気持ちを確かめるチャンスだと思った。

そして、私が知らないはずのホテルに2人が一緒にいそうな時間を狙って、電話した。タイ女が電話に出たとき、私は驚かなかった。取り乱すこともなかった。彼女がそこにいるのはわかっていたし、むしろ出てくれてよかったと思った。

それから私はもう恐いものがなくなり、「夫が何をしようと、どうでもいい」と思うようになり、自分と夫を解放した

別居も離婚もしないで、今まで通り暮らすのだ。

次男もサマーキャンプに参加できる年齢になった頃には、夫との間はまだぎくしゃくしていたが、表面上は穏やかな生活に戻っていた。

アラバスターの肌のパヴェルに出会ったのは、そんなときだった。

(次回その2に続く)



<今日の英語>

My recourse is limited.
私の取れる手段は限られています。


目の前にいる会社の同僚が一日中小さな声で上司の悪口を言って、イライラさせられている人からの相談。彼は正社員で、私はインターンだからできることは限られているんだけど、なにかいいアイディアはありませんか。「直属の上司に話しなさい。そして、このうっとうしい同僚を反面教師としなさい。いつかは会社に不満だらけになるときが誰にでもあるけれど、ひそひそ文句言ったって何の解決にもならないってことです。」



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愛人ごっこ その2

2009.06.25 (木)


(前回その1の続き)

初めてキャンプに参加する緊張気味の次男と、2年前のキャンプが楽しかったのでわくわくしている長男を連れて、キャンプ施設に向かった。

前のカウンセラーの名前なんだっけ?ロシア人の。すごいハンサムの。」

「アレクセイ!」

「そうそう、ハンサムだったわねえ。彼、今年も来てると思う?いっつも女の子に囲まれてたじゃない。でも、笑わないのよね。あの子、優しかったわ。トイレに落ちたの、覚えてる? アレクセイがおんぶしてくれたのよ。」

「えー、トイレに落ちたのー? わー、きたなーい。」とはやし立てる次男。

「うるさい!」と怒る長男とケンカがはじまりそうで、話をそらす。

「二人とも、ちゃんとカウンセラーの言うことを聞いてよ。別のグループだけど、会ってもケンカしないのよ。どっちかのグループにアレクセイがいるといいんだけどなあ。おかあさん、いろんな国の言葉を聞きたいのよ。もう英語ばっかり、飽きたわ。今年はどこから来てると思う?」

2年前は気持ちが沈みきっていて、こんな会話さえできなかった。私はここまで立ち直れたのだ

・・・

初日は登録する親子の列ができる。

6月末からの2ヶ月、2週間ずつのセッションが4回あり、どのセッションにするか先に申し込んでおく。

働いているお母さんは全部のセッションに入れたり、さらに朝と夜の延長も使ったりするが、専業主婦の私は基本の9時から4時、セッション2だけである。それでも二人分となれば数千ドルになる。

並ぶのが嫌いな私は、早めに着いた。息子たちのグループ番号を確かめて、パビリオンへと向かう。パビリオンといっても、屋根と柱、それに作り付けのテーブルがあるだけで、ほとんど戸外。そこが毎朝の集合と夕方のお迎えの場所である。

すでにセッション1から通っている子は、慣れた様子ですぐ横のジャングルジムで遊んでいる。

次男のテーブルにはまだ誰もいない。

まず、長男のテーブルに行って、カウンセラーに挨拶をした。彼らは地元のアメリカ人だった。神経質で泣き虫の長男だが、前に来たことがあるし、何とかやれるだろうと、あとはカウンセラーに任せた。

次男の手を引いて、最年少のグループが集まるはずのテーブルに戻る。

他の子どもが二人来ていた。一人はすでにセッション1からここに毎日来ているとかで、すっかり慣れたもの。その子のお母さんは、さっさと仕事に行ったらしい。もう一人は男の子で、父親が私と同じくカウンセラーを待っていた。

9時少し前になって、バックパックをしょった若者たちがパビリオンに集まり始めた。女の子と男の子が半々くらいか。大学生だけと思ったが、もう少し年上らしい人もいた。外国のアクセントのある英語が聞こえてくる

残念ながら、アレクセイはいなかった。

あとでわかったのだが、海外からのキャンプカウンセラーはたいてい一夏程度でやめるらしい。あるいは他のキャンプに派遣されることもある。アメリカを経験して、少しお金を稼いで、本国に戻り、学業に戻るなり就職するなりするのだろう。何度もやる仕事ではない。

・・・

一人の若者がこちらのテーブルに向かってくる

背が高く(といっても、私は156センチなので、ほとんどの人が私より背が高いのだが)、やせて見える。髪の毛がGIみたいに短く刈ってある。あの人かな。

あの思いつめたような表情は何だろう。子どもの相手で疲れたのか、こんな仕事を引き受けなけりゃよかったと後悔しているのか。若い人だけど、なんだか深刻な感じ。大丈夫かしら。

それにしても、肌が透けるように白いのは、なぜ? 

セッション1ですでに2週間は戸外で過ごしたはずなのに。あれでも多少は日焼けしているのかしら。だったら、地はもっと白いのか。まるで大理石じゃないの。こういうのがアラバスターの肌か。

考え事をしているような彼に、私と同じく待っていたおじさんが話しかけ、子どもを託して立ち去った。私も挨拶して、次男を紹介しなくちゃ。

「おはようございます。これ、次男です。キャンプは初めてですけど、そっちのテーブルに兄がいて、2年前に何度も見に来たので、少しはわかってます。よろしくお願いします。」

「オーケー。次男君、よく来たね。ぼくの名前は…。

周りで騒ぐ子どもたちの歓声で聞き取れないが、ネイティブの英語ではない。アメリカ人でなくてよかったわ。

(次回その3に続く)



<今日の英語>

He is driving me nuts.
彼のせいで気が狂いそうです。


オフィスで1日中ぶつぶつと上司の悪口を言い続ける同僚が目の前にいるという、昨日の相談より。いらいらして、おかしくなりそうです。Are you nuts? は、気は確か?



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